[文書名] アフガニスタンに関する国際会議における中曽根外務大臣ステートメント
カルザイ・アフガニスタン・イスラム共和国大統領
パン国連事務総長
フェルハーフェン・オランダ外相
ご列席の皆様
はじめに、日本政府を代表して、オランダ政府、アフガニスタン政府及び国連が、今次会合の開催のために払った努力に対し敬意を表します。
(対アフガニスタン支援に関する認識)
アフガニスタンは引き続き大きな挑戦に直面しています。国際社会は、アフガニスタン政府とともに、治安悪化の流れを反転させながら、治安能力の強化、ガバナンスの向上、麻薬対策、社会・経済基盤の形成など幅広い分野における課題に取り組まなくてはなりません。そのためには、引き続き、相当な忍耐と粘り強さが必要です。特に、8月の大統領選挙を成功させることが、アフガニスタンの政治プロセスをさらに発展させる上で不可欠です。
アフガニスタンの国造りと安定のための道筋は単純なものではありえませんが、今後の支援のあり方について、いくつかの視点を提示したいと考えます。
まず、治安の改善が喫緊の課題です。そのためには、アフガニスタンの治安能力向上とともに、雇用の創出に直結するような公共事業により、失業から来る社会の不安定要因を取り除いたり、既に一定の治安の安定やガバナンス向上を実現した地域へ更なる支援を投入することで治安の安定を確実なものとするなど、復興開発支援を治安改善にも役立てていくことが重要です。そして、中長期的観点からは、アフガニスタンの経済的自立に資するような開発を実施していく必要があります。
次に、各国が得意とする分野を組み合わせて、より高い効果を上げていくべきです。その際、国際社会全体としてより効果的に支援が実施できるよう、援助調整における国連の主導的な役割が重要です。もとより、国造りのオーナーシップはアフガニスタン人が握るべきであり、各国の支援がアフガニスタン政府の発展戦略と合致すべきことは言うまでもありません。同時に、アフガニスタン政府においても、ガバナンス強化や汚職の排除等の困難な課題により一層積極的に取り組んでいくことが重要です。米国の新戦略も我が国の考え方と共通点が多く、これを歓迎します。
(我が国の取り組み)
ご列席の皆様、
ここで我が国のアフガニスタン支援について述べたいと考えます。
2002年に我が国がアフガニスタン復興会議を主催して以来、これまで行ってきた支援の総額は17.8億ドルにのぼります。これにより、カブール空港ターミナルビルやカンダハール・ヘラート道路などの大型インフラ整備のほか、500以上の学校の建設と修復、延べ4,000万人に対するワクチン供与、25万以上の武器の回収等多くの分野で大きな貢献をしてきました。同時に、インド洋での海上阻止活動に対する補給支援活動により、テロ撲滅の取組の一翼を担っています。
我が国は、アフガニスタン・コンパクトとアフガニスタン国家開発戦略の実施を成功に導き、アフガニスタンに安定をもたらすためのアフガニスタン政府の努力を引き続き支援します。特に、1)治安改善、2)政治プロセス・和解促進、3)経済発展の基盤・人材育成の3つの分野で支援を行っていく考えであり、今月、本年8月の大統領選挙に向けた環境整備のため、治安分野等の支援に約3億ドルを拠出したところです。これには、全警察官8万人の半年分の給与に相当する警察支援も含まれます。今後、DIAGや警察支援を始めとする治安分野改革、カブール首都圏開発計画の推進、道路建設のようなインフラ整備、実施中の農業振興事業を北部で面的に拡大するなど抜本的な貧困対策としての農業支援の強化、教育・医療支援の拡充による未来を担う人材の育成を、支援の主要な要素とすることを想定しています。リトアニアが主導するチャグチャランPRTにも近く文民要員を派遣し、地方に対する支援も強化していきます。また、和解努力をアフガニスタン政府が主体的に判断して進めていくのであれば、我が国としても然るべき形で支援していきたいと考えています。
ご列席の皆様、
アフガニスタンの持続的な経済発展の方途や、テロや過激主義への対応を考えるとき、その周辺地域との密接な繋がりに着目した地域的アプローチの視点が重要です。アフガニスタンの安定化と発展のためには、パキスタンのみならず中央アジアを含む他の隣国を地域的一体として捉え取り組んでいくこともますます重要となっていると考えます。
このような観点から、我が国はアフガニスタンと周辺国との関係を重視しており、各国の安定のための支援を行ってきています。ウズベキスタンでの鉄道新線建設や、タジキスタンでの道路整備はその一例です。将来こうしたインフラが、アフガニスタンにおけるインフラ整備と連携して、より大きな経済効果の創出に繋がることを願っています。また、イランとはアフガニスタンの安定と発展のため、麻薬対策や難民支援の分野で具体的なプロジェクトを共同で実施していく考えです。
最後に、パキスタンのもつ重要性につき触れたいと思います。テロ撲滅に向けた国際社会の取組が正念場にある今、パキスタンがアフガニスタンを始めとした周辺国の安定に与える影響力の大きさに鑑み、国際社会がパキスタンの安定に向け一致して取り組むことが重要です。そのため、日本政府は、来月17日、東京において、パキスタン支援国会合及びパキスタン・フレンズ会合を開催します。経済改革やテロ対策において大きな課題を抱えるパキスタンが、これらの課題に真剣に取り組むことは、アフガニスタンを含む周辺地域、さらには国際社会の安定と繁栄にとって極めて重要であることに異論はないと思います。今次支援国会合では、これらの困難な課題にパキスタン自らが取組む決意を表明し、これに対して関係国及び国際機関が支援を表明することで、国際社会全体としてパキスタンを支えていくとのメッセージを発出することが重要であります。この重要な会議を国際社会が一体となって成功に導くためにも、両会議に参加する各国や国際機関がハイレベルの出席者を派遣し、寛大な支援のプレッジを行うよう呼びかけます。
アフガニスタンを始めとしたこの地域の人々は、地域のみならず、国際社会全体からの支援を必要としています。日本国民はこの地域の人々の努力を、引き続き最大限支援していく考えです。
ご清聴有り難うございました。