[文書名] アジア・アフリカ閣僚会議における町村外務大臣演説
1.冒頭発言
インドネシア共和国ハッサン・ウィラユダ外務大臣、南アフリカ共和国ヌコサザナ・ドラミニ=ズマ外務大臣、各国の閣僚の皆様、御列席の皆様、
50年の月日を経て、アジア・アフリカ諸国会議が再びインドネシアの地で開催される運びとなったことは、私にとりこの上ない喜びであります。これまで共同議長たるインドネシア共和国及び南アフリカ共和国の両国が果たしてきた御努力に対し、心より謝意を表明いたします。
この機会に、最近のスマトラ島沖大地震及び津波によって被害を受けた国々と犠牲になられた方々に対し、深い哀悼の意とお見舞いの意を表します。またインドネシアが、自ら最大の被害国となられたにもかかわらず、今回の会議を予定通り開催されましたことを評価します。
2.バンドン宣言について
議長、
我々、すべての参加者は、21世紀において我々が進むべき方向性を明確に打ち出した「新たなアジア・アフリカ戦略的パートナーシップ」宣言を大変な誇りとしています。特に、
(1)人権、民主主義の促進、法の支配、
(2)多国間主義の強化、
(3)文化面での協力(文化遺産の保護、文明間対話)等が重視されていることは、特筆に値します。
また、同宣言にTICADについて言及がなされていることを歓迎します。TICADは、アジア・アフリカ協力を12年のプロセスで推進してきており、今次会議の成果を必ずや具体化させることとなるでしょう。
我が国は、この「宣言」を高く評価すると共に、全面的に支持します。
3.我が国の国際協力
議長、
50年前のこの会議で、我が国は平和国家として進む決意を表明しました。今日、私は、我が国のこの固い決意を再び表明するとともに、開発協力と地域協力への積極的な参加を通じたアジア・アフリカ諸国との協力につき我が国の方針を述べたいと思います。
(1)開発協力
我が国は「有言実行」の国です。我が国は、「人間の安全保障」を重視し、途上国の自主性と自助努力を尊重します。過去10年間の我が国の援助総額は世界の援助総額の約2割を占め、アジア・アフリカ諸国に対して約1300億ドルの支援を実施してきました。また、過去50年間で2万5000人超の青年海外協力隊員を派遣し、人造りに貢献してきました。
(2)防災協力
この機会に、私は防災について簡単に言及したいと思います。自然災害は、人類にとっての災禍であるだけでなく、持続可能な開発にとっても大きな障害です。アジア・アフリカ地域では、これまでに多くの人々が自然災害に苦しめられてきました。その被害を低減するために、神戸で開催された国連防災世界会議で採択された「兵庫行動枠組」を着実に実施する必要があります。そのための努力として、我が国は、インド洋地域の津波早期警戒システムを構築するユネスコやISDR(国際防災戦略)の共同作業を支援しています。また我が国は、完全なシステムが構築されるまで、国連防災世界会議で約束された暫定的な津波監視情報の提供も行っています。我々は、自然災害に対して事前に備え、自然災害に強靱な社会を構築すれば、被害を防ぎ軽減することはできると強く信じています。それ故に、我が国は関係国との協力を進めていきます。
(3)地域協力への積極的関与
今日、アジア・アフリカ地域の人々は様々なフォーラムを通じて地域協力を進めています。我が国は、こうした地域協力の動きに積極的に関与し、支援していきます。
アジア地域においては、12月の東アジア・サミット開催と東アジア・コミュニティーに関する議論の高まり、日中韓協力の強化、南アジア地域協力連合(SAARC)による地域の安定及び発展に向けた努力、更にはPIF(太平洋諸島フォーラム)の深化などが見られます。
アフリカ地域においては、アフリカ連合(AU)やNEPADとの協力・対話を強化していきます。特に我が国は、1億ドルの財政支援に加え、国連ミッションへの人的貢献及び物資供与を通じ、スーダンの平和構築を支援していきます。
中東和平プロセスの前進のため、我が国も積極的な役割を果たしていきますが、アジア・アフリカ諸国の建設的役割も重要です。「中央アジア+日本」対話も強化されるべきです。更に、アジア開発銀行(ADB)等の地域金融機関との協力も進めていきます。
(4)国連改革
なお、国際協調の強化のためには、国連を現在の国際社会の現実を反映した組織に改革することは喫緊の課題です。安保理の改革について、我が国は、今夏までにも、常任・非常任の双方の議席の拡大を基本とする決議案の採択を目指しています。私は、この問題について各国と十分意見交換を行っていきたいと考えており、また明日開催予定の国連改革に関する特別会合において、建設的な議論が行われることを期待します。
4.結び(バンドン閣僚会議のホスト表明を含む)
議長、
我々の大きな声こそが、国際社会を動かします。50年前にこの会議で産まれた「バンドン精神」は、今まさに、(今次首脳会議で採択されようとしている)「新たなアジア・アフリカ戦略的パートナーシップ」に引き継がれます。
我が国は、アジア・アフリカ諸国の一層の連帯の強化を図るため、首脳会議を4年に一度、閣僚会議を2年に一度開催することを支持します。また、我が国としては、アジア・アフリカ地域機構間の協力を強化するためのフォーラムの開催を提案すると共に、2007年に予定される次回のアジア・アフリカ閣僚会議がアジアで開催されることになるのであれば、我が国が同閣僚会議をホストする用意があることを表明します。
最後に、インドのノーベル文学賞受賞者であるタゴールの言葉の一説を引用たい{前4文字ママ}と思います。この言葉は、アジア・アフリカ諸国の連帯の精神をまさに象徴したものと言えましょう。
「言語や習慣の相違はお互いの心と心との接近を妨げなかった。
人種的誇りあるいは優越感の傲慢さによって、われわれの関係が傷つけられることはなかった。
そして土地、言語および歴史を異にする各人種が、至上の人間の一体性と最も深い愛の絆に感謝した。」