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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第10回APF(アフリカ・パートナーシップ・フォーラム)における高村外務大臣スピーチ〜TICAD IV及びG8を通じた元気なアフリカの実現〜

[場所] 三田共用会議所(東京)
[年月日] 2008年4月7日
[出典] 外務省
[備考] 9時40分〜9時55分
[全文]

1.アフリカの重要性

 ご紹介ありがとうございます。

 本日、こうして記念すべき第10回目のアフリカ・パートナーシップ・フォーラム(APF)開催にあたり、皆様の前で一言お話することができますのを、わたくしはことのほか嬉しく存じます。

 既に皆様御存知のとおり、我が国は本年5月に横浜でTICAD IVを、7月に北海道洞爺湖でG8サミットを開きます。次第に日程が近づいてくるにつれ、我が国では朝野をあげて、アフリカに対する関心が高まりを見せております。

 これはまことに、望ましい姿であると申し上げなければなりません。関心の高まりは、我が国外交に占めますアフリカの比重を、そのまま映し出していると考えられるからであります。

 アフリカの比重がどんなふうに高まっているか、最もわかりやすい例を申し上げます。

 本年になってわたくしは、1月早々にタンザニアを訪れ、約2週間前にはガボンへ行ってまいりました。日本の外務大臣たるわたくしにとりまして、アフリカは意外と近い。そういう実感を得ているわけであります。

 ガボンでは、アフリカ各国から閣僚級の方々にお集まりいただきました。後で少しお話し致しますTICAD IVに向けた準備の会議を、私と、ゴンジュ・ガボン外相とで共同議長を務めまして、開いてまいりました。この準備会議に先立っては、TICAD IVに向けて日頃から熱い議論を交わしている在京アフリカ外交団の方々と一堂に会し、TICAD IVやG8サミットに向けたアフリカ各国の期待と要請を直に伺う機会にも恵まれました。

 こうした活動を経て、TICAD IVとG8北海道洞爺湖サミットの開催を間近に控えた本日、こうしてこのAPFに臨んでおります。一連の会議や議論は一本の流れとなりまして、横浜、そして洞爺湖へつながってまいります。あたかも水流の勢いを感じられるごとくでありまして、わたくしを含め、携わってきた者にはいささか興奮を禁じえないものがあると、かように申し上げてもいいだろうと思います。

2.TICAD IVとG8北海道洞爺湖サミット

 G8北海道洞爺湖サミットに向けた議論は、既に盛り上がりを見せております。一昨日及び昨日と、G8開発担当大臣の方々に、東京へお集まり頂きました。わたくしが議事の進行を務めまして、多方面から開発問題を話し合いました。アフリカが議論の一焦点でありましたことは、申すまでもございません。それから今日、そして明日にかけて、今度はアフリカそのものに焦点を当てた集まりをこうしてもっているわけであります。

 開発大臣会合と、それから今回のAPFの成果は、まずは5月のTICAD IVにおける議論につながることになります。

 今回のAPFで皆さんが議論される「経済成長の加速化」と「環境・気候変動問題への対処」が、TICAD IVではそのまま重点事項となります。アフリカからお越しを願う首脳クラスの方々が、議論を深めていくことになります。

 APFには今回、アフリカ諸国から広範な出席を得ておりますし、G8をはじめとするドナー諸国、及び関係国際機関が多数参加いたします。

 すなわち非常にオープンであるというAPFの性格は、そのままTICAD IV自体の著しい特徴へとつながって参りまして、わたくしどもTICADとは、アフリカからご参加の多数の首脳はもとよりのこと、ドナー諸国、国際機関からもハイレベルの出席を得ることのできる非常に開かれた場である、と。アフリカ開発に関する一大フォーラムであると思っております。APFの議論を引き渡し、拡大深化させていくには最もふさわしい場であると申さなくてはなりません。

 TICAD IVでは、「元気なアフリカを目指して」という基本メッセージの下、今後のアフリカ開発に向けた国際社会のあるべき取組を具体的に打ち出したいと考えています。もとより、近年のアフリカ政治・経済両面における前向きな変化を後押しするためであることは申すに及びません。

 TICAD IVの成果を受け、福田総理は7月の北海道洞爺湖サミットに臨まれます。我が国は、TICAD IVでさまざま出てくるであろうアフリカの声をG8首脳にお伝えする責務を負っております。加えてサミットでは、洞爺湖で7月7日にアフリカ開発に関するアウトリーチ会合を開きます。今回このAPFで太い流れとなるアフリカ開発の議論が、洞爺湖へと注ぎ込むごとく、一連のプロセスとなりますところをイメージしていただけますと、それがわたくしどもの目指している姿となるわけであります。

 ロードマップと言い換えてもよろしいかと存じます。TICADの準備を本格化させた昨年以降、なるべく継ぎ目がないよう、流れに勢いがつくよう、進めて参りました。わたくしどもの狙い、意欲を、ご理解いただけますならば嬉しく思います次第です。

3.今次APF

 さて、今回APFでは、「元気なアフリカ」を実現する上で重要な分野が議題になっています。その幾つかについて少しだけ触れてみます。

 まずはじめに、環境・気候変動問題への対処です。

 アフリカは気候変動に最も脆弱な大陸の一つといわれています。温室効果ガスの排出を減らしながら、その悪影響に適応し、同時に経済を成長させるという課題を達成することが必要です。我が国としては、2013年以降の実効的な気候変動の枠組の構築を目指すアフリカ諸国との入念な政策協議を通じて、総額100億ドル規模の「クールアース・パートナーシップ」に基づく支援を実施していく考えです。

 もう一つは、経済成長の加速化及び貧困の削減です。経済成長の加速化は、貧困削減に向けた出口戦略であり、「元気なアフリカ」に向けた鍵であると考えます。アフリカ経済が資源価格の高騰に過度に依存することなく、持続可能な発展を遂げるためには、産業の多様化や、民間投資を惹きつけるためのインフラ整備、農業分野における取組が死活的に重要です。今次APFにおいても、この観点からの実りある議論を期待します。

 以上、今次会議の開催に当たって、「元気なアフリカ」を実現していく上でのロードマップをご説明するとともに、そのために必要な議論について、私の考え方を簡単に説明させて頂きました。ご静聴ありがとうございました。