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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] こども大綱

[場所] 
[年月日] 2023年12月22日
[出典] こども家庭庁
[備考] 
[全文] 

第1 はじめに

1 こども基本法の施行、こども大綱の策定

 令和5年4月1日、こども基本法が施行された。こども基本法は、日本国憲法、児童の権利に関する条約(以下「こどもの権利条約*1*」という。)の精神にのっとり、次代の社会を担う全てのこどもが、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、社会全体としてこども施策*2*に取り組むことができるよう、こども施策に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、こども施策の基本となる事項を定めるとともに、こども政策推進会議を設置すること等により、こども施策を総合的に推進することを目的としている(第1条)。

こども基本法において「こども」とは「心身の発達の過程にある者をいう。」とされている。これは、18歳や20歳といった年齢で必要なサポートが途切れないよう、こどもや若者がそれぞれの状況に応じて社会で幸せに暮らしていけるように支えていくことを示したものであり、こどもが、若者となり、おとなとして円滑な社会生活を送ることができるようになるまでの成長の過程にある者を指している*3*。

そして、こども基本法第3条において、こども施策の基本理念として、次の6点が掲げられている。

  ① 全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすること。

  ② 全てのこどもについて、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、教育基本法の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること。

  ③ 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。

  ④ 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。

  ⑤ こどもの養育については、家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的責任を有するとの認識の下、これらの者に対してこどもの養育に関し十分な支援を行うとともに、家庭での養育が困難なこどもにはできる限り家庭と同様の養育環境を確保することにより、こどもが心身ともに健やかに育成されるようにすること。

  ⑥ 家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できる社会環境を整備すること。

 国は、これらの基本理念にのっとり、こども施策を総合的に策定・実施する責務があり(第4条)、政府は、こども施策を総合的に推進するため、こども施策に関する大綱(以下「こども大綱」という。)を定めなければならないとされている(第9条第1項)。

 こども大綱について、こども基本法では、以下のとおり、規定されている。

  ・こども大綱は、こども施策に関する基本的な方針、こども施策に関する重要事項、こども施策を推進するために必要な事項について定めるものとする。(第9条第2項)

  ・こども大綱は、少子化社会対策基本法第7条第1項に規定する総合的かつ長期的な少子化に対処するための施策、子ども・若者育成支援推進法第8条第2項各号に掲げる事項及び子どもの貧困対策の推進に関する法律第8条第2項各号に掲げる事項を含むものでなければならない。(第9条第3項)

  ・こども大綱に定めるこども施策については、原則として、当該こども施策の具体的な目標及びその達成期間を定めるものとする。(第9条第4項)

  ・都道府県はこども大綱を勘案して都道府県こども計画を定めるよう、また、市町村はこども大綱及び都道府県こども計画を勘案して市町村こども計画を定めるよう、努めるものとする。(第10条)

  ・政府は、こども大綱の定めるところにより、こども施策の幅広い展開その他のこども施策の一層の充実を図るとともに、その実施に必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならない。(第16条)

  ・こども政策推進会議が、こども大綱の案を作成する。同会議は、こども大綱の案を作成するに当たり、こども及びこどもを養育する者、学識経験者、地域においてこどもに関する支援を行う民間団体その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。(第17条第2項第1号及び同条第3項)

 政府は、令和5年4月、内閣総理大臣を会長とするこども政策推進会議を開催し、こども大綱の案の当たり、内閣総理大臣からこども家庭審議会に対し今後5年程度を見据えたこども施策の基本的な方針や重要事項等について諮問し、こども家庭審議会においてこどもや若者、子育て当事者の視点に立って議論を進めることを決定した。これを踏まえ、内閣総理大臣から諮問を受けたこども家庭審議会が、こどもや若者、子育て当事者等の意見を聴く取組を実施した上で、同年12月に答申を取りまとめた。

 政府として、この答申を真摯に受け止め、総合的な見地から検討・調整を図り、こども政策推進会議において案を作成した上で、ここに、こども大綱を策定する*4*。


2 これまでのこども関連3大綱を踏まえた課題認識

 こども大綱は、これまで別々に作成・推進されてきた、少子化社会対策基本法、子ども・若者育成支援推進法及び子どもの貧困対策の推進に関する法律に基づく3つのこどもに関する大綱を一つに束ね、こども施策に関する基本的な方針や重要事項等を一元的に定めるものである。

 令和2年5月に閣議決定された少子化社会対策大綱については、こども基本法施行前に内閣府の検討会で取りまとめられた中間評価*5*において、少子化の背景には、経済的な不安定さ、出会いの機会の減少、男女の仕事と子育ての両立の難しさ、家事・子育ての負担が依然として女性に偏っている状況、健康上の理由など、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が複雑に絡み合っていることが指摘されている。その上で、少子化を「既婚者の問題」、「女性やこどもの問題」とするのではなく、我が国の経済社会の根幹を揺るがしかねない喫緊の課題であることを社会全体で認識する必要があるとされている。一方で、少子化対策は、決して国や社会の都合で若い世代に特定の価値観を押し付けたり、プレッシャーを与えたりするものであってはならず、「こどもまんなか」の考えの下で、これから生まれてくるこどもや今を生きているこどもとともに結婚や子育ての当事者となる若い世代を真ん中に据えていくことが求められるとされている。

 令和3年4月に子ども・若者育成支援推進本部で決定された子供・若者育成支援推進大綱では、まず、社会全体の状況としては、こどもの自殺などの生命・安全の危機、孤独・孤立の顕在化、低いウェルビーイング*6*、格差拡大への懸念、SDGsの推進、多様性と包摂性ある社会の形成、リアルな体験とDXの両面展開、成年年齢の引下げ等への円滑な対応などが指摘されている。また、こども・若者が過ごす場ごとの状況として、世帯構造、児童虐待、ひきこもり、家族観の変化といった家庭をめぐる課題や、生徒指導上の課題の深刻化や教職員の多忙化・不足といった学校をめぐる課題、つながりの希薄化といった地域社会をめぐる課題、インターネット利用の拡大といった情報通信環境をめぐる課題、ニートなどの就業をめぐる課題が指摘されている。

 令和元年11月に閣議決定された子供の貧困対策の推進に関する大綱については、こども基本法施行前に内閣府の有識者会議で取り取りまとめられた報告書*7*において、現場には今なお支援を必要とするこどもや家族が多く存在し、その状況は依然として厳しいこと、特に、教育と福祉の連携促進やこども施策と若者施策の融合等、貧困の状態にあるこどもや家庭に支援を届ける上での民間団体を含む幅広い主体間の連携体制について改善を求める声が多く更なる施策の充実が必要であるとされている。また、教育分野を中心に多くの指標が改善傾向にあるが更なる改善が求められる向にあるが更なる改善が求められるとされている。


3 こども大綱が目指す「こどもまんなか社会」

~全てのこども・若者が身体的・精神的・社会的に幸福な生活を送ることができる社会~

 「こどもまんなか社会」とは、全てのこども・若者が、日本国憲法、こども基本法及びこどもの権利条約の精神にのっとり、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、ひとしくその権利の擁護が図られ、身体的・精神的・社会的*8*に将来にわたって幸せな状態(ウェルビーイング)で生活を送ることができる社会である。

 具体的には、全てのこどもや若者が、保護者や社会に支えられ、生活に必要な知恵を身に付けながら

  ・心身ともに健やかに成長できる

  ・個性や多様性が尊重され、尊厳が重んぜられ、ありのままの自分を受け容れて大切に感じる(自己肯定感を持つ)ことができ、自分らしく、一人一人が思う幸福な生活ができる

  ・様々な遊びや学び、体験等を通じ、生き抜く力を得ることができる

  ・夢や希望を叶えるために、希望と意欲に応じて、のびのびとチャレンジでき、将来を切り開くことができる

  ・固定観念や価値観を押し付けられず、自由で多様な選択ができ、自分の可能性を広げることができる

  ・自らの意見を持つための様々な支援を受けることができ、その意見を表明し、社会に参画できる

  ・不安や悩みを抱えたり、困ったりしても、周囲のおとな社会にサポートされ、問題を解消したり、乗り越えたりすることができる

  ・虐待、いじめ、体罰・不適切な指導、暴力、経済的搾取暴力、性犯罪・性暴力、災害・事故などから守られ、困難な状況に陥った場合には助けられ、差別されたり、孤立したり、貧困に陥ったりすることなく、安全に安心して暮らすことができる

  ・働くこと、また、誰かと家族になること、親になることに、夢や希望を持つことができる

社会である。

 そして、20代、30代を中心とする若い世代が、

  ・自分らしく社会生活を送ることができ、経済的基盤が確保され、将来に見通しを持つことができる

  ・希望するキャリアを諦めることなく、仕事と生活を調和させながら、希望と意欲に応じて社会で活躍することができる

  ・それぞれの希望に応じ、家族を持ち、こどもを産み育てることや、不安なく、こどもとの生活を始めることができる

  ・社会全体から支えられから、自己肯定感を持ちながら幸せな状態で、こどもと向き合うことができ、子育てに伴う喜びを実感することができる。そうした環境の下で、こどもが幸せな状態で育つことができる

社会である。

 こうした「こどもまんなか社会」の実現は、こども・若者が尊厳を重んぜられ、自分らしく自らの希望に応じてその意欲と能力を活かすことができるようになることや、こどもを産みたい、育てたいと考える個人の希望が叶うことにつながり、こどもや若者、子育て当事者の幸福追求において非常に重要である。また、その結果として、少子化・人口減少の流れを大きく変えるとともに、未来を担う人材を社会全体で育み、社会経済の持続可能性を高めることにつながる。すなわち、こどもや若者、子育て当事者はもちろん、全ての人にとって、社会的価値が創造され、その幸福が高まることにつながる。

 こども大綱の使命は、常にこどもや若者の最善の利益を第一に考え、こども・若者・子育て支援に関する取組・政策を我が国社会の真ん中に据え、こどもや若者を権利の主体として認識し、こどもや若者の視点で、こどもや若者を取り巻くあらゆる環境を視野に入れ、こどもや若者の視点で、こどもや若者を取り巻くあらゆる環境を視野に入れ、こどもや若者の権利を保障し、誰一人取り残さず、健やかな成長を社会全体で後押しすることにより、「こどもまんなか社会」を実現していくことである。こども大綱は一度取りまとめられたら終わりというものではない。「こどもまんなか社会」の実現に向け、こどもや若者、子育て当事者等の意見を取り入れながら、次元の異なる少子化対策の実現に向けたこども未来戦略*9*の推進とあわせて、こども大綱の下で進める施策の点検と見直しを図っていく。


第2 こども施策に関する基本的な方針

 全てのこども・若者が身体的・精神的・社会的に幸福な生活を送ることができる「こどもまんなか社会」の実現に向けて、日本国憲法、こども基本法及びこどもの権利条約の精神にのっとり、以下の6本の柱を政府におけるこども施策の政府におけるこども施策の基本的な方針とする。

  ① こども・若者を権利の主体として認識し、その多様な人格・個性を尊重し、権利を保障し、こども・若者の今とこれからの最善の利益を図る

  ② こどもや若者、子育て当事者の視点を尊重し、その意見を聴き、対話しながら、ともに進めていく

  ③ こどもや若者、子育て当事者のライフステージに応じて切れ目なく対応し、十分に支援するする

  ④ 良好な成育環境を確保し、貧困と格差の解消を図り、全てのこども・若者が幸せな状態で成長できるようにする

  ⑤ 若い世代の生活の基盤の安定を図るとともに、多様な価値観・考え方を大前提として若い世代の視点に立って結婚、子育てに関する希望の形成と実現を阻む隘路(あいろ)の打破に取り組む

  ⑥ 施策の総合性を確保するとともに、関係省庁、地方公共団体、民間団体等との連携を重視する

(1) こども・若者を権利の主体として認識し、その多様な人格・個性を尊重し、権利を保障し、こども・若者の今とこれからの最善の利益を図る

 こども・若者は、未来を担う存在であるとともに、今を生きている存在であり、保護者や社会の支えを受けながら、自立した個人として自己を確立していく、意見表明・参画と自己選択・自己決定・自己実現の主体である。つまり、こども・若者は、心身の発達の過程にあっても、乳幼児期から生まれながらに権利の主体である。乳幼児期から生まれながらに権利の主体である。

 こども・若者を、多様な人格を持った個として尊重し、その権利を保障し、こども・若者の今とこれからにとっての最善の利益を図る。

 こども・若者が、自らの権利、心や身体、社会に関する必要な情報や正しい知識を学ぶことができ、それらに基づいて将来を自らが選択でき、生活の場や政策決定の過程において安心して意見を言え、述べた意見が反映され、それにより周囲や社会が変わっていく体験を積み上げながら、希望と意欲に応じて将来を切り開いていけるよう、取り組んでいく。声を上げにくい状況にあるこども・若者に特に留意しつつ、「こどもとともに」という姿勢で、こどもや若者の自己選択・自己決定・自己実現を社会全体で後押しする。

 こども・若者が、多様な価値観に出会い、相互に人格と個性を尊重し合いながら、その多様性が尊重され、尊厳が重んぜられ、固定的な性別役割分担意識や特定の価値観、プレッシャーを押し付けられることなく、主体的に、自分らしく、幸福に暮らすことができるよう支えていく。性別にかかわらずそれぞれのこども・若者の可能性を広げていくことが重要であり、乳幼児期から心身の発達の過程においてジェンダーの視点を取り入れる*10*。

 思想・信条、人種、民族、国籍、障害の有無、性的指向及びジェンダーアイデンティティ、生い立ち、成育環境、家庭環境等によって差別的取扱いを受けることがないようにする。

貧困、虐待、いじめ、体罰・不適切な指導、暴力、経済的搾取、性犯罪や性暴力などの権利の侵害からこどもを守り、救済する。

 こども基本法やこどもの権利条約の趣旨や内容を、こども・若者や、子育て当事者、教育・保育に携わる者を始めとするおとなに対して、広く周知し、社会全体で共有を図る。

 こどもや若者に関わる全ての施策において、こども・若者の視点や権利を主流化し、権利を基盤とした施策を推進する。

(2) こどもや若者、子育て当事者視点を尊重し、その意見を聴き、対話しながら、ともに進めていく

 こども・若者が、自らのことについて意見を形成し、その意見を表明することや、社会に参画することが、社会への影響力を発揮することにつながり、おとなは、こども・若者の最善の利益を実現する観点からこども・若者の意見を年齢や発達の程度に応じて尊重する。

 こども・若者が意見表明をし、社会に参画する上でも意見形成は欠かせないものであることから、意見形成への支援を進め、意見を表明しやすい環境づくりを行う。

 貧困、虐待、いじめ、体罰・不適切な指導、不登校、障害・医療的ケア、非行などを始めとする困難な状況に置かれたこども・若者や、ヤングケアラー、社会的養護の下で暮らすこども、社会的養護経験者(いわゆるケアリーバー)、宗教二世、外国人のこどもなど、様々な状況にあって声を聴かれにくいこどもや若者、乳幼児を含む低年齢のこども、意見を表明することへの意欲や関心が必ずしも高くないこども・若者も自らの意見を持ち、それを表明することができるという認識の下、言語化された意見だけでなく様々な形で発する思いや願いについて汲み取るための十分な配慮を行う。

 こどもや若者、子育て当事者が、安全に安心して意見を述べることができる場や機会をつくり、その意見をこども施策に反映させ、どのように反映されたのか、反映されない場合には理由などをフィードバックし、社会全体に広く発信する。これにより、こども施策の質を向上させるとともに、更なる意見の表明・参画につながる好循環をつくる。こども・若者と対等な目線で、対話しながら、こども・若者とともに社会課題を解決し社会課題を解決していくことは、こども・若者の自己実現を後押しするとともに、主体的に社会の形成に参画する態度を育み、ひいては民主主義の担い手の育成に資する。

(3) こどもや若者、子育て当事者のライフステージに応じて切れ目なく対応し、十分に支援する

 こどもは、乳幼児期から学童期、思春期、青年期における様々な学びや体験を通じて成長し、若者として社会生活を送るようになる。おとなとして自分らしく社会生活を送ることができるようになるまでのこどもの成長の過程は、その置かれた環境にも大きく依存し、こどもによって様々であり、かつ、乳幼児期からの連続性を持つものである。円滑な社会生活を送ることができるようになる時期も個人差がある。

 それぞれのこども・若者の状況に応じて必要な支援が、義務教育の開始・終了年齢や、成年年齢である18歳、20歳といった特定の年齢で途切れることなく行われ、乳幼児期から学童期・思春期・青年期を経て成人期への移行期にある若者が自分らしく社会生活を送ることができるようになるまでを、社会全体で切れ目なく支える。こどもが若者となり自分らしく社会生活を送ることができるようになるまでの一連の過程において、様々な分野の関係機機関・団体が有機的に連携し、教育・保育、保健、医療、療育、福祉を切れ目なく提供する。

 また、保護者・養育者の「子育て」とは、乳幼児期だけのものではなく、こどもの誕生前から男女ともに始まっており、乳幼児期の後も、学童期、思春期、青年期を経て、おとなにになるまで続くものとの認識の下、ライフステージを通じて、社会全体で子育て当事者を支えていく。子育て当事者が、こどもを産み、育てることを経済的理由で諦めることなく、身近な場所でサポートを受けながらこどもを育てることができ、どのような状況でもこどもが健やかに育つという安心感を持つことができ、こどもを育てながら人生の幅を狭めずに夢を追いかけられるよう、多子やひとり親世帯に配慮しつつ、取組を進めていく。子育て当事者が、経済的な不安や孤立感を抱いたり、仕事との両立に悩んだりすることなく、また、過度な使命感や負担を抱くことなく、健康で、自己肯定感とゆとりを持って、こどもに向き合えるように取り組む。子育て当事者を社会全体で切れ目なく支えていくことは、こどもと子育て当事者の幸せにとって欠かせない。同時に若い世代にとって、子育てへの安心感や見通しを持つことにつながる。

 こども・若者や子育て当事者をめぐる課題が深刻化・複合化しており、単一分野の専門性のみでは解決できないとの認識の下、家庭、学校・園、児童福祉施設、企業、地域などの社会のあらゆる分野の全ての人々が学校・園等の場をプラットフォームとして相互に協力しつつ、関係機関や団体が密接にネットワークを形成し協働しながら、一体となって、こども・若者や子育て当事者を支える。

(4)良好な成育環境を確保し、貧困と格差の解消を図り、全てのこども・若者が幸せな状態で成長できるようにする

 貧困と格差はこどもやその家族の幸せな状態を損ね、人生における選択可能性を制約し、ひいては社会の安定と持続性の低下にもつながる。このため、貧困と格差の解消を図ることは、良好な成育環境を確保し、全てのこども・若者が幸せな状態で成長できるようにするための前提であり、全てのこども施策の基盤となる。

 乳幼児期からの安定した愛着(アタッチメント)*11*の形成を保障するとともに、愛着を土台として、こども・若者の良好な成育環境を保障し、貧困と格差の解消を図り、全てのこども・若者が、相互に人格と個性を尊重されながら、安全で安心して過ごすことができる多くの居場所を持ち、様々な学びや多様な体験活動・外遊びの機会を得ることを通じて、自己肯定感や自己有用感を高め、幸せな状態で成長し、尊厳が重んぜられ、自分らしく社会生活を営むことができるように取り組む。

 こども・若者が全国どこにいても必要な支援が受けられる環境を整備するとともに、全てのこども・若者や家庭を対象とした乳幼児期からの切れ目ない予防的な関わりを強化する。困難な状況にあるこども・若者や家庭を誰一人取り残さず、その特性や支援ニーズに応じてきめ細かい支援や合理的配慮を行う。ひとり親家庭など貧困の状況にある家庭が抱える様々な課題や個別のニーズに対応した支援を進めることにより、貧困の解消・貧困の連鎖の防止に取り組む。インクルージョンの観点から、一般施策において、困難な状況にあるこども・若者を受け止められる施策を講じる。こども・若者や家庭が抱える困難や課題は、様々な要因が複合的に重なり合って、いじめ、不登校、ひきこもり、孤独・孤立、非行といった様々な形態で表出するものであり、表出している課題に係るこども・若者への支援に加え、保護者への支援を始めとする成育環境や社会的養護への対応も含め、重層的にアプローチする。保護者がいない又は保護者による虐待などの理由により、こどもを家庭において養育することが困難又は適当ではない場合においては、永続的解決(パーマネンシー保障)を目指して、養育環境の改善や家庭復帰を最大限に支援し、親族等による養育への移行支援、特別養子縁組の判断・支援に取り組みながら、「家庭における養育環境と同様の養育環境」である里親等、「できる限り良好な家庭的環境」の児童養護施設等において安定的、継続的な養育を提供する。

 こども・若者や家庭に支援を届けるに当たっては、支援が必要でも自覚できないなどSOSを発すること自体が困難、相談支援の情報を知らない、知っていたとしても申請が複雑で難しいといった課題があるほか、SOSを発しても周囲が受け取れていないことがある。こども・若者や家庭が、必要な情報を得られ、必要な支援を受けられるよう、地域における関係機関やNPO等の民間団体等が連携し、当事者に寄り添いつつ、プッシュ型・アウトリーチ型の支援を届ける。

 幼児教育や保育に携わる者、教職員、青少年教育施設の職員、児童相談所や児童福祉施設等の職員及び里親、障害児支援に携わる者、民生委員・児童委員、保護司、地域でこども・若者や子育てへの支援を担っているNPO等の民間団体の職員やボランティアなど、こども・若者の育ちや困難に対する支援、子育ての支援に携わる関係者が、こどもの権利を理解し、こどもの声を傾聴するゆとりを持てるよう、また、自身が喜びや幸せ、充実を感じられるよう、職場環境や活動環境や活動環境等の改善に取り組むとともに、多様な人材の確保・養成、専門性や質の向上、メンタルケアなどを充実させる。

(5)若い世代の生活の基盤の安定を図るとともに、多様な価値観・考え方を大前提として若い世代の視点に立って結婚、子育てに関する希望の形成と実現を阻む隘路の打破に取り組む

 若い世代が「人生のラッシュアワー」と言われる様々なライフイベントが重なる時期において、社会の中で自らを活かす場を持つことができ、現在の所得や将来の見通しを持てるようにする。

 若い世代の雇用と所得環境の安定を図り、経済的基盤を確保する。若い世代が将来を見通して安心して仕事におけるキャリアとライフイベントの双方にチャレンジでき、さらには趣味等を含むプライベートとの両立もできる環境を整備する。若い世代の将来にわたる生活の基盤を確保し、若い世代が将来に希望を持って生きられる社会をつくることは、少子化の克服や貧困の解消・貧困の連鎖の防止のための鍵である。

 もとより、結婚、妊娠・出産、子育ては個人の自由な意思決定に基づくものである。また、家族の在り方や家族を取り巻く環境が多様化している。個人の決定に対し、特定の価値観を押し付けたり、プレッシャーを与えたりすることは決して決してあってはならない。多様な価値観・考え方を尊重することを大前提とし、どのような選択をしても不利になにならないようにすることが重要である。その上で、若い世代の意見に真摯に耳を傾け、その視点に立って、若い世代が、自らの主体的な選択により、結婚し、こどもを産み、育てたいと望んだ場合に、それそれぞれの希望に応じて社会全体で若い世代を支えていくことが少子化対策の基本である。

 こどもや若者が、発達の程度に応じて、性と生殖に関する健康と権利*12*、性情報への対処や互いを尊重し合う人間関係などを知る機会や場を充実していく。

 妊娠後やこどもが生まれた後の支援に加えて、これから結婚や妊娠を希望する方への希望に応じた支援を進める。

 共働き世帯が増加し、また、結婚・出産後も仕事を続けたい人が多くなっている中、その両立を支援していくことが重要であるため、共働き・共育てを推進し、家庭内において育児負担が女性に集中している実態を変え、男性の家事や子育てへの参画を促進する。固定的性別役割分担意識等を前提とした働き方や暮らし方を見直し、子育て当事者の女性と男性がともに、こどもと過ごす時間をつくることができ、仕事などで自己実現を図りつつ相互に協力しながら子育てをすることができ、自らのキャリアを犠牲にすることなく、むしろ子育て経験を仕事等に活かすなど自己実現を図りつつ、それを職場が応援し、地域社会全体で支援するよう取り組む。また、子育て当事者が、共働き・共育てを実現するために必要な情報や支援が得られるようにする。

 企業や地域社会、子育てを終えられた方々や子育てされていない方々も含めて、皆が参加して、こども・若者や子育てをめぐる問題は日本の未来に関わるという意識を持ち、こどもや家族が大事にされるよう、社会全体の構造や意識を変えていく。

(6)施策の総合性を確保するとともに、関係省庁、地方公共団体、民間団体等との連携を

重視する

 こども家庭庁は、こども大綱等を基に、こども政策推進会議やこども家庭審議会の知見を活用し、制度や組織による縦割りの壁を克服活用し関係省庁間で横の連携を密に行いつつ、政府全体のこども施策を強力に推進し、必要に応じて関係省庁に対し勧告権を行使することも含め、リーダーシップを発揮する。

 こども施策の具体的な実施を中心的に担っているのは地方公共団体であり、国は、地方公共団体と密接に連携しながら、地域の実情を踏まえつつ、国と地方公共団体の視点を共有しながら、こども施策を推進する。多くの地方公共団体において、地域の実情に応じた自治体こども計画が策定・推進されるよう、国において支援・促進する。

 若者が主体となって活動する団体、地域でこども・若者や子育てへの支援に取り組む団体や企業、地域で活動する民生・児童委員、青少年相談員や青少年指導員、保護司など、こどもや若者に関わる様々な関係者の協力なくして、こども・若者を支えていくことはできないため、これらの共助を支える。

 国際機関や国際社会における様々な取組と連携する。こどもの権利条約を誠実に遵守遵するとともに、同条約に基づいて設置された児童の権利委員会による見解やOECD、G7やG20における国際的な的な議論などを踏まえて国内施策を進めるとともに、我が国の取組を国際社会に積極的に発信するなど国際的な取組に貢献する。

第3 こども施策に関する重要事項

 「こどもまんなか社会」を実現するためのこども施策に関する重要事項について、こども・若者の視点に立って分かりやすく示すため、ここでは、こども・若者のライフステージ別に提示することとする。まず、特定のライフステージのみでなくライフステージを通して縦断的に実施すべき重要事項を示し、その次に、ライフステージ別に事見た重要事項を示す。続いて、子育て当事者への支援に関する重要事項を示す。

 施策を進めるに当たっては、それぞれのライフステージに特有の課題があり、それらが、こどもや若者、子育て当事者にとって、どのような意味を持ち、どのような点に留意すべきかを踏まえるとともに、特定のライフステージのみでなくライフステージ全体を通して対処すべき課題があるとの認識の下で取り組んでいくことが重要である。

 また、おとなとして自分らしく社会生活を送ることができるようになるまでのこどもの成長の過程は、その置かれた環境にも大きく依存し、こどもによって様々であり、かつ、乳幼児期からの連続性を持つものであること、自分らしく社会生活を送ることができるようになる時期も個人差があることに留意する必要がある。

 さらに、こども・若者や子育て当事者の課題や支援ニーズは、明確な定義を定めて線引きできるようなものは少なくグラデーション*13*であることが多い。そうしたニーズや課題は、こども・若者の生きづらさや子育てのしにくさとして、どのようなこども・若者や子育て当事者でも多かれ少なかれ感じているものであり、個別の課題や支援ニーズへの対応は、全てのこども・若者や子育て当事者の幸せに資するものであることに留意しつつ取り組むことが重要である。

 これらを踏まえ、こども基本法が掲げる基本理念及び上記「第2基本的な方針」の下で、次の重要事項に取り組む。なお、これらの重要事項に係る具体的な取組については、こども政策推進会議が「こどもまんなか実行計画」として取りまとめる。

1 ライフステージを通した重要事項

 特定のライフステージのみでなくライフステージを通して縦断的に実施すべきものとして、また、全てのライフステージに共通する事項として、以下の施策に取り組む。

(1)こども・若者が権利の主体であることの社会全体での共有等

 全てのこども・若者に対して、こども基本法の趣旨や内容について理解を深めるための情報提供や啓発を行うとともに、こどもの権利条約の認知度を把握しつつその趣旨や内容についての普及啓発に民間団体等と連携して取り組むことにより、自らが権利の主体であることを広く周知する。こどもの教育、養育の場においてにおいてこどもが自らの権利について学び、自らを守る方法や、困難を抱える時に助けを求め、回復する方法を学べるよう、こどもの権利に関する理解促進や人権教育を推進する。

 いじめ、体罰・不適切な指導、児童虐待、性暴力等、こどもの権利侵害を許さないという意識を社会に浸透させるとともに、困難を抱えながらもSOSを発信できていないこども・若者にアウトリーチするため、こども・若者やこども・若者に関わり得る全てのおとなを対象に、人権に対する理解を深め人権尊重の意識を高める人権啓発活動を推進する。

 保護者や教職員、幼児教育・保育や青少年教育に携わる者などこどもや若者の健やかな育ちや子育て当事者の支援に携わるおとなへの情報提供や研修等を推進し、また、広く社会に対しても、こども基本法やこどもの権利条約の趣旨や内容について広く情報発信を行うことにより、こども・若者が権利の主体であることを広く社会全体に周知する。

 こどもの権利が侵害された場合の救済機関として、地方公共団体が設置するオンブズパーソン等の相談救済機関の実態把握や事例の周知を行い、取組を後押しする。

(2)多様な遊びや体験、活躍できる機会づくり

(遊びや体験活動の推進、生活習慣の形成・定着)

 遊びや体験活動は、こども・若者の健やかな成長の原点である。例えば、こどもが遊びに没頭し、身体の諸感覚を使い、自らの遊びを充実、発展させていくことは、言語や数量等の感覚などの認知的スキルや、創造力や好奇心、自尊心、想像力や思いやり、やり抜く力、折り合いをつける力などの社会情動的スキルの双方を育むことに加え、多様な動きを身に付け、健康を維持することにつながり、ひいては、生涯にわたる幸せにつながる。こういった遊びや体験活動の重要性、学びへのつながりや、その機会を保障することの重要性を改めて認識した上で、国や地方公共団体、地域、学校・園、家庭、若者、民間団体、民間企業等が連携・協働して、こども・若者の全てのライフステージにおいて、年齢や発達の程度に応じて、自然体験、職業体験、文化芸術体験など多様な体験・外遊びを含む様々な遊びができるよう、青少年教育施設の充実を含め、地域資源も生かした遊びや体験の機会や場を意図的・計画的に創出する。地域や成育環境によって体験活動の機会に格差が生じないよう配慮する。

 こどもの読書活動は、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、想像力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で不可欠なものであり、家庭、地域、学校・園等における取組を推進する。

 こどもが基本的な生活習慣を身に付付けることができるよう、家庭、学校・園、地域、企業、民間団体等の協力を得ながら、全国的な普及啓発を推進する。

(こどもまんなかまちづくり)

 こどもや子育て当事者の目線に立ち、こどものための近隣地域の生活空間を形成する「こどもまんなかまちづくり」を加速化し、地域住民の理解を得た上で、こどもの遊び場とそのアクセスの確保や親同士・地域住民との交流機会を生み出す空間の創出などの取組を推進する。

 子育てにやさしい住まいの拡充を目指し、住宅支援を強化する。

(こども・若者が活躍できる機会づくり)

 こども・若者が、一人一人異なる長所を伸ばし、特技を磨き、才能を開花させ、世界や日本、地域社会の未来を切り開いていけるよう、異文化や多様な価値観、我が国の伝統・文化への理解、チャレンジ精神、外国語によるコミュニケーション能力を育成する教育や教養教育、留学生の派遣・受入れ、国内外の青少年の招聘(へい)・派遣等を通じた国際交流を推進する。

 持続可能な社会の創り手として活躍できるよう、持続可能な開発のための教育(ESD)を推進する。

 理数系教育やアントレプレナーシップ教育(起業家教育)、STEAM教育*14*等を推進し、イノベーションの担い手となるこども・若者や若手起業家等を育成する。

 特定分野に特異な才能のあるこども・若者についてについて、その抱える困難に寄り添いつつ、特異な才能を一層異な才能を一層伸ばすことができるよう、大学、研究機関、地域の民間団体等の連携・協働の下、応援する。

 在留外国人のこども・若者や海外から帰国したについて、就学支援や適応支援、日本語指導等、個々の状況に応じた支援を推進する。

(こども・若者の可能性を広げていくためのジェンダーギャップの解消)

 こども・若者が、性別にかかわらず、様々な可能性を広げていくことができるよう、学校教育と社会教育において男女平等の理念を推進する教育・学習の一層の充実を図る。性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解を深めるため、心身の発達に応じた教育及び学習の振興並びに広報活動等を通じた知識の着実な普及、相談体制の整備等の必要な施策を講ずるように努める。

 こどもに身近な存在である教職員等が固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)を持つことが持つことがないよう、男女共同参画を推進するための研修や周知啓発等の取組を推進する。

 女子中高生の理工系分野への興味・関心を高め適切に進路を選択することが可能となるような取組を支援するとともに、大学が企業等と連携して行う理工農系分野に進学する女子学生への修学支援の取組を促進する。

 様々な世代における固定的な性別役割分担意識の解消に資する取組に関する啓発や情報発信を進める。

(3)こどもや若者への切れ目のない保健・医療の提供

(プレコンセプションケアを含む成育医療等に関する研究や相談支援等)

 不妊、予期せぬ妊娠や基礎疾患を持つ方の妊娠、性感染症等への適切な相談支援や、妊娠・出産、産後の健康管理に係る支援を行うため、男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身に付け、栄養管理を含めた健康管理を行うよう促すプレコンセプションケア*15*の取組を推進するとともに、家庭生活に困難を抱える特定妊婦等を含む当事者が必要としている支援に確実につながることができるよう、切れ目のない支援体制を構築する。

 妊娠・出産、不妊、産後ケア等のライフイベントや女性特有の健康課題について、フェムテック*16*の利活用に係る支援を行う。

 国立成育医療研究センターに、「女性の健康」に関するナショナルセンター機能を持たせ、女性の健康や疾患に特化した研究やプレコンセプションケアを含む成育医療等に関する研究、相談支援、人材育成等を進める。

 成育医療等成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針(成育医療等基本方針)に基づく国民運動である「健やか親子21」の取組により、こどもの成長や発達に関して、子育て当事者である親や身近な養育者が正しい知識を持つことに加えて、学校や企業等も含めた社会全体で親やこどもの多様性を尊重し、見守り、子育てに協力していくことができるよう、国民全体の理解を深めるための普及啓発を促進する。その際、こどもの誕生前から幼児期までの重要性に鑑み、幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン*17*に基づく取組と適切に連携する。

 乳幼児期・学童期の健診・予防接種等の健康等情報の電子化及び標準化を推進する。また、母子保健情報のデジタル化と利活用を進める。

(慢性疾病・難病を抱えるこども・若者への支援)

 慢性疾病や難病を抱えるこども・若者について、児童福祉法及び難病の患者に対する医療等に関する法律に基づき医療費の助成を行うとともに、成人後も切れ目のない医療費助成が受けられるよう、指定難病の要件を満たす小児慢性特定疾病は速やかに指定難病に追加していく。また、その自立を支援するための相談支援や就労支援等を推進する。

 こどもホスピスの全国普及に向けた取組を進める。

(4)こどもの貧困対策

 今この瞬間にも、貧困によって、日々の食事に困るこどもや、学習の機会や部活動・地域クラブ活動に参加する機会を十分に得られないこども、進学を諦めざるを得ないなど権利が侵害された状況で生きているこどもがいる。こどもの貧困を解消し、貧困によるこうした困難を、こどもたちが強いられることがないような社会をつくる。こどもの貧困は、経済的な面だけではなく、心身の健康や衣食住、進学機会や学習意欲、前向きに生きる気持ちを含め、こどもの権利利益を侵害するとともに、社会的孤立にもつながる深刻な課題であり、その解消に全力をあげて取り組む。貧困及び貧困の連鎖によってこどもたちの将来が閉ざされることは決してあってはならない。こどもの貧困の背景には様々な社会的な要因があることを国民全体で広く共有し、こどもの現在と将来が生まれ育った環境によって左右されることのないよう貧困を解消し、貧困の連鎖を断ち切る必要がある。地域や社会全体で課題を解決するという認識の下、教育の支援、生活の安定に資するための支援、保護者の就労の支援、経済的支援を進める。どのような状況にあるこどもであっても、こうした支援を届けることにより、貧困を解消し、貧困の連鎖を断ち切ることは、まずもって一人一人の豊かな人生を実現することにつながることに加え、我が国の将来を支える人材が育つことにより、今後の我が国の成長・発展にもつながるものとも言える。

 保護者の所得など家庭の状況がこどもの学力や体験の機会に影響を与えるなど、教育における格差の問題が指摘されている。全てのこども・若者が、家庭の経済状況にかかわらず、質の高い教育を受け、能力や可能性を最大限に伸ばして、それぞれの夢に挑戦できるようにする。学校を地域に開かれた、そして、地域につながっていくプラットフォームと位置付け、地域における関係機関・団体やスクールソーシャルワーカーが、要保護児童対策地域協議会、子ども・若者支援地域協議会等の枠組みを活用して連携し、苦しい状況にあるこどもや若者を早期に把握し、支援につなげる体制を強化する。また、家庭の経済状況が理由で学校生活が制約されたり進路が狭まったりすることなく、全てのこどもが、夢や希望を持ち、挑戦できるよう、将来の貧困の予防や、教育の機会均等を保障する観点から、幼児教育・保育の無償化、義務教育段階の就学援助、高校生等への修学支援、大学生等への修学支援により、幼児期から高等教育段階まで切れ目のない教育費負担の軽減を図るとともに、高校中退を防止するための支援や高校中退後の継続的なサポートを強化する。さらに、こどもが安心して多様な体験や遊びができる機会や、学習する機会を確保し、必要な場合に支援につなげるための取組を支援する。成人期への移行期に親からのネグレクト等により必要な援助が受けられず困難な状況にある学生等の若者にも目配りする。

 貧困の状況にあるこども・若者や子育て当事者が社会的孤立に陥ることのないよう、親の妊娠・出産期からの相談支援の充実や居場所づくりなど、生活の安定に資するための支援を進める。生活保護法や生活困窮者自立支援法、母子及び父子並びに寡婦福祉法、児童扶養手当法等の関連法制を一体的に捉えて施策を推進する。

 保護者の就労支援において、子育て当事者の安定的な経済基盤を確保する観点から、単に職を得るにとどまらず、所得の増大、職業生活の安定と向上のための支援を進める。仕事と両立して安心してこどもを育てられる環境づくりを進める。ひとり親家庭はもちろんのこと、ふたり親家庭についても生活が困難な状態にある家庭については、保護者の状況に合ったきめ細かな就労支援を進めていく。

 子育て当事者の日々の生活を安定させる観点から、様々な支援を組み合わせて経済的支援の効果を高めるとともに、必要な世帯へ支援の利用を促していく。

 こどもの貧困は家庭の自己責任ではなく社会全体で受け止めて取り組むべき課題であるとの認識の下、国、地方公共団体、民間の企業・団体等の連携・協働により、こどもの貧困に対する社会の理解を促進する。

(5)障害児支援・医療的ケア児等への支援

 こども基本法に加えに加え、障害者の権利に関する条約の理念を踏まえ、障害のあるこども・若者、発達に特性のあるこども・若者の地域社会への参加・包容(インクルージョン)を推進し、それぞれのこども・若者の置かれた環境やライフステージに応じて、一般の子育て支援との連続の中で、その発達や将来の自立、社会参加を支援する。

 特別児童扶養手当等の経済的支援を行うとともに、こどもと家族に寄り添いながら個々の特性や状況に応じた質の高い支援の提供を進める。

 障害の有無にかかわらず、安心して共に暮らすことができる地域づくりを進めるため、地域における障害児支援の中核的役割を担う児童発達支援センターの機能強化や保育所等への巡回支援の充実を図るなど、地域における障害児の支援体制の強化や保育所等におけるインクルージョンを推進する。

 医療的ケア児、聴覚障害児など、専門的支援が必要なこどもや若者とその家族への対応のための地域における連携体制を強化する。

 こどもや若者本人のみならず、保護者やきょうだいの支援を進める。障害や発達の特性を早期に発見・把握し、適切な支援・サービスにつなげていくとともに、乳幼児期・学童期・思春期の支援から一般就労や障害者施策への円滑な接続・移行に向けた準備を、保健、医療、福祉、保育、教育、労働など関係者の連携の下で早い段階から行っていく。

 特別支援教育については、障害のあるこどもと障害のないこどもが可能な限りともに安全・安心に過ごすための条件・環境整備と、一人一人の教育的ニーズに応じた学びの場の整備・充実を両輪として、インクルーシブ教育システム*18*の実現に向けた取組を一層進める。障害のあるこども・若者の生涯にわたる学習機会の充実を図る。

(6)児童虐待防止対策と社会的養護の推進及びヤングケアラーへの支援

(児童虐待防止対策等の更なる強化)

 児童虐待は、こどもの心身に深い傷を残し、成長した後においても様々な生きづらさにつながり得るものであり、どのような背景や思想信条があっても許されるものではない。一方で、虐待に至った親にも自らの被虐待経験や、貧困、疾病、障害等の様々な困難が背景にある場合が多いという現実もあり、子から親になった養育者自身が置かれている困難に対する支援を社会全体で提供することにより、どのような困難があってもこどもへの虐待につながらないようにしていく必要がある。虐待相談対応件数の増加など、子育てに困難を抱える世帯がこれまで以上に顕在化してきている状況等を踏まえ、子育てに困難を抱える世帯に対する包括的な支援体制の強化を行う。

 虐待は決して許されるものではないが、あらゆる子育て当事者が無縁ではない認識の下、不適切な養育につながる可能性のある家族の支援ニーズをキャッチし、こどもや家庭の声を、当事者の文脈を尊重して受け止め、子育ての困難や不安を分かち合うことで、子育てに困難を感じる家庭、こどものSOSをできる限り早期に把握し、具体的な支援を行う必要がある。このため、こども家庭センターの設置や訪問家事支援等の家庭支援、こどもや親子の居場所支援の推進等を行うとともに、市町村の支援の中心となるこども家庭センターが、地域の保育所、学校などや支援の担い手である民間団体を含め、要保護児童対策地域協議会協などの地域のネットワークと一体となって継続的に支え、虐待予防の取組を強化する。

 また、虐待による死亡事例(心中以外)の約半数を0歳児が占め、さらにその多くを月齢0カ月児が占めている現実を踏まえ、孤立した環境の中で予期せぬ妊娠に悩む若年女性等に対する相談・日常生活の支援や関係機関との調整等の支援の強化に取り組むともに、こうした支援の存在が、予期せぬ妊娠に悩む若年女性などの支援を必要としている本人に届くよう、相談窓口の周知などに取り組む。

 さらに、こどもにとって不安が大きく、ケアの困難度も高いという一時保護の性質を十分に踏まえ、こどもの状況等に応じた個別ケアが可能となるよう一時保護所の環境改善を進めるとともに、委託一時保護も含めてこどもの権利擁護を推進する。また、虐待等により家庭から孤立した状態のこども・若者がそのニーズに合わせて必要な支援を受けられるよう取り組む。

 児童相談所が一時保護や措置を行う場合等においては、こどもの最善の利益を保障しつつこどもの意見又は意向を十分に勘案した判断を行うために、児童福祉法に基づく児童相談所等による意見聴取を適切に実施するとともに、こどもの意見表明やこどもの権利擁護を実現できる環境整備を積極的に推進する。また、一時保護開始時の司法審査の円滑な導入を図る。

 また、措置解除等に際して、親子の生活の再開や傷ついた親子関係の修復などのために、親子関係の再構築支援を推進する。

 性被害の被害者等となったこどもからの聴取における関係機関の連携を推進し、二次被害を防止する観点から、こどもの精神的・身体的な精神的・身体的な負担軽減等に取り組む。また、こどもからの聴取を適切に行えるよう、聴取を行う側の知見や技術の向上を図るとともに、こどもが安心して話すことができる環境整備を進める。

 こども家庭福祉分野は、こうした虐待を受けたこどものトラウマ等を含めたケアや要支援・要保護家庭への相談支援を含むものであり、これに携わる者にはこどもと家庭の双方に対する高い専門性が求められる。このため、新たな認定資格である「こども家庭ソーシャルワーカー」等の専門資格の取得促進に取り組むとともに、市町村及び児童相談所の体制強化を図るための人材の採用・育成・定着支援、専門人材の活用促進等を進める。また、支援現場の業務効率化のためのICT化を推進する。

(社会的養護を必要とするこども・若者対する支援)

 社会的養護を必要とする全てのこどもが適切に保護され、養育者との愛着関係を形成し、心身ともに健やかに養育されるよう、家庭での養育が困難又は適当でない場合は、パーマネンシー保障を目指して、養育環境の改善、親子関係再構築や家庭復帰の支援、親族等による養育(親族等による里親養育・普通養子縁組含む)への移行支援、特別養子縁組の判断・支援に取り組みながら、家庭養育優先原則に基づき、こどもが「家庭における養育環境と同様の養育環境」において継続的に養育されるよう、里親支援センターなどの関係機関の支援等を通じた社会的養護の受け皿としての里親やファミリーホームの確保・充実を進めるとともに、家庭や里親等での養育が適当でない場合は、「できる限り良好な家庭的環境」において、養育されるよう、児童養護施設等の小規模化・地域分散化等の環境改善や、その人材確保に努める。あわせて、児童養護施設等の多機能化・高機能化を図る。また、社会的養護の下にあるこどもの権利保障や支援の質の向上を図る。これらの際、社会的養護を必要とするこどもの声に耳を傾け、その意見を尊重した改善に取り組むとともに、家庭養育優先原則とパーマネンシー保障の理念に基づく支援の在り方に留意して、児童相談所におけるケースマネージメントを推進する。

 施設や里親等の下で育った社会的養護経験者は、施設退所後等において、進学・就労や自立した生活を営む上で、家族からのサポートが期待できないといった背景から、様々な困難に直面している場合が多いことを踏まえ、多職種・関係機関の連携による自立支援を進めるとともに、一人一人段階を経て自立をしていけるような地域社会とのつながりをもてるよう支援する。社会的養護の経験はないが様々な困難に直面している若者についても支援対象として位置付けて支援に取り組む。

(ヤングケアラーへの支援)

 本来おとなが担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこども、いわゆるヤングケアラーの問題は、ケアが日常化することで学業や友人関係等に支障が出てしまうなど、個人の権利に重大な侵害が生じているにもかかわらず、こども本人や家族に自覚がない場合もあり、顕在化しづらいことから、福祉、介護、医療、教育等の関係者が情報共有・連携して、早期発見・把握し、こどもの意向に寄り添いながら、必要な支援につなげていく。家族の世話などに係る負担を軽減又は解消するため、家庭に対する適切なアセスメントにより世帯全体を支援する視点を持った対策を推進する。

(7)こども・若者の自殺対策、犯罪などからこども・若者を守る取組

(こども・若者の自殺対策)

 小中高生の自殺者数が増加傾向にあり、危機的な状況となっている。誰も自殺に追い込まれることのないよう、生きることの包括的な支援として、こども・若者への自殺対策を強力に推進する。こども・若者の自殺対策については、自殺に関する情報の集約・分析等による自殺の要因分析や、SOSの出し方や心の危機に陥った友人からのSOSの受け止め方に関する教育を含む自殺予防教育、全国展開を目指した1人1台端末の活用による自殺リスクの早期発見、電話・SNS等を活用した相談体制の整備、都道府県等における多職種の専門家で構成される対応チームの設置促進等による自殺予防への的確な対応、遺されたこどもへの支援、こども・若者の自殺が増加する傾向にある長期休暇明け前後の集中的な啓発活動など、体制強化を図りながら、自殺総合対策大綱*19*及びこどもの自殺対策緊急強化プラン*20*に基づく総合的な取組を進めていく。

(こどもが安全に安心してインターネットを利用できる環境整備)

 社会の情報化が進展する中、こどもが情報活用能力を身に付け、情報を適切に取捨選択して利用するとともに、インターネットによる情報発信を適切に行うことができるようにすることが重要な課題となっている。また、こどものインターネット利用の低年齢化が進む中、こどもの健やかな成長を著しく阻害する有害情報*21*も氾濫し、犯罪被害につながるといった重大な問題も起きている。これらのことを踏まえ、こどもが主体的にインターネットを利用できる能力習得の支援や、情報リテラシーの習得支援、こどもや保護者で等に対する啓発、フィルタリングの利用促進*22*、ペアレンタルコントロール*23*による対応の推進など、こどもが安全に安心してインターネットを利用できる環境整備に取り組む。

(こども・若者の性犯罪・性暴力対策)

 こども・若者に対する性犯罪・性暴力は、被害当事者の心身に長期にわたり有害な影響を及ぼす極めて悪質な行為である。年齢や性別にかかわらず、また、どのような状況に置かれたこども・若者であっても、性被害に遭うことはあってはならないとの認識の下、こども・若者への加害の防止、相談・被害申告をしやすくする取組、被害当事者への支援、継続的な啓発活動の実施等、総合的な取組を進めていく。

 生命を大切にし、こどもを性暴力・性犯罪の加害者、被害者、傍観者にさせないための学校・園における生命(いのち)の安全教育の全国展開を図る。

 こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組み(日本版DBS)の導入に向けて取り組む。

 こども・若者の性被害は潜在化・深刻化しやすいことなどを踏まえ、相談窓口の一層の周知やこども・若者が相談しやすいSNS等の活用を推進するとともに、地域における支援体制の充実のための取組を推進する。

(犯罪被害、事故、災害からこどもを守る環境整備)

 こどもが一生に残る傷を負う事件やこどもが生命を失う事事故が後を絶たず、こどもの生命・尊厳・安全を脅かす深刻な状況があること等を踏まえ、こどもの生命を守り、犯罪被害や事故、災害からの安全を確保することが全てのこどもが健やかに育つための大前提であるとの認識の下、有害環境対策、防犯・交通安全対策、製品事故防止、防災対策等を進める。

 こども・若者が、犯罪、事故、災害等から自らと他者の安全を守ることができるよう、体験的な学びを含め、発達の程度に応じて、体系的な安全教育を推進する。こどもの安全に関する保護者に対する周知啓発を進める。

 チャイルド・デス・レビュー*24*(CDR:Child Death Review)の体制整備に必要な検討を進める。

(非行防止と自立支援)

 こども・若者の非行防止や、非行・犯罪に及んだこども・若者とその家族への相談支援、自立支援を推進する。

 学校や警察等の地域の関係機関・団体の連携を図る。

 少年院や刑事施設における矯正教育や改善指導、児童自立支援施設における生活指導や自立支援、社会復帰に資する就労支援の充実を図る。

 保護観察の対象となったこども・若者に対する処遇の強化を図るとともに、保護司などとの連携の強化や体制の充実を図る。

 社会全体として非行や犯罪に及んだこどもや若者に対する理解を深め、育ちを見守る社会気運の向上を図る。


2 ライフステージ別の重要事項

(1) こどもの誕生前から幼児期まで

 こどもの誕生前から幼児期までは、こどもの将来にわたるウェルビーイングの基礎を培い、人生の確かなスタートを切るための最も重要な時期であるとともに、この時期への社会的投資が次代の社会の在り方を大きく左右するため、社会全体にとっても極めて重要な時期である。

 また、乳幼児は多くの時間を家庭や地域の中で過ごし、幼稚園・保育所・認定こども園への就園状況も異なるなど、育ちの環境は多様である。その多様性を尊重しつつ、保護者・養育者の「子育て」を支えることだけでなく、「こどもの育ち」に係る質にも社会がしっかりと目を向け、保護者・養育者の就労・養育状況を含むこどもの置かれた環境等に十分に配慮しつつ、ひとしく、切れ目なく、ウェルビーイングの向上を図ることが重要である。乳児期におけるしっかりとした愛着形成を基礎とした情緒の安定や他者への信頼感の醸成、幼児期における他者との関わりや基本的な生きる力の獲得を通じて、一人一人のこどもが、かけがえのない個性ある存在として認められ、自己肯定感をもって成長することができるようにしなければならない。

 これらを踏まえ、後述の「3 子育て当事者への支援に関する重要事項」と併せ、以下の施策に取り組む。

(妊娠前から妊娠期、出産、幼児期までの切れ目ない保健・医療の確保)

 不妊症や不育症、出生前検査など妊娠・出産に関する正しい知識の普及や相談体制の強化を図る。

 出産費用(正常分娩)の保険適用の導入や安全・安心な無痛分娩の推進など出産に関する支援等の更なる強化について検討を進める。

 周産期医療の集約化・重点化を推進し、地域の周産期医療体制を確保する。周産期医療の関係者と成育過程にある者に対する医療、保健、福祉等の関係者等との連携体制の構築を図る。あわせて、里帰り出産を行う妊産婦への支援や、医療と母子保健との連携を推進する。

 産後ケア事業の提供体制の確保や養育者のメンタルヘルスに係る取組を進めるなど、産前産後の支援の充実と体制強化を行う。

 児童福祉と母子保健の一体的な相談支援等を行うこども家庭センターにおいて、産前産後から子育て期を通じた切れ目のない継続的な支援を提供できる体制を構築する。妊娠期から、身近な場所で相談に応じ、多様なニーズに応じた支援につなぐ伴走型相談支援と経済的支援を一体として実施する「出産・子育て応援交付金」の継続的な実施に向けての制度化の検討を進め、着実に実施する。

 予期せぬ妊娠等に悩む若年妊婦等が必要な支援を受けられるよう、乳児院や母子生活支援施施設、NPOなどの民間団体とも連携しながら、取組を進める。

 乳幼児の発育・発達健康の維持・増進、疾病の予防の観点から、新生児マススクリーニング等を推進する。また、これらの観点に加え、悩みを抱える保護者等を早期に発見し、相談支援につなげ、児童虐待の予防や早期発見にも資するよう、乳幼児健診等を推進する。

 先天性代謝異常等を早期に発見する新生児へのマススクリーニング検査の拡充に向けた検証を進めるとともに、新生児聴覚検査など聴覚障害の早期発見・早期療育に資する取組を進める。

(こどもの誕生前から幼児期までのこどもの成長の保障と遊びの充実)

 家庭、幼稚園、保育所、認定こども園、こどもの育ちに関する関係機関、地域を含めたこどもの育ちを支える場を始めとして、社会全体の全ての人と共有したい理念や基本的な考え方を示す羅針盤である、幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョンに基づき、社会の認識の共有を図りつつ、政府全体の取組を強力に推進する。これにより、こどもの心身の状況や、保護者・養育者の就労・養育状況を含むこどもの置かれた環境等に十分に配慮しつつ、こどもの誕生前から幼児期までの育ちをひとしく、切れ目なく保障する。

 待機児童対策に取り組むとともに、親の就業の状況にかかわらず、特に3歳未満児の子育て当事者が地域の中で孤立しないよう、認定こども園、保育所、幼稚園、地域子育て支援拠点など地域の身近な場を通じた支援を充実する。幼稚園、保育所、認定こども園のいずれにも通っていないこどもの状況を把握し、必要な教育・保育、子育て支援サービス等の環境整境整備を進め、利用につなげていく。あわせて、病児保育の充実を図る。

 幼児期の教育・保育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることから、幼稚園、保育所、認定こども園の施設類型を問わず、安全・安心な環境の中で、幼児教育・保育の質の向上を図ることを通じて、障害のあるこどもや医療的ケア児、外国籍のこどもをはじめ様々な文化を背景にもつこどもなど特別な配慮を必要とするこどもを含め、一人一人のこどもの健やかな成長を支えていく。

 地域や家庭の環境にかかわらず、全てのこどもが、格差なく質の高い学びへ接続できるよう、学びの連続性を踏まえ、幼保小の関係者が連携し、こどもの発達にとって重要な遊びを通した質の高い幼児教育・保育を保障しながら、幼児教育・保育と小学校教育の円滑な接続の改善を図る。

 こどもの育ちそのものと密接不可分な保護者・養育者支援が重要であり、保育士、保育教諭、幼稚園教諭幼稚園教諭等の人材育成・確保・処遇改善や現場の負担軽減、職員配置基準の改善を進める。

(2)学童期・思春期

 学童期は、こどもにとって、身体も心も大きく成長する時期であり、自己肯定感や道徳性、社会性などを育む時期である。自らのことを客観的に捉えられるようになり、善悪の判断や規範意識を形成するとともに、集団生活で様々な課題に直面する中で、自らの役割や責任を自覚し、友人関係や遊びを通じて協調性や自主性を身に付ける。学童期のこどもが、安全・安心が確保された場で、小さな失敗も経験しながら、直面した課題に全力で取り組んで達成する成功体験を重ね、自己肯定感を高めることができる環境を整えていくことが重要である。

 思春期は、性的な成熟が始まり、それに伴って心身が変化し、自らの内面の世界があることに気づき始め、他者との関わりや社会との関わりの中で、自分の存在の意味、価値、役割を考え、アイデンティティを形成していく時期である。一方で、自己の存在に対しての様々な葛藤を抱えたり、学業や家族・友人との関係や恋愛などに悩んだりする繊細な時期でもある。思春期のこどもが、自己肯定感を高めることができ、成育環境などを理由に自らの進路の選択が制約されることがないよう支えていくことが望まれる。

 これらを踏まえ、以下の施策に取り組む。

(こどもが安心して過ごし学ぶことのできる質の高い公教育の再生等)

 こどもにとって、学校は単に学ぶだけの場ではなく、安全に安心して過ごしながら、他者と関わりながら育つ、こどもにとって大切な居場所の一つであり、こどもの最善の利益の実現を図る観点から、また、格差を縮小し、社会的包摂を実現する観点から、公教育を再生させ、学校生活を更に充実したものとする。

 住んでいる地域に関わらず、全てのこどもが、自分の良さや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り開き、持続可能な社会の創り手となることができるよう、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実する。これまでの学校教育が果たしてきた、①学習機会と学力の保障、②社会の形成者としての全人的な発達・成長の保障、③安全・安心な居場所・セーフティネットとしての身体的、精神的な健康の保障の3つを学校教育の本質的な役割として継承しつつ、こども・若者、保護者、教育現場、地方公共団体(教育委員会及び首長部局)などのステークホルダーからの意見聴取や対話を行い、施策に反映していきながら、取組を着実に進めていく。

 学校における働き方改革や処遇改善、指導・運営体制の充実の一体的推進、1人1台端末やデジタル教科書の活用などを進め、一人一人のこどもの可能性を伸ばしながら、教職員が本来求められる役割に対してその力を存分に発揮できるようにしていく。

 インクルーシブ教育システムを推進し、特別支援教育の充実を図る。

 コミュニティ・スクールと地域学校協働活動を一体的に進め、こどもを地域全体で育む地域とともにある学校づくりと、地域やこどもをめぐる課題解決のためのプラットフォームにもなり得る学校を核とした地域づくりを推進する。

 将来にわたりこども・若者がスポーツ・文化芸術に継続して親しむことができるよう、地域の実情に応じて、部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行に向けた地域のスポーツ・文化芸術環境の整備を進める。

 在外教育施設における教育の振興に関する法律の基本理念等を踏まえ、在外教育施設の魅力を高め、多様なこどものニーズや施設ごとの特性を踏まえた「選ばれる在外教育施設」づくりを推進する。

 社会形成に参画する態度や規範意識、思いやりの心を育てるため、道徳教育や情報モラル教育を推進する。

 体育の授業の充実を図るとともに、学校や地域におけるこどもの体力の向上のための取組を推進する。

 こども・若者の健康の保持増進を担う養護教諭の支援体制の推進や、健康診断等の保健管理や薬物乱用防止教育など、学校保健を推進する。

 学校給食の普及・充実や、栄養教諭を中核とした、家庭、学校、地域等が連携した食育の取組を推進する。学校給食無償化の課題の整理等を行う。

(居場所づくり)

 全てのこども・若者が、年齢を問わず、相互に人格と個性を尊重しながら、安全に安心して過ごせる多くの居場所を持つことができるよう、社会全体で支えていくことが必要である。もとよりこども・若者の「居場所」とは、こども・若者が遊んだり、何もしなかったり、好きなことをして過ごす場所や時間、人との関係性全てが「居場所」になり得るものであるが、その場を居場所と感じるかどうかはこども・若者本人が決めるものであるという前提に立って居場所づくりを推進する。その際、こどもの居場所を新たにつくっていくことに加え、すでに多くのこども・若者の居場所となっている児童館、子ども会、こども食堂や学習支援の場など地域にある多様な居場所、公民館や図書館などの社会教育施設などについても、こども・若者にとってよりよい居場所となるよう取り組む。こうした点を含め、誰一人取り残さず、こども・若者の視点に立った多様な居場所づくりが行われるよう、こども居場所づくり関する指針*25*に基づき、こども・若者の声を聴きながら居場所づくりを推進する。

 全てのこどもが放課後を安全・安心に過ごし、多様な体験・活動を行うことができるよう、放課後のこどもの遊びと生活の場である放課後児童クラブの受け皿整備を着実に進め、放課後児童クラブの安定的な運営を確保し、待機児童の早期解消を図るとともに、学校施設の利用促進の観点も含め首長部局・教育委員会等の連携を促進する等の放課後児童対策に取り組む。

(小児医療体制、心身の健康等についての情報提供やこころのケアの充実)

 こどもが地域において休日・夜間を含めいつでも安心して医療サービスを受けられるよう、小児医療体制の充実を図る。

 小児医療の関係者と成育過程にある者に対する医療、保健、福祉、教育、教育等の関係者等との連携体制の構築を図り、医療的ケア児やその家族も含めた支援体制を確保する等、地域のこどもの健やかな成育の推進を図る。

 こども・若者が、自らの発達の程度に応じて、心身の健康、性に関する正しい知識を得て、SOSを出したり、セルフケアをしたり、自らに合ったサポート自らに合ったサポートを受けたりできるよう、教育委員会と保健部局が連携し、学校や保健所等において、性に関する科学的知識に加え、性情報への対処や互いを尊重し合う人間関係など様々な観点から、医療関係者等の協力を得ながら、性と健康に関する教育や普及啓発・相談支援を進める。

 予期せぬ妊娠、性感染症等への適切な相談支援等を進める。

(成年年齢を迎える前に必要となる知識に関する情報提供や教育)

 こども・若者が社会の中で自立し、他者と連携・協働しながら、社会を生き抜き、地域の課題解決を社会の構成員として主体的に担う力を発達の程度等に応じて身に付ける身に付けることができるよう、主権者教育を推進する。

 こども・若者が消費者の権利と責任について理解するとともに、主体的に判断し責任を持って行動できるよう、教育機関や関係団体との連携・協働による消費者教育の推進を図る。金融経済教育の機会の提供に向けた取組を推進するための体制を整備し、金融経済教育の更なる充実を通じて、こども・若者の金融リテラシーの向上に取り組む。

 様々な仕事・ロールモデルに触れる機会、社会人との交流の場、乳幼児と触れ合う機会などを創出し、こども・若者が自らのライフデザインを描けるよう、意識啓発や情報提供に取り組む。

 こども・若者が、学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けることに資する取組を推進する。職場体験・インターンシップ等の体験的な学習活動を効果的に活用する。こども・若者の自己実現につながる働き方の選択等に資するよう、高校等における労働関係法令の教育の支援に取り組む。社会保障の意義や仕組みを理解し、必要な制度を活用できるようにするとともに、変化する社会における社会保障について当事者意識を持てるようにするため、社会保障教育の取組を一層推進する。

(いじめ防止)

 いじめは、こどもの心身に深刻な影響を及ぼす許されない行為であり、社会総がかりでいじめ問題に取り組む。首長部局と教育委員会が連携し、国公私立の全ての学校において、いじめ防止対策推進法に基づいた対応の徹底を図るとともに、道徳科や学級・ホームルーム活動等におけるこども主体でのいじめ防止に資する取組の実施、いじめの積極的な認知と早期の組織的対応、相談先の確保、関係機関等との連携の推進など、いじめ防止対策を強化する。加えて、いわゆる「ネットいじめ」に関する対策の推進を図る。また、全てのこどもが自分の大切さとともに他の人の大切さを認めることができるよう働きかけるなど、いじめの未然防止教育を推進する。

 いじめの被害児が加害児でもあったり、加害の背景に虐待体験があったり、その保護者にも虐待体験があったり経済的困難の問題があったりするなど、その実態や背景の把握、解決に向けた対応は容易ではないことも多く、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを交えた多面的な見立てと横断的かつ縦断的な手立てや支援を講じる。

 地方公共団体における総合教育会議等を活用した日常的な首長部局と教育委員会との連携促進や、首長部局でいじめ相談から解消まで取り組むなど地域におけるいじめ防止対策の体制構築、重大ないじめ対応に係る第三者性の向上、警察等の外部専門機関との連携促進等に取り組む。

 いじめの重大事態について、国に情報を収集し、文部科学省とこども家庭庁とで情報を共有しつつ、学校設置者に必要な支援を行うとともに、重大事態調査の結果について分析等を行い、重大事態調査の適切な運用やいじめ防止対策の強化を図る

(不登校のこどもへの支援)

 不登校については、本人・家庭・学校に関わる様々な要因が複雑に関わっている場合が多く、不登校はどのこどもにも起こり得るものであり、不登校というだけで問題行動であると受け取られることのないように配慮することを基本的な考え方とする教育機会確保法の趣旨を踏まえ、全てのこどもが教育を受ける機会を確保できるよう、学校内外の教育支援センターの設置促進・機能強化を図り、学びの多様化学校(いわゆる多様化学校特例校)を全都道府県・政令指定都市に設置するとともに、将来的には全国に300校の設置を目指す。

 スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーなどの専門家にいつでも相談できる環境の整備、ICT等を活用した学習支援、NPOやフリースクール等との連携など、不登校のこどもへの支援体制を整備し、アウトリーチを強化する。

 不登校のこどもの意見も聞きながら、不登校傾向を含めた不登校のこどもの数の増加に係る要因分析を行う。

(校則の見直し)

 校則は、各学校がそれぞれの教育目標を達成するために、学校や地域の状況に応じて、必要かつ合理的な範囲内で定めるものであり、校則の見直しを行う場合にはその過程でこどもや保護者等の関係者からの意見を聴取した上で定めていくことが望ましいことから、学校や教育委員会等に対してその旨を周知するとともに、各地の好事例の収集、周知等を行う。

(体罰や不適切な指導の防止)

 体罰はいかなる場合も許されものではなく、学校教育法で禁止されている。また、生徒指導提要*26*等においても、教職員による体罰や不適切な指導等については、部活動を含めた学校教育全体で、いかなるこどもに対しても決して許されないと示されていることを踏まえ、教育委員会等に対する上記趣旨の周知等、体罰や不適切な指導の根絶に向けた取組強化を推進する。

(高校中退の予防、高校中退後の支援)

 高校中退を予防するため、学習等に課題を抱える高校生の学力向上や進路支援、キャリア教育の充実、課題に応じて適切な支援につなげるスクールソーシャルワーカーの配置推進など、高校における指導・相談体制の充実を図る。

 高校を中退したこどもが高校卒業程度の学力を身に付けるけることができるよう、学習相談や学習支援を推進する。地域若者サポートステーションやハローワーク等が実施する支援の内容について、学校が高校を中退したこどもに情報提供を行うなど、就労支援や復学・就学のための取組の充実を図る。高校を中退したこどもの高校への再入学・学びを支援する。

(3)青年期

 青年期は、心理的、社会的に発達し、成人期へと移行していくための準備期間として、大学等への進学や就職に伴い新たな環境に適応し、専門性や職業性を身に付け、将来の夢や希望を抱いて自己の可能性を伸展させる時期である。また、人生における様々なライフイベンが重なる時期である。自らの価値観や生き方を確立しようとするが、同時に、社会的な役割や責任に対する不安なども感じることがある。

 青年期の若者が、自らの適性等を理解した上で、職業や進学などのライフイベントに係る選択を行うことができ、その決定が尊重されるような取組や若者に対する相談支援が求められる。

これらを踏まえ、以下の施策に取り組む。

(高等教育の修学支援、高等教育の充実)

 若者が、家庭の経済状況にかかわらず、大学等の高等教育機関等に進学するチャンスを確保できるよう、高等教育段階の修学支援を着実に実施する。

 大学等に進学した若者が、組織的・体系的な質の高い教育を受けることができ、主体的な学修を進められるよう、大学等において教育内容・方法の改善を進める。

 在学段階から職業意識の形成支援を行うとともに、学生のキャリア形成支援やライフプランニング教育を推進する。

 大学等における学生の自殺対策などの取組や、障害のある学生への支援を推進する。

 青年期の社会人を始めとする幅広い学習者の要請に対応するための大学等における生涯学習の取組を促す。

(就労支援、雇用と経済的基盤の安定のための取組)

 就職活動段階においては、マッチングの向上等を図ることで、不本意な早期離職を抑制しながら、キャリアの早い段階から新規学卒就職者等が集中的に職業経験を積んで、その後のキャリア形成のための基盤となる職業能力を培うことができるよう支援を行う。

 離職する若者が早期に再就職し、その持てる能力を発揮できるよう、キャリア自律に向け支援を行う。また、ハローワークや地域若者サポートステーション等による若者への就職支援に取り組む。

 全国どの地域に暮らす若者にとっても、経済的な不安がなく、良質な雇用環境の下で、将来への展望を持って生活できるよう、地方創生に向けた取組を促進する。特に、地方から若者、中でも女性が都市部に流出していることを踏まえつつ、地方において若者や女性が活躍できる環境を整備することが必要であり、地方における分厚い中間層の形成に向けて、国内投資の拡大を含め、持続的に若い世代の所得が向上し、将来に希望を感じられるような魅力的な仕事を創っていくための取組を支援していく。

 大きな社会経済政策として、最重要課題である「賃上げ」に取り組む。新しい資本主義の下、持続的な成長を可能とする経済構造を構築する観点から、「質の高い」投資の促進を図りつつ、「成長と分配の好循環」(成長の果実が賃金に分配され、セーフティネット等による暮らしの安心の下でそれが消費へとつながる)と「賃金と物価の好循環」(企業が賃金上昇やコストを適切に価格に反映することで収益を確保し、それが更に賃金に分配される)という「2つの好循環」の実現を目指す。

 「一人ひとりが自らのキャリアを選択する」時代となり、働き方が大きく変化する中で、労働者の主体的な選択による職業選択や労働移動が、企業と経済の更なる成長につながり、構造的賃上げに資するものとなるよう、リ・スキリングによる能力向上支援、個々の企業の実態に応じた職務給の導入、成長分野への労働移動の円滑化という三位一体の労働市場改革を加速する。

 賃上げの動きを全ての働く人々が実感でき、将来への期待も含めて、持続的なものとなるよう、L字カーブ*27*の解消などを含め、男女ともに働きやすい環境の整備、「同一労働同一賃金」の徹底と必要な制度見直しの検討、希望する非正規雇用労働者の正規化を進める。

 いわゆる「年収の壁(106万円/130万円)」については、壁を意識せずに働くことが可能となるよう、取り組む。

(結婚を希望する方への支援、結婚に伴う新生活への支援)

 結婚の希望が叶えられない大きな理由としては、経済的事情や仕事の問題などのほか「適当な相手にめぐり会わないから」であり、多くの地方公共団体等において行われている出会いの機会・場の創出支援について、効果の高い取組を推進し、より広域での展開、官民連携、伴走型の支援を充実させる。

 結婚に伴う新生活のスタートアップへの支援を推進する。

(悩みや不安を抱える若者やその家族に対する相談体制の充実)

 子ども・若者総合相談センターなど、ニートやひきこもりの状態にあったり、進路や人間関係等に悩みや不安を抱えていたりする若者やその家族に対する相談体制の充実を図る。

 進学や就職、人間関係について悩みや不安を抱えたり、誰にも相談できず孤独やストレスを感じたりするなど、こころのSOSサインに気づいた時の対処の仕方をはじめ、こころの健康や病気、相談支援やサービスに関する情報等について学生を含む若者に周知する。

 悩みや不安を抱える友達を相談支援やサポートにつなげることができるよう情報等を周知する。


3 子育て当事者への支援に関する重要事項

 核家族化の進展や地域のつながりの希薄化など家庭をめぐる環境が変化している中で、祖父母や近隣の人から、子育てに関する助言や支援、協力を得ることが難しい状況にある。また、少子化が進行する中で、こども・若者にとって、乳幼児と触れ合う機会が減少しているとの指摘もある。

 子育て当事者が、経済的な不安や孤立感を抱いたり、仕事との両立に悩んだりすることなく、また、過度な使命感や負担を抱くことなく、健康で、自己肯定感とゆとりを持って、こどもに向き合えるにすることが、こども・若者の健やかな成長のために重要である。

これらを踏まえ、以下の施策に取り組む。

(1)子育てや教育に関する経済的負担の軽減

 幼児教育・保育の無償化や高校等の授業料支援、高等教育段階の修学支援など、幼児期から高等教育段階まで切れ目のない負担軽減を着実に実施する。

 教育費の負担が理想のこども数を持てない大きな理由の一つとなっているとの声があることから、特にその負担軽減が喫緊の課題とされる高等教育について、授業料等減免や奨学金制度の充実、授業料後払い制度(いわゆる日本版HECS)の本格導入など、更なる支援拡充を検討し、必要な措置を講じる。

 児童手当について、次代を担う全てのこどもの育ちを支える基礎的な経済支援としての位置づけを明確化し、拡充する。

 地方公共団体の取組の取組を妨げない措置により、医療費等の負担軽減を図る。

(2)地域子育て支援、家庭教育支援

 地域の中で子育て家庭が支えられるよう、在宅で子育てをしている家庭を含めて全てのこどもと家庭を対象として、虐待予防の観点からも、地域のニーズに応じた様々な子育て支援を推進する。子育て当事者の気持ちを受け止め、寄り添いながらの、オンラインも活用した相談やプッシュ型の情報提供を行う。こどもとの親としての関わりの工夫や体罰等がこどもに与える悪影響等を親に伝えるなど、体罰によらない子育てに関する啓発を進める。

 一時預かり、ファミリー・サポート・センター、ベビーシッターに関する取組を推進する。

 保護者が家庭においてこどもの基本的な生活習慣や自立心等を育む教育を行うため、保護者が学ぶことや、身近に相談相手がいない状況にある保護者を切れ目なく支援することができるよう、訪問型を含めた家庭教育支援チームの普及を図るなど、保護者に寄り添う家庭教育支援を推進する。

(3) 共働き・共育ての、男性の家事・子育てへの主体的な参画促進・拡大

 家庭内において育児負担が女性に集中している現状を変え、夫婦が相互に協力しながら子育てし、それを職場が応援し、地域社会全体で支援する社会をつくるため、共働き・共育てを推進する。

 職場の文化・雰囲気を抜本的に変え、男性、女性ともに、希望どおり、気兼ねなく育児休業制度を使えるよう、組織のトップや管理職の意識を変え、仕事と子育てを両立できる環境づくりを進めていく。同時に、育児休業制度自体についても多様な働き方に対応した自由度の高い制度へと強化する。

 長時間労働の是正や働き方改革を進めるとともに、男性の家事・子育てへの参画の促進、企業の福利厚生の充実を図ることにより、女性に一方的に負担が偏る状況を解消し、女性と男性がともにキャリアアップと子育てを両立できるよう環境整備を進める。

 男性の育児休業が当たり前になる社会の実現に向けて、官民一体となって取り組むこととし、制度面と給付面の両面からの対応を抜本的に強化する。男性の家事・子育てへの参画の意識改革に加え、組織において就労環境や組織風土の根本的な見直しにより様々なケースに対応した実効性の高い取組の充実を図り、それぞれの家庭の事情やニーズに応じて活用できるようにすることで、男性の家事・子育てに参画したいという希望を叶えるとともに、その主体的な参画を社会全体で後押ししていく。

(4)ひとり親家庭への支援

 我が国のひとり親家庭の相対的貧困率*28*がOECD加盟国の中でも非常に高い水準で推移してきた現状を直視し、ひとり親家庭の子育てを支え、高い就労率を経済的な自立の実現に結びつける。その際、仕事と子育てを一手に担わざるを得ないひとり親家庭は、いわゆる「時間の貧困」にも陥りやすく、親子で心穏やかに過ごす時間を持てないことも看過してはならない。

 ひとり親家庭が抱える様々な課題や個別ニーズに対応するため、児童扶養手当等による経済的支援のほか、各家庭の親子それぞれの状況に応じて、生活支援、子育て支援、就労支援が適切に行われるよう取り組む。また、こどもに届く生活・学習支援を進める。

 別居により実質的にひとり親の状態となっている方を含む多くのひとり親が仕事と子育てを一手に担わざるを得ない状況にあることを踏まえて、相談に来ることを待つことなくプッシュ型による相談支援を行うことや、様々な課題にワンストップで必要な支援につなげることができる相談支援体制を強化する。当事者の声を取り入れ、ひとり親家庭に対する偏見や差別のない、当事者に寄り添った相談支援を行う。

 こどもにとって不利益が生じることのないよう、こどもの最善の利益を考慮しながら、安全・安心な親子の交流を推進するとともに、養育費の履行確保のため、養育費に関する相談支援や取決めの促進について強化を図る。


第4 こども施策を推進するために必要な事項

1 こども・若者の社会参画・意見反映

 こども基本法において、こども施策の基本理念として、「全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること」、「全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること」が掲げられている。すなわち、こども・若者の社会参画と意見反映を車の両輪として進めていくことが求められている。また、こども施策を策定、実施、評価するに当たって、施策の対象となるこども等の意見を幅広く聴取して反映させるために必要な措置を講ずることが国や地方公共団体に義務付けられている。

 また、こどもの権利条約は、児童の意見を表明する権利(以下「意見表明権」という。)を定めており、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼす全ての事項について自由に自己の意見を表明し、その意見は年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるとしている。その実践を通じた権利保障を推進することが求められる*29*。

 こどもや若者の意見を聴いていて施策に反映することやこどもや若者の社会参画を進めることには、大きく、2つ意義がある。

  ① こどもや若者の状況やニーズをより的確に踏まえることができ、施策がより実効性のあるものになる。

  ② こどもや若者にとって、自らの意見が十分に聴かれ、自らによって社会に何らかの影響を与える、変化をもたらす経験は、自己肯定感や自己有用感、社会の一員としての主体性を高めることにつながる。ひいては、民主主義の担い手の育成に資する。

 こどもや若者とともに社会をつくるという認識の下、安心して意見を述べることができる場や機会を作るとともに、意見を持つための様々な支援を行い、社会づくりに参画できる機会を保障することが重要である。その際、こどもや若者の社会参画・意見反映は形だけに終わる懸念があることを認識して、様々な工夫を積み重ねながら、実効性のあるものとしていく必要がある。

 こどもや若者と対話し、その意見を受け止め、施策に反映させ、どのように施策に反映されたかをフィードバックし、社会全体に広く発信することにより、施策の質を向上させるとともに、こどもや若者の更なる意見表明につながるような好循環を創出しなければならない。また、こどもや若者の主体的な社会参画を社会全体で後押しすることが必要である。その際、おとなの経験や考えを一方的に押し付けることなく、こども・若者と対等な目線でその意見を真摯に聴いて尊重するおとなの姿勢が重要である。

 こどもや若者の社会参画と意見反映に関する国や地方公共団体の取組を社会全体に広く発信することにより、家庭や学校などこどもや若者に関わる様々な場所においてもこどもや若者の意見を聴く取組が進み、こどもや若者の社会参画や意見反映の意義や重要性等について社会全体に浸透することが期待される。

 幼い頃から積み重ねられた主体的な自己決定あるいは意見表明の経験は、青年期から成人期に至る若者の意見表明や主体的な社会参画につながっていくという視点を持つことが重要である。乳幼児期からおとなになるまでの全ての発達の段階の中で、こどもや若者の社会参画と意見表明の大切さを伝え、その意欲を育むことが肝要である。その際、全てのこどもや若者について、意見形成や意見表明の機会が確保されるよう、留意する。

 これらを踏まえ、こども基本法が掲げる基本理念及び上記「第2 基本的な方針」の下で、以下の施策に取り組む。

(1)国の政策決定過程へのこども・若者の参画促進

 こども・若者の意見を政策に反映させるための取組(『こども若者★いけんぷらす』)を推進し、各府省庁が設定したテーマに加え、こども・若者が選んだテーマについても、こども・若者の意見の政策への反映を進める。その際、テーマに関する事前の情報提供や意見の反映状況に関するフィードバックを重視するとともに、寄せられた意見について匿名化等の個人情報の適切な保護を行った上で集約・分析する体制を構築する。

 若者が主体となって活動する団体からの意見聴取に関する取組を行う。

 各府省庁の各種審議会、懇談会等の委員に、こどもや若者を一定割合以上登用するよう取り組む。各種審議会、懇談会等におけるこども・若者委員割合を「見える化」する。

 各府省庁の職員がこどもや若者の社会参画・意見反映について適切に理解し効果的に取り組むことができるよう、ガイドラインを作成し、周知を図る。

(2)地方公共団体における取組促進

 こどもや若者にとってより身近な施策を行う地方公共団体において、様々な機会を捉え、こども・若者の社会参画の促進、意見を聴く取組が着実に行われるよう、上記ガイドラインの周知やファシリテーターの派遣等の支援、好事例の横展開等の情報提供を行う。

 こどもに関わるルール等の制定や見直しの過程にこども自身が関与することは、こどもの意見表明権を保障し、当事者の視点からルールを見直し改善する契機にもなるとともに、身近な課題を自分たちで解決する経験となるなど、教育的な意義があることから、学校や教育委員会等の先導的な取組事例について周知する。

(3)社会参画や意見表明の機会の充実

 こどもや若者にとって社会参画や意見表明の機会や場が必ずしも十分ではない現状を踏まえ、あらゆるこども・若者が、家庭や学校、地域などにおいて、意見を形成し、日常的に意見を言い合える機会や、権利の主体として尊重され、意見が聴かれ、その意見が尊重される機会を、乳幼児期から学童期・思春期・青年期に至るまで持つことができるよう、こどもや若者が自由に意見を表明しやすい環境整備と気運の醸成に取り組む。また、保護者や教職員、幼児教育や保育に携わる者などこどもや若者の健やかな育ちに関わるおとなのほか、広く社会に対しても、こども・若者の意見を表明する権利について周知啓発する。

 こどもや若者が意見を表明し、社会に参画できるようになるため、こどもや若者が理解しやすくアクセスしやすい多様な方法でこども施策に関する十分な情報提供を行う。

 こどもや若者が、自らの意見や気持ちを表明してもよいことを理解できるよう、その年齢や発達の程度に応じて、自らの権利について知る機会創出に向けて取り組む。

(4)多様な声施策に反映させる工夫

 貧困、虐待、いじめ、体罰・不適切な指導、不登校、障害・医療的ケア、非行などを始め、困難な状況に置かれたこども・若者、ヤングケアラー、社会的養護の下で暮らすこども、社会的養護経験者など、様々な状況にあって声を聴かれにくいこどもや若者、乳幼児を含む低低年齢のこども、意見を表明することへの意欲や関心を必ずしも高く必ずしも高くもてないこどもや若者がいることを認識し、全てのこども・若者が自らの意見をもち、それを表明することができるという認識の下、安心して意見を表明し、その意見が施策に反映されるよう、意見聴取に係る多様な手法を検討するとともに、十分な配慮や工夫をする。

(5)社会参画・意見反映を支える人材の育成

 こどもや若者が意見を言いやすい環境をつくるため、安全・安心な場をつくり意見を言いやすくなるように引き出すファシリテーターを積極的に活用できるよう、人材確保や養成等のための取組を行う。

(6)若者が主体となって活動する団体等の活動を促進する環境整備

 様々な社会課題の解決に自ら声を上げて取り組む若者団体や地域においてこどもや若者が主体となって活動しているこども会議、若者会議、ユースカウンシルなどは、こどもや若者の社会参画の機会の一つであり、これらの活動がより充実するよう、連携を強化するとともに、好事例の展開等を進める。若者団体等の主体的な活動を促進するための取組の在り方について検討する。

 地域におけるこどもの意見反映・社会参画の拠点として、児童館、子ども会、こども食堂や学習支援の場など地域にある多様な居場所、公民館や図書館などの社会教育施設、こどもの意見表明支援やこどもの社会参画機会の提供を行う民間団体との連携を強化する。

(7)こども・若者の社会参画や意見反映に関する調査研究

 こどもや若者の社会参画や意見反映に関する調査研究を推進する。

 こども・若者の社会参画、意見反映のプロセスやその結果に係る評価について、仕組みの構築に向けて取り組む。

2 こども施策の共通の基盤となる取組

(1)「こどもまんなか」の実現に向けたEBPM

(こども施策におけるEBPMの浸透に向けた仕組み・体制の整備)

 様々なデータや統計を活用するとともに、こども・若者からの意見聴取などの定性的なデータも活用し、個人情報を取り扱う場合にあってはこどもや若者本人等の権利利益の保護にも十分に配慮しながら、課題の抽出などの事前の施策立案段階から、施策の効果の事後の点検・評価・公表まで、それぞれの段階で、エビデンスに基づき多面的に施策を立案し、評価し、改善していく(EBPM:Evidence Based Policy Making)。その際、施策立案・実施の専門家である行政職員とデータ利活用等の専門家が協働・対話して進めていくこと、試行錯誤をしながら進めていくこと、定量的なデータに固執し過ぎず定性的なデータも活用することを認識しつつ進める。また、こども施策においては、何をアウトカムとするかが十分に定まっていないものが少なくなく、研究途上とも言えることから、こども・若者や子育て当事者の視点に立ち、施策の実態を踏まえて、何をアウトカムとすることが適切か、そうしたアウトカムをどのように得ていくのかについて検討していく。

 大学・研究機関等の外部の専門家の登用・活用を進めるなど、こども施策の企画立案・実施を担う行政職員をEBPMの観点から支持する体制を整備する。

 こども施策の企画立案・実施を担う部署の職員に対し、EBPMに関する周知啓発や研修、情報提供、支援を進める。

 行政が中長期的な視野に立って優先順位等を付けた上で施策課題について研究テーマを提起し大学・研究機関等の創意工夫を活かす調査研究を推進する。

 新たに「女性の健康」に関するナショナルセンター機能を持たせる国立成育医療研究センターにおける成育医療等に関するシンクタンク機能の充実を図る。

 地方公共団体が行うこども施策におけるEBPMに関する取組について、好事例の展開等を行う。

(こども施策に関するデータの整備、エビデンスの構築)

 良質なデータがあってこそ導出されたエビデンスを施策課題等に照らして解釈することが可能となるとの認識の下、政府全体として収集すべきデータを精査し、各府省庁が連携して、こども・若者や子育て当事者の視点に立った調査研究の充実や必要なデータの整備等を進める。その際、国際機関等のデータとの比較の観点を考慮するとともに、こどもに関する長期的な追跡データや月次データ等の充実、男女別データの把握*30*に努める。

 こどもに着目したウェルビーイング指標の在り方について検討を進める。

 こども施策の推進のために創出が必要なエビデンスを洗い出し、こども・若者や子育て当事者等の視点に立って、優先順位をつけ、エビデンスの構築に取り組む。その際、外部の専門家を活用し、透明性・客観性を高める。

 こども・若者や子育て当事者に関する国が行った調査研究等で得られたデータの二次利用を推進する。

(2)こども・若者、子育て当事者に関わる人材の確保・育成・支援

 幼児教育や保育に携わる者、教職員、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、社会教育に携わる者、青少年教育施設の職員、児童相談所や児童福祉施設等の職員の職員及び里親、障害児支援に携わる者、民生委員・児童委員、保護司、地域でこども・若者や子育てへの支援を担っているNPO等の民間団体の職員など、こども・若者の健やかな育ちや困難に対する支援、子育て支援に携わる担い手の確保、育成、専門性の向上を図る。

 担い手自身が喜びを感じながら仕事におけるキャリアが形成できる環境づくりを進める。こどもや家庭との関わりの中でストレスにさらされている職員などに対するメンタルケアに取り組む。

 地域における身近なおとなや若者など、ボランティアやピアサポートができる人材など多様な人材を確保・育成する。

 こども・若者の健やかな育ちや子育て支援に携わる民間団体同士、行政機関と民間団体の連携強化を図る。

(3)地域における包括的な支援体制の構築・強化

 教育・保育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用等の関係機関・団体が密接に情報共有・連携を行う「横のネットワーク」と、義務教育の開始・終了年齢や、成年年齢である18歳、20歳といった特定の年齢で途切れることなく継続して支援を行う「縦のネットワーク」による包括的な支援体制として、地方公共団体の教育委員会や福祉部局、学校・園、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、児童発達支援センター、児童家庭支援センター、児童相談所、こども家庭センター、子ども・若者総合相談センター、医療機関(産婦人科、小児科、精神科、歯科等の医療機関及び助産所)、こども・若者や子育て当事者の支援に取り組む民間団体等の連携を図るため、要保護児童対策地域協議会と子ども・若者支援地域協議会を活用し、その機能を強化し連携させる。各地の協議会間の連携(ネットワークのネットワーク)による全国的な共助体制の構築を図る。

 こども家庭センターの全国展開を図るとともに、こども家庭センターと子ども・若者総合相談センター等を連携させ、こども・若者や子育て当事者の相談支援を強化する。

 先進的な地方公共団体の取組も参考に、住民に身近な地方公共団体において、個々のこども・若者や家庭の状況や支援内容等に関する教育・保健・福祉などの情報・データを分野を超えて連携させることを通じて、潜在的に支援が必要なこども・若者や家庭を早期に把握し、SOSを待つことなく、プッシュ型・アウトリーチ型支援を届けることができる取組を推進する。

(4)子育てに係る手続・事務負担の軽減、必要な支援を必要な人に届けるための情報発信

 制度があっても現場で使いづらい・執行しづらいという状況にならないよう、「こども政策DX」を推進し、プッシュ型通知や、デジタル技術を活用した手続等の簡素化、データ連携、様々な手続をワンストップで行うことができる窓口の整備、申請書類・帳票類の簡素化・統一化などを通じ、子育て当事者等の利便性向上や子育て関連事業者・地方公共団体等の手続・事務負担の軽減を図る。

 こども・若者や子育て当事者に必要な情報や支援が届くよう、必要な情報が分かりやすくまとまって確認できるような一覧性が確保された情報発信、若い世代にとってなじみやすいSNS等を活用したプッシュ型広報、制度や支援の利用について気軽に問い合わせができるオンラインでの支援など、情報発信や広報を改善・強化するとともに、手続等の簡素化等を通じた利便性の向上を図る。

(5)こども・若者、子育てにやさしい社会づくりのための意識改革

 こどもや若者、子育て当事者が気兼ねなく様々な制度や支援メニューを利用できるよう、地域社会、企業など様々な場で、年齢、性別を問わず、全ての人がこどもや子育て中の方々を応援するといった社会全体の意識改革として「こどもまんなかアクション」を進める。子育て当事者がこどもと一緒にいるときに感じた不便や周囲に求める理解や配慮に関する調査結果を踏まえ、国の施設や他の公共施設、民間施設におけるこどもや子育て家庭を優先して受け付ける取組やこども・子育てを応援する地域や企業の好事例の共有・横展開、公共交通機関等における妊産婦や乳幼児を連れた家庭に対する分かりやすい案内や妊産婦や乳幼児を連れた家庭への配慮に関する利用者の理解・協力の促進など、様々な取組を通じてこどもや子育て当事者を社会全体で支える気運を醸成していく。

3 施策の推進体制等

(1)国における推進体制

(こども政策推進会議)

 こども政策推進会議を中心に、内閣総理大臣のリーダーシップの下、政府一体となって、こども大綱を総合的に推進する。その際、教育振興基本計画*31*やこども未来戦略等の他の政府方針と整合的に進めることに留意する。

 こども施策の実施の推進及び関係行政機関相互の調整等のため、関係府省庁の局長級からなる幹事会を活用する。幹事会構成員は、所属府省庁におけるこども施策の推進の中核として府省庁内関係施策の取りまとめと推進を担う。

(こどもまんなか実行計画によるPDCAとこども大綱の見直し)

 こども政策推進会議において、こども大綱に基づき具体的に取り組む施策を「こどもまんなか実行計画」として取りまとめる。こども家庭審議会において、施策の実施状況やこども大綱に掲げた数値目標・指標等を検証・評価し、その結果を踏まえ、毎年6月頃を目途に、こども政策推進会議において「こどもまんなか実行計画」を改定し、関係府省庁の予算概算要求等に反映する。これらにより、継続的に施策の点検と見直しを図る。

 「こどもまんなか実行計画」の実施状況とその効果、こども大綱に掲げた数値目標と指標の状況、社会情勢の変化等を踏まえ、おおむね5年後を目途に、こども大綱を見直す。

(こども家庭審議会)

 こども家庭審議会は、こどもが自立した個人としてひとしく健やかに成長することのできる社会の実現に向けた基本的な政策に関する重要事項等を調査審議し、当該重要事項に関し、内閣総理大臣、関係各大臣又はこども家庭庁長官に意見を述べる権限を持つ。内閣総理大臣等の諮問に応じるのみならず、当該諮問がなくとも自ら調査審議を行い、内閣総理大臣等へ意見を述べることができる。

 こども家庭審議会は、こども家庭庁設置法案・こども基本法案に係る国会での審議を受け止め、こどもや若者の視点に立って、公平性や透明性を確保しつつ、こども大綱の下で進められる各般の施策実施状況や評価等について分科会や部会において幅広く充実した調査審議を行い、当該施策や制度の改善等に関して、これらの権限を適切に行使する。

(こども政策を担当する内閣府特命担当大臣)

 こども政策を担当する内閣府特命担当大臣は、内閣府設置法第11条の3の規定により置かれた内閣府特命担当大臣が掌理する企画立案・総合調整事務の遂行に関する実施要領*32*に基づき、総合調整権限を機動的かつ柔軟に発揮する。必要に応じ、内閣府設置法第12条に基づく関係行政機関の長に対する勧告等の権限を適切に行使する。

(全ての施策においてこども・若者の視点や権利を主流化するための取組の在り方)

 各種施策を企画立案・実施するに当たりこどもや若者の権利に与える影響を事前又は事後に評価する取組*33*の在り方について、調査研究等を進める。

(2)数値目標と指標の設定

 こども大綱が目指す「こどもまんなか社会」の実現に向けたこども・若者や子育て当事者の視点に立った数値目標を別紙1のとおり設定する。併せて、こども・若者、子育て当事者の置かれた状況等を把握するための指標を別紙2のとおり設定する。なお、具体的に取り組む施策の進捗状況を検証するための指標については「こどもまんなか実行計画」において設定する。

 おおむね5年後のこども大綱の見直しに向けた数値目標や指標の充実について、こども家庭審議会において検討する。

(3)自治体こども計画の策定促進、地方公共団体との連携

(自治体こども計画の策定促進)

 こども基本法において、都道府県は、国の大綱を勘案して、都道府県こども計画を作成するよう、また、市町村は、国の大綱と都道府県こども計画を勘案して、市町村こども計画を作成するよう、それぞれ、努力義務が課せられている。自治体こども計画は、各法令に基づくこども施策に関する関連計画と一体のものとして作成できる*34*こととされており、区域内のこども施策に全体として統一的に横串を刺すこと、住民にとって一層分かりやすいものとすることなどが期待されている。

 こども施策に関する計画を自治体こども計画として一体的に策定する地方公共団体を積極的に支援するとともに、教育振興基本計画との連携を含め好事例に関する情報提供・働きかけを行う。自治体こども計画の策定・推進状況やこどもに関する基本的な方針・施策を定めた条例の策定状況についての「見える化」を進める。

(地方公共団体との連携等)

 国と地方が情報共有・意見交換する場を活用し、地域の実情を踏まえつつ、国と地方公共団体の視点を共有しながら、こども施策を推進していく。地方公共団体の取組状況を把握し、その取組が促進されるよう、また、地域間格差をできる限り縮小していくことも念頭に置きつつ、必要な支援を行うとともに、現場のニーズを踏まえた地方公共団体の先進的な取組を横展開し、必要に応じて制度化していく。

 こども施策に係る地方公共団体との人事交流を推進する。

(4)国際的な連携・協力

 持続可能な開発のための2030アジェンダに含まれる持続可能な開発目標(SDGs)に関し、SDGs実施指針改定版*35*に基づく取組を進める。

 子どもに対する暴力撲滅グローバル・パートナーシップ(GPeVAC)の参加国(パスファインディング国)として、子どもに対する暴力撲滅行動計画*36*の着実な実施を通じて、こどもに対する暴力撲滅に取り組む。

 こどもの権利条約を誠実に遵守*37*する。同条約に基づく児童の権利委員会からの総括所見における勧告や、必要に応じ一般的意見について十分に検討の上、適切に対応を検討するとともに国内施策を進める*38*。同条約に基づく権利の実現のためにとった措置及びこれらの権利の享受についてもたらされた進歩に関する報告を行うため、フォローアップを含めた必要な措置を適切に講ずる。また、国際社会と協調しつつ、日本の考え方について正しい情報発信を行う。

 「ビジネスと人権」に関する行動計画*39*に基づく取組を進める。

 各種国際会議における議論の内容を踏まえて国内施策を進めるとともに、当該会議等の場において我が国のこども施策を積極的に国際社会に発信する。

 国連児童基金(ユニセフ)やOECDを始めとする国際機関等の取組に積極的に貢献していくとともに、連携を強化する。

(5)安定的な財源の確保

 こども基本法第16条の趣旨を踏まえ、こども大綱を推進するために必要な安定的な財源について、国民各層の理解を得ながら、社会全体での費用負担の在り方を含め、幅広く検討を進め、その確保に努めていく。

 特に、こども未来戦略で示された「こども・子育て支援加速化プラン」については、大宗を3年間(2026年度まで)で実施し、同プランの実施が完了する2028年度までに安定財源を確保する。

(6)こども基本法附則第2条に基づく検討

 こども基本法附則第2条に基づき、こども基本法の施行後5年を目途として、こども施策が基本理念にのっとって実施されているかどうか等の観点からその実態を把握し、公正かつ適切に評価する仕組みの整備その他の基本理念にのっとったこども施策の一層の推進のために必要な方策について検討を加え、その結果に基づき、法制上の措置その他の必要な措置を講ずる。



(参考)こども・若者や子育て当事者を取り巻く現状

 これまで、少子化社会対策基本法、子ども・若者育成支援推進法及び子どもの貧困対策の推進に関する法律に基づく各大綱により、政府を挙げて、各般の施策の充実に取り組んできた。

 例えば、消費税の引上げにより確保した財源などをこどもや若者への支援の充実に投入し、待機児童対策、幼児教育・保育の無償化、高等教育の無償化などの取組を進め、待機児童は一部の地域を除きほぼ解消に向かうなど、一定の成果を挙げた。これらにより、家族関係社会支出の対GDP比は、平成25年度の1.13%から令和3年度には2.46%まで上昇した。

 また、こどもの権利擁護のための児童虐待防止対策の強化、市町村及び児童相談所の体制強化、社会的養護における里親等委託の推進、家庭や養育環境の支援の強化を行う児童福祉等の改正、いじめ防止対策推進法に基づく未然防止・早期発見・早期対応の取組やSNS等を活用した相談体制の整備など、困難な状況にあるこどもや若者、子育て当事者への支援についても充実を図ってきた。

 一方で、相対的に貧困の状態にあるこどもの割合は11.5%となっており、特にひとり親家庭は44.5%と高くなっている*40*。令和4年度には、小・中学校における不登校、いわゆる「ネットいじめ」の件数、児童虐待の相談対応件数が、それぞれ過去最多となっている*41*。いじめの重大事態は923件発生している*42*。令和4年には大変痛ましいことに約800人もの10歳から19歳のこども・若者が自殺しており、10代の死因の最多は自殺となっている*43*。SNSに起因する事犯の被害にあったこどもの数も高い水準で推移している*44*。

 さらにここ数年は、コロナ禍が追い打ちをかけるように、友達とのつながりの希薄化、集団活動や自然体験活動の減少*45*などをもたらした。こどもや若者、家庭をめぐる様々な課題がコロナ禍により更に深刻化しており、その影響が長く続くことが懸念される。

 我が国のこども・若者の自己肯定感や幸福感は低く、内閣府の調査によれば、「自分自身に満足している」こども・若者の割合は半数を下回り、諸外国と比べて低い状況にある*46*。我が国のこどもが、38か国中、身体的健康は1位だが、精神的幸福度は37位であることを示す国連児童基金の調査もある*47*。

 多様な指標を参照しつつ、日本社会に根差したこども・若者のウェルビーイングの向上を図っていくことが求められている。

 SDGs(持続可能な開発目標)は、令和12年(2030年)までに、持続可能でより良い世界を目指す国際目標であり、我が国もコミットしている。17の目標はいずれも、こども・若者に深く関係し、こども・若者自身も、SDGs推進の担い手として育ち、積極的に関与することがすることが期待されている。

 出生数の減少は予測を上回る速度で進行し、人口減少に歯止めがかかっていない。令和4年の出生数は77万759人で、統計開始以来、最少の数字となり、合計特殊出生率は1.26と過去最低となった。少子化・人口減少に歯止めをかけなければ、我が国の経済・社会システムを維持することは難しく、国際社会における存在感を失うおそれもある。若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでが状況を反転させることができるかどうかの重要な分岐点である。

 少子化の主な原因は、未婚化と晩婚化(若い世代での未婚率の上昇や、初婚年齢の上昇)、有配偶出生率の低下である。特に未婚化と晩婚化の影響が大きいと言われており、その主な要因は、若い世代の低い所得と不安定な雇用環境、出会いの機会の減少である。若い世代の8割を超す未婚男女がいずれ結婚することを希望*48*しており、また、夫婦は2人以上のこどもを育てることを理想としているが、若い世代が結婚や子育ての将来展望を描けず、こうした希望や理想が叶わない状況にある*49*。

 子育て当事者にとっては、こどもの成長や子育てをめぐる状況が厳しく、負担や不安、孤立感が高まっている*50*。子育てしづらい社会環境*51*や、根強い固定的な性別役割分担意識等を背景とした仕事と子育てを両立しにくい職場環境*52*がある。さらには、子育ての経済的・精神的負担感*53*が存在する。

 若い世代が将来に明るい希望を持てる社会をつくらない限り、少子化トレンドの反転は叶わない。


{*1* 児童の権利に関する条約は、国際人権規約において定められている権利を児童について敷衍(ふえん)し、児童の権利の尊重及び確保の観点から必要となる詳細かつ具体的な事項を規定したもの。平成元年第44回国連総会において採択され、平成2年に発効。日本は平成6年に批准。児童の権利に関する条約第1条において、児童は「18歳未満のすべての者をいう。ただし、当該児童で、その者に適用される法律によりより早く成年に達したものを除く。」と定義されている。ここでは、こども家庭審議会における当該条約の呼称についての議論を踏まえ、当事者であるこどもにとっての分かりやすさの観点から、こどもの権利条約と記すこととする。}
{*2* こども基本法において「こども施策」とは、次に掲げる施策その他のこどもに関する施策及びこれと一体的に講ずべき施策とされている。
 1 新生児期、乳幼児期、学童期及び思春期の各段階を経て、おとなになるまでの心身の発達の過達を通じて切れ目なく行われるこどもの健やかな成長に対する支援
 2 子育てに伴う喜びを実感できる社会の実現に資するため、就労、結婚、妊娠、出産、育児等の各段階に応じて行われる支援
 3 家庭における養育環境その他のこどもの養育環境の整備
一体的に講ずべき施策とは、例えば、主たる目的はこどもの健やかな成長に対する支援等ではないがこどもや子育て当事者に関係する施策(例:国民全体の教育の振興、仕事と子育ての両立等の雇用環境の整備、小児医療を含む医療の確保・提供)や、こどもに関する施策と連続性を持って行われるべき若者に係る施策(例:若者の社会参画支援、就労支援、社会生活を営む上で困難を抱える若者支援)が含まれるものと解されている。}
{*3* 「乳幼児期」(義務教育年齢に達するまで)、「学童期」(小学生年代)、「思春期」(中学生年代からおおむね18歳まで)、「青年期」(おおむね18歳以降からおおむね30歳未満。施策によってはポスト青年期の者の者も対象とする。)とで分けて示す。なお、「若者」については、法令上の定義はないが、ここでは思春期及び青年期の者とし、「こども」と「若者」は重なり合う部分があるが青年期の全体が射程に入ることを明確にする場合には、分かりやすく示すという観点から、法令の規定を示す場合を除き、特に「若者」の語を用いることとする。}
{*4* これに伴い、少子化社会対策大綱(令和2年5月29日閣議決定)、子供・若者育成支援推進大綱(令和3年4月6日子ども・若者育成支援推進本部決定)及び子供の貧困対策に関する大綱(令和元年11月29日閣議決定)は、廃止する。}
{*5* 内閣府少子化社会対策大綱の推進に関する検討会「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会中間評価~若者・子育て世代を真ん中に据え、「未来への投資」へ~」(令和4年7月)。なお、同検討会はこども家庭庁創設に伴い廃止されている。}
{*6* 身体的・精神的・社会的に良い状態にあるという包括的な幸福として、短期的な幸福のみならず、生きがいや人生の意義など将来にわたる持続的な幸福を含むものをいう。}
{*7* 内閣府子供の貧困対策に関する有識者会議「子供の貧困対策に関する大綱の進捗状況及びこども大綱策定に向けての意見」(令和5年1月)。なお、同会議はこども家庭庁創設に伴い廃止されている。}
{*8* 身体的・精神的・社会的な観点から総合的に適切に支援を行う観点をバイオサイコソーシャルの観点という。}
{*9* 令和5年12月22日閣議決定。}
{*10* 持続可能な開発目標(SDGs)実施指針改定版(令和5年12月19日持続可能な開発目標(SDGs)推進本部決定)において、「2030アジェンダでは、「ジェンダー平等の実現と女性・女児のエンパワアーメントは、すべての目標とターゲットの進展において死活的に重要」であり、ジェンダーの視点を「主流化していくことは不可欠」である旨明記されており、女性・女児は、多様なステークホルダーと連携しつつ、SDGsの推進に貢献していくことが強く期待されている。また、人権の保護、ジェンダー平等の実現、女性・女児のエンパワーメントを含め、SDGsの全ての目標の達成に向けた取組において、多様なステークホルダーがジェンダーの視点を共有することが重要である。」とされている。}
{*11* こどもが怖くて不安なときに身近なおとな(愛着対象)がそれを受け止め、こどもの心身に寄り添うことで安心感を与えられる経験の繰り返しを通じて獲得される安心の土台。こどもに自らや社会への基本的な信頼感をもたらし、その基本的信頼感は、自他の心の理解や共感、健やかな脳や身体の発達を促す。また、安定した愛着は、自らや他者への信頼感の形成を通じて、いわゆる非認知能力の育ちにも影響を与える重要な要素であり、生きる力につながっていくとされている。}
{*12* セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR:Sexual and Reproductive Health and Rights)。リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)とは、平成6年の国際人口開発会議の「行動計画」及び平成7年の第4回世界女性会議の「北京宣言及び行動綱領」において、「人間の生殖システム、その機能と(活動)過程の全ての側面において、単に疾病、障害がないというばかりでなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態にあることを指す」とされている。また、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)は、「全てのカップルと個人が自分たちの子どもの数、出産間隔、並びに出産する時を責任をもって自由に決定でき、そのための情報と手段を得ることができるという基本的権利、並びに最高水準の性に関する健康及びリプロダクティブ・ヘルスを得る権利」とされている。
 G7広島サミットの首脳コミュニケ(2023年5月20日)において、「特に脆弱な状況にある妊産婦、新生児、乳幼児及び青少年を含む全ての人の包括的な性と生殖に関する健康と権利(SRHR)を更に推進することにコミットする」とされている。}
{*13* こども・若者や子育て当事者の中には、重大な課題を抱えており、より多くの支援を必要とするケースもあれば、比較的少ない支援を必要とするケースもある。また、支援の対象となっていないこども・若者や子育て当事者であっても、多かれ少なかれ課題を抱えているケースもある。このように、個別の課題や支援ニーズについては、それぞれのこども・若者や子育て当事者の状況に応じて、段階的に変化するものとして捉える必要がある。}
{*14* Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics等の各教科での学習を実社会での問題発見・解決に活かしていくための教科横断的な教育。STEAMのAの範囲を芸術、文化のみならず、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲(Liberal Arts)で定義し、推進することが重要である。}
{*15* 男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身に付け、健康管理を行うよう促すこと。}
{*16* Female(女性)とTechnology(テクノロジー)からなる造語であり、生理や更年期など女性特有の悩みについて、先進的な技術を用いた製品・サービスにより対応するもの。}
{*17* 令和5年12月22日閣議決定。}
{*18* 障害者の権利に関する条約では「障害者を包容するあらゆる段階の教育制度」とされている。}
{*19* 令和4年10月14日閣議決定。}
{*20* 令和5年6月2日こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議。}
{*21* 法令上は、青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20年法律第79号)第2条において、「『青少年有害情報』とは、インターネットを利用して公衆の閲覧(視聴を含む。以下同じ。)に供されている情報であって青少年の健全な成長を著しく阻害するものをいう」と定義されており、下記が例示されている。また、「青少年」とは、18歳に満たない者と定義されている。
 (1)犯罪若しくは刑罰法令に触れる行為を直接的かつ明示的に請け負い、仲介し、若しくは誘引し、又は自殺を直接的かつ明示的に誘引する情報
 (2)人の性行為又は性器等のわいせつな描写その他の著しく性欲を興奮させ又は刺激する情報
 (3)殺人、処刑、虐待等の場面の陰惨な描写その他の著しく残虐な内容の情報}
{*22* 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20年法律第79号)の平成30年改正を受けて、フィルタリング利用率向上のための取組の更なる推進をしており、
 (1)事業者による保護者等への青少年確認義務、説明義務、フィルタリングサービス有効化措置義務等の実施徹底
 (2)製造事業者による利用容易化措置義務及びOS開発事業者による利用容易化措置円滑化努力義務の実施徹底に取り組んでいる。なお、同法第3条第3項において、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関する施策の推進は、自由な表現活動の重要性及び多様な主体が世界に向け多様な表現活動を行うことができるインターネットの特性に配慮し、民間における自主的かつ主体的な取組が大きな役割を担い、国及び地方公共団体はこれを尊重することを旨として行われなければならない。」とされていることに留意が必要である。}
{*23* 保護者がこどものライフサイクルを見通して、その発達の程度に応じてインターネット利用を適切に管理すること。こどもの情報発信を契機とするトラブル防止の観点を含むものであり、管理の方法としては、技術的手段(フィルタリング、課金制限機能、時間管理機能等)と、非技術的手段(親子のルールづくり等)とに分かれる。}
{*24* こどもの死亡時に、複数の機関や専門家(医療機関、警察、消防、行政関係者等)が、こどもの既往歴や家族背景、死に至る直接の経緯、解剖結果等に関する様々な情報を基に死因調査を行うことにより、効果的な予防対策を導き出し、予防可能なこどもの死亡を減らすことを目的としたもの。}
{*25* 令和5年2月22日閣議決定。}
{*26* 令和4年12月文部科学省。}
{*27* 女性の年齢階級別正規雇用比率。}
{*28* 貧困線に満たない世帯員の割合をいう。貧困線とは、等価可処分所得の中央値の半分の額をいう。}
{*29* こどもの権利条約第12条において、「自由に自己の意見を表明する権利(the right to express those views freely)」が定められている。その「意見」は、原文(英語)では「view(s)」であり、意見が聴取される権利に関する児童の権利委員会一般的意見第12号(2009年)において、言語化された意見のみならず、遊びや身振り、絵を含む非言語のコミュニケーション形態への認識と尊重が必要とされている。}
{*30* 第5次男女共同参画基本計画(令和2年12月25日閣議決定)において、「国際連合統計部は、各種統計の作成過程でジェンダーに関する視点を取り込むことの重要性を指摘しており、ジェンダー統計の充実の観点から男女別データの把握等に努めることが求められる」とされている。}
{*31* 令和5年6月16日閣議決定。}
{*32* 令和5年8月2日内閣府特命担当大臣(こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画)決定。}
{*33* いわゆるこどもの権利影響評価と呼ばれる取組。全ての施策においてこどもの視点や権利を主流化するための取組の一つと言われている。}
{*34* 都道府県こども計画・市町村こども計画は、子ども・若者育成支援推進法第9条に規定する都道府県子ども・若者計画及び市町村子ども・若者計画、子どもの貧困対策の推進に関する法律第9条に規定する都道府県計画・市町村計画、次世代育成支援対策推進法に基づく都道府県行動計画・市町村行動計画、子ども・子育て支援法に基づく子ども・子育て支援事業計画などと一体のものとして作成することができる。}
{*35* 令和5年12月19日持続可能な開発目標(SDGs)推進本部決定。}
{*36* 令和3年8月18日関係府省庁連絡会議。}
{*37* 日本国憲法98条第2項において「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と規定されている。}
{*38* 児童の権利委員会は、条約の効果的な実施を促進するため、条約に基づき、締約国による政府報告審査を受けた当該審査対象国に対する見解や勧告を含む総括所見を発出することができ、また、条約の解釈についての委員会としての見解を整理した一般的意見を発出することができる。なお、いずれも法的拘束力はない。}
{*39* 令和2年10月16日ビジネスと人権に関する行動計画に係る関係府省庁連絡会議。}
{*40* 厚生労働省「国民生活基礎調査」。}
{*41* 令和4年度において、小・中学校における不登校児童生徒数は29万9048人(文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」)、いじめの態様別状況において、「パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる」の件数は2万3920件(複数回答可。文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」)、令和4年度において、児童相談所における児童虐待相談対応件数は21万9170件(令和5年度全国児童福祉主管課長・児童相談所長会議資料)といずれも過去最多。}
{*42* 文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」。}
{*43* 令和4年の10~14歳、15~19歳のいずれにおいても、死因第1位は自殺となっている(厚生労働「人口動態統計」)。自殺の原因・動機をみると、19歳以下では、健康問題のほか、家庭問題や学校問題も多い(厚生労働省・警察庁「令和4年中における自殺の状況」)。}
{*44* 令和4年で1,732人の18歳未満の者が被害にあっている。SNSとは、多人数とコミュニケーションをとれるウェブサイト等で、通信ゲームを含む(届出のある出会い系サイトを除く)(警察庁「令和4年における少年非行及び子供の性被害の状況」)。}
{*45* 国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する意識調査(令和元年度調査)」。}
{*46* 「私は、自分自身に満足している」という問いに「そう思う」又は「どちらかといえばそう思う」と回答した13歳~29歳の割合は、日本においては45.1%であり、その他の調査対象6か国においては73.5%~86.9%(内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査(令和元年)」。なお、本調査はこども家庭庁に引き継がれている)。}
{*47* 国連児童基金(ユニセフ)イノチェンティ研究所の調査において精神的幸福度は「生活満足度の高い15歳の子どもの割合(平成30年)」、「15~19歳の若者の自殺率(平成25~27年の3年間の平均値)」という二つの指標で構成されている。}
{*48* 令和3年において、18~19歳、20~24歳、25~29歳の未婚男女いずれにおいても、「いずれ結婚するつもり」と答えた割合が8割を超えている。一方で、令和2年の50歳時点で男性の28.25%(約3.5人に1人)、女性で17.81%(約5.6人に1人)が未婚である。また、近年、「一生結婚するつもりはない」とする者の割合が増加傾向となっている(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」「人口統計資料集2023改訂版」)。}
{*49* 令和3年の夫婦の平均理想こども数は2.25人となっている。一方で、妻の年齢45~49歳の夫婦の最終的なこども数は1.81人であり、また、未婚者の希望するこども数は、減少傾向が続いており、令和3年には未婚男性で1.82人、未婚女性で1.79人と、特に女性で大きく減少し、初めて2人を下回った(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」)。}
{*50* 地域子育て支援拠点を利用する前の子育て当事者の状況として「子育てをしている親と知り合いたった(71.9%)」「子育てで、つらいと感じることがあった(62.6%)」など孤立した育児の実態がみられる(NPO法人子育てひろば全国連絡協議会「地域子育て支援拠点における「つながり」に関する調査研究事業報告書(平成29年)」)。}
{*51* 「自国はこどもを生み育てやすいと思うか」との問いに対し、スウェーデン、フランス、ドイツでは、いずれも約8割以上が「そう思う」と回答しているのに対し、日本では約6割が「そう思わない」と回答している。また、「日本の社会が結婚、妊娠、こども・子育てに温かい社会の実現に向かっているか」との問いに対し、約7割が「そう思わない」と回答している(内閣府「少子化社会に関する国際意識調査(令和3年)」「少子化社会対策に関する意識調査(令和元年)」。なお、本調査はこども家庭庁に引き継がれている)。}
{*52* 共働き世帯が増加する中で、令和3年には、女性が考える「理想のライフコース」も、男性がパートナーとなる女性に望望むライフコースも、いずれも、結婚・出産後も仕事を続ける「両立コース」が最多になっている(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」)。一方、女性(妻)の就業継続や第2子以降の出生割合は、夫の家事・育児時間が長いほど高い傾向にある(厚生労働省「21世紀成年者縦断調査」)が、日本の夫の家事・育児関連時間は2時間程度(総務省「社会生活基本調査」)と国際的に見ても低水準である。また、こどもがいる共働きの夫婦について平日の帰宅時間は女性よりも男性の方が遅い傾向にあり(総務省「社会生活基本調査」)、保育所の迎え、夕食、入浴、就寝などの育児負担が女性に集中している傾向もある。男性について見ると、正社員の男性について育児休業制度を利用しなかった理由を尋ねた調査では、「収入を減らしたくなかった(39.9%)」が最も多かったが、「育児休業制度を取得しづらい職場の雰囲気、育児休業取得への職場の無理解(22.5%)」、「自分にしかできない仕事や担当している仕事があった(22.0%)」なども多く、制度はあっても利用しづらい職場環境が存在していることがうかがわれる(令和4年度厚生労働省委託調査 日本能率協会総合研究所「仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」)。}
{*53* 令和3年において、理想の子ども数を持たない理由としては、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」という経済的理由が52.6%で最も高くなっている。また、妻の年齢別にみた、理想の子ども数を持たない理由としては、35歳未満では経済的理由が高い傾向にあるが、35歳以上の夫婦では、「ほしいけれどもできないから」といった身体的な理由も高い。「これ以上、育児の心理的、肉体的負担に耐えられないから」ははいずれの世代でも約2割が選択している(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」)。




別紙1

「こどもまんなか社会」の実現に向けた数値目標

 本文第1の「3 こども大綱が目指す「こどもまんなか社会」の実現に向け、こども・ 若者や子育て当事者の視点に立った数値目標(アウトカム)として、以下を設定する。

 項目  目標  現状  出典
「こどもまんなか社会の実現に向かっている」と思う人の割合 70%   15.7%      
(2023年)*1*
こども家庭庁「こども政策の推進に関する意識調査」
「生活に満足している」と思うこどもの割合 70% 60.8%
(2022年)*2*
OECD「生徒の学習到達度調査(PISA)」
「今の自分が好きだ」と思うこども・若者の割合(自己肯定感の高さ) 70% 60.0%
(2022年)*3*
こども家庭庁「こども・若者の意識と生活に関する調査」*4*
社会的スキルを身につけているこどもの割合 80% 74.2%
(2022年)*5*
OECD「生徒の学習到達度調査(PISA)」
「自分には自分らしさというものがある」と思うこども・若者の割合 90% 84.1%
(2022年)*6*
こども家庭庁「こども・若者の意識と生活に関する調査」
「どこかに助けてくれる人がいる」と思うこども・若者の割合 現状維持 97.1%
(2022年)*7*
こども家庭庁「こども・若者の意識と生活に関する調査」
「社会生活や日常生活を円滑に送ることができている」と思うこども・若者の割合 70% 51.5%
(2022年)*8*
こども家庭庁「こども・若者の意識と生活に関する調査」
「こども政策に関して自身の意見が聴いてもらえている」と思うこども・若者の割合 70% 20.3%
(2023年)*9*
こども家庭庁「こども・若者の意識と生活に関する調査」
「自分の将来について明るい希望がある」と思うこども・若者の割合 80% 66.4%
(2022年)*10*
こども家庭庁「こども・若者の意識と生活に関する調査」
「自国の将来は明るい」と思うこども・若者の割合 55% 31.0%
(2018年)*11*
こども家庭庁「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」*12*
「結婚、妊娠、こども・子育てに温かい社会の実現に向かっている」と思う人の割合 70% 27.8%
(2023年)*13*
こども家庭庁「こども・若者の意識と生活に関する調査」
「こどもの世話や看病について頼れる人がいる」と思う子育て当事者の割合 90% 83.1%
(2022年)*14*
国立社会保障・人口問題研究所「生活と支え合いに関する調査」よりこども家庭庁作成

{*1* 16~49歳の回答結果。}
{*2* 0~10の選択肢で7以上と答えた15歳の割合。OECD平均は61.4%(2022年)。}
{*3* 15~39歳の回答結果。}
{*4* 調査実施当時は内閣府所管。}
{*5* 「学校ではすぐに友達がきる」という設問に「まったくその通りだ」又は「その通りだ」を選んだ15歳の割合。OECD平均は平均は74.6%(2022年)}
{*6* 15~39歳の回答結果。}
{*7* 15~39歳の回答結果。「家族・親族」、「学校で出会った友人」、「職場・アルバイト関係の人」、「地域の人」及び「インターネット上における人やグループ」の全てについて、「困ったときは助けてくれる」に対して「そうは思わない」又は「どちらかといえば、そうは思わない」と回答した者(無回答者を含む。)の割合を全体から減じた割合。}
{*8* 15~39歳の回答結果。「あなたは今までに、社会生活や日常生活を円滑に送ることができなかった経験がありましたか。または、現在、社会生活や日常を円滑に送れていない状況にありますか。」に対して「なかった(ない)」又は「どちらかといえば、なかった(ない)」と回答した者の割合。}
{*9* 16~29歳の回答結果。}
{*10* 15~39歳の回答結果。}
{*11* 13~29歳の回答結果。調査対象国全体での平均は52.8%。}
{*12* 調査実施当時は内閣府所管。}
{*13* 16~49歳の回答結果。}
{*14* 18歳未満のこどもがある世帯の者のうち「頼れる人(子どもの世話や看病)の有無」について「いる」と回答した割合。}



別紙2
こども・若者、子育て当事者の置かれた状況等を把握するための指標

 項目   現状   出典 
「こどもは権利の主体である」と思う人の割合 54.4%      
(2023年)
こども家庭庁「こども政策の推進に関する意識調査」
「あなたの周りには、こどもや若者の遊びや体験活動の機会や場が十分にある」と思う人の割合 40.4%
(2023年)
こども家庭庁「こども政策の推進に関する意識調査」
BMI 18.5未満の20~30歳代の女性の割合 18.1%
(2019年)
厚生労働省「国民健康・栄養調査」
こどもの貧困率
*1*




11.5%
(2021年)

10.3%
(2019年)
厚生労働省「国民生活基礎調査」


総務省「全国家計構造調査」
生活保護世帯に属するこどもの高校等進学率 93.8%
(2022年4月1日現在)
厚生労働省・援護局保護課調べ
生活保護世帯に属するこどもの高校等中退率 3.3%
(2022年4月1日現在)
厚生労働省・援護局保護課調べ
生活保護世帯に属するこどもの大学等進学率 42.4%
(2022年4月1日現在)
厚生労働省・援護局保護課調べ
電気、ガス、水道料金の未払い経験(こどもがある全世帯)



電気料金  5.3%
ガス料金  6.2%
水道料金  5.3%
(2017年)
国立社会保障・人口問題研究所
「生活と支え合いに関する調査(特別集計)」
食料又は衣服が買えない経験(こどもがある全世帯)





食料が買えない経験  16.9%

衣服が買えない経験  20.9%
(2017年)
国立社会保障・人口問題研究所
「生活と支え合いに関する調査(特別集計)」
「障害のあるこども・若者、発達に特性のあるこども・若者の地域社会への参加・包容(インクルージョン)が推進されている」と思う人の割合 27.2%
(2023年)
こども家庭庁「こども政策の推進に関する意識調査」
里親等委託率 3歳未満  25.3%
3歳以上就学率  30.9%
学童期以降  21.7%
(2021年度)
厚生労働省「福祉行政報告例」
児童養護施設のこども進学率 中学校卒業後  97.7%
高校等卒業後  38.6%
(2022年5月1日現在)
こども家庭庁支援局家庭福祉課調べ
児童相談所における虐待対応件数 207,660件
(2021年度)
厚生労働省「福祉行政報告例」
「自分はヤングケアラーに当てはまる」と思う人の割合 中学2年生  1.8%
全日制高校2年生   2.3%
定時制高校2年生相当  4.6%
通信制高校生  7.2%
(2020年度)
大学3年生  2.9%
(2021年度)
厚生労働省「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」
小・中高生の自殺者数 514人
(2022年)
警察庁「自殺統計」より厚生労働省作成
30歳未満の自殺者数 〜19歳  798人
20〜29歳まで  2,483人
(2022年)
警察庁「自殺統計」より厚生労働省作成
SNSに起因する事犯の被害児童数 1,732人
(2022年)
警察庁「令和4年における少年非行及び子供の性被害の状況」
小・中高校における暴力行為発生件数 小学校  61,455件
中学校  29,699件
高校  4,272件
(2022年)
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
30歳未満の不慮事故で死亡者数 850人
(2022年)
厚生労働省「人口動態統計」
妊産婦死亡率 4.2(出産10万対)
(2022年)
厚生労働省「人口動態統計」
妊娠・出産について満足している者の割合 84.3%
(2021年度)
こども家庭庁成育局母子保健課調べ
「学校は、こどもが安全に安心して過ごすことができる、こどもにとって大切な居場所の1つである」と思う人の割合 54.4%
(2023年)
こども家庭庁「こども政策の推進に関する意識調査」
安心できる場所の数が1つ以上あるこども・若者の割合 98.1%
(2022年)
こども家庭庁「こども・若者の意識と生活に関する調査
児童・生徒における肥満傾向児の割合 10歳(小学5年生)男子:15.1%
<参考>
10歳(小学5年生)女子:9.7%
13歳(中学2年生)
男子:12.3%、女子:9.1%
16歳(高校2年生)
男子:11.1%、女子:7.0%
(2022年度)
文部科学省「学校保健統計」
児童・生徒における痩身傾向児の割合 16歳(高校2年生)女子:2.9%
<参考>
10歳(小学5年生)
男子:2.4%、女子:2.5%
13歳(中学2年生)
男子:2.6%、女子:3.3%
16歳(高校2年生)
男子:3.7%
(2022年度)
文部科学省「学校保健統計」
裸眼視力1.0未満の者 小学生  37.9%
中学生  61.2%
高校生  71.6%
(2022年度)
文部科学省「学校保健統計」
「食育」に関心を持っている国民の割合 78.9%
(2022年度)
農林水産省「食育に関する意識調査」
「こども・若者の心身の健康等についての情報提供やこころのケアが十分だ」と思う人の割合 43.1%
(2023年)
こども家庭庁「こども政策の推進に関する意識調査」
「自分の将来について人生設計(ライフプラン)について考えたことがある」人の割合 51.8%
(2023年)
こども家庭庁「こども政策の推進に関する意識調査」
いじめの重大事態発生件数 923件
(2022年度)
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
パソコンや携帯電話等での誹謗・中傷等のいじめ被害 23.920件
(2022年度)
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
小・中学校における不登児童生徒数 299,048人
(2022年度)
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
高校における不登生徒数 60,575人
(2022年度)
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
高校中退率 1.4%
(2022年度)
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
大学進学率 56.6%
(2022年度)
文部科学省「学校基本統計」
若年層の平均賃金 〜19歳
正社員・正職員 185.0千円
正社員・正職員以外
170.1千円
20〜24歳
正社員・正職員 221.0千円
正社員・正職員以外
196.2千円
25〜29歳
正社員・正職員 225.9千円
正社員・正職員以外
212.3千円
(2022年)
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
若い世代の正規雇用労働者等(自らの希望による非正規雇用労働者等を含む。)の割合 15〜34歳  97.2%
(2023年1〜3月平均)
総務省「労働力調査」
50歳時点の未婚率 男性  28.25%
女性  17.81%
(2020年)
国立社会保障・人口問題研究所
「人口統計資料集2023改定版」
「いずれ結婚するつもり」と考えている未婚者の割合 男性  81.4%
女性  84.3%
(2021年)
国立社会保障・人口問題研究所
「出生動向基本調査」
合計特殊出生率 1.26
(2022年)
厚生労働省「人口動態統計」
出生数 770,759人
(2022年)
厚生労働省「人口動態統計」
夫婦の平均理想こども数 2.25人
(2021年)
国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」
夫婦の平均予定こども数 2.01人
(2021年)
国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」
未婚者の平均希望こども数 男性 1.82人
女性 1.79人
(2021年)
国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」
理想のこども数を持たない理由として「子育てや教育にお金がかりすぎるから」を挙げる夫婦の割合 52.6%
(2021年)
国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」
理想のこども数が3人以上の夫婦で理想のこども数を持たない理由として「子育てや教育にお金がかりすぎるから」を挙げる夫婦の割合*2* 59.3%
(2021年)
国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」
「保護者の子育てが地域で支えられている」と思う人の割合 30.9%
(2023年)
こども家庭庁「政策の推進に関する意識調査」
「保護者が、こどもの基本的な生活習慣や自立心等を育む教育を家庭で行うための支援がされている」と思う人の割合 30.7%
(2023年)
こども家庭庁「政策の推進に関する意識調査」
男性の育児休業取得率 17.13%
(2022年)
厚生労働省「雇用均等基本調査」
(育児休業後復職した者のうち)
男女の育児休業取得期間
2週間以上の育児休業取得
男性:48.3%
女性:99.7%
1か月以上の育児休業取得
男性:35.1%
女性:99.6%
(2021年)
厚生労働省「雇用均等基本調査」
6歳未満のこどもをもつ男性の家事関連時間 1日あたり114分
(2021年)
総務省「社会生活基本調査」
週労働時間40時間以上の雇用者のうち週労働時間60時間以上の雇用者の割合 8.9%
(2022年平均)
総務省「労働力調査(基本集計)」
「社会において、共働き・共育て(家庭内で男女ともに仕事や家事、子育てに参画すること)が推進されている」と思う人の割合 34.5%
(2023年)
こども家庭庁「こども政策の推進に関する意識調査」
第1子出産前後の女性就業継続率 69.5%
(2021年)
国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」
ひとり親家庭のこども就園率(保育所・幼稚園等) 79.8%
(2021年)
こども家庭庁「全国ひとり親世帯等調査」*3*
ひとり親家庭のこどもの進学率 中学校卒業後 94.7%
高校等卒業後 65.3%
(2021年)
こども家庭庁「全国ひとり親世帯等調査」
電気、ガス水道料金の未払い経験(ひとり親世帯) 電気料金 14.8%
ガス料金 17.2%
水道料金 13.8%
(2017年)
国立社会保障・人口問題研究所「生活と支え合いに関する調査(特別集計)」
食料又は衣服が買えない経験(ひとり親世帯) 食料が買えない経験 34.9%
衣服が買えない経験 39.7%
(2017年)
国立社会保障・人口問題研究所「生活と支え合いに関する調査(特別集計)」
こどもがある世帯の世帯員で頼れる人がいないと答えた人の割合(ひとり親世帯) 重要な事柄の相談 8.9%
いざという時のお金の援助 25.9%
(2017年)
国立社会保障・人口問題研究所「生活と支え合いに関する調査(特別集計)」
こどもがある世帯の世帯員で頼れる人がいなと答えた人の割合(等価可処分所得第I~Ⅲ十分位) 重要な事柄の相談 7.2%
いざという時のお金の援助 20.4%
(2017年)
国立社会保障・人口問題研究所「生活と支え合いに関する調査(特別集計)」
ひとり親家庭の就業率 母子世帯 83.0%
父子世帯 87.8%
(2020年)
総務省「国勢調査」
ひとり親家庭の親の正規の職員・従業員の割合 母子世帯 50.7%
父子世帯 71.4%
(2020年)
総務省「国勢調査」
ひとり親世帯の貧困率 44.5%*4*
(2021年)
53.3%*5*
(2019年)
厚生労働省「国民生活基礎調査」
総務省「全国家計構造調査」

{*1* 貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)に満たないこども(17歳以下)の数をこどもの数で除したもの。}
{*2* 予定こども数が理想こども数より少ない理由として「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」を選択する割合。}
{*3* 調査実施当時は厚生労働省所管。}
{*4* 貧困線に満たない大人一人(18歳以上65歳未満)とこども(17歳以下)からなる世帯の世帯員数を大人一人とこどもからなる世帯の世帯員数で除したもの。}
{*5* 貧困線に満たない大人一人(18歳以上)とこども(17歳以下)からなる世帯の世帯員数を大人一人とこどもからなる世帯の世帯員数で除したもの。}