[文書名] 第6回WTO閣僚会議における麻生外務大臣ステートメント
議長、わたくしも皆様と同様、曾蔭権香港特別行政区行政長官、ならびに香港の人々に対し、この重要な会議を主催頂いたことを感謝したいと思います。
議長、かつてGATT35条の下で辛酸をなめ尽くした国に属する一人として、わたくしは、世界の貿易システムから排除されることがどれだけ辛いことか、よく承知している者です。WTOのルールは、まず何よりも小さい国、脆弱な国にこそやさしい規則でなければならない。日本は、これまで常にそう信じてやって参りました。
本日わたくしは、ある具体的な方策を提案するため登壇しております。日本がその提案によって目指すところは、すべてのWTO加盟国を、多角的貿易体制へ十全に統合しようとすることにほかなりません。
そのための第一歩として、途上国、なかんずく後発開発途上国を、貿易システムへと参加できるよう促すことが重要になります。
うまく貿易に加わるには、まずそれら諸国において生産能力の向上を見る必要があります。次に製品が円滑に港へ届いて輸出され、海外市場で消費者のもとへと届かなくてはなりません。
日本のパッケージは、これら三つの欠くべからざる環をすべてカバーし、一つの鎖をなそうとするものです。それは、農場で、また工場で働く者を、ともに益する連鎖となるでありましょう。
具体的には第一に、インフラ関連分野で合計100億ドルの資金協力を実施します。
第二に、途上国への専門家の派遣と、途上国からの研修員の受け入れを行います。双方向での人数は、合計1万人となるでしょう。
第三に、全LDC諸国の全産品に対し、原則無税・無枠の市場アクセスを提供します。
60年前、日本人は戦争による廃墟の中、ろくな資源とてないまま、みな無から立ち上がったのでした。けれども国の再興へ向け働いた人々は、明日が、今日よりきっと明るいことを知っていた。希望というものを胸に、日本人はある善の循環を達成しました。「オーナーシップ」と、「パートナーシップ」の間の好循環であります。すなわち自分たち自身が自国の運命を所有する「オーナー」であると知り、またそれゆえに、他国との「パートナーシップ」が欠くべからざるものであることを知っていたのであります。
お金というものは、決して万能薬とはなりません。いわんやただの言葉は、足しになるものではない。希望と、そして自尊心の根づくことこそがはるかに重要です。結局のところ、人々自身が自らの所有者とならねばならず、そうして初めて、人々は歩みを進め、やがてWTOファミリーの確かな成員となることができるのです。
開発問題においてカギをなすのはこのような善の循環であって、またこれこそは、多くの日本人が開発途上国と分かち合いたいと念じているものにほかならないのです。
過ぐる10年というもの、日本は世界の全ODAの20パーセント、ないしそれ以上を、たった1国で供与して参りました。小さくない達成ではありますが、わたくしがいささかの誇りとするのはむしろ、われわれが弛むことなく追い求めてきたある一つの目的についてであります。議長、その目的とはまさに、途上国の人々に、自らに対する希望を抱かせることでした。そのうえで、オーナーシップとパートナーシップの間に、あの善の循環を築かせることだったと言うことができます。そしてこのたび発表いたしました日本のパッケージも、まさしくこの目的に資するものだと言えましょう。
ご清聴大変有難うございました。