[文書名] 世界経済・金融危機に関する東アジア首脳会議による共同プレス声明
1.アピシット・ウェチャチワ・タイ王国首相は、ASEAN議長国及び東アジア首脳会議(EAS)調整国として、EAS各国首脳から、世界経済・金融危機に関する東アジア首脳会議による共同プレス声明を発出するよう委任を受けた。2005年の東アジア首脳会議に関するクアラルンプール宣言に従い、各国首脳は、世界が過去に例のない規模での全世界的な景気後退に直面しているとの点に同意し、金融の安定回復、経済成長及び開発に焦点を当てた政策による対応を求めた。
2.世界に開かれた成長センターとしてのアジアの重要な役割に留意しつつ、各国首脳は、金融危機及び世界経済悪化の影響に対し的確かつ協調した措置を講じるとともに、地域の成長力を強化し需要を拡大する必要性を理解する。各国首脳は、EAS参加国により実施された財政・金融刺激策その他政策措置を賞賛するとともに、成長及び雇用を維持し、貧困を削減し、信認を回復し、また中長期的なマクロ経済及び金融の安定を支えるため、必要に応じ更なる行動をとることを決意した。各国首脳は、経済成長に役割を果たす安定した金融システムがなければ、景気刺激策のみでは、期待された効果を発揮することはないであろうとの点についても同意した。
3.各国首脳は、保護主義及び歪曲的な措置に対し毅然と対抗し、新たな障壁を控えることが決定的に重要であることを強調した。各国首脳は、WTOドーハ開発アジェンダ交渉を、これまでの進展の基に、迅速、野心的かつバランスのとれた形で妥結させることが必要である点、またその妥結は、世界経済の回復に信認を注入し、その助けになるであろうとの点で同意した。各国首脳は、更なる地域経済協力、貿易の円滑化及び自由化が、EAS地域をより魅力的な市場及び投資先とすることに貢献するとの点に同意するとともに、各国首脳は、この目的のため、東アジア包括的経済連携(CEPEA)構想が域内貿易を更に拡大し得ることに留意した。各国首脳は、第4回EASにおけるCEPEAの第2段階の研究による提言に期待を示した。各国首脳は、自らのコミットメントの更なる証として、各国の財政刺激策及び産業支援策の貿易歪曲効果を最小化することを約束し、またそのために他の諸国と協働することに同意した。
4.世界的な金融混乱及び経済停滞と、そのEAS参加国への影響が示すように、国際的な連関が先例のないほど高まっているとの認識のもと、各国首脳は、地域の金融協力及び統合の枠組を更に強化する必要性に同意した。各国首脳は、ASEAN+3協力枠組におけるチェンマイ・イニシアティブ及びそのマルチ化のプロセスを加速化するための努力、地域金融市場を発展及び深化させるアジア債券市場育成イニシアティブの取組を賞賛した。
5.各国首脳は、ASEAN主導の協議が、アジア及びアジア太平洋における他の機関及びフォーラムとともに、将来の地域及び世界的な経済・金融危機から地域を防護することに貢献し得るとの点に同意した。
6.各国首脳は、信認、成長及び雇用を回復し、保護主義を拒絶し、世界の貿易及び投資を促進し、信頼を取り戻すために金融規制を強化し、新興国及び途上国のより大きな発言権及び代表権を反映するために国際金融機関を改革し、新興国及び途上国を始めとする成長を支援する世界の資金流動性を高めるために追加的に1.1兆米ドルを投入するという、2009年4月2日のロンドン・サミットの合意を支持した。この関連で、各国首脳は、2010年末までに世界の生産を4%引き上げ、また環境に優しい経済への移行を加速化するためのG20が主導する世界規模の努力への支持を約束した。
7.各国首脳は、社会的セーフティ・ネット・プログラムや中小企業支援を含め、危機の影響を緩和するための具体的措置を策定するための国際協力の重要性を強調した。
8.各国首脳は、基礎インフラ整備の加速化、内需拡大のための政策及び措置、中小企業を始めとする民間部門支援及び人材育成、並びにASEAN統合、貿易・投資の円滑化、広域開発の促進及び人的交流の促進等の地域協力の推進等を通じ、地域の潜在的成長力を高め、需要を拡大する決意を表明した。
9.各国首脳は、中小企業を含むビジネスにとり十分な資金が入手可能となることを確保し、域内の貿易・投資の流れを維持することを確保するための、輸出信用機関(ECAs)、国際金融機関及び民間銀行による努力を支持することに同意した。各国首脳は、輸出信用機関が再保険、キャパシティ・ビルディング及び情報交換の分野で協力を強化することを歓迎した。
10.各国首脳は、金融規制を含むEAS参加国の金融部門の強化に関するものを始めとする、地域の金融協力の重要性を再確認した。各国首脳は、このアジェンダを前進させるためのEAS各国財務当局者の努力を賞賛し、「EAS諸国の金融部門能力強化の需要評価」報告書が、2009年10月の第4回EASにおいて改めて検討される現在行われているキャパシティ・ビルディングの作業の基礎となり得ることに留意した。
11.広域開発を促進するため、各国首脳は、東アジアASEAN経済研究センター(ERIA)、ADB及びASEAN事務局に対し、広域イニシアティブの調整、促進、高度化及び拡充に貢献し、また民間部門の参加を促進する、整合性のとれたマスタープランをできるだけ早く準備するため協働するよう奨励した。更に、各国首脳は、ERIAに対して、地域の経済成長を刺激し、地域統合を深め、東アジアにおけるパートナーシップを強化するための政策提言を提出するよう求めた。
2009年6月3日にタイ・バンコクにて発出した。