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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 国際平和構築会議の開会における麻生外務大臣のビデオ英語スピーチ:広島大学連携融合事業・平和構築と社会的能力の形成「平和国家日本に新しい旗印を」

[場所] 広島国際会議場
[年月日] 2007年3月8日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 お早うございます、外務大臣をしております麻生太郎です。

 このように誠に時宜を得た会議を広島で開かれるHiPeCに対し、大いなる敬意を表します。

 「新しい日のために」とは、素晴らしいタイトルだと思います。朝の曙光を見つつ、しかし裏切られるという体験を、これまで人類は、あまりに多く重ねて参りました。

 わたしの友人でもある広島県知事・藤田雄山氏に、今回大変意を強くさせられたということを初めに申し上げます。

 藤田知事は、極めて重要で、思慮に富んだことを言っておられます。この世界の中で、われわれはいかにすれば、平和を達成できるのか。それが、藤田知事の問いかけであります。

 これに対し、知事は自らこう答えました。人々が、老いも若きも平和のうちに暮らすことのできる「新しい日」のために、われわれは行動せねばならない。平和は、築き上げるものでなければならない。

 いまや平和を祈念するのみでは、十分とは言えないというわけであります。それゆえ広島にとって、スローガンは次のように語られます。「祈る平和から、創り出す平和へ」

 ここには、いかにも深い思想があります。日本人の心裡に進む静かなる革命の本質が、とらえられているのだと思います。

 お集まりの皆さま、わたくしども、ある誇りをもつべきだと思います。過ぐる62年間というもの、われわれの自衛力は、何人をも傷つけませんでした。

 時はいまや、かつてなく熟したと言えるでしょう。平和を愛するわたしども、自らの旗印を、新しい色で染め抜く時に至りました。

 すなわちわれわれ日本人は、もはやただ単に、平和愛好国民なのではない。平和構築者でもあるのだということであります。いまやこのことを、わたしども自らに語りかけ、かつ世界に向け発信しております。

 けだし広島市民以上に、深く平和を希求し、祈念する人々があったでしょうか。にもかかわらず、広島の人々はいまこう言っております。「それだけでは十分とは言えない。平和を建設するために、主体的行動が必要なのだ。」HiPeCが今回開催されるのが、まさにそうした行動の一環であることは言うを待たぬものです。

 思いますにここには、日本国民が取り戻した自信が表れております。われわれには何事か、なすことができる、世界に善をなし得る、という自信です。

 この間、紛争後の国々に関与してきたわたしども、教訓をいくつか学びました。何よりそれは、煙さめやらぬ紛争終了直後の状況においては、当の住民自身とそのコミュニティこそが、安全を提供できるという現実であります。

 それゆえ、人間の安全保障を追い求める政策、すなわち個々人とそのコミュニティを保護強化せしめようとする政策は、その重要性を帯びてまいります。そして地元住民がオーナーシップを広く共有しているときにのみ、平和はその地に根を下ろし、ODAもまた効果を持ち得るものでありましょう。

 わたくし、外相就任以来本日で493日を数えます。この間に、いくつか新しい機軸を打ち出してまいりました。

 そのひとつとは、自由や民主主義、人権、法の支配、それに市場経済といった普遍的価値の増進に、われわれとして微力を尽くしていきたいとするものです。ことに日本国民に向かってわたくしは、自由と繁栄を手にすべく格闘しつつある人々に、われわれは伴走者たらんとするのだと申しております。「自由と繁栄の弧」をつくろうとする政策は、ここから生まれ、いまや我が国外交を支える柱の一つになりました。

 いまひとつは、まさしく如上の目的に資すべく、外務省として、平和構築者のための学舎を持とうとしていることです。(麻生外相スピーチ「平和構築者の『寺子屋』をつくります」御参照)始まりは、ごく小規模のものとなるでしょう。しかしその目的とは、はるか遠隔の現場で平和構築者として働くことのできる専門家を、人材を日本のみならずアジアからも募りつつ、能うる限り多く養成していこうとするものです。

 私事ながら、わたくしには大学生の息子と娘がおります。彼ら彼女ら世代の日本人に、わたくしの祈念するところ、ぜひともある新しい旗を、振りかざせる者になってほしい。われこそは、平和を築くものであるという旗であります。

 この重要な会議にご参加の皆様すべてに、わたくしから歓迎の意を表します。ポスト・コンフリクトの状況にあって常にカギを握るのは、継ぎ目のない、様々な段階の協力にほかなりません。それには、あらゆる種類の分野にわたる専門家の関与が必要です。換言するならば、皆様一人一人の貢献が、このうえなく重要なのです。

 改めて、本会議実現に尽力された各位のご努力に、敬意を表しますとともに、ご多幸をお祈りするものです。そしてHiPeCがこの先、世界中の平和構築者を結ぶ大切なネットワークとして伸びていくことを希望して止みません。

 ありがとうございました。