データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第6回包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議岡田大臣演説

[場所] ニューヨーク
[年月日] 2009年9月24日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

1.はじめに

 議長、

 御列席の皆様、

 私は、日本政府を代表して、ベルナール・クシュネール・フランス外相及びタイエブ・ファシ・フィフリ・モロッコ外相の議長就任を、心よりお祝い申し上げます。

 1996年にCTBT(包括的核実験禁止条約)が採択されて以降、我が国は国連総会核廃絶決議案にて一貫して条約の早期発効を訴え、各国に粘り強く働きかけてまいりました。今なお、CTBTが発効に至っていないことはまことに残念です。しかしながら、今回の会議は、核軍縮に向けた世界的機運がかつてないほど高まっている中で迎え、特別な意義を有するものです。また、我が国は、10年ぶりとなる米国の本会議への出席を、心から歓迎いたします。両議長のリーダーシップの下、本会議の結果として、CTBTの発効に向けた力強いメッセージを発信できるものと確信しております。

2.CTBTの意義及び我が国の立場

 議長、

 我が国が第1回CTBT発効促進会議の議長を務めてから10年が経過しました。今や核実験の禁止は国際社会の普遍的な価値観として根付いたといっても過言ではありません。核実験の禁止は、核兵器の開発を阻止し、核の拡散を防止する上できわめて重要です。CTBTは、NPT体制を支え、「核兵器のない世界」を実現するための現実的かつ具体的な核軍縮措置です。

 私は、残りの発効要件国9か国の指導者が、英断により、CTBTを早期に署名・批准することを呼び掛けます。また、条約発効までの間、核実験モラトリアムの継続を強く求めます。

3.北朝鮮による核実験

 議長、

 このような中、本年5月、北朝鮮は核実験を実施しました。これは、「核兵器のない世界」を求める国際世論に逆行するものであり、我が国は、この行為を国際社会の平和と安全への脅威として、改めて強く非難します。安保理決議第1874号は、北朝鮮に対し、速やかにCTBTに参加するよう要請しており、我が国としても、北朝鮮に対し、安保理決議の遵守と六者会合の合意を完全に実施することを強く求めます。

 今回の北朝鮮による核実験ほど、CTBTの早期発効の必要性を痛感させるものはありません。

4.我が国の今後の取組:CTBT発効促進イニシアティブ

 議長、

 私はオバマ大統領がCTBT批准に向けた前向きな姿勢を示していることを歓迎し、発効への流れを確たるものとすべく、ここに我が国としても「発効促進イニシアティブ」を提示します。

 第一に日本はまず、首脳会議等あらゆる機会をとらえて、CTBT未署名・未批准の発効要件国に対する働きかけを強めます。具体的には、これらの国に対して、2010年NPT運用検討会議に向けてハイレベルの特使を派遣し、早期批准を直接説得する考えです。この文脈において、議長国であるフランスとモロッコが、本会議の成果であるメッセージを持って未署名国・未批准国に直接働きかけることを提案いたします。

 第二に、日本は、財政及び技術の両面において、CTBTO準備委員会暫定技術事務局(PTS)の活動に対する協力を継続していくことを約束します。検証体制は、CTBTの生命線であり、条約の発効に向けて国際監視制度(IMS)の整備を急ぐことが重要です。

 第三に、現在実施している核実験探知のための地震観測を専門とする研修員の招へいを拡充し、IMS監視観測施設の維持及び整備に協力していきます。条約で定められた監視観測施設を未だ設置していない国に対しては、早期設置を働きかけてまいります。

5.我が国としての決意表明

 議長、

 最後に、我が国は、CTBTの早期発効を目指し、各国と一層緊密な連携を強化してまいります。今求められているのは、国際社会が一丸となってCTBT発効に向けた世界的な機運を後押しすることであり、私は日本がその先頭に立っていくとの決意を改めて表明したいと思います。

 御清聴ありがとうございました。