[文書名] 国際連合安全保障理事会 決議2803号(ガザ情勢に関する国連安全保障理事会決議第2803号)
国際連合安全保障理事会 決議2803号
安全保障理事会は、
2025年9月29日のガザ紛争を終結させるための包括計画(以下「包括計画」)(本決議の付属文書1)を歓迎し、同計画に署名し、受入れ、支持した国々を称賛し、さらに2025年10月13日の歴史的な永続的平和と繁栄のためのトランプ宣言およびアメリカ合衆国、カタール国、エジプト・アラブ共和国、トルコ共和国がガザ地区における停戦を促進するために果たした建設的役割を歓迎し、
ガザ地区の情勢が地域の平和と隣接国の安全保障を脅かしていることを確認し、パレスチナ問題を含む中東情勢に関するこれまでの安全保障理事会決議に着目し、
1.包括計画を支持し、これを受け入れた当事者を確認し、すべての当事者が誠実かつ遅滞なく停戦を維持することを含めて、包括計画のすべてを実施することを求める。
2.パレスチナ自治政府が2020年のトランプ大統領の和平計画やサウジアラビア・フランス提案などのさまざまな改革案に示された改革を申し分なく完遂し、安全かつ効果的にガザの統制を取り戻すまでの間、包括計画に基づき関連する国際的法原則に一致する形でのガザ再開発の枠組をさだめ、そのための資金調達の調整を行う、国際法人格をもつ暫定統治機構としての平和評議会(Board of Peace)の設立を歓迎する。パレスチナ自治政府の改革計画が忠実に実施され、ガザの再開発が進展した後、パレスチナの自決と国家樹立への信頼にたる道筋の条件が最終的に整うのであろう。アメリカ合衆国は、イスラエルとパレスチナ人が平和的でみのりある共存のための政治的情勢に合意できるような対話を作り出す
3.平和評議会と協力のもと、関連する国際法原則に一致した形で、そして国際連合、赤十字国際委員会、赤新月社などの機関との協力を通して、ガザ地区への人道支援が完全に再開されることの重要性を強調する。そのような支援は平和的使途のみのために使用され軍事組織に転用されないことを確保する。
4.平和評議会に参加する加盟国ならびに平和評議会に対して以下の権限をあたえる。(A)包括計画の目的を達成するために必要な協定を結ぶこと。以下第7段落で設立される部隊の人員の特権や免責に関する協定が含まれる。(B)以下のような機能の実施のため、必要に応じて国際的法人格を保持し取引権限をもつ実施機関を設立すること。(1)ガザ地区の、資格を満たすパレスチナ人からなるパレスチナの実務的・非政治的委員会を指導・支持する暫定統治行政の実施。この委員会の設立はアラブ連盟が支持してきたところであり、この委員会はガザの日々の行政に責任を持つことになる。(2)ガザの再建と経済復興計画。(3)ガザにおける公共サービスや人道支援の調整・支持・実施。(4) 包括計画に適合したガザ地区への人々の出入域促進のための措置。(5)その他包括計画への支持・実施のため必要となる任務
5.第4段落記載の実施機関は平和評議会の暫定権限と監督のもとで運営され、援助者からの自発的貢献と平和評議会の資金調達手段そして各国政府によって資金提供されるものと理解する。
6.世界銀行および他の金融機関に対しガザの再建と開発のための、寄付者によって管理される信託基金の設立を含む財政支援・資金調達を求める。
7.平和評議会に協力する加盟国ならびに平和評議会に対し、ガザにおける暫定的国際安定化部隊(ISF)を設立する権限を与える。ISFは平和評議会が受入れ可能な統合指揮のもと、参加国から提供される部隊からなり、エジプト・アラブ共和国およびイスラエル国との密接な協議と協力のもと配備され、国際人道法を含む国際法に整合的な任務を果たすために必要なすべての措置を行う。ISFは、イスラエルとエジプトの既存の約束を毀損することなく両国、そして新たに訓練され審査されたパレスチナ警察部隊とともに協働する。目的は、境界地域の安全を確保すること。非国家軍事グループからの永続的な武装解除ならびに軍事・テロ・攻撃のためのインフラを破壊し、これらが再構築されることを防ぐことなど、ガザ地区の非軍事化プロセスを確保することによりガザの安全保障環境を安定化させること。人道活動を含む民間人を保護すること。審査されたパレスチナ警察部隊を訓練し支援を与えること。人道回廊を確保するため関係国と調整すること。その他包括計画を支えるために必要な任務を実施すること。ISFが統制と安定を確立するに従い、イスラエル国防軍(IDF)は、IDF、ISF、安全保障に関与する諸国や米国によって今後合意される非軍事化の標準、里程標、時間軸に沿って、ガザ地区から撤退する。ただし、ガザがテロ脅威から十分に安全になるまでは、安全防御線の範囲の駐留部隊は除く。ISFは、(A) ガザにおける停戦の実施監視において平和評議会を支援し、包括計画の目的を達成するため必要な協定を結ぶ。(B)平和評議会の戦略的指導のもと活動し、寄付者からの自発的貢献と平和評議会の資金調達手段および各国政府を通して資金供給される。
8.平和評議会ならびにこの決議によって権限付与される国際的な文民および安全保障任務部隊は、2027年12月31日まで権限付与され、安全保障理事会のさらなる決定のもとにおかれ。ISFへのさらなる再権限付与は、エジプト、イスラエルおよびISFに継続して協力する加盟国との完全な協力と調整に基づき行われることを決定する。
9.加盟国ならびに国際機関に対し平和評議会と協力することを求め、平和協議会のもとの実施機関ならびにISFへの人員、機材、財政支援を与え、技術的支援を与え、さらに平和評議会の行為と文書に対して完全な承認をあたえるための機会を見いだすことを求める。
10.平和評議会に対し国連安全保障理事会に対し6ヶ月ごとに文書による進捗報告を提出することを要請する。
11.本件につき着目しつづけることを決定する。
附属文書1 ドナルド・J・トランプ大統領の「ガザ紛争を終結させるための包括的計画」
1. ガザは、近隣諸国に脅威とならない、過激主義が排除されテロの無い地域となる。
2. ガザはこれ以上ない苦しみを受けてきたガザの人々のために再開発される。
3.両当事者がこの提案に合意するならば、戦争はただちに終結する。イスラエル軍は、人質解放のために合意される線まで撤退する。この間、空爆や砲撃を含むすべての軍事作戦は停止され、完全な段階的撤退の条件が整うまで戦線は凍結される。
4.イスラエルがこの合意に公式に合意してから72時間以内に、生存者と死者を含むすべての人質が返還される。
5.すべての人質が解放された後、イスラエルは250名の終身刑囚と2023年10月7日以降拘束された女性や子供を含む1700名のガザ人を解放する。イスラエルの人質の遺体一人が返還されるに応じて、イスラエルは15人のガザ人の遺体を解放する。
6.すべての人質が返還された後、平和共存と武装解除を約束したハマスの構成員には恩赦が与えられる。ガザを離れることを希望するハマス構成員には受入国までの安全な移動経路が与えられる
7.この合意の受諾をうけ、ガザ地区に全面的な支援がただちに送られる。与えられる援助量は、最低限でも、2025年1月19日の人道支援に関する合意に準拠し、水・電気・下水道のインフラ復興、病院やパン工場の再建、瓦礫除去や道路開通への機材などを含む。
8. ガザ地区への配布や支援の流入は両当事者の干渉なしに、国連や国連機関、赤新月社、そしていずれの当事者とも全く関係のない国際機関を通して進められる。ラファ検問所の双方向の開放は2025年1月19日の合意で実施されたものと同じ仕組みに従う
9. ガザは、日常的な行政サービスや自治体を運営する、実務的で非政治的なパレスチナ人の委員会による暫定的な移行統治のもとにおかれる。同委員会は資格を満たしたパレスチナ人や国際的な専門家によって構成され、新しい国際移行組織である「平和評議会」(Board of Peace)によって監督・指導をうける。同評議会はトランプ大統領を議長とし、トニー・ブレア元イギリス首相を含む今後指名される委員や国家元首から構成される。同機関は、パレスチナ自治政府が2020年のトランプ大統領の和平計画やサウジアラビア・フランス提案などのさまざまな改革案に示された改革を完遂し、ガザの統制を安全かつ効果的に取り戻すことができるまでの間、ガザの再建のための枠組を決定し、その資金調達を担う。同機関は、最善の国際的やり方で、ガザの人々のためになり投資を誘致するのに役立つような近代的効率的統治を作り出していく。
10. 中東に繁栄する奇跡のような近代的都市を生み出すのに貢献してきた専門家たちからなる委員会によってガザ再建・活性化のための「トランプ経済発展計画」が作り出される。善意の国際的グループによって、数多くの思慮深い投資計画や刺激的な開発の考えが打ち出されてきでおり、これらは未来のガザに雇用と機会と希望をもたらす投資を誘致し育てるための安全と統治枠組の組成に考慮される。
11. 参加国との交渉によって優遇関税やアクセス料金が設定される経済特区が建設される
12. だれもガザから強制退去されることはなく、退去を希望するものは自由に退去でき、帰還することも自由である。われわれは人々にはとどまることを促し、より良いガザを建設するための機会を提供する
13. ハマスや他の派閥は、ガザの統治に直接であれ間接であれいかなる形でもガザの統治に関与しないことに合意する。トンネルや武器製造設備を含むすべての軍事、テロ、攻撃に関するインフラは、破壊され再建されない。ガザにおける非軍事化プロセスが、独立監視団の指導のもと実施される。国際的監視のもとで、合意された武装解除の手続きに則り、国際的資金による買い上げ・再統合計画によってすべての武器は永遠に使用されない状態におかれる。新しいガザは、繁栄する経済をつくること、ならびに近隣国との平和共存に全面的に取り組む。
14. 地域のパートナー諸国は、ハマスとその派閥が自らの義務を守り、新しいガザが近隣国とその住民への脅威とならないことを保証する。
15. 米国は、アラブ諸国やその他の国際的パートナー諸国とともにガザにただちに配備される暫定的な国際安定化部隊(ISF)を組織する。ISFはガザにおける審査済みのパレスチナ警察部隊を訓練ならびに支援し、この分野で広範な経験を有するヨルダンとエジプトと協議する。この部隊こそが長期的な国内治安の解決策となる。ISFはイスラエルとエジプト、そして新たに訓練されたパレスチナ警察部隊と協力して境界地域の安全をはかる。ガザへの弾薬の流入を阻止し、ガザの再建と再活性化のための物資の流入を確保することが決定的に重要である。衝突回避の仕組みが当事者によって合意される。
16. イスラエルはガザの占領や併合はしない。ISFが統制と安定を確立するに従い、イスラエル国防軍(IDF)は、ガザがイスラエルやエジプトやその市民への脅威にならないことを確保するためにIDF、ISF、安全保障に関与する諸国や米国によって合意される非軍事化の標準、里程標、時間軸に沿って、撤退する。実務的には、IDFは、移行機関との合意に基づき、完全撤退するまでの間、その占領地域を漸進的にISFに引き渡す。ただし、ガザがテロ脅威から十分に安全になるまでは、安全防御線の範囲の駐留部隊は除く。
17. ハマスがこの提案を遅延または拒絶した場合、拡大された支援作戦を含む上述の措置はIDFからISFに引き渡されたテロの無い地域で実施する。
18. 平和によって生み出される便益を強調することで、パレスチナ人とイスラエル人の心の持ち方や物の見方を変えていく、寛容と平和共存の価値に基礎づけられる宗教的対話のプロセスを確立していく。
19. ガザの復興が進展し、パレスチナ自治政府の改革プログラムが忠実に実施された場合、パレスチナ人の切望するところと我々も認識しているパレスチナの自決と国家への確かな経路への条件がようやく整うことになるであろう。
20. 米国は、平和で繁栄をもたらす共存への政治的展望にイスラエルとパレスチナが合意するための対話を作り出す。