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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日豪経済委員会シンポジウムにおける岡田外務大臣スピーチ

[場所] 東京會舘
[年月日] 2010年6月7日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 クリーン貿易大臣、

 三村日豪経済委員会会長、

 岡村日本商工会議所会頭、

 本日、日豪経済委員会シンポジウムにおいて、日豪両国の経済界を代表する皆様の前でお話しする機会を頂き、ありがとうございます。

 昨年9月以来、私は外務大臣として日豪関係の強化に尽力して参りました。昨年の国連総会の機会に、日豪外相会談を実施したのを始め、12月にはラッド首相の訪日、本年2月には私の豪州訪問、さらに、先月、東京において日豪外務防衛閣僚協議(「2+2」)を開催しました。クリーン貿易大臣とも、昨日を含め2度会談しています。

 日豪関係は、これまで相互補完的な経済関係を中心に発展してきました。今後とも、その重要性は些かも減じられるところではありません。日本にとり、豪州からの鉄鉱石、石炭、天然ガス等天然資源、農産物の安定供給はますます重要となっています。

 それに加え、現在、日豪関係は、政治・安全保障等にわたる包括的な「戦略的パートナーシップ」のレベルに達している点を強調したいと思います。日本と豪州は基本的価値と利益を共有するパートナーです。昨年、豪州はG20のメンバーとなりました。本年日本が議長を務めるAPECでも日豪で緊密に協力しております。さらに、日豪は、核軍縮・不拡散や気候変動などの諸課題についても共に意欲的に取り組んでいます。

 私は、このような日豪両国による協力には3つの大きなポテンシャルがあると考えます。

 第一のポテンシャルは、地域の繁栄に向けた協力です。

 現在、アジア太平洋地域には、ASEAN+3、EAS、ARF、APECといった複数の地域枠組みがあります。当面は、こうした枠組みが重層的かつ柔軟に発展しながら、地域全体の活力が産み出されてくるものと思われます。ここで重要なことは、こうした地域統合の流れが外に向かって開放的であり、透明性が確保されていることです。

 我が国は「東アジア共同体」構想を、また、豪州は「アジア太平洋共同体」構想をそれぞれ提唱しており、将来の地域枠組みに関する議論を大いに喚起しています。今後さらに議論を深めていきたいと思います。

 地域統合の流れを根底で支えるのが、FTA/EPA網の急速な広がりです。民主党政権としては、政治主導で、豪州はもとより、韓国、インド、欧州ともEPAを積極的に推進していく考えです。更に、アジア太平洋全体の重要な経済連携の枠組みとなり得るものとして、環太平洋連携協定(TPP)への関与も検討したいと考えています。将来的に、アジア太平洋地域全体にまたがるアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を実現し、地域経済を一体化させ、地域の更なる繁栄を確保することがAPECの大きな目標です。

 こうした中で、日豪EPAは、日豪互恵という二国間の文脈を超えて、地域の経済統合を更に進め、将来にわたる地域の平和と繁栄を確保するという戦略的重要性を持っています。センシティブ分野への対応をどうするかという困難な問題はありますが、この点については、昨日クリーン貿易大臣とも話し合いました。日豪EPAは民主党政権の優先課題の一つです。私自身も、引き続き、大局的観点から、日豪EPAの締結に向けて尽力していきたいと思います。

 日豪の第二のポテンシャルは、地域の平和と安定に向けた協力です。

 地域の繁栄のためには、平和と安定が欠かせません。しかし、この地域には、朝鮮半島情勢等の様々な不確実性、不透明性が依然として存在することも厳然たる事実です。

 こうした状況の下では、この地域に対する米国の関与が引き続き必要です。それに加え、米国の同盟国である日豪が、PKO、災害救援活動等の安全保障上の協力を進めることは、地域の平和と安定に大きく貢献します。先月、日本と豪州は、こうした活動の現場で、自衛隊と豪州軍が相互に物品や役務を提供しあう日豪物品役務相互提供協定(ACSA)に署名しました。これにより、日豪間の協力がさらに強化されることを期待しています。

 日豪関係の第三のポテンシャルは、グローバルな協力です。

 核軍縮・不拡散は、現在、日豪間の最も緊密な協力分野の一つとなっています。我が国としては、先般のNPT運用検討会議の成果を踏まえて、引き続き「核兵器のない世界」の実現に向けて、豪州とともに、意味のある役割を果たしたいと考えています。先般のNPT運用検討会議においても、日豪が提言を行い、国連での議論をリードしたところです。

 また、環境問題への取組は、国際社会全体が持続的に発展するための、待ったなしの課題です。日豪両国は、気候変動問題について共通の考えの下、国際交渉で緊密に協力してきております。国際社会から幅広い支持を得ているコペンハーゲン合意がこの問題に対する取り組みの基礎となります。我が国は、すべての主要国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組みの構築のために共に協力していきます。

 以上が、日豪協力が有する3つのポテンシャルです。

 先日、捕鯨問題を巡って我が国を含む各国が外交的解決のために努力をしている中で、豪州が我が国を一方的に国際司法裁判所に提訴したことを残念に思います。しかし、捕鯨問題を巡る立場は異なりますが、そのことが重要な日豪関係に影響を与えてはならないと考えております。日豪関係を更に強化したいという私の考えに変わりはありません。

 大きく胎動する国際社会の中で、今ほど日豪関係の強化が求められていることはありません。そのために、日豪経済委員会をはじめとする、日豪経済界のリーダーの皆様とともに、官民挙げた取り組みが重要なことは言うまでもなく、引き続き御協力を宜しくお願いいたします。

 最後になりましたが、日豪経済委員会の更なる発展を祈念して、私の挨拶とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。