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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 川口外務大臣談話 イラク問題に関する国連査察団による安保理報告について

[場所] 
[年月日] 2003年3月8日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

1.ニューヨーク時間7日(日本時間8日)、ブリックスUNMOVIC(国連監視検証査察委員会)委員長およびエルバラダイIAEA(国際原子力機関)事務局長より国連安保理に対し報告が行われた。UNMOVICの報告は、2月28日に配布された報告を補足するものであり、アル・サムード2ミサイルの廃棄が開始され、個別インタビューが行われたとする一方、イラクはさらに廃棄に関する記録を提出すべきであり、これまでの情報は限られたものである旨改めて指摘した。また今月末までに決議1284に従い、残された武装解除問題を含む作業計画を提出する予定であるが、外的圧力が継続され、イラク側から能動的な協力があった場合でも、検証のためには数ヶ月といった時間を要すると述べた。

2.このように、わが国としては今回の報告を踏まえ、イラクの協力は最近、多少の進展が見られるものの、国際社会の圧力を受けてなお不十分であり、限定的なものにとどまっていると考える。わが国を含む国際社会が望んでいる平和的解決は、ひとえにイラクが抜本的に態度を改め与えられた最後の機会を活かすか否かにかかっている。かかる観点から、わが国は新たな安保理決議の採択を通じ、国際社会の一致した断固たる姿勢を明確に示すことが重要と考える。さらに、わが国としての主体的外交努力として、先般総理特使をイラクに派遣したが、同国が、即時、完全、無条件に査察に協力し、武装解除義務を果たすためには、イラクに対し国際社会が一致してなお一層の強力な圧力をかけるほかはないと考えられる。

3.今般、決議案の改訂案が提案され、今後、安保理メンバー国による協議がさらに本格化するものと考える。わが国としては、この決議案は国際協調を貫き、国際社会が一致してイラクに対し圧力をかけ、イラクが自ら武装解除するための最後の努力を行うものとして、これを支持する。また、わが国としては、国際協調が達成されるよう引き続き外交努力を行っていく考えである。

4.これまでのイラクを巡る事態の進展を踏まえ、わが国は、イラク、クウエートおよびサウジアラビアのカフジ地区に在留している邦人に対し、「退避勧告」を発出しているところであり、未だ残留している邦人の方々に対し、改めて即時の退避を呼びかける。また、その他のイラク周辺国に在留する邦人の方々に対しても、大使館・総領事館と緊密に連絡を取りながら適切な安全対策をとって頂くよう要請する。