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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ASEM新型インフルエンザ対策事業開始式における中曽根外務大臣挨拶

[場所] 東京
[年月日] 2008年5月25日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

ファム・ザー・キエム副首相兼外務大臣、

ドミニク・ジラール・アジア欧州財団事務局長、

本プロジェクトの共同提案国であるハンガリー、韓国、ラオス、モンゴル、パキスタン、ポーランド、シンガポール及びタイの各代表、

同僚の皆様、

 本日、我が国のASEMイニシアティヴである新型インフルエンザ対策事業を開始する運びとなり、大変うれしく思います。この事業は、50万人分の抗ウイルス薬及び防護用品を備蓄し、以て新型インフルエンザの拡大を封じ込めようとするものです。

 メキシコで発生した新型インフルエンザは、極めて短期間のうちに国境を越えて世界各地に広がり、我が国においても感染者が発生しています。このことは、グローバル化した今日の世界で感染症の持つ脅威の大きさを見せつけました。また、被害が拡大した場合の社会・経済に与えるダメージは計り知れません。

 現在、アジアで流行している高病原性鳥インフルエンザから新型インフルエンザが発生する脅威は引き続き存在しています。そのことは、我々がこれからも最悪のシナリオへの備えを続ける必要があることを意味しています。

 日本は、昨年のASEM第7回首脳会合の際、ASEMにおいて感染症対策でリーダーシップを取っていくことを表明しました。本事業はそれを具体化するものです。本事業の共同提案国となってくれたハンガリー、韓国、ラオス、モンゴル、パキスタン、ポーランド、シンガポール、タイ及びベトナムに心から感謝するとともに、本件の実施においては、WHOの積極的な協力が欠かせないことに言及したいと思います。本件事業は、ASEMの存在感を高めることにも寄与するものと考えています。

 本事業は、アジア欧州財団を通じて実施されます。アジア欧州財団が実施するネットワーク事業は、備蓄事業を補完するものとして期待しています。他方、本事業は何百万人もの命を救い得るものですが、完全な措置は存在せず、今後もASEMパートナーがこの分野で協力を続けていく必要があります。

 最後に、開始式を行う機会を与えてくれたベトナム政府に感謝の意を表したいと思います。私は、この新型インフルエンザ対策事業が、ASEMパートナー国の人々に安全をもたらすことを確信しております。