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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第3回CTBT発効促進会議における川口外務大臣演説

[場所] ウィーン
[年月日] 2003年9月3日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

トゥオミオヤ議長、

ご列席の皆様、

 はじめに、トゥオミオヤ・フィンランド外相の議長御就任を心よりお祝い申し上げます。

(発効促進のためのモメンタムの維持)

 議長、

 1996年9月、包括的核実験禁止条約が採択されてから、7年が経過しました。この間、104ケ国という多くの国がCTBTを批准し、その価値は国際社会で広く共有されるようになりました。しかし、依然、発効要件は満たされていません。本日、これだけ多くの国々の代表が、CTBTの発効を願って集まったことには強く勇気付けられます。しかし、再度発効促進のために我々が集わなければならないことは、残念であると言わざるを得ません。

 CTBTの採択は、インドのネルー首相が1954年4月に最初に核兵器実験停止を主張してから40余年を経て実現されたものであり、戦後の核軍縮・不拡散の歴史上極めて大きな意義を有するものです。CTBTは、あらゆる核爆発実験を違法化し、核軍縮と核不拡散の双方に大きく資するものです。CTBTの発効は、核兵器のない平和で安全な世界の実現という崇高な目的に向けての重要な貢献となるでしょう。特に世界で唯一の被爆国である我が国にとって、CTBT発効は国民の悲願です。今次発効促進会議においては、未署名国、未批准国に対して、国際社会の圧倒的多数の声として、可能な限り早期に署名・批准を行うことを求める強いメッセージを改めて発することが重要と考えます。

(CTBTの核軍縮・不拡散上の意義)

 議長、

 国際社会の一部には、CTBTが発効しない現状に失望し、発効促進の努力を懐疑視する見方があります。しかし、私は、発効促進の努力を続けていくことは重大な意義があると考えます。私は、CTBTが国際社会において事実上果たしている役割を評価すべきであると考えます。CTBT採択前に、すべての核兵器国は核爆発実験モラトリアムを宣言しました。98年、核爆発実験を行ったインド、パキスタンも、圧倒的な国際世論の前に、核実験モラトリアムを宣言しています。核実験を強行すれば、国際社会の厳しい批判と非難に晒されることは、今や誰の目にも明らかです。CTBT発効促進に向けた我々の努力は、核爆発実験を禁止すべきであるという価値を、国際社会に広く、そして深く根付かせた点において、また、核実験に対する一定の抑止効果を発揮している点において、重要な役割を果たしています。今後も我々は、諦めることなく、粘り強く、このような努力を続けていくことが必要です。

(我が国の発効促進努力)

 議長、

 我が国は、発効要件国の一つであるアルジェリアが、7月に批准書を寄託したことを歓迎します。他方、未だ12ヶ国の発効要件国が未批准の状況であり、これらの国々の早期の批准が重要です。我が国は、これらの国々に対して、あらゆる機会を捉えて、高いレベルで、CTBTの早期批准の重要性を訴えて参りました。今次会合の前にも、貴議長とフェレーロ・ヴァルトナー・オーストリア外相と共に、このための書簡を残る12ヶ国に発出したところです。また、我が国が発効促進のために講じた措置を資料として席上配付しております。

 我が国は、改めて全ての未批准国の可能な限り早期の批准を求めます。就中、その批准が条約の発効要件となっている44ヶ国のうち、署名済みなるも未批准の9ヶ国が早期に批准し、また、未署名の3ヶ国が早期に署名・批准することを求めます。

(CTBTにおける国際協力の重要性の強調)

 議長、

 CTBTに定められた検証制度は、地球上を均質な観測技術で覆い尽くす、人類の観測史上、他に例を見ない試みです。CTBT検証体制は、国際社会に関知されずに核爆発実験を行うことを極めて困難とするものであり、核爆発実験に対する抑止効果の増大にも繋がります。検証制度整備のためにホフマン暫定技術事務局長が払われた努力を、私は高く評価します。

 また、地震頻発国である我が国は、地震観測に関する世界有数の知見を有しており、この知見を活用してCTBT検証制度に関して、途上国に対して技術協力を行って参りました。また、我が国は、昨年11月、「CTBT国内運用体制」を立ち上げ、我が国における国際監視施設の建設・整備を開始したことを報告します。

(核実験モラトリアムの重要性の再確認)

 議長、

 現在、核兵器を保有する全ての国が核実験のモラトリアムを宣言しております。一方的なモラトリアム宣言は、条約の代用となるものではありませんが、私は、これらのモラトリアムを評価するとともに、CTBT発効までの間、その政策を堅持するように強く訴えます。私は、また、全ての国がいかなる場所においても核兵器の実験的爆発を実施しないことを再び強く訴えます。

(2005年NPT運用検討会議に向けて)

 議長、

 NPTを礎とする核軍縮・不拡散体制において、CTBTは極めて重要な役割を担っています。2000年のNPT運用検討会議において確認された「CTBT早期発効の重要性と緊急性」が、2005年のNPT運用検討会議においても再確認されることが必須であると考えます。同時に、2005年NPT運用検討会議までに、CTBT発効に向けて大きな前進が見られることを衷心より期待し、我が国としてもそのためにあらゆる努力を傾注したいと考えます。

 ご静聴有難うございました。