[文書名] 外務省タウンミーティング第2回会合,川口外務大臣と語るタウンミーティング「外務省改革/ODA(政府開発援助)」(プレゼンテーション)
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こんにちは。今日は土曜日のお休みの日に大勢の方にお集まりいただいて、どうもありがとうございました。それでは、ODAについてのタウンミーティングということで、少しODAの話をさせていただきたいと思います。はじめからODAと言いましたけれども、言ってみたら「援助」というのが一番簡単に言えることだと思います。今日はそのODAについて、あるいは援助についていろいろなご疑問をお持ちでいらっしゃると思うので、ODAの真実に迫るということで、少しお話をさせていただきたいと思います。
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ODAというのは、税金でやっていますので、それがどういうふうに使われているかということを知っていただくというのは、とても大事なことだと思っています。
これは、「援助」というのはいったいどういうものかということを知っていただくための絵ですが、今、アフガニスタンの難民が大勢、国の外あるいは国内でもいます。これはアフガニスタンとイランの国境にいるアフガニスタンの難民の子どもです。アフガニスタンでは、女の子はタリバーンのもとでは学校に行くことができなかったわけですが、今、タリバーンの支配が終わって、世界の国がアフガニスタンの支援をしています。あとでもう少し細かく申し上げる機会があると思いますが、特に教育については、日本は力を入れて支援をしています。こうした人たちが将来に希望を持つことのお手伝いをするのが、援助の大事な一つの役割だと思っています。
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アフガニスタンだけではなくて、今、世界にはたくさん問題があります。この左上は中国の貴陽の公害です。日本もひところ、四日市や九州で公害の問題がありましたけれども、そういう問題があります。その下は予防注射をしているところですが、病気の問題もあります。そして真ん中が、フィリピンのごみがいっぱい捨ててあるところなのですが、そういった廃棄物の問題があります。そして右にあるのがエイズで親を失ったザンビアの兄妹です。アフリカですが、感染症の問題があります。
例えば、そういった問題がたくさんあるのを手伝っていく、支援していくのも援助の役割です。エイズで親を失った兄弟と言いましたが、アフリカには1000万人、エイズで親を失った孤児がいます。そして、世界の人口は60億ありますが、そのうち12億人ぐらいは、1日1ドル以下で生活をしています。
子どもたちの死亡率でいうと、世界の国のうち、たぶん4分の1ぐらいの国で1000人あたりの子どもの死亡者数が159人、5分の1ぐらいが子どもが小さいときに死んでしまうというような状況にあります。こういったことも、援助が活躍することが必要な問題です。
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その次に、では、ODAの現状がどうなっているかということですが、世界の国々は全体として190あり、日本はその中の150か国以上に支援をしています。予算をどれくらい使っているかですが、約9100億円と書いてありますが、日本の予算の約1%を世界の国々への支援に使っています。国民所得、ざっと言えば日本人全体でいくらぐらい収入があるかということですが、その中に占める援助の比率は0.23%です。国連で目標とする数値があって、これが0.7%となっていますから、それからいうとまだ日本の援助ははるかに及ばないところにあります。
今後、援助をどのようにしていくかというのは一つの大きな問題ですが、最近、今年3月にアメリカのブッシュ大統領が演説をしまして、これから3年間で50億ドル増やすと言いました。それからEUもこれから同じぐらいの期間に70億ドルぐらい増やすということを考えています。もし日本の援助、ODAが増やさずに9100億円のところでずっと横ばいであったと仮定をしますと、アメリカが3年間で50億ドル増やすと、2006年には日本の援助の金額はアメリカの実に半分ぐらいになってしまうという結果になります。日本はずっと過去10年ぐらい、世界一の援助国でした。最近、2001年になってアメリカに抜かれて世界2位になったわけですが、そうやってアメリカが増やしていって、日本が横ばいのままの数字で推移しますと、2006年にアメリカの半分になってしまうということです。
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それで、ではなぜ援助をやっているのかというのが次のテーマです。私なりに整理をすると3つくらいあるかと思います。
最初が、困難に直面している人を救うために。最初に申し上げたような、教育を受けられない、あるいは感染症に悩んでいる、親がいないといった問題、世界中の人が困っている問題に対応するため、そういう人たちを助けるためにというのが一つの大きな理由だと思います。日本は国際社会の中でも豊かな国の一つですから、そういった豊かな国として支援をするのが役目だということです。
次に、地球環境のためにと書いてありますが、環境問題というのは国境を越える問題です。温暖化の問題もそうですし、オゾン層の破壊といったこともあります。これは地球全体の問題ですから、世界が一緒に一丸となって取り組まなければいけない問題であるわけです。そういうことで、環境も大事な分野で、日本は今、環境の支援のためにODAの約3割ぐらいを使っています。
それから、最後に途上国の経済発展をわが国の繁栄につなげるためにと書いてあります。よく「情けは人のためならず」といいますが、途上国の支援をすると、その国がさまざまな問題に対応できるようになって経済的にも安定し、発展して、紛争も少なくなり、平和になってということになるわけで、それは翻って日本の平和、安全や繁栄につながってくるということです。ですから、周りの国々に豊かになってもらい、平和になってもらうと、その国と日本の貿易も増えますし、日本の平和もそれだけ確保されやすいということです。それが日本が援助を行う理由だと思います。
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その次に、では、援助をするときに日本はどういうことに重点を置いているかということですが、日本はアジアの国ですから、まずアジアに重点を置いていきます。これは2001年の実績で58%がアジアにいっています。
それから2番目に、自ら努力を行っている国を支援します。やはり一つの発展途上国が経済的に開発を進め、成長していってもらうためには、その国の人たちが自分でやるぞという気持ちになっているということが大事で、そういうやる気の国を助けるというのが日本の考え方です。
そして、3番目に人間に着目した支援です。教育、人材育成、エイズなどの感染症対策と書いてありますが、そういった人間を中心に据えて考えています。なぜかというと、人づくりというのは国づくりの基礎だという考え方でいるからです。
4番目に、環境と開発の両立を重視します。これはずっといわれていることですが、環境を守りながら、開発をしていくことは非常に大事です。開発をすることによって環境が破壊されてはいけない。また、開発が進まなければ環境を守ることも難しいのです。なぜならば、お金が環境に回らないからです。環境と開発の両立を目指すという考え方です。
8月の終わりに南アフリカのヨハネスブルグで持続可能な開発に関する世界首脳会議というのがあります。持続可能な開発というのは先程私が申し上げた環境と開発の両立ということですが、それだけではなくて、まさに開発一般についても議論がなされることになっています。この会議に私は大木環境大臣と一緒に出席をしたいと思っています。小泉総理も日程に都合がつくかぎりご出席をいただきたいと思っていますし、日程に都合がつけば参加したいとおっしゃっています。ここで、こうした共通の、申し上げたような課題、「共に歩む開発」をどのように進めていくかというわが国の考え方を説明したいと思います。
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ODA、日本の援助というのは国際社会で大変に高く評価をされています。この左の上の写真は少し見にくいかもしれませんが、私が先日、パレスチナに行ってアラファト議長と会談をしたときの模様で、白いターバンを巻いているのがアラファト議長です。その隣にある写真がアフガニスタンのカルザイ大統領です。当時は議長で今度は大統領です。お2人とも、それぞれの地域についての日本の支援を大変に高く評価をしてくださいました。つい先日、17日に、私はイギリスの外務大臣のストローさんとお話をしましたけれども、イギリスの外務大臣も「日本の援助はすばらしい。これだけの金額を援助しているということは非常にいいことだ。イギリスは援助を増やそうとしているのだけれど、それは日本の水準がここにあったら、ここにどれぐらい近づけるかということなのだ」とおっしゃっていました。また、ベトナムや東チモールなどの政府の要人も日本の援助を高く評価していてくださいます。
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では、援助に全く問題がないかということです。ODAの真実に迫ると申しましたが、たぶん、ここに今日皆さんが大勢いらしたのは、「本当に援助はちゃんと使われているの」とか、「相手の国に役に立っているの」とか、いろいろご疑問を抱かれてだと思います。そういうご疑問にきちんとお答えしていくというのは、国民の税金を使って援助をやっていることからして当然のことです。私は外務大臣に就任してから、「開かれた外務省のための10の改革」という、外務省全体の改革についての考え方の中で、ODAについては効率性、透明性を高めるという改革を考えようとうことを一つの柱として言っています。ODAの改革を進めていくことはとても重要なことだと思います。
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次に、それではどういうODAの改革を行っているのかということが書いてあります。まず、一番上に「出来るものから実施」と書いてありますが、いいことは何でもすぐにやっていく、どんどんやっていくということです。キーワードとしては、「国民参加」、そして先程申し上げた「透明性の向上」「効率性の向上」を挙げています。
6月末に、私自身が議長をやっていますけれども、ODA総合戦略会議というのを立ち上げました。これは読んで字のごとしで、国別の援助の計画といったODAの基本的な政策について議論を行っています。すでに2回の会合を開いています。
そして、7月9日に5つの分野で15の具体的な改革策を発表しまして、これからこれをどんどんやっていきたいと思います。それはどういう分野かというと、監査をする、評価をする、NGOとの連携をする、人材の育成・発掘・活用をする、情報公開・広報をするということで、もちろんこの5つについてはとっくに今までもずいぶんやっているのですが、そういった分野で改革を進めるということです。
具体的な改革策が右側にありますが、外部監査を拡充する、抜き打ち監査の実施をする、第三者評価を徹底する、評価したものをフィードバックして、援助のやり方のところに戻していく。そして、技術についての協力などを行っているJICAなど、そういった機関における開発教育を実施するということです。そして、ODAメルマガをすでに発刊しています。読んでいただければと思います。
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NGOとの連携の話ですが、その中でも特に政府とNGOの連携を強化したいと考えています。まず、東京と発展途上国の現地との両方で、外務省とNGOの連携の強化をしたいと思います。特に日本のNGOが多く活躍している途上国、そこにおける日本大使館をODA大使館と名付けまして、そこで大使館と現地で活躍しているNGOの人たちとの連携を強めていきたいと考えています。アフガニスタンに日本の大使館がありますけれども、そのアフガニスタンの日本大使館では、NGO出身の人が大使館のNGO担当の役をするので、外交官になって今、アフガニスタンの大使館に勤務してもらっています。
そして、もう1つはNGOの活躍をどう支援していくかということです。NGOにとって使いやすい支援制度の導入をするために、日本のNGO支援無償を導入しました。無償ですから返してくださいというお金ではないということです。日本のNGOが行っていく草の根レベルの技術協力を支援するための制度も近々導入する予定です。
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今後のODAの課題は何かということについてお話をしたいと思います。2つあると思います。1つは、紛争予防と平和定着分野への活用ということです。冷戦下と冷戦が終わったあとで、世界の紛争の主なものというのは、民族の紛争や内戦です。その結果、紛争が終わったあと、荒れ果てた国の中をどのように立ち上げていくか、どのように平和を定着させて国づくりをしていくかということが、国際社会に課せられた大きな一つの課題になっているわけですが、そこにどうやって支援をしていくか、どうしたらいいかということが、日本のODAの一つの大きな課題だと思います。
アフガニスタンがいい例ですけれども、今年1月に日本は東京でアフガニスタンの復興支援の会議を行いまして、日本自身も2年半で5億ドルの支援をしますという表明をしました。これは9月にアメリカでテロがあって以来、日本の貢献としては最も大きなものの一つだったと思います。日本としてはアフガニスタンの新しい政権、カルザイ大統領の下での移行政権の行政の能力向上、あるいは武装解除された兵士の方の社会復帰。それから、地雷があちこち埋まっていますので、例えばアフガニスタンの空港の周りというのはびっしり地雷で囲まれていますが、そういった地雷を除去するなどの仕事をしています。また、東チモールでも同じような支援をしてきました。
2番目は、東チモールも1つですが、アジアの更なる安定と繁栄の実現ということです。アジアの国々というのは世界の発展途上国の中でもかなり進んできているわけですが、そういった中でも、まだまだ貧しい国がたくさんあるわけです。こうした国が安定的に発展していくことはとても重要です。1997年にはアジアの経済危機というのもあり、発展した国の中でも経済的に基盤の弱い国もあるわけです。そういった国々の開発ニーズの援助をしていくことがもう1つの課題だと思っています。
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いずれにしましても、軍事的な手段というものを日本は持っていないわけですから、そういった国が国際的にどういった役割を果たしていくべきかということを考えたときに、支援、経済協力といいますか、ODAというのは、非常に重要な手段であると思います。この写真はひところ、内戦で大変だったカンボジアの学校の写真です。こうした、アジア、そして世界の新しい未来を切り開いていくために日本の支援は大事だと思います。
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少し広く外務省全体の仕事との関連でODAを見てみます。私は2月に外務大臣になったあと、「10の改革」ということを言いまして、そのうちの2本の柱がこの経済協力に関係があります。1つはODAの効率化、透明化ということですし、もう1つがNGOとの新しい関係を作っていくということです。したがって、ODA関係の改革というのは、同時に外務省改革の大きな柱でもあるわけです。ODA以外の改革の分野で、例えばどういうことを今まで行ったかということを少し並べてみましたので、ご紹介したいと思います。
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幹部を含む50のポストについて省内の公募をいたしました。8月の人事異動をするときにこの結果が織り込まれて人事異動がされるということです。
それから、外部の人材からの幹部登用。幹部というのは、課長を除いて課長よりも上ということですけれども、本省ですでに3人の人材の登用をしました。それから、大使についても、3人の大使の方に外務省以外の方から来ていただいています。
3番目に、評価制度。これは民間企業ではすでにそういうところが非常に多いので、べつに新しい話ではないのかもしれませんが、下から上の評価をする。そして、能力別昇進の更なる推進を行うということです。霞ヶ関の役所は年功序列だというふうにいわれていて、それは95%正しいと私は思いますけれども、その中で、外務省は、特に幹部については入省年次という、何年に外務省に入ったかということに比較的こだわらないで、局長の人事などもすでに行っています。
それから、報償費を含む会計手続・チェック体制の改革。報償費をめぐってさまざまな問題が前にありましたが、今、報償費ということでいいますと、10万円を越えるものについては副大臣以上、副大臣か私が決済をするというかたちになっています。
外部のプロによる内部監査、領事業務の改善といったことも進めてきています。
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改革の今後のスケジュールについてですが、7月22日、「変える会」という、私がお願いをして外務省の改革を考えてもらっている私の私的懇談会ですが、その最終報告が出ます。それを受けて、外務省としては夏にどういう行動計画を考えるかということを、そしてそれをいつまでにするかということを発表していきたいと思います。
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最後になりましたけれども、いろいろ外務省についてご意見をすでにいただいています。まだまだ、いろいろおっしゃりたいという場合には、ここに2つ、Eメールのアドレスが出ていますので、何についてでも、外交政策一般、改革あるいはODA、何でも結構ですが、たくさんのお声を寄せていただけると大変にありがたいと思います。
それでは、簡単に、どれぐらいODAの真実に迫れたかわかりませんが、迫れていない部分はまたあとでご質問をいただくとして、とりあえず、最初の導入ということでお話をさせていただきました。
どうもご清聴ありがとうございました。