[内閣名] 第94代菅直人内閣(平成22.6.8〜平成23.9.2)
[国会回次] 第177回(常会)
[演説者] 与謝野馨内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)
[演説種別] 経済演説
[議院演説年月日] 2011/01/24
[参議院演説年月日] 2011/01/24
[全文]
経済財政政策を担当する内閣府特命担当大臣として、その所信を申し述べます。
二年余り前に発生したいわゆるリーマン・ショックにより、世界は金融・経済危機に陥り、日本経済も景気、雇用の大幅な悪化を経験しました。
世界経済は、今、各国の政策努力にも支えられ、緩やかに回復しておりますが、依然、信用収縮の継続など、大きなリスクに直面しております。一方で、新興国が躍進し、広域の経済連携の動きが強まるなど、新たな動きも見出されます。
私は、こうした世界経済の新たな動きの中に最大限のチャンスをつくり、一方で、日本経済に影響し得るリスクを最小化しつつ、我が国が直面する長期の構造問題に正面から全力で取り組んでまいります。
第一に、景気回復と雇用環境の改善に取り組んでまいります。
我が国の景気は昨年秋ごろから足踏み状態にあり、失業率が高水準にあるなど、厳しい状況です。
政府は、昨年九月に閣議決定した新成長戦略実現に向けた三段構えの経済対策に基づき、経済危機対応・地域活性化予備費を活用したステップワン、平成二十二年度補正予算によるステップツーを実行に移し、景気、雇用の下支えを図ってまいりました。これらの経済対策が早期かつ最大の効果を発揮するよう、各府省の副大臣、政務官級で構成する景気対応検討チームを活用し、徹底した進捗管理を図るとともに、引き続き、景気のきめ細かい実情把握に努めてまいります。
さらに、成長と雇用に重点を置いた平成二十三年度の予算、税制等からなるステップスリーに切れ目なくつなぎ、雇用を起点とした経済成長の実現を確かなものとしてまいります。
こうした取り組みにより、新成長戦略に掲げたように、平成二十三年度中に消費者物価上昇率をプラスにし、その後、速やかに安定的な物価上昇を実現し、デフレを終結させることを目指します。
また、日本銀行に対しては、早期のデフレ脱却に向け、引き続き、政府と緊密な情報交換、連携を保ちつつ、適切かつ機動的な金融政策の運営によって経済を下支えするよう期待します。
世界経済の緩やかな回復が期待される中で、こうした政府の取り組みを通じて、雇用、所得環境の改善が民間需要に波及する動きが徐々に強まることから、景気は持ち直していき、平成二十三年度の実質経済成長率は一・五%程度になると見込んでおります。
第二に、我が国経済の閉塞状況を打ち破り、元気な日本を復活させるため、経済を活性化することに取り組んでまいります。
政府は、新成長戦略を実現するための施策を盛り込んだ平成二十三年度予算、法人実効税率五%引き下げなどを含む税制改正を決定いたしました。これらを早期に成立させていただき、経済活性化に積極的に取り組むことを通じて、二〇二〇年度までの年平均で、名目三%、実質二%を上回る成長を目指します。
日本経済の本質的な力を強くするためには、イノベーションの創造と、その発揮のための経済政策が重要です。
中長期的に、人口減少、高齢化から強まっていく供給面からの成長制約に備えるため、科学技術、教育、人材育成など、効果の発現までに相当のリードタイムを必要とする成長基盤づくりを図ってまいります。
また、ことし三月までに、新成長戦略の実現に資する規制・制度改革の方針を策定するなど、各般にわたる取り組みを推進してまいります。
経済活性化は、諸外国との開かれた経済関係を構築していくこと、それによってさらに促進されます。昨年十一月に閣議決定した包括的経済連携に関する基本方針に基づき、主要貿易国との間で、世界の潮流から見て遜色のない高いレベルの経済連携と、そのために必要となる競争力強化等の抜本的な国内改革を進めてまいります。
第三に、経済活性化と社会保障改革、財政健全化は相互に密接に関係するものであり、持続可能性の確保に向けて一体的に取り組み、国民が日本の将来に対する確固たる自信を持てるようにしていくことが重要であります。
社会保障制度について、持続可能性を確保するための制度改革が必要であることは、国民各層の御理解をいただきつつあると考えております。英知を集め、内閣と与党がまとめた社会保障改革の五つの基本原則を具体化してまいります。
本年六月までに、社会保障改革の全体像をお示しするとともに、必要な財源を確保するための、消費税を含む税制抜本改革の姿をお示しいたします。
社会保障のほころびをどう是正し、その一方で、社会保障の機能をどう強化するか、また、経済との関係をどう考えるかを検討し、国民の安心を実現してまいります。
また、財政健全化については、財政運営戦略において定めた中期財政フレームのもと、平成二十三年度予算案において、基礎的財政収支対象経費は平成二十二年度当初予算の規模である約七十一兆円を上回らないものとし、新規国債発行額についても約四十四兆円と、本年度と同水準以下に抑制をいたしました。
財政健全化への道筋については、経済財政の見通しや展望等を踏まえつつ、その進捗状況等を検証したところでございます。税収を超える財源が国債発行によって調達されているような現在の財政状況をこのまま放置しておくと、将来、長期金利の上昇や債務残高比率の発散が生じ、日本に対する国際的な信認も失われることとなりかねません。
今後、デフレ脱却と経済成長の実現を確かなものとしつつ、財政健全化と社会保障改革の達成に向け、一歩一歩取り組みを進めてまいります。
私の政治家としての原点は、日本の豊かさを失いたくないというものです。すなわち、次世代への責任を最も重視する政治です。
国民が安心して安全に暮らせる社会をつくり、後世に受け継いでいくためにも、日本経済は休むことなく前進し続けなければなりません。景気回復と自律的な経済成長の実現、社会保障改革、税制改革、財政健全化など、我が国が直面している諸課題に対し、勇気を振り絞って、微力ではありますが、全身全霊を傾けて取り組んでまいります。
国民の皆様、議員各位の御理解と御協力をお願いし、所信の表明といたします。(拍手)