[文書名] 「開かれた市場、成長、繁栄のための適切な産業政策の実現」 2026年OECD閣僚理事会議長声明
議長国フィンランド、副議長国ニュージーランド及び大韓民国本文書は、閣僚理事会の議長国であるフィンランドの単独の責任の下に発出される。
1. 繁栄と機会を促進する政策の推進を支援すべく60年以上の経験を活かし、経済協力開発機構(OECD)は、国際協力のための信頼できるフォーラムとして固有の価値を提供している。OECDは、国際的に比較可能で透明性のあるデータ、厳格な分析及び強固なスタンダードを組み合わせることにより、加盟国及びパートナーがアプローチの基準を設定し、グッドプラクティスを共有し、各国の取組を整合させ、より協調的かつ一貫した、効果的な政策解決策を推進することを可能にしている。
2. OECDの設立目的と共通の価値観は、OECD条約及びOECD設立60周年ビジョン・ステートメントに規定されるとおり、より良い生活のためのより良い政策を推進するため、各国の取組と国際協力を融合させ、グローバルな課題に効果的に対処するための取組の指針となっている。
3. ロシアによるウクライナへの残忍な侵略戦争が継続している状況下において、また、公正かつ永続的な平和に向けて、ウクライナの領土一体性及び生存する権利並びに自由、主権及び独立を守る、ウクライナに対する我々の揺るぎない支持に鑑み、ウクライナのOECDとの積極的な関与は特に重要である。OECDは、ウクライナの国別プログラム、キーウのOECD・ウクライナ連絡事務所及び加盟に向けた初期対話を基盤として、ウクライナの人々に強靱で自由かつ繁栄した未来をもたらすための基盤構築を支援すべく、復興、改革及び近代化の取組を引き続き支援していく。
4. 成長とインフレに対するリスクの高まりに加え、燃料、必需品及び肥料等の重要な下流派生品を含むグローバル・サプライチェーンの途絶は、特に最も脆弱なエコノミーに対して重大な影響を及ぼすほか、OECD加盟国及びパートナーにも影響を与えている。これら課題は、世界的な経済、エネルギー及び食料の安全保障に対しリスクをもたらしており、航行の自由及び安全で、信頼性のある、多角化された輸送・エネルギー回廊の重要性を強調している。
5. 世界経済は、新たな政策手段とアプローチを必要とする深刻な課題に引き続き直面している。重要鉱物を含むサプライチェーンに対する依存、高まる地政学的緊張、気候変動、並びに非市場的政策及び市場歪曲的慣行は、グローバルな貿易・投資パターンを変容させており、強靱性及び社会的ウェルビーイングに影響を及ぼす可能性がある。
6. 同時に、新しい技術は生産・ビジネスモデルを再定義し、新たな産業を可能にするとともに、喫緊の課題への対処の機会を提供しており、一方でその恩恵を全ての人に保障するための行動も求められている。こうした動向は、国際協力、ルールに基づく秩序、並びに同志国の間のエビデンスに基づく対話、相互学習及び協力のための信頼できるフォーラムとしてのOECDの役割の重要性を強調するものである。
成長、産業刷新及び繁栄のための産業政策
7. こうした背景の下、産業政策は、構造的不均衡への対処、非市場的政策及び慣行への対応、雇用の質と技術能力の向上、並びに生産性、資源効率、競争力及び産業刷新の強化を図るための選択肢として再び注目を集めている。産業政策はまた、経済成長と安全保障、社会的ウェルビーイング、包摂、ジェンダー平等及び環境を守るとともに、気候変動に対処するための選択肢の一つと見なされている。こうした措置は、市場及び貿易の歪みを回避するため、透明性を持って、対象を絞り、均衡のとれた方法で慎重に設計及び実施されるべきである。
8. 進化する産業政策のアプローチには、特に中小企業(SMEs)を対象とした幅広い支援措置が含まれており、特に、イノベーション支援、規制枠組み、教育・スキルへの投資、質の高いインフラ及び技術普及、並びに対象を絞った政府インセンティブが挙げられる。OECDのエビデンスに基づく分析は、こうした政策が意図した便益をもたらし、競争ルールを尊重し、負の外部性や意図せざる結果のリスクを軽減することを確保するために役立つ。
9. OECDの取組は、産業政策フレームワーク、産業政策のための制度的フレームワーク及び産業戦略の定量化・データベース等のデータセットを通じて、産業変革政策の設計とベンチマーク設定を支援している。
支援国家:競争の促進、規制の改善、財政責任
10. 教育、人的資本、研究及びインフラへの投資は、持続可能で長期的な成長の鍵であり、健康と環境の高水準の保護を確保しながら、生産性と競争力を強化するものである。
11. 過度に複雑かつ不均衡なルール及び規制は、特に中小企業にとって不必要なコストと障壁を生み出し得る。規制の簡素化は、効率性の改善と経済活動の支援、並びに健康・環境保護の高い基準を維持しながら公的財政の持続可能性の強化に資するものである。OECDの「成功のための簡素化(SimplifyingforSuccess)」イニシアティブは、規制の合理化と公的価値の最大化に貢献するものであり、一方で規制の簡素化は、有効性を確保し、政策目標が引き続き達成されるよう慎重に設計される必要があることを認識する。
デジタル及び新興技術の促進のための産業政策
12. OECDは、中小企業を含む産業界及び公共部門が、刷新と生産性の原動力として信頼性のあるデジタル技術及び新興技術の責任ある開発と活用を支援するため、エビデンスに基づく分析を提供している。イノベーション及び産業エコシステムは、人工知能(AI)や量子技術等の技術の加速化において重要な役割を担っている。
13. スキル、労働及び人的資本は、新技術の恩恵を享受するために重要である。データに基づく分析は、高齢化等の人口動態の変化も踏まえ、政府が労働力及びスキル需要の変化を予測するのに役立つ。人間中心の産業変革には、適切な安全策と人間による監督に支えられた良好な労働条件、スキル開発、適応力及び生涯学習の機会が必要であり、同時にジェンダー格差にも対処する必要がある。社会対話はこうした取組を支援し得る。
14. OECD及びグローバルなレベルでの継続的かつ協調的な取組は、マルチステークホルダーのアプローチを通じて、OECDAI原則、広島AIプロセス及び量子技術に関するOECD勧告に沿い、安全、安心で、信頼できる、人間中心のエコシステムにおけるAI及びその他のデジタル・新興技術の責任ある利用と開発を支援すべきである。これには、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)と整合した、国境を越えたデータの流通と多様で代表的なデータへのアクセスを可能とすることが含まれる。
15. より緊密な協力により、リスク評価、緩和措置及び必要に応じて協調的な対応を通じて、技術の流出に関連するリスクへの対処が可能となる。
産業政策と開かれた公正な貿易及び公平な競争条件の整合性
16. OECDは、構造的な過剰生産をもたらすものを含む非市場的政策及び市場歪曲的慣行について意見交換し、公正で開かれた、ルールに基づく貿易を促進し、繁栄、持続可能な経済成長、社会的包摂及び開発のための投資を推進し、投資の安全を強化するための、志を同じくする加盟国のフォーラムである。
17. 世界貿易機関(WTO)を中核とする、開かれた市場及びルールに基づく貿易体制の強化は、WTO改革を支援する取組と並び、引き続き不可欠である。現代的な貿易の実態及び加盟国の利益に対応するWTOの能力を向上させる必要があるという、WTO加盟国間の認識が高まっている。意味のある改革を推進するためには、WTOにおける建設的な議論が必要である。WTOで合意されたルールは、世界貿易を円滑にするための鍵となる。
18. OECDの取組は、本閣僚理事会において公開版が公表されるMAGIC(Manufacturing Groups and Industrial Corporations)データベース等を通じて、産業補助金の範囲と規模に関する透明性を高めている。これは、非市場的政策、市場歪曲的慣行、それらに起因する過剰生産、並びに開発途上国・新興国を含むエコノミーへのその影響への対処における協力を支援し得るものである。
19. 非市場的政策及び市場歪曲的慣行は、多くのエコノミーのいくつかのセクターにおける過剰生産と供給の過度な集中を助長してきた。公平な競争条件を回復するために、これらの課題への対処が引き続き重要である。特に、重要鉱物について、サプライチェーンの途絶を招くおそれがある恣意的な輸出規制を通じたものを含む経済的威圧は、経済安全保障及び経済的強靱性を損なうものであり、引き続き深刻な懸念となっている。
20. OECD公的輸出信用アレンジメントの参加国による現代化作業の第2フェーズの開始は、同アレンジメントが輸出業者への支援を提供し、輸出信用における公平な競争条件を確保するという本来の目的を果たし続けることを保証することに貢献する。この文脈において、同アレンジメントが公平な競争条件の維持及び市場指向的な成果と整合しつつ、重要鉱物のサプライチェーン安全保障の促進を効果的に支援し得る方法に関する戦略的検討を含め、主要な要素に関する交渉を着実に進めることが引き続き重要である。
21. 重要鉱物への安定的なアクセスは、鉄鋼及び半導体から人工知能に至る戦略的に重要な産業セクターを含め、競争力、イノベーション及び経済安全保障の観点からますます重要となっている。OECDは、戦略的指針に基づき、また、2026年4月28及び29日にOECDイスタンブール・センターで開催されたOECD重要鉱物フォーラムにおける議論を踏まえ、国際エネルギー機関(IEA)と緊密に連携しながら、多様化で、信頼性のある、強靱かつ責任ある重要鉱物サプライチェーンの確保に向けた取組を更に強化し得る。
産業政策、投資及び開発
22. 首尾一貫した産業政策は、効率的な技術の導入を支援し、投資を誘引し、気候変動への対処に寄与すると同時に、競争力と強靱性を強化することができる。OECDの基準及びツールは、引き続きこの文脈において中心的役割を担っており、これには、50周年を迎えたOECD国際投資及び多国籍企業に関する宣言、責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針及び投資のための政策枠組みが含まれる。
23. 債務の増加、貧困、食料不安及び人道的支援のニーズの高まりは、セルビア・コミットメントを踏まえ、より包摂的なアプローチを通じて開発協力の未来を形作り、各国のオーナーシップを高めることの重要性を示している。OECD「国際開発協力の未来」会合及び継続中の開発援助委員会(DAC)の見直しは、開発協力の将来に関する議論に貢献するものである。
グローバルな関係
24. OECDの戦略的拡大と国際的な関与は、世界的な政策の整合性を強化している。本閣僚理事会は、ラテンアメリカ・カリブ(LAC)地域プログラムの10周年を記念するとともに、LACのための戦略的枠組のOECD実施計画に留意する。OECDとアフリカのパートナーシップ強化、アルゼンチン、ブラジル、ブルガリア、クロアチア、インドネシア、ペルー、ルーマニア及びタイの加盟プロセス並びに、ユーラシア、インド太平洋、ラテンアメリカ・カリブ、中東・北アフリカ、東南アジア、南東ヨーロッパを含む各地域におけるOECDの継続的な関与について進展が見られた。