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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 外務省タウンミーティング第1回会合,川口外務大臣と語るタウンミーティング「外務省改革〜透明性・スピード・実効性〜」(プレゼンテーション)

[場所] 
[年月日] 2002年4月7日
[出典] 外務省
[備考] 
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 みなさんこんにちは。ただ今ご紹介頂きました川口でございます。

 今日は、外務省の第一回のタウンミーティングで、皆様と直接お話しする機会となりますのを非常に嬉しく思っています。第一回のテーマは、外務省改革です。それは今、私が、最優先で取り組んでいる課題だからです。

 これから、外務省の改革について、私が今考えていることを、短い時間ですけれども、お話をさせて頂きたいと思います。

 まず、私の外交のスタイルですけれども、外交には様々な課題があります。その第一線で仕事をするのが外務省です。

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 私は、外務省の仕事に取り組むにあたりまして、3つのスタイルを考えています。

 一つは、日本の安全と繁栄のためには、言うべきことは言い、やるべきことはやるという「強さ」です。

 二番目は、貧困などに苦しむ人々への配慮や、異なる文化への理解などといった「あたたかさ」です。

 三番目が、国民の眼からみての「わかり易さ」です。外交は、国民の皆様の理解と支持を得なければ成り立たないと私は思います。外務省だけでやれるものではありません。ですから、「わかり易さ」は、とても大切で、今日、タウンミーティングを開催したのも、このような思いからです。

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 さて、このような外交を担う外務省に、今改革が必要だというのは、特に理由をお話しなくてもお分かり頂けると思いますけれども、ご存じの通り、昨年来、外務省では次々とさまざまな問題が表面化致しまして、皆様に大変な御迷惑をおかけしております。お金にまつわる不祥事。特定の政治家からの不当な圧力。そういった圧力に適切に対応できなかった外務省の弱さ。このような問題のために、外務省は、今、大きく国民の皆様の信頼を失ってしまいました。このことを外務省の職員は謙虚に受け止めて、真剣に今反省をしております。

 まず、役所の決定のプロセスをガラス張りにしようという「透明性」の要請に対しても、外務省はしっかり取り組んでいかなければいけません。外務省の一連の不祥事も、もし様々なことがより透明であったら、未然に防げたかもしれません。

 次に「説明責任」の要請です。外務省は、信頼を回復するために、より積極的に説明責任を果たしていく必要があると思います。

 更に、市民による「参加」の要請。国際協力の現場でも、NGOの皆さんが汗を流して働いていらっしゃるわけです。外務省は、このような「参加」の要請に対しても、敏感に対応していく必要があります。

 外務省の問題を克服いたしまして、これからの時代の要請に応えていくために、私は、外務省の改革のキーワードとして、「透明性」、「スピード」、「実効性」の3つを選びました。

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 外務省の改革を行うに当たりまして、実は私が民間企業で得た経験というのは非常に役に立っていると思います。民間企業で私は、消費者関連の仕事も一つの仕事でございましたけれども、顧客満足、お客様の満足をまず第一に考えるというのが、私は、良い民間企業の中には隅々にまで、社員の一人一人に行き渡っていると思います。大臣になりまして中央官庁に戻ってきました時に、私は改めて、この顧客満足という発想のなさに驚きました。役所にとって、お客様は誰かと言うと、これはもう国民に他ならないわけでして、従って、国民の皆様が何を考えているか、何を必要としているかということについて、敏感に伺って反応していくということが必要です。また同時に、外務省が、あるいは役所全体が、国民に、何を考えているのかということをきちんとご説明することも大事だと思います。

 私は、そういった考え方に基づきまして、実は約一年前に、環境庁が環境省になりましたときに、この場所で第一回の環境省のタウンミーティングを開かせて頂きました。その流れが、その後、小泉内閣のタウンミーティングにつながっていったわけですけれども、外務省には、国民の皆様のご意見に謙虚に耳を傾ける必要性が、今、特に強いと考えます。このため、今日は、外務省の中堅幹部と言われる人々にも来て貰っていますので、ぜひ皆様の思っていらっしゃることをどんどんおっしゃって頂きたいと思います。

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 私は、外務大臣就任後一週間余りたった2月12日、ここに掲げられました10の改革を発表いたしました。これが「開かれた外務省のための10の改革」です。ご覧の通り、その一つ一つ、それぞれが重要な改革です。この中から今日は、特に皆様の関心が強いと思われることを選んでご説明をさせて頂きたいと思います。

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 まず、「不当な圧力に屈しません」。

 国民から選ばれて、国民を代表する立場にある政治家のご意見を聞くことは、役所が、政策をつくっていく上で、非常に大事なことだと思います。しかし、どこから来るものであったとしても、公務員が、「不当な圧力」に屈するようでは、国全体の利益は守れないと思います。このようなことが外務省で起きないために、職員と政治家の間に、健全で、緊張感のある関係を築いていくことが大事で、そのための検討を行っています。この問題は、外務省に限らず、広く「政」と「官」、役所と政治家の間の問題です。従って、外務省よりも広い枠組みで、同時に検討されることが重要だと考えています。

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 続いて、「外務省の職員の意識を変えます」。

 最近は海外にお出になられる方も多いので、パスポートを無くして、大使館や総領事館に駆け込むという経験をなさった方が多いと思います。そうしたら、ただでさえ落ち込んでいる上に、職員に横柄な態度をとられて、ますます落ち込んでしまった、頭に来た、という経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。かなり多くの方が日常的に海外に行くというような時代になったということを踏まえまして、外務省は、そういった時代の変化から来るニーズも、敏感に汲み上げていく必要があると思います。それから、公務員は「国民全体の奉仕者」であるという原点に立ち返って、「お客様志向」へ意識を変えていく必要があります。このような意識に立って、例えば、自宅のパソコンから、インターネットでパスポートを簡単に申し込めるというようなことにも致したいと思います。また、たくさんの日本人がいる国では、大使館が週末や夜間にも対応できるような体制を作っていますけれども、もっと皆様が利用しやすいようにしたいと考えています。

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 次に、「適材適所の人事を徹底します」。

 一連の不祥事を通じまして、外務省の組織が動脈硬化に陥っていると感じられていらっしゃる方も多いと思います。私も、外務省の組織の活性化を図り、新しく生まれ変わる必要があると思います。このために、まず私は、外務省の外から、新しい優れた人材の方に来て頂きたいと考えておりまして、大使や本省の幹部に、この夏を目途に約10人の方に、外から来て頂くということを考えております。この一環として、つい先日、猪口上智大学教授を軍縮代表部大使へお願いすることにし、発表させて頂きました。役所では、依然として年功序列が鉄則ですけれども、年を重ねれば自動的に上に上がっていくという、“ところてん人事”では、組織としての活力を失っていくわけです。私は、既に、外務省の中のポスト50を選んで公募制を導入致しております。このような取り組みを通じて、必ずしも試験区分や入省年次にとらわれない適材適所の人事をしていきたいと思います。

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 次に、「無駄のないODAを実現します」。

 日本は開発途上国への援助につきまして、金額ベースでは世界一です。しかし、日本の援助について、必要であろうか、あるいは本当に必要な人に届いているのだろうか、相手の国の環境を害しているのではないだろうか、様々な疑問をもたれる方もいらっしゃいます。また、政府の援助を政府の役人だけで決めているのではないか、というような批判もあると思います。こうした疑問や批判を受け止めて、私は、役人だけで何でも決めるシステムを改めて、どこの国にどのような援助を行うかを決定する際に、第3者の意見を伺うことに致します。また、税金の使われ方を、一層厳重にチェックするためのシステムを作っていきたいと思います。

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 最後に、「NGOと新しい関係を作ります」。

 今、NGOの方の活躍が注目されています。政府の不得意とする分野で、現場に通じたNGOの方が、素晴らしい活躍をするというのは、新聞紙上で読むことがあると思います。国民の皆様が、NGOを通じて、国際協力の現場に参加して、汗を流していかれることは、それ自体意味のあることでしょう。

 外務省が、このNGOと、お互いの長所を取り入れて助け合って仕事をしていくことが大事だと思います。NGOの方との新しい関係作りには、まだこれから議論をしていかなければいけない部分があると思いますけれども、私は、NGOとの対話や連携を、開発、人権、環境といった様々な分野で深めて、国全体として大きな力を発揮できるようにしたいと考えています。

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 これまで申し上げた改革は、それが確実に実行されていくことが大事です。

 私は、こうした改革を、第3者の目を通じて厳しくチェックして頂くということにしました。ここにリストが出ていますけれども、オリックスの宮内会長を座長と致しまして、「変える会」を作っています。メンバー、この通りです。「変える会」の名称は、みなさん、本当にかえるかい?と、いつかえるかい?と思っていらっしゃると思うので、本当に「変える会」、ということです。

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 「変える会」には、これらの改革を、いつまでに、どうやって実現するかということを議論して頂きます。既に3回の議論を致しまして、この議論の内容はホームページに出ていますので、是非ご覧頂きたいと思います。スケジュールとしましては、早いテンポで、5月に中間報告を致しまして、7月には最終報告を出して頂く予定です。さらに、報告に示された改革が、スケジュール通り行われているかということについて、その後も引き続きチェックをして頂くという作業をお願いしたいと考えています。それからもちろん、報告が出る前でも、やれることはどんどんやっていくというのが私たちの姿勢です。

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 国際社会は待ってくれません。外交課題は山積しています。私たちは、走りながら、外交課題に取り組みながら、外務省改革をしていかなければいけないわけです。私は、国会のお許しが頂ければ、4月末から5月の連休にかけて、アフガニスタンとイランを訪問したいと考えています。

 我が国は、1月にアフガニスタン復興支援国際会議を東京で開催しまして、医療器材の供与や学校・医療施設の復旧などの支援をしています。このような努力を踏まえまして、私自身、実際に現地で、この目で現地の情勢を見て、この地域の安定と発展、二国間関係の強化に積極的に取り組んでいきたいと考えます。

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 アフガニスタンでは、カルザイ議長を中心とする暫定政権関係者や、国際機関関係者に対して、国民和解の重要な節目である緊急国民大会議を是非成功させるように働きかけたいと思います。また、これらの関係者やNGOの方々と、日本や国際社会による支援のあり方について、直接意見交換をして、その成果を、日本のアフガニスタン支援政策に反映させたいと思います。

 更に、この地域の重要な国であるイランとの間でも、アフガニスタンの復興について、様々な対話を一層深めたいと考えています。

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 外務省の仕事というのは、実は大変増えてきております。国際社会が身近なものとなりまして、国際的な交流が日常化している分、外務省の仕事は、このグラフでも見て頂けるように、飛躍的に増えてきました。海外旅行に出かける日本人の数は、うなぎのぼりです。安全保障、経済の分野のみならず、環境やテロ対策といった様々な分野で、国際的なルール作りが進んでいます。

 これは、条約の締結数を見て頂いてもお分かりだと思います。しかし、外務省の職員の数は実はゆるやかにしか伸びていませんので、その分、職員一人一人の仕事量、責任がますます大きくなっています。

 外務省は、そして外務省職員は、この責任をしっかり果たして、国民の皆様の期待に応えなければなりません。そのために外務省改革が必要なわけです。

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 最後になりましたけれども、今回のように、私や、外務省の職員が、国民の皆様と直接に対話するタウンミーティングを、今後も続けていきたいと思います。次回は東京でない、別な都市で開きたいと考えています。

 外務省改革の話は勿論ですけれども、外務省のそれ以外のことにつきましても、皆様から忌憚のないご意見を頂けると幸いです。外務省の職員みんなでそれを聞かせて、あるいは読ませて頂きたいと思います。Eメールのアドレスがここにありますので、是非、よろしくお願いします。

 どうもご静聴ありがとうございました。