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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日・OSCE共催会議オープニングセッションにおける中曽根外務大臣冒頭挨拶

[場所] 東京
[年月日] 2009年6月10日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

ド・ブリシャンボーOSCE事務総長、

OSCE加盟国及び協力のためのパートナー各国政府、

並びに国際機関の代表者の皆様、

 本日、日・OSCE共催会議の開会に当たり、日本政府を代表して一言ご挨拶申し上げます。まず、本会議にご出席いただいております各国政府・国際機関の代表者の皆様に対する歓迎の意を表明いたします。また、共催者であるOSCE、特に本年の議長国であるギリシャ、アジア・コンタクトグループ議長であるフィンランド、並びにド・ブリシャンボー事務総長をはじめとするOSCE事務局関係者のご尽力に心から御礼を申し上げます。

 OSCEは、長年にわたり、政治・軍事、経済・環境、そして人権・民主主義の観点から、包括的な安全保障に先駆的に取り組んできました。このようなアプローチが、地域の安定を促し、安全保障環境の改善につながることを戦後欧州の歴史は教えています。

 今日の国際安全保障環境下では、テロや大量破壊兵器の拡散が共通のグローバルな脅威となり、複雑化する国際的なエネルギー輸送網の安全確保や人権・民主主義の定着支援も、安全保障問題とされることが多くなっています。

 こうした中、OSCEはパートナーとの関係を強化し、アフガニスタンの安定にも積極的に取り組んでいます。今日の安全保障は、「バンクーバーからウラジオストクまで」では完結せず、世界全体の安全と切り離すことができなくなってきています。今ほど、安全保障分野での国際社会全体の一致した努力が求められている時代はないのです。

 日本は、このような認識を持って、OSCEの最も歴史あるパートナーとして、様々な協力を行ってきました。OSCE外相理事会への参加や様々な対話を進め、この共催会議も我が国では3回目の開催となります。また、民主化支援の観点から、OSCEが実施する選挙監視団等に積極的に参加しています。

 更に、我が国は、共通の関心地域であるアフガニスタンに関し、本年3月、大統領選挙及び警察支援等のために、約3億ドルの支援を実施し、その中でOSCEの関連プロジェクトへ272万ユーロを拠出しました。我が国のこのOSCEへの支援により、アフガニスタンと、タジキスタン、キルギス、トルクメニスタンの間の国境管理、税関能力の強化が図られることとなります。我が国としては、これらのプロジェクトが円滑に実施され、アフガニスタンを含む周辺地域の平和と安定に寄与することを強く期待しています。

 他方で、アジアには、依然、安全保障上の課題が多く残っており、地域の持つ大きな潜在的可能性に影を落としています。改めて申すまでもなく、アジアの安全保障は、厳しさを増しています。北朝鮮のミサイル発射や核実験は、NPT体制に対する挑戦であるのみならず、何よりも北東アジア、更には、国際社会の平和と安定を著しく害するものとして断じて容認できません。現在、国連安保理において、新たな決議の採択に向け、協議が行われているところです。我が国は、国際社会と連携して、引き続き、OSCE各国からも理解と協力を得ながら、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向け具体的な行動をとるよう、北朝鮮に強く求めていく考えです。また、透明性を欠いたまま進められる中国の国防費の増加、核軍備の近代化も、国際社会として注視していく必要があります。

 今回の共催会議は、OSCEとアジアとの間の安全保障分野での相互理解や協力の促進を図る上で重要な意義を有する機会です。

 これから2日間にわたる会議では、「OSCEとアジアパートナー国の間の知見の共有〜共通の課題対処への協力〜」を全体のテーマとし、「軍事透明性による信頼醸成強化」、「エネルギー安全保障対話」、「メディアを含めた市民社会形成への対応」について議論が行われます。我が国からは各分野に深い知見を有する専門家に議論に参加していただきます。アジア、OSCE双方より、多様な経験、知見、考え方が示され、有意義かつ建設的な意見交換が行われることを期待します。そして、今回の会議の結果として、アジアと欧州の間の安全保障分野における交流が促進され、協力関係の強化に繋がることを希望しています。

 ご静聴ありがとうございました。