[内閣名] 第97代 第3次安倍晋三内閣(平成26.12.24〜平成29.11.1)
[国会回次] 第189回(常会)
[演説者] 甘利明内閣府特命担当大臣
[演説種別] 経済演説
[衆議院演説年月日] 2015/2/12
[参議院演説年月日] 2015/2/12
[全文]
経済財政政策を担当する内閣府特命担当大臣として、その所信を申し述べます。
安倍内閣では、長引くデフレからの早期脱却と経済再生を図るため、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三本の矢を一体として強力に推進してきました。こうした政策のもと、有効求人倍率は二十二年ぶりの高水準、名目雇用者報酬が十七年ぶりの高い伸びとなるとともに、企業の経常利益は過去最高水準、上場企業のROE、自己資本利益率は政権発足時の約一・五倍となり、倒産件数は二十四年ぶりに年間一万件を下回りました。
日本経済は引き続き緩やかな回復基調が続いていますが、足元では、個人消費などに弱さが見られます。この背景には、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減や夏の天候不順の影響に加え、輸入物価の上昇、さらには消費税率引き上げの影響を含めた物価の上昇に家計の所得が追いついていないことなどがあると考えられます。
本日閣議決定をした政府経済見通しでは、平成二十七年度の日本経済について、雇用・所得環境が引き続き改善をし、好循環がさらに進展するとともに、原油価格低下などにより交易条件も改善する中で、堅調な民需に支えられた景気回復が見込まれ、経済成長率は実質で一・五%程度、名目で二・七%程度と見込んでおります。
現下の経済情勢等を踏まえ、経済の脆弱な部分に的を絞り、かつ、スピード感を持って対応を行うことで、経済の好循環を確かなものとするとともに、地方にアベノミクスの成果を広く行き渡らせるため、昨年十二月末に、地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策を閣議決定いたしました。
本緊急経済対策は、現下の経済情勢等を踏まえた生活者、事業者への支援、地方が直面をする構造的課題等への実効ある取り組みを通じた地方の活性化、災害復旧復興加速化など災害・危機等への対応などを内容としており、策定の趣旨に鑑み、スピード感を持って具体化を図ってまいります。
また、政労使会議において、政府の環境整備の取り組みのもと、経済界による賃上げへの最大限の努力や、取引企業の仕入れ価格の上昇などを踏まえた価格転嫁や支援、協力についての総合的取り組み、労使双方によるサービス業の生産性向上への一致協力した取り組みなどに合意をしました。今後もフォローアップを行うことにより、賃上げの流れをことしの春も、また翌年の春も継続させ、経済の好循環の拡大を目指してまいります。
日本銀行においては、昨年十月に量的・質的金融緩和の拡大を決定するなど、二%の物価安定の目標を実現するための取り組みを進めているところです。政府としては、経済・物価情勢を踏まえつつ、この目標を実現することを期待します。
安倍内閣が進める成長戦略については、スピード感を持って強力に実行、実現していくことが極めて重要です。
このため、昨年十二月末、日本経済再生本部において、「アベノミクス成長戦略の実行・実現について」として、我が国の社会経済の構造を変革し、世界で最もイノベーティブな国となるよう目指すため、農業、雇用、医療、エネルギー等のいわゆる岩盤規制の改革を初めとして、成長戦略に掲げられた各施策を速やかに具体化し、実行、実現する方針を取りまとめました。
さらに、産業競争力強化法に基づき、産業競争力の強化に関する実行計画の改定を閣議決定したところであり、成長戦略の各施策の確実な実行に取り組んでまいります。
また、法人税を成長志向型の構造に変えるため、平成二十七年度には法人実効税率を二・五一%引き下げることとし、引き続き、数年で法人実効税率を二〇%台まで引き下げることを目指してまいります。
健康、医療については、日本医療研究開発機構の本年四月の設立に向けて必要な準備を進めるなど、先般閣議決定された健康・医療戦略を着実に推進してまいります。
一昨年の日本再興戦略策定以降、さきの臨時国会までに、四十本を超える成長戦略関連法が成立をしました。これらの法律をしっかりと実行するとともに、引き続き、本通常国会でも成長戦略の実行に必要な法案を提出してまいります。
また、産業競争力会議で成長戦略進化のための検討を進め、年央の成長戦略の改定を目指してまいります。
さらに、民間投資の喚起による経済成長の実現のため、PPP・PFIの抜本改革に向けたアクションプランの実行を加速してまいります。
市民活動の促進については、地域の課題解決や活性化の重要な担い手であるNPOの育成や寄附文化の醸成等を通じ、活力あふれる共助社会づくりを進めてまいります。
TPPは、アジア太平洋地域において、普遍的価値を共有する国々と二十一世紀型の新たな経済統合ルールを構築する野心的な試みであり、この地域の成長の起爆剤になり、人々の暮らしを豊かにすると同時に、我が国経済の発展にも寄与するものであります。
昨年十一月に北京で開催をされたTPP首脳会合及び閣僚会合では、交渉の終局が明確になりつつあることが確認をされ、早期妥結に向けた大きなモメンタムができました。
我が国としては、交渉の早期妥結へ向けて努力をし、国益をしっかりと最終的な成果に反映すべく、全力を挙げて交渉に取り組んでまいります。
強い経済は日本の国力の源泉です。これまで述べた施策を着実に実施することにより、経済の好循環を確かなものとし、消費税率の一〇%への引き上げを平成二十九年四月に確実に実施してまいります。
引き続き、経済再生との両立を図りながら、財政健全化の取り組みも着実に進めてまいります。
来年度予算案においては、新規国債発行額を六年ぶりに三十兆円台とし、国の一般会計の基礎的財政収支が今年度より四・六兆円改善をいたしました。国と地方を合わせた基礎的財政収支赤字対GDP比半減目標の達成も見込まれます。
財政健全化に向けて着実に前進をしており、今後も歳出歳入両面の取り組みを進めてまいります。
二〇二〇年度までに国と地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化するという財政健全化目標の達成に向け、経済再生と財政健全化の両立を実現すべく、経済財政諮問会議において検討を進め、具体的な計画を本年夏までに策定してまいります。
少子高齢化が進展する中で、社会保障の安定財源確保と財政健全化を同時に達成する観点から、引き続き、社会保障・税一体改革に取り組みます。
来年度予算案においては、子ども・子育て支援を初め社会保障の充実について、可能な限り予定どおり実施することとしております。
また、世界に誇るべき社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすため、平成二十九年四月には確実に消費税率一〇%への引き上げを実施するとともに、社会保障制度改革のスケジュールに沿って社会保障の充実、安定化に取り組むなど、改革を推進してまいります。
さらに、医療、介護情報の見える化を進め、各地域の状況を比較した結果も踏まえて支出の効率化、適正化を図るとともに、有識者から成る社会保障制度改革推進会議において、二〇二五年を展望した中長期的な改革の検討を進めてまいります。
安倍内閣の至上命題は、十五年以上にわたって日本を苦しめてきたデフレからの脱却を図るとともに、経済再生と財政健全化の両立を実現することです。そのためには、企業収益の拡大が賃金の上昇や雇用の拡大につながり、消費の拡大や投資の増加を通じてさらなる企業収益の拡大に結びつくという経済の好循環を力強く回転させていく必要があります。
本年はまさに正念場の年であり、これまで以上にアベノミクスを強力に推進、展開することにより、全国津々浦々まで景気回復を実感していただけるよう、全力を尽くしてまいります。
国民の皆様と議員各位の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げます。(拍手)