[文書名] クラスター弾に関する条約署名式における中曽根外務大臣スピーチ
議長、
ご列席の皆様、
クラスター弾に関する条約の署名会議に出席することができ、大変光栄に思います。ノルウェー王国政府の歓迎とこの会議開催のための尽力に対し、心より感謝します。
(兵器規制の考え方の発展)
紛争のない、平和な世界の実現は、人類の大きな課題です。残念ながら、今日まで、世界の紛争は根絶されていません。しかし、紛争中でも、非戦闘員を保護し、また、戦闘の手段を制限していこうという考え方が、歴史の中で根付きました。かつては各国が有効な戦争の手段として保有していた兵器についても、こうした変化を受け、もはや保有すべきではないとする流れが出来てきました。
(紛争後の復興の考慮の必要)
今や、国際社会の平和を目指すに当たり、単に兵器と兵器の対立という観点から紛争を捉えるだけでは不十分、という考え方が発展しつつあります。紛争終結後、いかに国を復興させていくかをも視野に入れる必要があるということです。こうした考え方を具体化したのが、対人地雷条約に続いて、まさに今般署名式を迎えた、この「クラスター弾に関する条約」であると言えます。こうした条約が作成されることは、人類の紛争に対する捉え方が、一つの新たな段階に入ったことの証左ではないでしょうか。その意味で、この「クラスター弾に関する条約」は、画期的な条約と言えましょう。国際平和の実現のために協力を行う日本としても、このような観点から、この条約の採択を支持し、今日、私がここで条約に署名するに至った次第です。
(国際協力)
紛争で荒廃した諸国の再建のためには、各国からの協力が不可欠です。この条約は、被害者援助を含め、国際協力の発展を強化するものです。
世界の平和と繁栄に積極的に貢献することを目指す我が国は、クラスター弾により、子供たちを含む、罪なき市民が犠牲となることを少しでも防ぐため、引き続き積極的に支援を行っていくつもりです。我が国は、これまでにも、地雷及び不発弾の人道的被害を重視し、1998年以降、38カ国に対し約3億ドル(約350億円)に上る支援を実施してきました。
我が国は、クラスター弾の被害国であるレバノン、ラオス、カンボジア、アフガニスタン等に対し、被害者への支援を含めた不発弾対策の支援を行っています。最近決定され、現在実施されている、又は、今後間もなく実施されることとなっているこのような支援の総額は、約700万ドルとなる見込みです。
(自身の経験)
特に東南アジア地域には、地雷、クラスター弾の被害にいまだに大きく苦しむ国々があります。一方、これらの国々の苦しみを少しでも救うべく、様々な形で協力がなされていることは心強いことです。私自身も、カンボジア=タイ国境地帯で地雷除去のために活躍する日本のNGOに対し、支援を行ってきました。さらに、現地に赴き、そのNGOの日本人と現地の人々の協力振りを視察した経験があります。現場の状況を目の当たりにし、あらためて、草の根の協力の意義を実感すると同時に、紛争終結後も人々の憎しみを蘇らせるような兵器の使用を許してはならないと、痛切に感じました。
(結語)
この機会に、この「クラスター弾に関する条約」の持つ大きな意義を再確認し、ノルウェーを始め、このプロセスを推進してきた諸国及びNGOに対し、敬意を示したいと思います。日本は、クラスター弾に関する国際的な取組が今後一層強化されることを期待し、そのために引き続き積極的な貢献を行っていく考えです。そして、紛争のない平和な世界を築くために、ここに集う皆さんとともに、更に前進するつもりです。
ありがとうございました。