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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 財団法人中東調査会における麻生外務大臣特別講演会:わたしの考える中東政策

[場所] 
[年月日] 2007年2月28日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 本日はお招きを下さり、有難う存じます。

 中東調査会は、保守合同で自由民主党ができたのとほぼ同じ頃、生まれたのだと伺いました。今の服部(禮次郎)さんに至るまで、歴代会長にはそうそうたる方が名を連ねておいでです。経済界が寄せる期待には、さぞ大きいものがあったのだろうと思います。

 本日は、今後中東政策を進めるうえで、わたくしなりに、指針となると思うところを述べるつもりで参りました。

●「自由と繁栄の弧」について

 今から3カ月前のことですが、「自由と繁栄の弧をつくる」と題しまして、我が国外交の新方針についてお話を致しました。

 地理的には、ユーラシア大陸の外縁に沿って弧をなす一帯を、考え方としては、自由や人権、民主主義や法の支配といった普遍的価値を、われわれ日本人自身、苦労して我が物とした経験を踏まえ、重視して参ろうというものです。

 そのことは、本国会冒頭の外交演説においても繰り返し、日本が獲得した外交の新機軸であるとして、ご紹介致しております。

 生きていくうえで、何をいったい大切に思うのか。そこをあえて言葉にするということは、自分とは何者か、また、何になりたいかを、自己規定するのと同じです。

 「自由と繁栄の弧をつくる」とは、日本という国の、そのような意味で自己規定をする試みだったと思っております。

 中東の国や地域によっては、「自由と繁栄」という言葉に対して警戒心を抱く人がいるかもしれません。しかし、わたくしども、日本で考えております理念は、必ずや中東の皆さんにも受け入れられるものと信じております。

 私はアフガニスタンから北アフリカに至る、今日広い意味で中東と呼ばれる地域の人々に、日本が、何を掛けがえのないものとして大切にしている国なのか、知っておいて欲しいと思います。そして、いつの日か、中東の人々と同じ思いを共有していきたい。そう思っています。

●傷ついた自尊心に癒しの言葉

 しかし自分を語るに正直なのはよいとして、相手の理解がなければ始まらないのは、外交の鉄則です。

 自分がもし中東に生を受け、イスラム教を奉じる者となり、暮らしていたらどうだったかと想像してみます。

 イスラム教徒とはわたしの理解するところ、例えば子供を可愛がる点で、おしなべて人後に落ちません。

 ですから私がもし彼らの立場にいれば、いたいけな子供まで結果としてあやめるようなテロ行為に対し、誰より憤激しているのは自分達である、と。テロリストに対し、イスラム教徒の風上に置けぬ輩と、怒っているのはわれわれ自身なんだと、時に声を荒げたくもなっただろうと思います。

 しかし現実には、イスラムの教え、あるいはイスラム教を奉じるムスリムと、テロリストを、何か十把一からげにする議論がないとはいえませんから、「世界は我々を誤解している」と言いたいことも、一再ならずであったかと思います。

 歴史をひもとけばすぐ納得のいくことですが、中東とは東西の文化を融合、昇華し、今日に至る文明の基礎を生み出した場所でした。中東の人たちには、そのことへの強い誇りがあって当然です。

 しかし近代に入ってこの方、どうもうまくやれなかった。なんとなく、挫折感をもつ人も多いのが、中東というところであろうと思います。

 心中彼らは、自尊心の傷を癒す言葉を、渇望しているのではないでしょうか。私はまず、そのことへの感受性を持つことが、我が国中東外交の基礎になければならぬと思うものです。

 そのうえで、テロリズムは大いにこれを憎むが、イスラム教徒を憎もうとはゆめ思わないということを、はっきりと言葉にし、伝えていくべきだと思っております。

●中東は外交の「銀座四丁目」‐3つの理由

 前置きが長くなりました。

 子々孫々にわたる日本の繁栄を図る立場にある者と致しまして、重要な資源を提供してくれる中東が、我が国にとってもつ死活的重要さは、何度強調してもし足りることがありません。

 そこで中東政策の指針とし、まず申し上げねばならぬのは、日本は中東地域に対し、経済面はもとより、政治的関与を、これまで以上に深めて参るという決意であります。

 具体的に何をするかは後で述べますが、まずは機会をとらえ、いわゆるハイレベル、高位当局者が、往来し合う頻度を高めねばならぬと思っております。

 中東の問題というのは、日本にとって、外交上の「必修課目」だと、喝破した人がおります。私流に言いますと、中東とは世界外交の「銀座四丁目」であって、外交の総合力が値踏みされるところです。

 中東がそれほど大事だと、なぜ言えるのか、理由を3つ挙げてみます。

その1

 第一は石油資源との関わりです。

 我が国は原油輸入の89.2%を中東に頼っており、中でも湾岸諸国(GCC)に76.4%を依存しております(2006年)。

 加えて新興の中国とインドは、原油輸入の4割、6割を、それぞれ既に中東へ依存しているという現実の中で、石油市場の地合いは、この先当分、中東サイドから見て極端な売り手優位になります。我が国は需要家として、目に見える地位を中東に維持していく必要があります。

 しかも世界の原油可採埋蔵量から考えて、この先は中国やインドだけでなく世界全体が、中東産油国に対する依存度を増していくでしょう。即ち中東の安定は、今後ますます重要になるのであって、その逆ではあり得ない、というのが理由の第一です。

その2

 第二はいまの中東が持つ、意外にも明るい側面と関わりがあります。

 中東にはとかく物情騒然たる印象がつきまといますが、いっぺん住友化学社長の米倉弘昌さんに、天下のサウジ・アラムコと組んで、世界最大級の石油精製・化学施設をつくる醍醐味など、聞いてみたいと思っております。

 サウジアラビアにおける、住化のいわゆる「ラービグ計画」は、総事業費が1兆1,000億円を超す巨大プロジェクトです。電力と、蒸気、真水の供給だけでも大変なプラントになりますが、そこは三菱重工が担当する。グループ横断の取り組みでして、長らく語り継がれていきそうな熱い物語が、炎熱のサウジでまさに今進んでおります。

 大規模プロジェクトは湾岸地域でも目白押しと言いますから、実は今くらい、民間企業を巻き込んだオールジャパンの外交力というものを、中東で発揮するのに適した時期はありません。

 これもまた、中東の確かな姿であります。チャンスに立ち向かう日本企業のお手伝いをする仕事には、立派な国益がかかっております。

●岐路に立つ中東‐安定か、混乱か

その3

 けれども既にお察しの通り、第三の理由こそが最も重要です。

 中東地域はいま全体として、重大な岐路に立っているというのが、わたしどもの認識です。即ち安定へ向かうか、それとも混乱が混乱を呼ぶ、スパイラル(螺旋)の到来になるのか・・・。

 かつて問題は、なんとなく、中東和平は中東和平、イラクはイラク、そしてイランはイランと、それなりに仕切りの中にありました。ところがサッダーム・フセインが倒れた辺りから、力のバランスが変化する。そうしますと、これらがお互い、影響し、作用しあうようになりました。

 結果として中東の少なくともある一部では、先行き秩序の極めて見通しにくい状況が広がっている。こういう時は、宗教本来の姿から逸脱した過激派が力をつけるもので、事態はよけい混乱します。

●秩序を落ち着かせる安定の極を

 中東に対しまして、なぜいま日本は政治的関与を強めねばならぬかという問いへの答えが、私はここにあると確信をしております。

 即ち、秩序を落ち着かせるべく、地域における安定の極を、オールジャパンの経済資源、知的資源、外交の資源をフル活用することによって、確保・充実せしめることでなくてはならぬ・・・。

 ここは外務省におけるアラビストの諸君、ペルシャ語やトルコ語、ヘブライ語を学んだ諸君に言うのですが、彼らには武者震いをしてもらいたいと思っております。中東世界を安定に導く一助になるという世界史的意義に満ちた仕事が、いま目の前に立ち現れているのであります。

○平和と繁栄の回廊

 分けてもイスラエルとパレスチナの永続的共存を目指すいわゆる中東和平プロセスの意味合いには、強調してし尽くせぬものがあると思っております。

 ここを震源とし秩序が混乱した場合、あるいはその逆に、まさしくここを安定の極とできるなら、いずれの場合も一種の「乗数効果」を生んで、一帯に及んでいくからです。

 中東和平には、新しい機運が出てきました。パレスチナに、挙国一致内閣ができようとしております。この際ハイレベルの相互訪問を日本とイスラエル、パレスチナの間で繰り返しつつ、また、域内の主要国であるエジプト、サウジなどとも協力しながら、機運を盛り上げねばと思っております。

 そしてかかる時期だからこそよけい、日本が打ち出しました「平和と繁栄の回廊(Corridor for Peace and Prosperity)」をつくる構想が、重要な意味をもって参ります。

 ヨルダン川西岸のいわゆるウエストバンクからヨルダンを経て、その先、湾岸諸国へつながるルートを、「平和と繁栄の回廊」にして参りたい。

 この「コリドー」におきまして、パレスチナ人が住むウエストバンクのヨルダン渓谷には、面積にして東京都の約半分に当たる1,000平方キロという、一帯では珍しい平坦地がある。それならそこを、高付加価値農業の拠点にしようというのが、構想のあらましです。

○「果物」から作る信頼と自信、テロへの免疫

 イスラエルの建国は、農業の成功から始まりました。イスラエルにできたことは、パレスチナにもできなくてはならぬでしょう。果物やオリーブは、西岸地区に今よりもっとたわわに実らねばならぬのです。

 そのためには、用水の面でまず域内の協力がなければならず、また最終製品は一大消費地である湾岸諸国へ向かうのだとすると、ヨルダンを抜けていくしかありません。

 というわけで、イスラエル、ヨルダンという関係国と、パレスチナとは、いやでも回廊をつくり、協力するよう迫られます。

 ・・・実は「平和と繁栄の回廊」構想は、そこに最大の狙いを込めております。つまり日本が旗振り役となり、全員に汗をかいていただく。その結果、共同作業の体験と実績を通じ、地域の人々は、中東において最も高価な資産を獲得するのであります。「信頼」という財産です。

 しかも農業の振興とアグロ・インダストリアル・パーク成功の暁、パレスチナの若者は、就業機会に加え、「やればできる」という手応えを獲得します。「自信」の二文字を手に入れます。

 わたしどもアジアに生きる者、この二文字を獲得し、楽観主義者となったとき、みなテイクオフ致しました。その達成感を、彼らにも感じてほしい。わたしどもの見るところ、それに勝るテロへの免疫はありません。「楽観的自信家のテロリスト」というようなミスマッチのシロモノがいたら、会って見たいものであります。

 得てして混乱や悲劇の別名となることの多かったウエストバンクを、逆に安定の極、サクセスストーリーの代名詞とできたなら、良い意味での「乗数効果」はいかばかりかと期待できます。

 3月半ばには、パレスチナ、イスラエル、ヨルダンの責任者に東京へ来ていただき、構想を本格的に打ち上げるつもりでおります。ご記憶ください。

○日本GCC・FTA、そしてトルコ

 地域に安定の極をつくるため、もうひとつ大事なのが湾岸諸国、GCCとの関係強化です。いまわたしども、GCCとのFTA(自由貿易協定)を、前例のない速度で仕上げようとしております。

 FTAは、中東地域で最大の貿易相手であるサウジアラビアを始め、GCC諸国と太い経済関係を持とうという話です。ひいては、石油資源の安定供給に絡んでくる話です。

 FTAが成就した暁、我が国企業とGCCの接触は、直接投資があればなおのことですが、今以上に太くなるでしょう。往来が活発になると、そこに日本からGCCへ、経営・事業ノウハウの移転が始まります。

 これらが好循環を起こしていくことによって、中長期的に見て、GCCの社会・経済が一層の安定を得る。・・・そこに、いま日本がGCCとFTAを結ぶ意味があると見ております。だからこそ、国際的にも重要であろうと、そう頭の整理をしております。

 それからトルコには、中東の一大大国として、まさしく安定の極になってもらわねばなりません。

 昔も今も、地理上の戦略要衝にあるのがトルコです。アゼルバイジャンを経てキルギス辺りまで、トルコ語がかなり通じる事実は、当節トルコと付き合う意義をますます高めております。イスラエルとの関係が悪くない、地域に数少ない国でもある。いろんな意味で、安定の要になってもらわねば困ります。

 そのトルコが、EU加盟を長年待たされた挙句、加盟交渉の段階に来てもさんざん苦労している。わたくしトルコには、精神的支援を惜しんではならぬと思います。トルコがくぐった近代化・民主化の苦労は、わたしども日本人にとって他人事(ひとごと)とは思えません。辛抱してガンバレと申し上げたい。

●イラク、イラン、アフガニスタンをどうする

 反対に、秩序を流動化させる危険を抱えた国々とどう付き合うか。具体的にはイラク、イラン、それからアフガニスタンです。いずれの場合も、先行き全く楽観を許しません。

 しかし例えばイランの外相と私とは、電話で簡単に話のできる現在の関係を、これからも保って参りたい。広い中東のどの国とも話ができる国として、日本は世界で稀な地位を占めております。これを私は、日本外交がもつ貴重な資産と思っております。

 外交とは要するに、説得のアート(技芸)です。今年はイランに対し、外務省の諸君にはまさにその、説得のアートを駆使してもらおうと思っています。

 本日はイラクやアフガニスタンについて踏み込むつもりはありませんが、少なくとも三つ、覚えておいていただきたいことがあります。

 一つは、日本はここ数年、この両国にヒト、モノ、カネ、いろんな意味で、経済的にも政治的にも、安全保障の面でも、歯を食いしばって注力してきたということです。イラクでは、我が外務省員に死者まで出した。犠牲を超えて来たのに、いま怖がって引っ込みでもしたら、何のための努力だったかということになります。

 ちなみにイラクの国民融和に向けて、ささやかとはいえ「国民融和セミナー」というものを、3月日本で開こうと思っております。

 二つ目に、イラクとアフガニスタンの出血を止めないと、宗派間の抗争や過激テロリズムが、中東全体から、ひいては世界各地に伝染しかねないということです。事はその意味で、緊急を要しております。

●憎悪の解消、信頼の醸成へ向けて

 三つ目は、いずれにせよ課題は大きいが、わたしども日本人のイメージは、イラクでもアフガニスタンでも、それを言うなら中東のどこででも、決して悪くない「らしい」ということです。自分で言うのはおこがましいが、どうも本当と思ってよさそうです。

 なんとなく、中東諸国には、日本人に対する悪感情がさしてありません。よく聞くのが、非西欧文明の国として、伝統を保って近代化を成就した珍しい例だという好意的な評価です。

 別の角度から、イラクのあるコラムニストなど新聞で、「日本とは自分にとって、幼い頃から想像力の一部だった」と書きまして、こう続けております。「日本人はいつも、グレンダイザーやキャプテン・マージドとともに、われわれと一緒にいた」。

 Jアニメは、ここでも大いに受けております。「グレンダイザー」というのは、永井豪のロボットアニメ作品で、「キャプテン・マージド」は、「キャプテン翼」のことです。

 どちらもイラクに限らず、中東諸国で抜群の人気を博しております。こういう肥沃な土壌に、これまであまり、「水」をやれておりません。我が方の広報努力に、少し拍車をかけねばならぬところです。

 ともあれもしも本当に、日本が中東の各国各派から特別の偏見なく見てもらえる国なのだとすると、そこに、我が国独自の役割が出て参るはずであります。

 来日しなければ一生まじわらず、ことによると、憎みあいすらしたかもしれない人々も、我が国でなら安心して対話ができる。

 会議のため、日本に行ってきたと言っても、特段レッテルを貼られるようなことがないからです。すなわちわたしども、「憎悪の解消」や「信頼醸成」のため、大いに一役買えますし、買うべきである。

 テロの遺族をイスラエル、パレスチナの双方から招き、悲しみを共有させる。その中から、和解の糸口を見つけさせるというプログラムなど、わたくし、日本でいろんな地方自治体がやってくれているのだと知った時は、嬉しい驚きでありました。外務省は、これに側面支援をしてきております。

 イスラエル・パレスチナの現地で、あるいは日本で、子をなくした親同士を引き合わせるものもあれば、親や兄弟をなくした子供同士、というのもあります。感動をそそる事業でして、ぜひ地道に継続したいものです。

 ほかにも若手官僚を招いたり、学生や青年指導者、ジャーナリストを、イスラエル、パレスチナ双方から呼ぶといった仕事をしばらく続けてきておりますが、継続こそ力です。

 「日・アラブ対話フォーラム」や「イスラム世界との文明間対話」といった知的交流の仕事も続けておりますが、ゆくゆくは日本こそは、地域に共通の問題を見つめるのに格好の場だと、中東の人々から評価をいただけるくらいになりたいものです。

●中東共通の課題とは・終わりにかえて

 それでは地域に共通の課題とは何かと言うに、答はもう出ていると思います。

 それを最後に指摘しようと思っておりますが、そのためにもぜひ触れておかねばならないのは、人づくりの大切さです。

 我が国はヨルダンなどとともに、中東地域において、教育と人づくりの重要性を訴えてきております。

 アフガニスタンでは、元兵士の社会復帰を助けるために、職業訓練センターを9つくりました。

 サウジアラビアでは自動車技術高等研修所、トルコでも自動制御技術教育改善プロジェクトを、官民のパートナーシップで進めました。職業訓練に重点を置くのが、中東における我が取り組みの特徴です。

 サウジでは、家にいることの多い女性が、在宅でも会社を起こせるよう手ほどきするプログラムも手がけています。女性のエンパワーメントというのが、もう一つの特徴でありました。

 「人は石垣、人は城」。武田信玄ではないが、人への投資を惜しまぬところから、日本の近代は出発しました。

 国費留学という制度でも、初等教育を万人の義務にした点でも、日本は世界の中でさきがけでした。

 だからわたしども、今日の我が国に、「自由と繁栄」をもたらした礎は、人的インフラへの営々たる投資であったと骨身に染みて知っております。

 これから世界で「自由と繁栄の弧」を盛り立てて行こうとする時も、まずは人づくりからであるということは、少なくともわたくしの口から、必ず真っ先に出るメッセージでありましょう。

 いま中東において、人づくり、教育の重要性がこれまでにも増して高まっているのは、ある切迫した事情のためにほかなりません。地域に共通の課題だと先に申しましたのは、これを指すものです。

 すなわち今世紀の前半において、中東地域は軒並み、人口の爆発を経験するということです。

 サウジアラビアの場合、2002年から2025年までの間に、約2,351万人から4,852万人へ、人口が倍以上膨らみます。同じ期間、エジプトの人口は7,331万人から1億335万人に、イラクでも、2,400万人が4,042万人になると見込まれております。

 今後膨大な数に膨らむ若者達に、どう未来への希望を持たせ、そのために必須の、就業機会を作り出していくか。対処を誤ると、世界はかつてない規模の「欲求不満集団」を持たぬとも限りません。テロリズムには、格好の温床となるに決まっております。

 しかるがゆえに、中東は今まさに、重大な岐路に立っているのだと見ております。

 本日は、中東が全体として安定の方向へ向かう一助となるよう、我が国は何をすべきか、具体的提案を交えつつ述べて参りました。

 どれひとつとして簡単な仕事はありませんが、着眼大局・着手小局を旨とし、まずは堅実に攻めて参りたい、ただし理想を高く掲げてと申し上げ、終わりとさせていただきます。