データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アフガニスタン復興支援国際会議における田中外務大臣演説

[場所] 東京
[年月日] 平成14年1月21日
[出典] http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/enzetsu/14/etn_0121.html
[備考] 仮訳
[全文]

御列席の皆様、本日この「アフガニスタン復興支援国際会議」への皆様の御参加を歓迎いたします。東京においてこの会議が開催できることを光栄に思います。

外務大臣に就任して以来、私は常に紛争予防の重要性を認識して参りました。紛争予防を成功させる鍵は、人々が多様性を受け入れられるかどうかにかかっています。異なる文化や価値観、意見を尊重することができれば、人々の平和の下に共存することが可能です。私は、こうした考え方が「人間の安全保障」の推進、ひいては紛争予防に資すると信じています。

 過去20年のアフガニスタンの経験から世界はこのことを学んだのではないでしょうか。ひとたび国が戦乱で荒廃すれば、それを回復するためにはどれだけのエネルギーを必要とするかということです。昨年9月11日のテロ攻撃により多くの人命が失われ、その尊厳が踏みにじられました。国際社会としては、テロという脅威そのものに対する取組と同時に、テロの根本原因に迫らなければなりません。さもなければ、テロは根絶できません。

 暫定政権はまだ発足して1ヶ月ほどでありますが、車の両輪として現在進行中のブラヒミ特使の下での政治プロセスと復興は、同時並行的に行われる必要があります。前者の政治プロセスは、アフガニスタンの人々が、イスラムの文化やアフガニスタンの多様な伝統を尊重しつつ、彼ら自身の幸福を追求するものです。また、後者の復興については、国際社会として、各国政府、国際機関、NGOが一体となって進めていくことが求められています。同時に、国際社会の支援はアフガニスタン人自身の努力を得て初めて意味をもつものであり、最終的な目的はアフガニスタンの自立であります。

 以上を踏まえ、日本としては、次のような考え方に基づき具体的な復興支援策を行っていきたいと思います。

1.まず日本は、復興の前提となる安全の確保という観点から、「地雷・不発弾除去」に重点をおきます。次に、ガバナンス分野での支援です。日本による暫定政権基金への100万ドルの拠出もまさにこの目的のためのものであります。

2.その上で、「地域共同体の再建」を重視します。復興を行うのは結局は人間ですが、人間が一人でできることは限られており、地域共同体を通して初めて復興という大きな目標を成し遂げることができるでしょう。

3.そして、地域共同体の再建にあたっては、何よりも、将来に亘って国造りを続けるための基本的な前提である「教育」分野において、至急支援を開始しなければなりません。また、そのためには、「メディア・インフラ」も整備しなければなりません。さらに、「保健・医療」、「女性の地位向上」といった分野で貢献する用意があります。

 以上のような考えに基づき、小泉総理から表明があったとおり、日本としては、ボン合意に従ってアフガニスタンにおける正式政権が樹立されるまでの向こう2年6ヶ月の間に5億ドルまでの支援を行います。この支援が充分に生かされるためには、何よりもアフガニスタンの方々がボン合意に基づき国内の治安回復、和平、そして国民和解を継続していくことが不可欠であります。そして、最終的には国際社会の援助からの自立が図られることを期待しております。国際社会が支援できることは、あくまでもアフガニスタンの自立のための環境造りであり、立ち上げの支援であります。国際社会は、英知と経験を結集させようではありませんか。

 最後に、御参加の皆様に再度深く感謝申し上げ、私の挨拶といたします。

 ありがとうございました。