データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「国際協力の日」宇野外務大臣挨拶「21世紀へ向けての開発援助」

[場所] 東京プリンスホテル
[年月日] 1988年10月6日
[出典] 外交青書33号,298ー305頁.
[備考] 
[全文]

1. 本日と明日の2日間,「国際協力の日」を記念して,我が国の中心的援助実施機関である国際協力事業団(JICA)と海外経済協力基金(OECF)の共催により国際シンポジウムが開かれます。この意義深い催し物を共同で企画されたJICAとOECFに対し敬意を表するとともに,本日,私の所感を表明する機会を得ましたことを多とするものであります。

このシンポジウムには国内はもとより海外から多数の人達が参加されております。私は先ず,参加者の皆様,特に海外から遠路はるばる来日された皆様を,心から歓迎したいと思います。

 「国際協力の日」は,戦後,独立回復まもない日本が,初めて海外技術協力に取り組むこととし,アジア・太平洋地域の開発機構の1つであるコロンボ計画への参加を決定した1954年10月6日に因んで決められたものであり,また国際協力に対する政府及び国民各位の認識を新たにすることを目的と致しております。このような特別の日に開催される今回のシンポジウムがその目的に大いに貢献することを心から期待致しております。

(概説)

2. さて,今回のシンポジウムは,21世紀を展望しつつ開発援助の抱える課題を探ることにあると理解致しております。将来を展望する前に,先ず80年代を振り返ると,私は,総じてこの時代は,国際社会において相互依存の関係が一段と進む中で,色々な意味で開放化が進み,また特に市場経済体制に対する信頼が益々強まった時代ではないかと思います。開放された経済体制は,人口のちょう密な地域を含めた多くの開発途上国,特に東アジア・太平洋地域の開発途上国の目覚ましい経済発展をもたらしております。開放化政策を進める中国経済の発展,そして,ソ連において経済効率化のために「ペレストロイカ」が進められていることも世界の注目を集めているところです。

3. しかし,残念なことに,開発途上国をとり巻く情勢は明るい材料ばかりでなく,多くの困難な問題が見られます。80年代に入り,一次産品価格の下落等種々の影響を受けて,多くの開発途上国の経済状況は悪化しました。輸出所得が減少したのみならず先進国からの直接投資も減退し,累積債務問題の悪化も見られました。

世界銀行の報告によれば,ここ数年,贈与を除いた公的援助及び民間長期資金の先進諸国から開発途上国への流れの総量よりも,開発途上国から先進諸国への資金の流れの総量の方が大きいという事態になっております。いわば「逆流」減少が起きているわけで,その是正を図ることが国際経済の健全な発展を図る見地から大きな課題となっていることは御承知のとおりです。

このような状況に対応するため,国際貿易,金融,援助等の各方面で努力が払われております。1つは先進諸国経済の回復による開発途上国からの輸入の拡大であります。この面では最近好転の兆しがあるように見受けられます。例えば,現在の我が国の経済成長は輸出主導型から内需主導型へと切り変り,内需4.7パーセント,外需マイナス1.0パーセントという今年度の経済成長見通しからも明らかなように,我が国の経済構造は,グローバルな経済均衡に資する方向へ転換しつつあります。特に開発途上国に対しより大きな輸出市場を提供するようになっており,例えば,アジア新興工業国・地域(NIEs)からの製品輸入は87年及び88年前半に,それぞれ約60パーセント増加しております。

第二に,開発途上国への投資の拡大も重要であり,日本の開発途上国への直接投資は,対前年度比で35パーセント伸びているのは心強い限りです。

第三に,開発途上国の債務負担軽減の問題があります。この面では,先進国サミットやパリ・クラブ,そして先週ベルリンで開かれた世銀・IMF等の国際的な場で種々の努力が続けられております。低所得債務国については,この構造調整努力に対する譲許的資金を中心とした公的支援の強化が必要であり,公的債務の棒引きその他の債務救済措置が実施されております。中所得重債務国についても,債務国の支払い能力を回復させることを基本とした解決策をケース・バイ・ケースの原則で探り,メュー・アプローチによって解決手段の選択肢を広げる工夫がされております。

今日世界のGNPの1割を超える力を蓄えるに至り,また世界一の債権国となった日本が,貿易,投資,国際金融の面での活動を通じ世界経済全体の安定と発展の為にふさわしい役割を果たすことは当然であり,政府としても今後積極的な対応を進めて参る考えであります。

(国際貢献に対する基本姿勢)

4. このような考えに立ち,日本にとりふさわしい国際的貢献として特に強調されるべきは,世界人口の4分の3を占める開発途上国の経済社会発展と民生向上に向けられた開発援助であります。

第一に,南北問題の状況には,解決へ向けての大きな前進は見られておりません。サハラ以南アフリカ,南アジア等の後発開発途上国(LLDC)を始め多くの開発途上国の経済状況は改善するどころか悪化の兆しさえ見せております。最も関心を呼ぶべき貧困問題も広範に存在しています。自由世界第2位の経済力を有する日本が,途上国が直面する問題の解決に貢献することは,人道的見地からも,国際社会における相互依存の立場からも重要な責務であります。

第二に,日本は戦後平和憲法を制定し,平和国家として生きる道を選択しました。経済大国になっても決して軍事大国にはなりません。そのような日本が国力の中心である経済力を活用した協力を通じ国際社会の平和と安定に寄与することを我が国の政策の柱とすべきは当然であります。

第三に,日本は,欧米諸国と歴史的・文化的に異なった土壌で自ら開発途上国から先進工業国へと発展を遂げた歴史があります。この非西欧的土壌の下での近代化・工業化の歴史とその経験は経済発展の1つのモデルとして,アジア・アフリカ等の開発途上国の参考ともなり期待ともなりえましょう。このような諸国に対し協力を進めることは,日本にとり極めてふさわしい国際貢献と考えます。

5. コロンボ・プランに参加した1954年当時の日本の海外援助予算は僅か1,800万円(5万ドル」{」はママ}でした。その後,60年代の終わり頃まで我が国は海外から援助を受けつつ,同時に自ら援助国としての道を歩んで参りましたが,経済力の伸長に応じ,特に70年代の後半から格段の努力を払うことになります。即ち1987年から政府として4次にわたり中期目標を樹て,ODAの計画的な拡充に取り組んできました。この10年間,緊縮財政にもかかわらず,格段の努力を払った結果,ODAの予算,実績ともに着実に増大して参りました。

竹下内閣は「世界に貢献する日本」というスローガンを掲げ,これを実現するための具対策の1つとして「国際協力構想」を打ち出しております。その中で,「平和のための協力」及び「国際文化交流」の強化と並ぶ3本柱の1つとして「ODAの拡充」が打ち出されております。これは以上申し述べたような問題意識に基づく我が国の真摯な努力の一環であります。

(第4次中期目標)

6. 去る6月,政府は,御承知の通り,1988年から1992年の5か年間を対象とする第4次のODA中期目標を新たに定めました。

我が国のODA実績は,87年は約75億ドルとDAC諸国の中で第2位の規模となり,DAC援助国全体のODA総額(412億ドル)に占めるシェアも18パーセント程度となっております。しかし,これはDAC全体の経済規模(GNP総額)に占める我が国のシェア約20パーセントに比べると,なお下回っております。新目標では,その反省に立って,計画期間中に我が国のODAシェアを経済規模のシェアに見合うところまで引き上げることとしました。

具体的目標としては,1988年〜92年の今後5か年間のODA実績総額を500億ドル以上とすることを目指しております。多くの開発途上国が開発資金の不足に直面し,円滑な経済発展の制約要因となっている状況の中で,ODAを含む先進諸国からの資金の流れが減少ないし停滞しているのが現状です。そこで我が国が率先して途上国向け資金フロー,特にODAのフローの拡充に引き続き積極的に努力することを内外に宣明したものであります。

併せて,ODAの対GNP比率の着実な改善を図ることとしております。我が国のGNPは今年度見通しでは365兆円という巨大な規模であり,ODAの対GNP比率の改善は決して容易ではありません。また,ODAの対GNP比のみで各国の貢献度を図ることは,単純化のそしりを免れないとの議論もありえましょう。しかし国際的な0.7パーセント目標に一歩でも近づくため最大限の努力を傾けることが重要であります。その意味において,日本が近年中に現在の0.31パーセントからDAC諸国の平均水準まで引き上げるとの目標を明示したことの意義は大きいと考えます。

また途上国の膨大な資金需要を我が国だけで手当てすることはもとより不可能であり,他の援助国に対し援助量の拡充を訴えていくことも重要と考えます。

(内容面での充実)

7. ODAについては,量的拡充とともに,内容面・質的側面での改善を図ることが重要であり,開発途上国の経済社会開発と民生向上のためニーズに合致した協力を総合的,機動的かつ弾力的に行う必要があります。

例えば,援助ニーズの多様化が見られます。これについて申し上げれば,インフラ整備等による産業基盤の拡充や経済成長への支援,貧困と飢餓対策,保健衛星・人口家族計画,教育・人造りなど,従来型の協力分野は引き続き極めて重要でありますが,これらに加え,近年特に途上国における森林破壊や砂漠化の進行等,地球的規模での取組みが求められている課題や大気汚染,水質汚濁といった先進国型の環境問題も顕在化して来ております。こうした多様化は今後も強まると思いますが,ニーズに適切に応じていくために,援助形態・援助メニューの多様化と弾力化が求められております。

我が国は,これまでもノン・プロジェクト援助の拡充,内貨融資供与の拡充,リハビリテーション型の援助の拡充などにより個々のニーズに対応しておりますが,更に科学技術,文化,環境保護等の新しい分野にも積極的に取り組んで参る考えであります。

また,我が国の二国間援助は−ODA全体の約70パーセントがこれに当たりますがー従来ASEAN諸国を初めとしてアジア諸国に重点配分されて来ております(87年実績で約65パーセント)。これは,日本とアジア諸国との地理的,経済的,歴史的関係の緊密さを反映したいわば自然の姿と申せましょう。今日,このアジア地域,特に東アジア・太平洋の地域が世界でも最も力強い発展を遂げており注目を浴びておりますが,もし,日本の長年にわたる資金協力と技術協力の数々の集積がこの地域の経済成長と発展に重要な貢献をしているとすれば,誠に幸いであります。

配分に当たってアジア地域の重要性は今後とも不変でありますが,同時に我々は,より広い視野をもつべき時にきていると考えます。アジア諸国の中には,既にかなりの発展段階にある国も多く,長期的に見れば,政府レベルの援助から民間レベルの協力へ次第に重点が移行して然るべき例も生じてくるものと思われます。他方,国際援助社会において,長期的な経済停滞状況にあり依然として特別な配慮が必要なサハラ以南アフリカ諸国等に対する援助の拡充が緊急の課題となっております。

我が国はサハラ以南諸国を中心に対アフリカ援助を着実に拡充しております(87年,二国間援助全体の約10パーセント)。昨年より「3年間5億ドルのノン・プロジェクト,アンタイドの無償援助」を実施中であるほか,後に申し上げるLLDC諸国に対する円借款分の債務救済のための無償資金協力の拡充,更には国際機関を通じる協力により,アフリカ諸国の割合は更に高まるものと期待されます。

同時に,我々は中南米地域,南太平洋地域等に対しても援助努力を拡充したいと考えております。

(今後の展開)

8. 以上のような情勢の変化をも踏まえ,我が国は次のような考えで今後ODAの展開を図ることとしております。

その第一は,貧困問題に対処し,農業・農村開発,教育,保健・医療等の基礎生活分野における協力を一層強力に進めるため,今後とも無償資金協力を拡充することです。また,特にアジアやアフリカの後発開発途上国(LLDC)に対する従来の債務救済措置を拡大することとし,1987年度までの10年間に供与を約束した約55億ドル(約6,800億円)の円借款について,今後約30年にわたり,その元本返済及び利払いを実質的に免除して参ります。この決定は,去る6月のトロント・サミットで発表したとおりです。

第二に,我が国は毎年約6,000名の技術研修員を受入れ,約2,000名の技術専門家を海外に派遣し,また現在約1,800名の青年海外協力隊員が37か国で活動しております。技術協力は人と人の交流を通じ開発途上国に技術を移転し,人造りを進める重要な分野であり,その一層の拡充を図る方針であります。このため優秀な人材を幅広く求め,我が国の民間セクターに蓄積された知識・技術を一層活用するため民間技術者を専門家として派遣したり,民間企業で行う研修員受入れを拡大強化して参りたいと考えます。また,開発途上国からの留学生の受入れも拡充していく所存であります。

第三に,経済発展の基盤整備に大きな役割を果たしてきた円借款を今後とも重視したいと思います。円借款については,ODAの質の改善を図る見地から,これまで金利の引下げや一般アンタイド化の促進のために種々の措置をとって参りました。金利については,最近の引下げにより,その平均金利は,2.6パーセントまで引下げられております。今後とも,内外の情勢を踏まえつつ,借款の質の改善や一般アンタイド化の推進に努め,合わせて途上国の構造調整政策の実施状況や債務負担の状況を勘案しつつ,途上国の経済政策を支援するための資金供与の弾力的実施を図ってゆくこととしております。

第四に民間活力の活用があります。民間援助団体(NGO)による開発協力活動は,草の根レベルで肌理{前2文字きめとルビ}細かい効果をもたらしうるという点で政府レベルの事業と補完関係にありますし,また,国民参加による経済協力の推進の見地からも重要な役割を果たしております。今後政府と致しましては,NGOの自主性を尊重しつつ,NGOとの連絡体制の一層の強化,NGO援助活動への支援強化を図る方針であります。更に,日本国内のNGOだけでなく,開発途上国によるNGOとも連携して活動できるよう検討を進めたいと思います。

ここで,ODAのみならず民間レベルの協力をも含む総合的な経済協力のもつ重要性について一言触れておきたいと思います。経済協力が援助供与国の輸出振興策と混同されてはなりません。累積債務問題を抱える数多くの開発途上国にとり,限られたODA資金だけでは問題の解決にはならず,経済そのものの体質を強くするために適切な資金フローの確保が重要であります。この点,特に民間の途上国向け資金フローが低迷していることが懸念されます。そこでODAを触媒として民間資金の途上国への還流が図られることが望まれます。日本政府が87年5月に発表し,現在までにコミットメント・ベースでその約70パーセント以上を達成した「200億ドル以上の完全アンタイドの資金還流措置」は,かかる総合的経済協力の考え方の1つの具大例であります。また,日本が最近アセアン諸国との間に合意した「アセアン・日本開発基金」におけるツー・ステップ・ローンの供与も同様な考えに立つものであります。また,我が国はOECDの開発援助委員会(DAC)に対し,開発途上国に対する投資促進のためにODAが果たしうる役割の検討につき提案しております。

このような総合的経済協力の考え,あるては{ママ}その他の新たな構想に基づいて,ODAが累積債務問題の解決の呼び水となることは望ましいことであり,一層の研究が求められております。

第五に,国際機関を通じる多数国間援助であります。いわゆるマルチ援助は各々の国際機関の専門性を活用し得ること,政治的中立性を確保し得ること,等の長所があり,我が国ODAの約3割(22億ドル)が世界銀行等の国際開発金融機関やUNDP等の国連機関を通じる協力に向けられております。我が国としては,今後とも二国間援助とともに,これら国際機関の財政基盤を強化するための出資・拠出の強化等を通じ,多国間援助を積極的に推進していく考えであります。さらに,国際機関への邦人職員の派遣を増やすとともに,二国間援助と多国間援助の連携により,国際機関のもつ専門知識を生かし,援助の内容改善を図ってゆくことも重視して参ります。

第六に,今後大きく拡充されるODAを十分にこなし,一層効果的,効率的に実施していくためには,要員の拡充,国別専門家の育成,地域研究の充実,案件発掘・形成機構の強化,評価活動の充実等を含む実施体制の充実が不可欠です。この面での我が国の対応の遅れは否めないところであり,格段の努力が必要であると考えております。またコンサルタントの活用を含む民間活動との連携強化を図っていくことも重要であります。

以上述べたような具体的な政策に沿い,これらを着実に実行に移していくことが当面の重要な課題であります。

(効果的援助をめざして)

9. 我が国のODA実績は,今年中もしくは,明年中にも世界一の規模になることが確実視されて来ております。また,我が国は,現在すでに25か国に対して二国間援助の最大援助供与国となっております。このように,今や我が国のODAは量の拡充だけでなく,今後ますます,質の面,内容の面での一層の充実が大切であり,そのための努力と工夫が望まれております。

私達はこの挑戦を正面から受けとめ全力を尽くす所存ですが,申すまでもなく,最も大切なことは,援助が相手国の経済開発と民生向上に真の意味において役立つことであります。これを実現して初めて,我々は国民の付託に応えるだけでなく,相手国政府及びその国民の期待に応え,その経済と社会の発展のための自助努力を有効に支援し得ることになります。成果を具体的に上げていくことによって,世界の平和と安定に向けての前進が可能となるのであります。

我々の援助供与国としての経験は,欧米先進諸国に比べれば決して長いものではありません。大きく伸びてきたのはここ僅か十数年のことであります。我々は援助国として,この短い間に既に相当の経験を積み,誇りうる実績を上げ,日本型とも称しうる手段を生み出しつつあると自負し得るかと思います。しかし同時に,先達の他の諸国や国際機関の経験や英知から学ぶべきものがあれば謙虚に学ぶ姿勢は不可欠であります。援助という営みは,その実体において援助側と被援助側の共同作業であります。途上国の自助努力を支援するという基本的考えに立てば,相手国との政策対話を深め,押しつけを排し,効率化をめざす努力が何よりも重要であります。

また,この事業は貴重な国民の税金を使ってなされるものであります。無駄を排し,効率的・効果的に実施されるべきであり,瞬時も気を緩めてはなりません。更に,情報の公開をはじめとするODAに対する国民各位の理解を引き続き得ていくための努力を怠ることがあってはなりません。

外務省はじめ関係省庁にあって援助政策の企画立案に携わる人々及び実施の責任を預る事業団及び基金の関係者各位に対し切に要望しておきたいことであります。

最後に私は海外の現場にあって,種々困難な状況の下で日夜苦労を重ねておられる政府及び民間の多数の関係者及びその家族の皆様に対し敬意を表し,心から感謝を申し上げたいと思います。

10. 重要な点は他にも多くありますが,時間の関係でこの辺にしておきます。

歴史的に見て,大きな国力を持ちそれぞれの時代において中心的な地位にあった国々は,それぞれに国際的役割を果たしております。英国はかつて産業革命の普及,貿易通商面での貢献を通じ世界経済の発展に大きな貢献をしてきました。また米国は,第2次世界大戦後その膨大な国力を背景に安全保障面をはじめ,自由貿易,国際通貨秩序の確立等により世界の平和と安定に指導的な役割を果たしてきております。

援助は,今日の我が国にとり,直接の見返りを期待する利己的なものでもなければ,海外依存度の高い日本が国際社会で生きて行くために止むなく支払うコストという受動的な意味合いのものであってはならないと思います。それは,日本の将来にとり,ひいては世界の安定と発展により積極的な意義をもつものとして認識されるべきであり,経済大国となっても決して軍事大国にならないと決意した我が国にとっての歴史的使命とさえ申しても過言ではないと思います。

国際協力の日を記念して開かれる今回のシンポジウムが,様々な角度からこの重要な問題に光を当て,よりよき明日を導くための1つの契機となるこを確信し,その成功を心から祈念して私の挨拶と致します。