[文書名] イスラム世界との文明間対話セミナーに際する川口外務大臣メッセージ
1.ガッファール外務担当国務大臣閣下、貴国閣僚の皆様、セミナー参加のために各国よりお集まりいただいた有識者の皆様、ご臨席の皆様、「イスラム世界との文明間対話」セミナーが、ハマド国王の御指導の下で益々の発展を遂げておられるバハレーンにおいて開催されましたことに対し、心より祝意を表しますとともに、セミナーが所期の目的を達成され、成功裡に終了しますことを祈念しております。
2.我が国政府は、世界で10億人を超える信徒を有し、世界各地で伸張しつつあるイスラムについて十分に理解を深めることが、我が国の外交を展開していく上で重要であるとかねてから認識しております。2001年1月に当時の河野外務大臣が、カタル、アラブ首長国連邦、クウェイト、サウディアラビアを公式訪問しましたが、最初の訪問国であるカタルにおいて、「イスラム世界との文明対話」、「水資源開発への協力」、「幅広い政策対話の促進」といった三分野からなる「湾岸諸国との重層的な関係に向けた新構想」を表明しました。特に、イスラムに対する強い関心と相互理解の必要性に言及したことは、訪問国各界から高い評価を受け、中東地域の報道機関においても同イニシアティブを歓迎する旨の報道が相次いでなされ、大きな反響を呼びました。
新構想における「イスラム世界との文明対話」とは、有識者間のネットワークの構築、シンポジウム開催に代表されるような知的交流、大学間協力等の学術交流、青年交流等の幅広い人的交流の拡大・活性化を行っていこうというものです。
3.長期的視野に立った人と人、国と国との間の信頼関係の構築には、他国の人々が築き上げてきた文化、歴史、宗教への深い敬意と、お互いの差異を積極的に受け止め尊重する心を持ちながら、共通の価値を見出し、相互理解への道を切り拓く努力が必要です。また世界の平和と安定を築く上でも、異なる宗教や民族間の対話を深めることは、貧困の克服と並んで我々が努力していくべき極めて重要な課題であると考えます。
4.アフガニスタンでは、同国を実効的に支配していたタリバーン勢力の宗教指導者が、国内の仏像破壊を命じる宗教令を出したことで、国際社会の関心を呼び、その過激な行為に対する非難が広がりました。また、アフガニスタンを拠点にして活動していたビン・ラーデンを中心とした「アル・カーイダ」グループが引き起こした昨年9月の米国でのテロ事件は、テレビ等で放映された衝撃的な映像と、無垢な人々が一瞬の内に生命を奪われたことが、いまだ人々の胸に深い痛みを残しております。勿論タリバーンの行為は、イスラムの誤った解釈による極端な例でありますし、またビン・ラーデン・グループによるテロ行為は、イスラムと何等の関係もない事件であります。この点は、小泉首相をはじめ我が国政府関係者が様々な機会を捉えて我が国の立場を明らかにしているとおりであります。
5.先程申し上げましたとおり、異なる宗教や民族間の対話を深めることは、貧困の克服と並んで我々が努力していくべき極めて重要な課題であり、しかも、普段からの地道な努力が必要でありますが、今回のセミナーは、まさにかかる努力の重要な一歩と言えるものであり、私は、今回のセミナーにおいて、有意義且つ実りある対話がなされることを希望しております。
6.最後に、セミナー開催に関し、当初より深い理解と関心を示され、その実現のためにリーダーシップをとって頂いたムハンマド外務大臣閣下のご尽力に深く感謝します。今回のセミナーを契機として、有識者間の知的ネットワークが今後益々活性化することを希望します。