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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] UNRWA(パレスチナ難民救済事業機関)60周年ハイレベル会合岡田外務大臣ステートメント

[場所] ニューヨーク
[年月日] 2009年9月24日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 ストーレ・ノルウェー外務大臣閣下、潘基文国連事務総長、アブゼイドUNRWA(アンルワ)事務局長、ご列席の皆様

 本日は、UNRWA(アンルワ)60周年記念行事において、アジアグループ議長として発言の機会を頂き、大変光栄に思います。このUNRWA60周年に当たって、UNRWAのこれまでの長きにわたる活動に対して敬意を表明します。また、UNRWAが活動する上で、ホスト国政府が重要な支援を提供していることを高く評価します。中東和平実現に向けた前向きな動きがみられつつあるなか、UNRWAの役割も益々重要なものとなってきています。

 議長、

 大変長期にわたり、厳しい状況におかれているパレスチナ難民に対して、基本的な人権を保障し、1人1人が能力を発揮する可能性を確保することは、国際社会全体の責務です。まさにそれは我が国の外交理念である「人間の安全保障」を実践することでもあります。

 私はパレスチナ難民に対して、以前より深い関心を有しており、機会ある毎に地域のリーダーと議論を重ねてきました。自分も4年ほど前にヨルダンを訪問した際、UNRWAのパレスチナ難民キャンプを視察したことがあり、難民の人々の厳しい現実を実感し、この人々に支援の手をさしのべることは、国際社会の重要な責任と認識しました。

 我が国はこれまで、このような重要かつ困難な役割を担うUNRWAを通じたパレスチナ難民支援を継続的に行い、UNRWAの主要ドナー国として、UNRWAとの協力関係を構築して参りました。具体的には、国連加盟以前の1953年にUNRWAを通じた対パレスチナ支援を開始し、2009年までに教育・保健など様々な分野にわたって、累計約5.5億米ドル以上を拠出しています。また、我が国はUNRWA諮問委員会メンバーとして、事務局長に対して様々な提言を行うなど、UNRWAの機能向上やマネージメントの強化に貢献してきました。

 パレスチナ難民の半数以上は25才以下の若年層です。UNRWAはパレスチナの将来を担うこうした若年層が、自らの将来に希望を抱けるような社会が形成されるために、教育・職業訓練支援を重視しています。こうした姿勢を我が国は高く評価し、支援を続けております。これまでにUNRWAと我が国が設立した奨学金を得て大学を卒業した学生は900名以上にものぼります。我が国は、彼らがパレスチナ社会におけるリーダーとなり、豊かな社会を築いていくことを期待しております。

 また、我が国はUNRWA等の国際機関及びパレスチナ暫定自治政府保健庁と協力して、パレスチナ自治区において日本独自の母子健康手帳を配布し、母子健康の向上に貢献しています。現在はヨルダンの難民キャンプでも母子健康手帳の配布に向けた準備を進めているところです。今後、パレスチナ難民が暮らす全ての地域においても母子健康手帳を普及させ、妊婦と母親への保健教育と健康意識の向上を目指して参ります。

 議長、

 我が国はUNRWAを通じた支援以外にも、「平和と繁栄の回廊」構想などの具体化を通じ、将来のパレスチナ国家樹立に向けて持続可能な形でパレスチナ経済を自立化させるための様々な支援を積極的に実施しています。また、これまでの我が国の対パレスチナ支援は、人道支援や保健医療等のベーシック・ヒューマン・ニーズ(BHN)の分野から国造りのための経済インフラ整備に至るまで多岐に亘っており、オスロ合意が成立した1993年以降の支援総額は約10億ドルを超えます。

 最近では、今年3月にエジプトで開催されたガザ復興のためのパレスチナ経済支援に関する国際会議において、我が国は将来のパレスチナ国家建設のために、当面2億ドルの対パレスチナ支援を表明致しました。この一環として、今年7月には約1000万ドルの無償資金協力の実施を決定し、UNRWA及びWFPを通じた食糧支援やUNICEFを通じた「感染症対策」に取り組んでいます。

 議長、

 以上のように、我が国は様々な方向からパレスチナ難民の支援に努めておりますが、国際社会全体にとっての究極的な理想は、このような支援の必要性がなくなることです。そのためには、二国家解決によるパレスチナ問題の解決及び近隣アラブ諸国を含めた包括的中東和平の実現が必要です。我が国は、イスラエル・パレスチナ双方への働きかけ、対パレスチナ支援、信頼醸成支援の3本の柱を中心に努力を続けて参ります。

 最後に、アジアグループ議長として、私はアブゼイド事務局長のリーダーシップやUNRWAの各職員の活動に敬意を表します。今後も我が国はパレスチナ難民が人間として尊厳のある暮らしを送ることを目指し、最大限の支援を行っていく決意であることを、改めて表明して、私のステートメントを締め括りたいと思います。

 ご清聴ありがとうございました。