データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2005年OECD閣僚理事会・開発の議題における町村外務大臣スピーチ

[場所] パリ
[年月日] 2005年5月3日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

パーション首相、

ジョンストン事務総長、

各国代表の皆様。

1.冒頭

 まず本セッションに参加されている非加盟国の代表の皆様に歓迎の意を表したく存知ます。この機会に、持続的開発(sustainable development)について、加盟国及び非加盟国の代表に申し上げたいことは、過去、環境と開発の目標を同時に達成した国はないということです。このことを正直に正面から見つめた上で、これから発展しようとする途上国には、我々と同じ轍を踏んでほしくないと常に願って参りました。日本は、そのために必要な協力の手を差し伸べたいと思っています。

2.人間中心の開発

 日本は、過去10年間、全世界のODAの5分の1を1ヶ国で背負って参りました。そして、かつてアフリカよりも貧しかったアジアの今日の経済発展が示しているように、日本のODAは受益国の大変なご努力とあいまって、具体的な成果を挙げています。今日の日本の開発戦略は、アフリカの諺が言うように、「魚を与えるよりも、魚の釣り方を伝える」、即ち、人造り(human resources development)、制度作り(institution building)を軸としています。その中心にある考え方は、人間中心の開発(people-centered development)、いわゆる人間の安全保障です。人間は、誰しも尊厳(dignity)を持って生まれ、生き、そして、死んでいく権利がありますが、今日60億人のうち、何人がこのような人生を送ることができているのでしょうか。

3.経済成長を通じた貧困削減

 さて、持続的開発を実現するためには、生き抜く力を持った(empowered)人々が経済的・社会的に参加して、経済成長することが必要です。これは、もとより外国からの援助のみでは達成できません。自ら稼ぐためには、幅広い経済活動と貿易や投資の促進も重要です。OECDはその点で有為な経験とノウハウを有しており、これを途上国と分かち合うことが大切です。

4.アフリカ支援

 小泉総理は、「アフリカ問題の解決なくして世界の安定と繁栄はありません」と繰り返し述べています。日本は、これまでTICADを通じて、連帯の精神に基づいた対アフリカ協力を進めてきました。小泉総理は、先月開かれたインドネシアでのアジア・アフリカ首脳会議で、今後3年間で日本の対アフリカODAを倍増することを表明しました。そうした中で日本は、アジアの成長の経験をアフリカに伝えるお手伝いもします。また、アフリカに豊かに存在する起業家精神(entrepreneurship)が具体的な力となるよう、アジアとアフリカの投資と貿易の交流を促進するために、IT(Information Technology)を活用したネットワークを一層活性化して提供します。

 また、OECDは、その知見を活かして、NEPADとも協力しつつ、アフリカの多様性とニーズを踏まえ、アフリカ諸国を対象とした投資環境整備努力を支援する取り組みを行うべきです。提案の具体的内容については、ルーム・ドキュメントをごらんいただければ幸いです。

5.むすび

 日本は、これまで家父長主義(paternalism)ではなく、連帯(solidality{sic})に基づく対等なパートナーシップとの信念を持って、途上国との協力を進めてきました。

 日本は、これまでも、今も、そしてこれからも、助けを必要としている人々の力になる決意です。

 ご静聴ありがとうございました。