[文書名] WSSDサイドイベント(IDEA)における川口外務大臣スピーチ
1.冒頭
本日ここにお集まりの皆様に、我が国と東アジア諸国との開発分野における新しい試みである「東アジア開発イニシアティブ(IDEA)」についてご紹介し、その成果を共有できることを大変光栄に思います。また、カンラス国家経済開発庁長官、及びディアブレUNDP副総裁の両氏にコメンテーターとして出席いただいたことに感謝申し上げます。
去る8月12日、東京において東アジア(ASEAN+3)の外務大臣と開発担当大臣が集い、IDEA閣僚会合が開催されました。まず始めに、この閣僚会合が東アジア開発にとって如何なる意義を持つのか、またアフリカ開発にとって、更には国際的な開発戦略にとって如何なる意味をもつ会合であるのかについて、ご説明したいと思います。
2.IDEAの意義
(1)東アジアにとってのIDEAの意義{前19文字下線あり}
東アジアは1960年代から1990年代にかけて、いわゆる「東アジアの奇跡」と形容されるほどの経済発展を遂げた地域です。その地域が、90年代後半のアジア経済危機の影響を克服しながら、更なる繁栄を追求するための開発努力の延長上に、このIDEAは位置づけられるのです。即ち、地域が直面すべき現在の開発課題は何かを特定し、これまでの開発努力を見直す中で、今後も活かせる点、補完すべき点とはなにか、そこでのODAの役割を改めて再考し、現在の課題への対応を、地域的な視座から政治ハイレベルで検討し、地域発展の方向性や可能性を見極めることにあります。
(2)アフリカを含む他地域にとってのIDEAの意義{前25文字下線あり}
IDEA閣僚会合ではまた、東アジアの多様性と共存した開発経験、知見が他地域の開発にも役立ち得るため、東アジア諸国が協調し、これを国際的に発信していくことが意義あるものとして合意されました。我が国は既に、南南協力を通じた適切な経験・技術の移転など、東アジアで実践された有効な開発手法を対外的に紹介してきましたが、こうした努力がIDEAで支持されたことにより、対アフリカ協力や、或いは、国際的に活用できる開発知見や戦略が一層多様で豊かなものにするプロセスが促進されることを期待します。
3.IDEA閣僚会合、共同声明の概要
こうした背景を念頭に、8月12日に開催されたIDEA閣僚会合や、そこで採択された共同声明の主要ポイントについてご説明したいと思います。
(1)開発における自助努力とパートナーシップの重要性{前26文字下線あり}
IDEA閣僚会合ではまず、開発における自助努力(オーナーシップ)が引き続き重要であること、またこの関連で、多くの参加閣僚が、人材育成や能力開発の重要性を強調していたことが特徴的でした。また、様々な国情や開発ニーズに沿った開発を国際社会が支援していくパートナーシップのあり方にも関心が寄せられました。
(2)包括的開発アプローチ{前13文字下線あり}
次に、東アジアの経済発展は、貿易や投資との連携の中で進められたとの認識の下、今後は経済改革をエンジンとしつつ、ODAと貿易・投資、金融を総合的に活用するなど、民間セクターも巻き込んだ包括的開発アプローチに取り組むことが再確認されました。
(3)実効的開発のための環境整備{前16文字下線あり}
更に、昨年9月11日の米国でのテロ事件を想起しながら、開発の前提として平和と安定を確保することの重要性が参加閣僚によって相当程度共有されていました。併せて、実効的で中長期的に安定した開発を実現するための環境整備についても数多く指摘され、その内容としては、グッド・ガヴァナンス、制度・インフラ整備、紛争予防などが注目されていました。
(4)グローバル化への対応{前13文字下線あり}
グローバル化への対応もまた、地域諸国が直面する開発課題として、多くの参加閣僚の関心を集めました。特に、その負の側面への対応として、貧困削減や社会的弱者への配慮の重要性が強調されています。
(5)地域的課題(域内格差是正)への取り組み{前22文字下線あり}
東アジアでは、アジア金融危機を皮切りに、開発課題に対して地域的に取り組むための地域協力が近年進展しています。特に、統合を目指すASEAN諸国にとって最大の懸案とされている域内格差是正のために、地域諸国の果たすべき役割を積極的に位置づけようとの試みが見られます。ASEAN後発国への支援を中核とするASEAN統合イニシアティブ(IAI)などはその一例です。ODAのみならず民間セクターの資源動員も念頭に置きながら、地域が一丸となって開発問題に取り組むための手段として、地域協力を一層促進していくことが今回改めて確認されました。
4.総括
IDEA閣僚会合の結論として、共同声明にもありますが、東アジアの開発手法の有効性を更に検証していくとともに、これら開発手法が他地域の開発に有益であれば、地域諸国が協力して国際的発信を進めていくこととしています。そうした取り組みの第一歩がまさに今回のシンポジウムであり、後半のセッションにおいて、ヴィエトナムにおける開発手法や開発協力の例を、日本の大野泉教授ほか、関係の有識者等の協力を得て、皆様により具体的な形でご紹介することにしています。我が国は、IDEAを通じて深まった東アジア諸国との協調関係を礎に、今後ともこのような国際的共有のための努力を進め、アフリカを始めとする世界各地の開発に向けて、様々な切り口から貢献していくつもりです。
ご静聴有り難うございました。