データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] カブール国際会議 岡田外務大臣ステートメント

[場所] カブール
[年月日] 2010年7月20日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

カルザイ・アフガニスタン・イスラム共和国大統領

バン国連事務総長

ご列席の皆様

はじめに、日本政府を代表して、アフガニスタン政府が、今次会合の開催のために払った努力に対し敬意を表します。

(アフガン政府への取組への評価)

 1月のロンドン会議で話し合われた、アフガニスタン政府の取り組むべき政策課題を着実に実施するべき段階になってきています。我が国は、この間、アフガニスタン政府がカルザイ大統領の下で治安対策、汚職撲滅への取組、経済開発、選挙プロセスの改革等の諸課題に取り組んでいることを評価し、またこの重要な諸課題についてより具体的な政策を提示したことを歓迎します。

 アフガニスタンの平和と安定は、国際社会全体の平和と安定に密接に関連しています。この国を再びテロの温床としないとの目的に向け、国際社会は、累次の国際会議において様々な議論を行い、多くの支援を行ってきました。

 今日、より多くの困難な挑戦に直面する中、如何にしてより安定したアフガニスタンをつくるか、そしてそのために、如何にしてその復興と国づくりの道筋を確かなものとするかという命題が、改めて提起されています。

 アフガニスタンの国造りは治安の回復と復興の進展と統治力の向上が相互に関係していることを我々は知っています。この難しい課題に取り組む上では、アフガニスタンの人々の幅広い支持がなくてはなりません。そのために、アフガニスタン自身の責任とオーナーシップがますます重要となっているのです。

 従って、カルザイ政権の国造りのオーナーシップをより高め、ますます増加する困難に挑戦していく上で、同政権が提示した政策が着実に実施され、具体的な成果をあげることが重要です。

 また、アフガニスタンの努力に対し国際社会は引き続き有効な支援を提供していかなくてはなりません。本日の会議においても、アフガニスタン政府による諸政策を精力的に実施する決意とともに、同政府の努力を支える国際社会の支援の意志を改めて明確に示すことが重要です。我が国も真摯な国造りの努力に対して、支援を惜しみません。

(我が国の支援方針の確認)

 私はこの機会に、我が国の支援についての考え方を皆様と共有したいと考えます。我が国は、昨年11月に発表したアフガニスタンに対する最大約50億ドル程度までの規模の支援パッケージに従い、治安改善、再統合、開発を三本柱として着実に実施してきており、2010年末までに約11億ドルの支援を実施する予定です。

 具体的な支援の進め方はアフガニスタン側の諸政策とよく調整し、その優先度を勘案した形で検討していく考えです。

(治安改善)

 治安の改善は復興の大前提です。そのために、アフガニスタン治安当局と各国が犠牲を払いつつ行っている努力に敬意を表します。我が国としては、アフガニスタン自身が治安維持の責務を果たせるよう、その治安部隊の能力を強化する観点から、アフガニスタン警察の給与・機材整備や、アフガニスタン国軍の医療機材整備等の支援を行っており、このような支援を今後とも継続する考えです。我が国はまた、アフガニスタン支援について、関係国と様々な協力を行っている中、治安分野でも関係国との連携の可能性も検討しております。具体的には、アフガニスタンのキャパシティ・ビルディングの一環として、トルコとの協力の可能性を探求しており、その訓練事業への資金面での協力や専門家(講師)の派遣といった方向で考えています。

(再統合)

 治安を改善し、平和と安定を形成するために、反政府勢力との和解・再統合を進め、政治的解決も探求される必要があります。この観点から、我が国は先月の和平ジルガを経て、アフガニスタン政府が「平和・再統合プログラム」を発表し再統合基金を立ち上げたことを評価します。

 こうした和解・再統合の取組を進め、定着させていく際には、都市及び農村の双方においてコミュニティーレベルで社会の一層の安定・雇用促進が図られることが重要となりましょう。我が国は、こうした分野でより有効な役割を果たします。そのためにも、本年1月ロンドン会議で表明した再統合基金への5000万ドルの拠出のための手続きを速やかに進めます。さらに、我が国としては、「平和・再統合プログラム」の進捗に応じて、追加的な拠出も検討したいと考えます。当該プログラムは他の開発支援スキームと組み合わせることが重要であり、我が国としても職業訓練等の分野で二国間援助との連携も十分にはかっていきます。

 我が国としては、今後、「平和・再統合プログラム」が速やかに実施されることを求めます。また我が国としても、同プログラムが効果的に実施されるよう、アフガニスタン政府と協力していきたいと思います。

(開発)

 まず、我が国は、援助関係者及びNGO等の知見を総動員し、オールジャパンでアフガニスタンの開発に対応していきたいと考えています。開発においては、まず全ての課題に共通する喫緊の問題である、人づくりの重要性を訴えたいと思います。我が国は、アフガニスタン省庁の財務管理やプロジェクト管理を含む能力開発を支援します。また、汚職対策等のガバナンス強化を支援し、その一環としてシンガポールとの協力を通じた支援を行う用意があります。農学、工学等の分野で最大500名の行政官の育成なども行います。また、引き続き教育・保健分野での協力を推進します。

 経済発展の基礎となり、また、国民に希望を与えるようなインフラ整備事業も重要であり、道路、水、配電網、空港などの整備を通じて国づくりを支援していきます。これらの支援には、既存のカブール市の再開発と新都市の開発を一体的な形で進めるカブール首都圏開発が含まれます。

 農業・農村開発は、アフガニスタンの産業発展において引き続き重要な分野であり、我が国は農業・農村の復旧と発展を支援したいと考えます。その一環として、農業の基礎となる灌漑施設の建設・補修に加え、ミラーブ(注:水長(みずおさ))など伝統的な組織の活性化・ネットワーク化にむけた取組を支援していきます。

(地域協力)

 アフガニスタンの安定と復興は、経済発展、治安対策、政治プロセスいずれの面でも、アフガニスタンと密接な繋がりを持つ周辺国の協力なしには実現し得ません。アフガニスタンの安定は、この地域そして地域を超えた諸国の安定と発展をもたらす共通の利益です。すでに多くの地域的な協力の枠組みが作られていますが、こうした取組を通じ、周辺国にとっても建設的な協力が実現することを期待します。

 ご清聴ありがとうございました。