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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アフガニスタン「平和の定着」東京会議における川口順子外務大臣による演説

[場所] 東京
[年月日] 2003年2月22日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

 ご列席の皆様を、このアフガニスタン「平和の定着」東京会議にお迎えすることができ、大変嬉しく思います。とりわけハミード・カルザイ大統領とブラヒミ・アフガニスタン問題担当国連事務総長特別代表が、本会議に参加するため遠路はるばるアフガニスタンから来て下さったことに謝意を表します。

1.「平和の定着」:なぜ日本が取り組むのか

 2002年1月のアフガニスタン復興支援東京会議において、国際社会は46億ドルの支援を約束し、大きな成果を収めました。その内、我が国は、3億5,800万ドル以上に相当する復興と再建のために支援を拡大しました。この支援は、和平プロセス、国内の治安および人道・復興の促進という3つの分野に対して行われました。

 しかし、この支援は、アフガニスタンの平和が確保され、国土が肥沃になりようやく実りあるものとなります。そのような考えから、昨年5月のアフガニスタン訪問に先立ち、私は「平和の定着」構想を発表しました。そしてそれが、支援の際に、和平プロセス、国内の治安および人道・復興支援の促進という3つの分野を優先分野とした理由です。これらの3分野における取り組みは、相互に補完されなければなりません。

 わが国は、世界の平和と安定に貢献するとの観点から、わが国の支援の実施とその成果を重視しています。「平和の定着」構想は、昨年5月に小泉純一郎総理がシドニーで行った政策演説にも基づいていますが、その演説の中で小泉総理は「平和の定着と国造り」が我が国の国際協力の柱をなす旨を強調しました。

 この方針に基づき、我が国は、アフガニスタンはもちろんのこと、コソボ、シェラ・レオーネ、東ティモール、スリランカといった世界中の様々な場所で、紛争後の平和構築・復興支援を実施することにより、平和の定着への取り組みを強化してきています。このような文脈から、本日の東京会議の焦点は自然に「治安」となるのです。

2.元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)を通じた治安の強化:どのように日本は進むのか

 アフガニスタンの国内状況の安定が、政治プロセスの成功とアフガニスタンの復興の進展の前提条件であるので、元兵士の武装解除、動員解除および社会復帰、すなわちDDRが、最も緊急の課題の一つであることは疑う余地はありません。

 しかし、この取り組みを進める方法は、長年にわたり銃を所有してきているアフガニスタンの元兵士に単に雇用機会を与えるという単純なものではありません。元兵士の一部を受け入れるために新たなアフガニスタン国軍(ANA)の創設を促進するのと平行に、その他の元兵士たちが武器を供出し、国造りのプロセスに参加するのです。言い換えれば、アフガニスタン国民が、国際社会の支援を受け、「銃から鍬へ」と移行する新たな秩序を創設しているのです。

 さらに、新たな秩序を実現するための鍵は、アフガニスタンの全ての関係者の平和と真の国民再融和に対する強い意志にあります。カルザイ大統領のリーダーシップの下、アフガニスタンは、平和のための強い礎を築くために途方もない努力をしてきているのです。本日の会合で、アフガン側が平和の基礎を更に発展させるための具体的政策と特定された実施意計画を提出することを期待します。

3.具体的な支援策:日本はいかなる貢献ができるのか

 この「銃から鍬へ」の新たな秩序の一要素として、私は、昨年5月にアフガニスタンを訪れた際、「平和のための登録(Register for Peace)」という日本の提案を紹介しました。このイニシアティブの下、元兵士たちは武装解除され、市民社会に復帰し、地元の発展に貢献することができるようになります。日本は、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)およびアフガニスタン移行政権(ATA)と共に、元兵士の武装解除、動員解除、社会復帰(DDR)のための計画を練り、「平和のためのパートナーシップ計画(アフガニスタン新生プログラム:ANBP)」を策定する作業を行ってきています。

 アフガニスタン移行政権(ATA)は、元兵士の武装解除、動員解除、社会復帰(DDR)を実施するために、4つの委員会と諮問委員会を設置しました。私は、「平和のためのパートナーシップ計画」がまもなく具体的な行動に移され、DDRプロセスが早期かつ円滑に開始されることを心から期待しています。

 本日、アフガニスタンにおけるDDRプロセスを加速させるために、我が国が今後行っていく具体的な追加策を発表できることを嬉しく思います。その支援策は次の通りです。

●第一に、我が国は、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)およびアフガニスタン移行政権(ATA)と共に策定した「平和のためのパートナーシップ計画」のために、35百万ドルの資金拠出を行います。

●第二に、アフガニスタン移行政権との協力の下、我が国は在カブールの日本大使館内にDDR(元兵士の武装解除、動員解除、社会復帰)班を設置し、DDR専門家の伊勢崎賢治教授をその長とします。

●第三に、我が国はDDR(元兵士の武装解除、動員解除、社会復帰)の4つの委員会と国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)との緊密な連携の下、「平和のためのパートナーシップ計画(ANBP)」の円滑な実施を確保し、DDR プロセスを包括的に推進していきます。

 我が国は、DDR(元兵士の武装解除、動員解除、社会復帰)の主導国として、これらの方策により、アフガニスタン側による取り組みを国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)と共に支援し、アフガニスタンのDDRプログラムの成功に向けて、国際社会の支援を結集していきます。