[文書名] 町村外務大臣による2005年NPT運用検討会議における一般討論演説
(今次会議の意義)
議長、
私は、日本政府及び国民を代表して、閣下が本会議の議長に選出されたことに対し、心から祝意を表明いたします。
NPTは、現在大きな挑戦に直面しています。大量破壊兵器及びそれらの運搬手段の拡散は、安全保障上の最も深刻な問題の一つです。我々は、この会議をNPTの権威と信頼を強化するための機会とすべきです。
私は、これまでも広島、長崎を度々訪問し、核の悲劇に触れてきましたが、今日、この会場に入る際、核の悲劇を示したパネルを見て、改めて胸を打たれました。被爆60周年のこの機会に、核の悲劇を繰り返させないために、我々がNPTへのコミットメントを再確認することを期待します。
(国連改革)
議長、
アナン事務総長は、その報告において、国際の平和と安全にとり軍縮・不拡散が一層重要となっていることを指摘されました。私は、国連がこの課題に取り組む上で重要な役割を果たすべきと信じています。ただ、そのためにも、国連自身、特に安保理の改革が不可欠です。我が国は、これまで、国際社会の先頭に立って軍縮・不拡散の目的のために努力してきました。我が国は、非核三原則を今後とも堅持しつつ、機能強化された国連において軍縮・不拡散のために一層積極的な役割を果たす役割を有しています。
(日本の重点事項)
議長、
私は、NPTの機能を強化するために特に5つの点を強く訴えたいと思います。
第一に地域問題に適切に対処することは極めて重要です。
特に、北朝鮮の核計画は、国際的な核不拡散体制への深刻な挑戦であるとともに、日本を含む北東アジア地域の平和と安定への直接の脅威です。本年2月に北朝鮮が核兵器の製造、保有を公言したことは、国際社会に深い懸念を惹起しました。我が国は、北朝鮮に対し、NPT上の義務を遵守するとともに、信頼のおける国際的な検証の下、ウラン濃縮計画を含むすべての核計画の完全な廃棄を行うよう強く求めます。また、北朝鮮に対し、早期に、無条件で六者会合に復帰するよう求めます。我が国は、今次会議において、北朝鮮に対し、これらの明確なメッセージが発出されることを望みます。
イランの核問題について我が国は、イランが累次のIAEA理事会決議のすべての要求事項を誠実に履行することが重要と考えます。また、イランが自国の核計画がもっぱら平和的目的であるということについての「客観的保証」に、フランス、ドイツ及び英国との間で合意するよう求めます。
我が国は、インド、パキスタン及びイスラエルに対して、非核兵器国としてNPTに無条件で早期に加入することを求めます。リビアの大量破壊兵器計画廃棄の決定を歓迎します。また、中東における非大量破壊兵器地帯創設を支持します。
第二に、核兵器のない平和で安全な世界を実現するためには、現実的な核軍縮措置を漸進的に実現していかねばなりません。この観点から、我が国は、包括的核実験禁止条約の発効要件国に早期の批准を求めます。また、兵器用核分裂性物質生産禁止条約の交渉の早期開始を求めます。
核兵器国による核兵器削減の努力は正当に評価されるべきですが、我が国は、すべての核兵器国に、すべての種類の核兵器の一層大幅な削減を含む、更なる核軍縮措置を求めます。
この点に関し、我々は、1995年に「原則及び目標」が、2000年運用検討会議では13の実際的措置が合意されたことを想起すべきです。
第三に、我が国は、核不拡散体制強化のためには、IAEA追加議定書の普遍化が最も現実的かつ効果的な方途と確信しており、この目的を積極的に推進してきています。我が国は、追加議定書を締結していないすべての国に対して更なる遅滞なく締結することを求めます。
第四に、出来る限り多くの国の能動的な協力によって不拡散体制全体を強化することも重要です。我が国は「拡散に対する安全保障構想」に積極的に参加するとともに、不拡散に関する安保理決議1540の誠実な履行を各国に求めます。
第五に、原子力の平和的利用は益々重要となってきていますが、原子力の平和的利用は、国際社会の信頼を得て行われなければなりません。このような信頼は、NPT上の義務の誠実な履行と原子力活動の高い透明性の上に成り立つべきです。また、我が国は、このような配慮を踏まえてIAEAの技術協力を引き続き支援します。
(結語)
議長、
我が国は、今次会議が発出することを切実に希望する具体的メッセージの骨子を「21世紀のための21の措置」という提案にまとめて提出します。我が国は、これらの措置が、NPT体制の機能強化に貢献するものと信じます。私は、今次会議がNPT体制を更に強化するような力強く明確なメッセージを発出することを強く期待します。
御静聴ありがとうございました。