[文書名] 第48回南極条約協議国会議(ATCM48) 2026年5月11日から21日、広島、日本 開催国コミュニケ
日本は2026年5月11日から21日まで第48回南極条約協議国会議(ATCM48)及び第28回環境保護委員会(CEP28)の開催国を務めた。
ATCM48は、外務省、文部科学省及び環境省によって、広島国際会議場において開催された。
南極条約の協議国29か国及び非協議国15か国の代表をはじめ、オブザーバー及び招待された専門家を含む400名以上が参加した。
ATCM48では、宇山秀樹・南極条約協議国会議担当大使が議長を務めた。日本は環境の持続可能性にコミットしており、この会議は印刷物を最小限に抑えペーパーレス形式で開催された。
開会式では、国光あやの外務副大臣、□清人環境副大臣、及び松井一實広島市長が開会の辞を述べた。南極条約が国家間の協調と信頼の最も成功したモデルの一つであることに触れ、国際社会において分断と緊張が深まる中にあっても、ATCMが国際協力を推進する意志を示す必要性が強調された。また、環境保護議定書の附属書VIの実施に関する日本の進捗についても言及し、同附属書を未締結の締約国に対し、附属書の早期発効及び実効的な実施に向けた締結を求めた。
南極条約は、不確実な時代にあっても、南極大陸全体を平和と科学のためにとりおくことで国家が競争よりも協調を選択できるという卓越した理念を掲げた特別な合意であることを踏まえると、ATCM48を国際平和文化都市の広島市で開催したことには、特別な意義がある。協議国は、共通の知識と目的を希求するべく国家が団結した際に可能となることを示す灯明として、南極条約の原則である平和的利用及び国際科学協力を改めて確認した。
開会の全体会合の一環として行われた、南極研究科学委員会(SCAR)によるジル・ミクッキ教授の特別講演は、生物学的利用が可能な栄養素の南大洋への供給における南極地下水の役割とその海洋・大気相互作用に対する影響及び底生生態系に対する課題に焦点が当てられた。
環境保護委員会(CEP)は、環境影響評価プロセスの改善、バイオセキュリティ及び野生生物の疾患に関するガイダンスの強化、並びに種の保全及び観光を含む環境モニタリングに関する議論の前進など、南極環境の包括的保護に向けた取組において実質的な進展を遂げた。南極における急速な変化を認識しつつ、CEPは気候変動対応のための作業計画の実施を継続するとともに、ATCMの議論に資する技術的助言を提供した。CEPの取組は、2026年に35周年を迎える環境保護議定書の規定を実施するための持続的かつ実効的な努力の重要性を改めて確認した。
ATCMは、南極に対する気候変動の影響を議論し、この問題に対処するための国際的な科学協力を継続することで一致した。海氷の減少によるコウテイペンギンの生存に対するリスクを認識し、圧倒的多数の締約国がコウテイペンギンの南極特別保護種への指定を強く支持した。この際、締約国は、CEPが絶滅危惧種の指定に関するガイドラインを採択し、同ガイドラインの下で絶滅リスクはSCARが国際自然保護連合(IUCN)の策定した基準を用いて評価することを想起した。また、同ガイドラインに従い実施されたSCARの評価において、コウテイペンギンがIUCNレッドリスト基準の下で絶滅危惧種に分類されることは適切であるとの結論が示されたことに留意した。
ATCMは、コウテイペンギンの保護を優先事項として推進することの重要性を再確認し、a)南極条約体制の下で利用可能な手段を活用し、南極条約地域における活動を管理すること、b)南極地域外からの圧力に対処する必要性を国際的に発信すること、c)コウテイペンギンの現状に関するモニタリング、調査及び結果の報告を継続的に奨励することに一致した。加えて、CEPは引き続き適切な管理措置を検討し、ATCMに対しさらなる助言を行っていく。
新たに2か所の南極特別保護地区が設定され、13か所の南極特別保護地区の管理計画が改定された。
南極は人為的影響が極めて少なく、卓越した価値を有する自然環境を維持している。近年の観光客の増加による悪影響からこの手つかずの環境を保護することは、国際社会における最重要課題及び共有された責任となっている。
南極における観光の増加及び多様化に対応するため、ATCMは規制及び管理に関する可能な措置及びモニタリング手法について議論し、観光及びその他の活動に関する包括的かつ一貫した枠組みの策定に関する会期間コンタクトグループを通じた作業を継続することを決定した。
南極における活動の透明性は締約国間の信頼の基盤であり、南極における平和的利用と国際協力を可能にしてきた。情報交換に関する会期間コンタクトグループの報告に基づき、ATCMは電子的情報交換システム(EIES)の包括的な改善策について議論し、協議国政府に対し、南極条約及び議定書の下で求められる国別情報交換を一元化するためにEIESの活用に向け一層努力することを勧告する決議を採択した。加えて、締約国は、2026年1月に米国が実施したオーストラリア、中国、インド及びロシア連邦の基地を含む査察報告書を歓迎した。
ATCMは、カナダ、ベラルーシ及びトルコからの協議国資格申請を審査し、各申請国を実績に基づいて検討した。これらの申請に対してコンセンサスが得られなかったが、建設的な協議が行われ、これらの締約国は引き続き協議国資格を追求することが奨励される。
ATCM開催に先立ち、南極の気候変動の影響をモニタリング及び管理するための連携強化を目的として、南極における気候変動とモニタリングに関するCEP及び南極海洋生物資源保存に関する科学委員会の合同ワークショップを開催した。また、2032〜33年の国際極年を見据え、教育とアウトリーチに関するベストプラクティスの共有及び教育とアウトリーチの役割について意見交換を行うワークショップも開催された。
ATCMの会場では、日本の南極地域観測隊の派遣70周年を記念し、国立極地研究所及び環境省による、日本の科学研究の歴史と成果及び南極における日本の環境保護の取組を紹介する展示が行われた。
次回のATCM(ATCM49)は、2027年5月17日から27日にかけて、韓国の仁川において開催される。