データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 川口外務大臣演説,より明るい未来をめざして:進展するグローバル・パートナーシップ

[場所] デリー(インド商工会議所連盟(FICCI))
[年月日] 2003年1月8日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 ご列席の皆様、

 インド商工会議所連盟においてお話しする機会をいただいたことは、大変光栄であり、また喜びとするところです。

 まだ大学生の頃、私は初めてインドを訪れました。(ムタイアFICCI会長から)先ほど「10年ひと昔」という言葉が紹介されましたが、これは、10年というのは随分前のことだという意味です。そうしますと、私のインド訪問は、本当に随分昔のことになるわけです。初めてのインド訪問を計画しながら、この旅行を通じて「本当のインド」をようやく理解できるかと思うと、わくわくする気持ちでした。しかし、現実には、インドに来て様々な場所を訪ねれば訪ねるほど、私にはインドのことが分からなくなりました。こう申し上げると驚かれる方があるかもしれませんが、つまりこういうことです。時計が一つしかないときは、何時であるかがはっきりしていますが、時計が二つになり、それらが少しずつ違う時刻を示すと、どちらの時計が正確なのか分からなくなります。そして、時計が三つ、更にもっと多くなり、違う時刻を指すと、状況はますます複雑になります。これが私のインドでの体験です。様々な場所を訪れ、様々な人に会うたびに、私は、何が「本当のインド」か分からなくなり、それを理解することがどれ程大変な仕事であるかに気付いていきました。この旅行は有意義なものでしたが、同時に私は、インドについてまだまだ知るべきことが多いことに少なからず圧倒されました。

 今回再びインドを訪れることが出来たことを嬉しく思います。とりわけ今回の訪問では、インドに前向きで希望に満ちた雰囲気が溢れつつあることを感じることが出来ました。世界の多くの国々が経済停滞に苦しんでいる中で、インドは目覚しい経済成長を遂げつつあります。今やインドにとって、明るい未来は目の前のものとなっています。しかし同時に、インドの明るい未来はまだこれからでもあります。

[1.戦略的パートナーシップ]

 ご列席の皆様、

 インドと日本の首脳は、両国間のパートナーシップの強化に努力してきました。2000年8月には、当時の森喜朗総理がインドを訪問し、アタル・ビハリ・バジパイ首相と「グローバル・パートナーシップ」を構築していくことに合意しました。2001年12月には、バジパイ首相が訪日し、小泉総理と共に「日印共同宣言」を発出しました。

 皆様ご承知のとおり、両国には大変多くの共通する事柄があります。私達は、長年にわたって重要な価値観を共有してきました。また、わが国は、千年以上のインドとの交流から非常に大きな影響を受けました。これらの歴史的、文化的な絆に加え、日本とインドは、アジアにおいて議会制民主主義と高度な司法制度を堅持してきた数少ない国同士だという点でも共通しています。さらに、私達は、これらの価値と制度への信頼性を維持し、高め続ける強い意志を有しています。

 冷戦終結以来、世界の戦略環境には大きな変化が起こりました。また、インド国内でも環境の変化が生じてきました。インドは、抜本的な経済改革によって、過去10年間に非常に高い経済成長率を維持しています。グローバリゼーションの波が世界に打ち寄せる中、ITを含む技術に優れた人材を豊富に有し、大変高度な英語力を備えたインドの未来には、成長への大きな機会がもたらされようとしています。かつてのわが国がそうであったように、今やインドは、アジアだけでなく世界の主要なプレイヤーとなるための地歩を着実に固めつつあるのです。

 日本とインドは、我々が直面する政治、安全保障、経済、及びグローバルな課題に一層効果的に対応するために、国際舞台でそれぞれが独自の対応をとるだけではなく、互いの強みを持ち寄り、弱点を補い合うパートナーとして、戦略的な視点に立って対処することに、大きな価値があることを認識すべきです。私は、小泉総理及びバジパイ首相と同じく、まとまりは部分の寄せ集めよりもはるかに強いと信じます。両国の「グローバル・パートナーシップ」は、アジアそして世界における将来の平和と繁栄を支える、かけがえのない支柱の一つになり得るものであり、また、そうならなければなりません。

[2.パートナーシップ強化の課題]

(安全保障・防衛分野での協力)

 新しい戦略環境の中で、インドは、冷戦時代には限られた関係しかなかった米国等の主要国との関係強化に努めてきています。特に、最近の米国との防衛協力の進展は顕著です。このインドのイニシアチブは、アジアの平和と安定に資するものです。わが国も、日米同盟を通じて、アジア太平洋の安定と繁栄の促進に寄与しています。

 日本とインドの協力も、この面において重要な新しい進展を示しつつあります。わが国は、テロとの闘いのために、5隻の海上自衛隊艦艇をインド洋に派遣していますが、これらの艦艇はインドから支援を受けています。これらの艦艇の活動は、わが国に、インドとの防衛交流の重要性を再認識させるものでした。また、海上自衛隊とインド海軍は、艦船の親善訪問を相互に行っています。また、両国の海上保安当局も、定期的な訪問と連携訓練を続けています。

 このような動きは、日本とインドの間に、一層緊密な協力関係を築くための基礎となるものです。日印両国の間には、これまで以上の関心を払うべき様々な安全保障・防衛上の問題があります。その一つは、インド洋を横断するシーレーンやマラッカ海峡における海上交通の安全確保についての協力です。両国は、このような問題について共通の利益と関心を有しています。

 日印両国にとって、安全保障・防衛面での協力を一層緊密なものにしていくことはきわめて重要です。昨晩、私は、シンハ外相との会談を行い、2月に次回の日印外務次官級政務協議を開催し、戦略問題を中心に意見交換を行うことを確認しました。また、両国の外務及び防衛当局が共に参加する協議を活性化することも重要です。さらに、インドと日本の研究機関及び専門家間の交流も積極的に促進する考えです。

(核軍縮・不拡散問題)

 ここで核軍縮・不拡散問題に触れないわけには行きません。これらは、安全保障・防衛分野での協力について述べる際のきわめて重要な問題であるからです。

 核軍縮・不拡散の問題は、日本人の意識に深く触れる話題です。何故ならば、わが国は、原子爆弾が投下された唯一の国になるという58年前の経験を有しているからです。日本人が経験した惨劇は言語に絶します。原子爆弾投下の直接の結果として、投下後5年の間に約20万人の国民が命を失い、その後、放射能の影響で約13万の国民が命を失いました。わが国は、あらゆる核兵器の廃絶を重ねて国際社会に訴えてきました。また、わが国は、インドを含む全ての国に、核軍縮・不拡散の礎であるNPT(核兵器不拡散条約)体制に加わるよう働きかけています。

 日印両国は、「日印共同宣言」で確認されたように、大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散防止のために建設的な努力を行っていかなくてはなりません。また、わが国は、核兵器のない平和で安全な世界を実現するために、現実的かつ具体的な措置を積み重ねていきます。我々は、様々な軍縮・不拡散上の措置に関する外交努力を強化してきていますが、その中でも、全ての核実験を禁止するCTBT(包括的核実験禁止条約)の早期発効を特に重視しています。私は、双方の国民、地域、そして世界に対し、出来る限り明るい未来をもたらす必要性を認識している日印両国が、核軍縮・不拡散について共に協力して取り組むことができるよう、インドがCTBTに早期に署名することを強く期待しています。

(経済分野での協力)

 経済面では、日本とインドは、90年代にインドが強力に推進した経済自由化措置によりもたらされた素晴らしい経済的機会を活用してきています。製造業の分野では、スズキやホンダといった日本企業による投資が特に成功を収めてきています。ヒーロー・ホンダ社は、私の知る限りでは、世界一のオートバイ製造企業です。また、マルチ・スズキ車は、今やインドの豊かなミドルクラスの象徴とされています。

 それにもかかわらず、日本とインドの経済面でのパートナーシップは、その潜在力を十分に発揮しているとはいえません。わが国には、投資、高い技術、経営手法の分野で、インドに提供できるものが沢山あります。一方で、優れたインドの労働力や、インド政府の経済改革政策を通じて一層整備されつつある環境は、より多くの民間投資をひきつけ、インド経済に更なる発展を実現し得るような条件を作り出しています。私は、インドが貿易と投資に対する残された障害を引き続き除去していくことを期待しています。

 IT等の先端技術分野におけるインドの技術力は、世界中に知れわたっています。わが国では、機械から家電、車輌に至る多くの製品にICチップが組み込まれており、わが国のほぼ全ての人々が、気がついているかどうかは別として、インド人エンジニアによって開発された様々な種類のマイクロチップやコンピューター・ソフトウェア等を使っていると言っても過言ではありません。私は、もっと多くのインド人エンジニアがわが国にその技術をもたらすことを期待しています。

 昨年12月、日本とインドの著名な経済人が、インドのIT首都バンガロールに会合し、集中的な意見交換を行いましたが、これは有意義な民間部門主導のイニシアチブの優れた例です。わが国政府は、経済交流の進展を引き続き後押ししていきます。また、今月には、経済産業審議官がインドを訪問し、日印官民投資対話に出席します。

 アジアにおけるより大きな経済連携を推進するための二国間協力も、重要な戦略的テーマです。私は、昨年11月のカンボジアにおける初のインド・ASEAN首脳会議を歓迎します。同会議でゴー・シンガポール首相は、ASEANにとってのインドの重要性を、ジャンボ・ジェット機の翼に例えて次のように述べました。

 「ジャンボ・ジェット機の片方の翼は、日本、韓国及び中国から成っている。しかし、ジャンボ機は、もう一方の翼が無くては飛ぶことができない。今日、もう一方の翼が組み立てられつつある。今やASEANというジャンボ機は、順調に、あらゆる天候の下で飛ぶことができる。」

 わが国は、現在、ASEAN諸国や韓国との経済連携に取り組んでいます。インドとASEANとの経済面での協力の動向如何によっては、東アジアから南アジアまで拡がる、広範囲な汎アジア的な経済圏の成立も考えられるかもしれません。いつの日かこれが現実のものになるかどうかはさておき、インドがこのような構想において中核的な役割を担うことは間違いありません。

(インド・パキスタン関係)

 ここで、日本とインドの経済関係に密接に関わる問題に触れたいと思います。インドが日本からの投資に対して良好な環境を増進するために多大な努力を払ってきたことは既に述べたところです。しかし、昨年5月から6月にかけてインド・パキスタン間の緊張が高まった際には、わが国を含むいくつかの主要国は自国民にインドからの出国を促しました。この措置は、インド経済やインドで活動する外国企業に大きな影響を与えました。日本企業がインドで安定した経済活動を行う上で、インド・パキスタン関係の改善は大変重要です。これはまた、インド市場の魅力を高め、インド自身の経済発展にも資するでしょう。私は、パキスタン国境から兵力を再配置するというインドの勇気ある決定を歓迎します。今後更に前向きな措置が取られ、インドとパキスタンの対話の早期再開につながることを強く期待しています。わが国も、パキスタンに対して、管理ライン越えの侵入を恒久的に停止するよう引き続き働きかけていきます。

(グローバルな課題についての協力)

 既に述べてきたように、日本とインドは、二国間の文脈だけではなく、様々なグローバルな課題についても、パートナーとして結束しています。両国の意見に違いがないと言うと奇麗事に聞こえるかもしれませんが、両国は文字通り数千年にも亘る知恵を蓄えています。この知恵が、両国の間に共通の基盤を見出し、共通の目標に向かって進んでいくことを助けてくれるでしょう。

 ここで私は、日本とインドが一層協力すべき課題として、3つのテーマ、すなわち「人間の安全保障」、「テロとの闘い」、「地球温暖化」を取り上げたいと思います。

「人間の安全保障」

 わが国は、「人間の安全保障」という理念を特に重視しています。個人が尊厳をもって生きるためには、貧困、環境破壊、紛争、地雷、難民問題、麻薬、感染症、突然の経済危機による損害などの様々な脅威から、各個人が守られなければなりません。わが国は、「人間の安全保障」を外交政策の柱の一つとして位置付け、国連に「人間の安全保障基金」を設立しています。

 世界の著名人からなる「人間の安全保障委員会」では、最近インディラ・ガンディー賞を受賞された緒方貞子前国連難民高等弁務官と、ノーベル経済学賞受賞者であるインドのアマルティア・セン教授が共同議長を務めています。私は、アジアの知性が「人間の安全保障」の実現に、多大なる、卓越した貢献を行っていることを大変誇りに思います。この委員会は、2月に報告書を採択します。私は、インドが、あらゆる機会に「人間の安全保障」を実現することに対するわが国の願いを共有してくれると信じています。

「テロとの闘い」

 国際テロは私達にとって深刻な懸念事項です。私は、2001年のインド国会議事堂や、カシミール等における非道なテロ攻撃に対する、インド国民の憤りと悲しみを共有します。そして、動機が何かにかかわらず、あらゆる形態のテロを強く非難します。昨年のカシミール地方議会選挙では、テロによる妨害の頻発にもかかわらず、多くの有権者が投票によって勇気と民主主義的なプロセスへの信頼を示したことを喜ばしく思います。

 私は、各国が決意と勇気を示し、あらゆる形態のテロと闘うことを希望します。わが国は、全ての国に対し、テロ防止関連条約を締結し、関連国連安保理決議を誠実に履行するよう引き続き働きかけていきます。また、わが国は、インドが提案した包括テロ防止条約草案を高く評価し、その早期採択を支持します。

「地球温暖化」

 多くの方がご存じのとおり、私は、日本の環境大臣を務めていましたので、地球温暖化問題は私にとって大きな関心事項です。私は、1992年の地球サミット以来、この問題にかかわってきました。環境大臣としては、京都議定書を多くの国にとり批准可能なものとした国際交渉に取り組みました。昨年、日本とインドは、共に京都議定書を批准しました。私は改めて、インドの批准に心からお祝いを申し上げたいと思います。

 皆様ご存じのとおり、インドはつい2ヶ月前に、気候変動枠組条約第8回締約国会議(いわゆるCOP8)をここデリーで主催しました。私は、環境の分野で、インドがこのような指導力を引き続き発揮することを心から期待しています。

 気候変動の分野では、いうまでもなく、時間という要因がきわめて重要です。ですから、地球温暖化の影響への適応も重要ですが、開発途上国を含む全ての地域で、共通のルールに基づく温室効果ガスの排出削減のために、具体的な措置がとられることも同様に重要なのです。行動が遅れれば、地球温暖化に対する脆弱性の高い途上国に深刻な影響が及びます。わが国は、京都議定書の早期発効と、議定書の約束達成のための取り組みを継続します。

 私は、環境の分野で新たに生起している様々な問題の解決のためにインドがイニシアチブを発揮することを期待しています。例えば技術移転に関する南南協力は、発展しつつある分野であり、インドが革新者、そしてリーダーとして重要な役割を果たすことができる分野であると考えます。

[3.平和の定着 =スリランカ和平に関する日本の新しい貢献=]

 ご列席の皆様、

 日本とインドが永続的な貢献を行うことができ、また、そうしなければならないもう一つの中核的分野があります。それは、紛争地域における平和構築と国造りという分野です。インドはこれまで、エチオピア・エリトリア、レバノン、コソボその他の地域における国連PKO活動を支援するために数多くの要員を派遣するなど、多大な貢献を行ってきた長い歴史を有しています。わが国も、カンボジアや東チモール、そして最近ではアフガニスタンにおいて、紛争緩和のための貢献を行ってきました。

 私は、この分野でのわが国の貢献を更に強化するために、「平和の定着」という考え方を提唱しています。この新しいわが国の外交政策の柱の特徴は、和平合意が正式に成立する前の段階から、地域社会に裨益するような支援の提供を開始することにあります。これは、差し迫った必要のある時に、現地住民に支援を提供するというだけでなく、現地住民が平和の配当を実感するのを助けることによって、和平プロセスに重要なモメンタムを与えるものです。このアプローチは、和平合意成立後の復旧・復興に焦点を当てた従来のアプローチに比べ、より能動的なものです。現在、スリランカやアチェ、ミンダナオ等で、和平の実現に向けた重要な動きが見られます。わが国は、こうした地域への支援を進め、和平への貢献を行っていきます。

 わが国は、スリランカ政府から支援の要請を受けています。それに応え、わが国は、平和構築に豊富な経験を持つ明石康元国連事務次長を日本政府代表に任命しました。さらに、6月にスリランカ復興のための会合を東京で開催します。この会合は、紛争地域であった北・東部だけでなく、スリランカ全体の中・長期的な国造りについて議論することを目的とするものです。私は、この会合が、和平プロセスの加速に向けた国際社会の一致した決意を示す場となることを期待します。また、わが国は、本年3月に和平交渉の一つの会合を日本国内で主催します。

 スリランカ和平の達成にとって、インドはきわめて重要な存在です。スリランカに対する支援に取り組むに当り、わが国は、戦略的パートナーシップの下、インドと引き続き緊密に協力していく考えです。

[4.経済協力]

 ご列席の皆様、

 講演を締めくくる前に、インドの経済発展を支援し、また、両国の戦略的パートナーシップを支える信頼協力関係を強化する上で極めて重要な役割を果たしている、わが国のODA政策についてお話ししたいと思います。

 1998年のインドによる核実験への対応として、わが国は経済措置を実施しましたが、2001年10月、わが国は同措置の停止を発表しました。そして今回、わが国は、厳しい経済・財政事情にもかかわらず、インドに対して新たに約1100億円の円借款の供与を約束することを決定し、昨晩、シンハ外相にお伝えしました。わが国は、ODA大綱の諸原則を踏まえ、保健・医療、農業・農村開発、環境保全、経済インフラ開発の各分野において、インドへの経済協力を引き続き行っていきます。

 ODAを通じた日本とインドの協力は、既に数々の成果を上げてきています。その一例として、わが国はこれまでにデリーメトロの建設に500億円以上を供与してきましたが、先月、デリーメトロの一部区間が開通し、昨日、実際に乗ってみました。バジパイ首相が開通式典において、この事業は日本とインドの協力の素晴らしい例であると述べ、この事業を高く評価されたことは喜ばしいことです。私は、この事業によって、デリーの交通渋滞が緩和され(この会場に来るまでの酷い渋滞で、私も含め皆さんがその必要性を感じていると思います)、空がよりきれいになり、デリー市民の生活が改善されることを期待しています。また、デリーメトロが、両国間の協力の新たなシンボルとして、インド国民に親しまれることを期待しています。わが国が追加的に提供する円借款の中には、この事業を更に進めるための借款が含まれています。

 2001年末のバジパイ首相訪日の際に、小泉総理からバジパイ首相に対し、聖なるガンジス河の汚染対策をお手伝いしたい旨伝えました。わが国は現在、本年3月に調査団を派遣し、インドの関係省庁との協力の下に水質調査を行うことを計画しています。この聖なる河の持つ力、美しさ、大切さは、いくら強調しても、し過ぎることはありません。わが国は、インドによるガンジス河保護の力強い取り組みに協力できることを喜ばしく思います。人生の価値は、息を吸い込む回数でなく、はっと息をのむ瞬間の数によって決まると言われています。再び美しくなったガンジス河を見ることは、このインドの精神的、文化的、歴史的な遺産の極めて重要な部分に深い関心を抱いている私達すべてにとって、長く待ち望んできた、真に息をのむ瞬間の一つとなるでしょう。

[5.結語]

 ご列席の皆様、

 日本とインドのグローバル・パートナーシップを強化する仕事に取り組む中で、私は、これからのインドがもつ潜在力の大きさに感動させられました。私達のグローバル・パートナーシップはこの潜在力に立脚しており、私達が今やろうとしていることは、これからやるべきことのほんの一部に過ぎません。本日ここにお集まりの多くの皆様は、インドの未来を益々明るいものとしていく変化の中で、大変重要な役割を担われることでしょう。私は、皆様に、今後のグローバル・パートナーシップの発展を注目してくださるようお願いします。このインドと日本のパートナーシップが、地域にとって、そして世界にとって重要なものとなることは間違いありません。

 ご静聴有り難うございました。