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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 柳明桓(ユ・ミョンファン)外交通商部長官主催午餐会における中曽根大臣挨拶

[場所] 韓国
[年月日] 2009年2月11日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 本日は、私達のためにこのように午餐会を開いていただき、心より御礼申し上げます。今回は、柳明桓(ユ・ミョンファン)長官からお招きを頂き、こうして韓国を訪問できたことを大変嬉しく存じております。

 関係者の皆様の努力により、両国関係が年々発展していることを嬉しく思います。

 韓国の諺には「シジャギ パニダ(始まれば半分終わったも同じ)」という言葉があると聞いています。私は、この言葉は、最初の一歩を踏み出すこと自体を評価する言葉ではないと考えます。何事も、最初の一歩を踏み出す前には、沢山の準備が必要です。この言葉は、そのような地道な準備の重要性を指摘する言葉だと考えています。

 9年前の2000年、私は戦後の文部大臣として初めて韓国を訪れました。私の父も、1983年、日本の総理大臣として初めて韓国を公式訪問しました。

 結果的に、父や私が、それぞれ総理大臣、文部大臣として最初の一歩を踏み出しました。しかし、それよりも重要で、忘れてはならないことは、その最初の一歩に先立ち、各種の困難に直面しても誠実に交流を積み重ね、信頼関係を構築する努力を払われた、日韓両国の政界、財界、学界、文化人の方々による大変な御苦労があったことです。

 そのような多くの方々の御努力、御尽力を経て、日韓関係は今や、未来志向の「成熟したパートナーシップ関係」に成長しました。本日の外相会談では、柳明桓長官と、この「成熟したパートナーシップ関係」を一層定着させていくため、共に取り組んでいくことを確認しました。

 この「成熟したパートナーシップ関係」の基盤を提供するものは、国民レベルの交流です。26年前に私の父が総理として訪韓した際の共同声明は、「国民的基盤に立脚した交流の拡大が長期的な観点から両国関係の発展にとって極めて重要である」との認識で一致した、としています。現在でも、日韓の国民間の交流の重要性は、全く変わっていません。

 それから四半世紀が経過し、日韓間の姉妹都市交流は約120組、人の往来も年間500万人近くになり、スポーツや文化等各層で交流が深まっています。今朝の外相会談では、国際的な諸問題について意見交換し、またいくつかの点に合意し、大変有意義な会談であったと喜んでいます。

 最後に、柳明桓(ユ・ミョンファン)長官の御健康と御多幸、大韓民国の一層の御繁栄、並びに日韓友好協力関係の末永き発展を祈念し、杯を上げたいと存じます。