[文書名] 日本経済新聞社‐CSIS共催シンポジウムにおける前原外務大臣講演
(冒頭)
皆さん,こんにちは。
経済閣僚会議の時間が変更になったことと,総理に呼ばれたことで,私の到着の時間が二転三転し,皆さん方にご迷惑をおかけしたことを,まずお詫び申し上げます。
今日は,歴史を重ねておられる日経CSISシンポジウムにお招きいただき,お話しする機会をいただきましたことに,心からお礼を申し上げます。
私は,国会議員になって16年になりますけれども,CSISさんとは大変長いお付き合いをさせていただいております。今日お越しになっているハムレ所長には,ずっとご指導をいただいておりますし,ナイ先生やブレア提督はじめ皆さん方には,古い友人として様々な形でアドバイスをいただいてきましたことに,お礼を申し上げたいと思います。
私が外務大臣になりまして1カ月余り経ちますが,どういった外交をしていくのかということについて,30分ほどお話しさせていただきます。
私は,外交とは,「いかに国益を増進させるか」ということが最大の目的であると思っております。大学時代,あるいは松下政経塾の時代であったかもしれませんが,旧ソ連のゴルバチョフ書記長が言われた「外交には敵も味方もいない。あるのは国家利益だけだ」という言葉が頭に残っております。私は,シビアに考えれば,そういった面もあるのではないかと思っております。
もちろん同盟国であるアメリカとの関係は,今までも大事でしたし,これからもずっと大事にしていかなければいけないと思っておりますが,突き詰めると,大事なことは「外交を通じていかに国益を高めるか」ということだと思います。違う言い方をすれば,アメリカもボランティアで日本との同盟関係を結んでいるわけではなく,「アメリカの国益をどう高めていけるか」ということを考えているから同盟を結んでいるのだと思います。むしろ,お互いがそういう意識を持たなければ,日米同盟は長続きしないだろうと思っております。
(日本の現状と課題)
翻って,今,日本の置かれている状況を考えたとき,惨憺たるものがあります。一つは,2004年をピークに日本の人口は減少傾向にあることです。今,日本の人口は約1億2700万人ですが,合計特殊出生率1.37%という直近の数字に固定して考えれば,平均すると毎年約90万人の人口が減っていくことになり,40年先の2050年には約9500万人まで減少することになろうかと思います。
日本が抱える大きな問題点の二つ目は,少子化と同時に高齢化の比率がどんどん高くなっていることです。現在,65歳以上の人口比率は23%ですが,このままいきますと,2050年には分母が9500万人で,65歳以上の人口比率は約40%となります。つまり,現在は5人に1人が65歳以上ですが,このままの前提でいけば,どんどん高齢化比率が高くなり,2050年には5人に2人が65歳以上という社会を迎えることになります。
私は,経験を積んだ人がたくさんいる社会は,悲観するばかりでもないと思っておりますけれども,社会保障のおカネがかかる世代が増えてくるということで,そういう面における支出は大変大きくなっていくと思います。今でも国の財政の半分以上は厚生労働省の所管であることは,皆さんの実感とも近いのではないかと思いますが,この比率はこれからどんどん高くなっていきます。
三つ目の大きな問題は,GDPの1.8〜1.9倍という非常に大きな財政赤字です。PIGSについては日本でも言われていますけれども,足元を見れば,対GDPの長期債務はギリシャどころではなく,日本のほうがもっと大きな借金を抱えているわけで,まさに他人事ではない状況になっています。
日本に残されたナローパスとして,再生のとっかかりになるのは,これだけ莫大な財政赤字を抱えながら,なぜ低金利でいられるのかということです。もちろん日銀の低金利政策が根本にありますけれども,まだ日本には1400兆円といわれる個人の金融資産があって,債務超過にはなっていないことが,これだけ莫大な借金をしながらも低金利でいられる要因になっているのではないかと思います。
(経済外交)
「人口減少」「少子高齢化」「莫大な財政赤字」という三つの制約要因を考えますと,日本が活力を持ち続けるためには残された時間はあまりなく,また,それをしっかりやらなければ,まともな外交もできません。外交には色々な分野があり,貧困国の援助,テロ防止,国連改革,今,名古屋でCOP10が開かれていますが,生物多様性の問題等,すべて大切な問題ですけれども,日本のコアの大事な問題は,制約要因のある中でも「いかに日本の国力を発展させ続けるのか」ということです。また,それをやらなければ,外交をやる上での十分な国力,経済力,防衛力,そして価値の問題もありますが,こういった(外交の)背景は生まれてこないということを,我々は十二分に分析すべきだと思います。そうであれば,今,外交における一番の優先課題は,「経済外交」をしっかりやっていくことに尽きるのではないかと思っております。
三つの制約要因の中で,日本が発展し続けるために大きなとっかかりになるものは二つしかなく,一つは,少し毀損しているかもしれませんが,「1400兆円の個人の金融資産をどう生かしていくのか」ということです。もう一つは,日本の人口は減少傾向にありますが,世界の人口は,今の約68億人から,40年先には92〜93億人になり,しかも,その成長の中心はアジアにあり,日本は「アジアの成長をどう取り込んでいけるか」ということです。日本が三つの制約要因の中で何とか成長し続け,皆さん方にまともな生活と行政サービスを提供し,外交力あるいは防衛力としてもある程度のものを維持するには,この二つに求めるしかないと思っております。
そう考えたときに,経済外交の柱となるべきポイントは,たった一つ,「国を開く」ことだと思います。日本もEPA(経済連携協定),FTA(自由貿易協定)を結んでいますけれども,関税を100%自由化するというレベルで考えたとき,日本のFTAのレベルはかなり低いことに気がつきます。一番良い形は関税ゼロで,100%自由化していることですが,私がこの仕事に就かせていただいて,品目に合わせた関税率を見たところ,80〜90%ぐらいのものもまだまだありますし,例外品目をとってみれば相当程度の関税率になっています。例えば,私もコメの関税率が778%であることを知って,改めてびっくりしたのですけれども,タイで100という単位のおカネで買えるコメを日本に持ってくると,100+778で878になるわけです。農産物については,色々な国が高関税率を維持して自国の産業を守っていますけれども,その分野と関税率があまりにも高すぎるという面があることも事実です。
そこで,皆さんに問いかけたいと思います。日本は,農業を守るために,FTA,EPAに対しては非常に慎重であったということは,私は正しい分析だと思います。あるいは,今,テーマになっているTPP(環太平洋連携協定)も,私は入るべきだと思っており,入るべく検討しているところですけれども,これについても,かなり高いレベルでの関税自由化を求められます。そうしたときに自国の農業は相当程度の影響を受けるだろうと,皆さんは思われるでしょう。別の質問をいたします。日本のGDPにおける第一次産業の生産割合はどのぐらいだと思われますか。日本が取り扱っているFTA/EPAは全貿易量の約16.5%であり,韓国は,いまや36%で,もっともっとFTA/EPAを進めようとしています。韓国は,アメリカともFTAを結び,EUとのEPAにも署名をしています。そうすると,アメリカあるいは韓国の中では自動車や電化製品の関税はなくなりますけれども,日本から輸出した製品には10〜15%程度の関税がかかるので,日本は,価格競争力の面で遅れをとることになります。しかも,韓国の法人税率は,地方税と国税を合わせて約24%であり,日本では約40%と,法人税率で見てもダブルスコアぐらいで負けています。さらに,ウォンは安くなり,円は高くなっているので,為替の面でも日本は非常に不利な状況に置かれています。
いま申し上げたように,韓国は,FTA/EPAについてはどんどん戦略的に進めて,関税はなくなっていきますが,日本は,農業があるということで躊躇して,競争力がなくなっていきます。このままでいくと,日本国内での自動車や電化製品といったものづくりについては,お隣の韓国とは競争できなくなる状況が,目の前どころか足元まで来ているにもかかわらず,踏み出せないでいるわけです。
もう一度,質問させていただきます。日本のGDPにおける第一次産業の割合はどのぐらいだと思われますか。おっしゃるとおり,1.5%です。では,二種兼業農家が中心ですが,守ってきた農業の従事者の平均年齢は何歳だと思われますか。65.8歳です。長寿社会になって,農業に携わる方々に長生きしていただくことは大変良いことですけれども,韓国の事例から見ても,1.5%を守るために,98.5%という大部分のものが犠牲になっているのではないかと思います。
こういうことを考えたとき,今こそ「国を開く」ことを本気で考えないと,日本の競争力はどんどん低下していくのではないかと思います。これは別の意味でびっくりしたのですが,韓国は,アメリカとFTAを結び,EUとEPAを結ぶことを前提として,国内の農業に対して,かなりの規模の支援策を徹底して行い,自国の農業を保護した上で国を開いています。
メリハリのある政策をしっかりやっていかなくては,大局を見失い,日本の競争力,国力はどんどん落ちていき,そのことによって日本の外交力も落ちていきます。外交力が落ちれば,アメリカの同盟国,パートナーとしての魅力も落ちるということになってくると思います。そういう意識を持ちながら,やっていかなくてはいけないと思います。
二つ目に,経済外交では,「資源,エネルギー,食料をどうやって多角的に獲得していくのか」ということも大事な点ではないかと考えております。今回,尖閣の問題で,中国がレアアースの輸出を制限するという形に見えています。中国の商務省は,制限はしていない,適正な管理だ,と言っていますけれども,現時点でも前の状況には戻っていません。世界におけるレアアースの生産量の約97%が中国で生産されるので,日本のみならず多くの国々がレアアースについては中国に依存しているわけです。やはり,一国に資源,エネルギー,食料を依存することは良くないので,万が一のときのために多角的に分散し,安定供給が図られる外交をしていかなければいけないと思っております。
外務大臣に就任して1カ月経って,例えば,国際協力局からは,色々な地域に対してODA(政府開発援助)をやりたいという話が来ます。時期が迫っているものがあったり,継続案件はしょうがないとして,私は,国際協力局に対して,もちろん貧困撲滅,識字率アップ,子供の死亡率が高いところに対する人道的な支援は良いけれども,根本的にこの点をしっかり考えて,ODA,無償資金協力,技術協力,経済協力をしてほしいと言っております。
私は京都の出身で,大阪は商人の街ですし,関西人にはそういう感覚があるのかもしれませんけれども,私は,「この国にODAをして,どんなメリットがあるの?何か資源があるの?何かインフラ輸出できるの?買ってくれそう?」と聞くようにしています。すべてがすべて生々しい現世利益的なことではなくても,ODA,技術協力,経済協力は,資源やインフラ輸出等に結び付けることも考えないといけないと思っております。皆さんからお預かりしている税金を使ってODAをやる以上は,できるかぎり日本の国益に資するところ,資源外交,エネルギー外交,食料外交に資するところに結び付けて考えようと思っております。
私は,前職である国土交通大臣のときも,新幹線,下水道,高速道路を「売り」にいきました。日本の人口は減っていき,市場は小さくなっていきますが,世界に目を転じれば,市場はどんどん広がっていきます。そこで,日本の企業が外にモノを売ることができるように,官民一体となってバックアップしていくためにも,外交の役割をしっかりと果していかなくてはいけないと思っております。
したがって,菅政権の中で私が求める外交の基本は「経済外交」であり,経済外交とは「国を開く」ことであり,「多角的な資源・エネルギー・食料外交」を行うことであり,同時に「インフラ輸出」をしっかりやっていくことです。この三つを経済外交の柱として,これからも進めていきたいと考えております。
(日米関係)
経済外交をやっていく上で最も大事なことは,日本の安全面での足場がしっかりしていることです。あるいは,日本にも投資をしてもらわなければならず,色々な方々に日本に来てもらわなければなりませんが,日本の国自体が極めて脆弱であるということになれば,日本に投資は行われず,人も来ないし,株も下がるし,評価も下がります。そこで,まずは日本の安全が大事であり,その根本を成しているのが「日米同盟関係」であろうと思います。
日本は,戦後65年経ちましたが,「吉田ドクトリン」という考え方の下でやってきました。自国の防衛を省みず,日米同盟に頼りすぎている感もなきにしもあらずと言えるかもしれませんが,日本が自らの国を守る独自の努力をすることと同時に,今や日本の安全保障のみならず,この地域の安定の公共財であるアメリカのプレゼンスをしっかりと担保するためにも,日米同盟関係をさらに強固なものにしていくことは,民主党政権でも自民党政権でも他の政権でも普遍的な大事なポイントではないかと考えております。
そういう意味で,日米同盟関係をどのように発展させ深化させるかということを,我々なりに考えていかなくてはなりません。冒頭で申し上げたように,アメリカはボランティアで日本と同盟関係を結んでいるわけではなく,アメリカの利益につながるという前提の下で日本との同盟関係を結んでいます。したがって,我々は,過度の甘えを排していかなければいけないし,アメリカの国益はどこにあるのかということを考えながら同盟関係をうまくマネジメントする必要があり,そういうお互いの知恵も極めて大事なことではないかと思っております。
他方で,言葉だけの同盟の発展・深化ではなく,より具体的な面での取り組みも不可欠であろうと思っております。その柱は三つあり,これは,先般のニューヨークでの首脳会談において菅総理大臣とオバマ大統領との間で確認されたところでありますが,これにいかに肉付けしていくかということが,我々,外交に携わる者の役割であると思っております。
柱の一つは,狭い意味での「日米安保と同盟関係の深化」です。様々なシナリオあるいは想定に基づいた協力関係を,より具体的に詰めておく必要がありますし,有事法制のときに,周辺事態における日米防衛協力のための指針(ガイドライン)という取り決めをしており,それを具体レベルまで落としていくことも日々やっていますけれども,例えば,これをもう一度しっかり見直すこともあってはいいのではないかと思います。あるいは,1978年の「日米防衛協力のための指針」(旧ガイドライン)の見直しのときに,平時の防衛協力,日本有事の防衛協力,極東有事の防衛協力という3本の柱がありましたけれども,この3本の柱をしっかり詰めていくことも必要ではないかと思っております。北朝鮮の体制が変わっていく中で,どのような状況が生まれてくるのかということを慎重に見極めなくてはいけません。自国のインテリジェンス,同盟国アメリカ,あるいは韓国や他の国々のインテリジェンスも駆使して,しっかりと動向を見守ると同時に,仮に何かが起きたときに,様々なパターンに対応できるように協力関係の中身を詰めておき,それに基づく訓練も必要だと思います。もちろん周辺事態のガイドラインが決まったわけですから,今までもやってきていますけれども,それをより詰めていくことが必要ではないかと思っております。また,平素からの協力,日本有事を想定した防衛協力についても両国でしっかりと詰めて,それに基づく防衛努力を行い,演習等,密接な関係を具体的なシナリオから高めておくことが必要なことではないかと思っているわけです。同時に,そのことを通して日米の役割分担を不断に見直していくことも必要なことではないかと考えているところです。
日米協力を多層化するための二つ目の柱は,「経済協力」です。日米のより自由な貿易をTPPなどで担保するのか,あるいは,日米の二国間の枠組みで担保するのかということは,菅政権として決定したわけではありませんけれども,いずれにしても,ニューヨークでのオバマ大統領との首脳会談で菅総理がはっきり言われたのは,「民主党は,東アジア共同体と言っているけれども,これにはアメリカも入っている」ということです。その前に,私は,クリントン国務長官とお会いしたときに,「民主党は,東アジア共同体と言っているけれども,アメリカを排除していない」という言い方をしていますが,菅総理は,もっと積極的に「東アジア共同体はアメリカを含む」と言われ,通訳は,”including”と訳しています。
そういったところで経済の協力関係,一体化をより進めて,お互いの得意な分野,強い分野をより高めていくことも必要であろうし,お互いの投資機会についても広く門戸を開いて,それが担保されることも極めて大事なことではないかと思います。
三つ目に大事な柱は,「人的交流」です。その一つは,昨日の夕食会でナイ先生からも「『JETプログラム』は少し先細りしているが,もっと拡張し,日本で英語を教えて,日本を好きになって帰るアメリカ人をどんどん増やしていったらどうか」というアドバイスをいただきましたし,色々な方から同様のアドバイスをいただいております。すでに内閣で,JETプログラム,あるいは逆JETプログラムも含めて,人的交流をもっともっと拡大しなければいけないということを話しておりますので,今度,オバマ大統領が来日されたときでも,柱の一つとして,しっかり担保しておかなくてはいけないことではないかと思っております。
(日中関係)
最後に,これを言わなければ,皆さん方はすっきりしないと思いますので,中国のことについてお話しさせていただきます。尖閣の問題の処理の仕方については,多くの方からご批判をいただいているところですけれども,政府の考え方は一貫しており,改めて私から申し上げることはございませんが,これからが大事だと私は思っております。
今回,尖閣の問題で,色々なものが見えてきました。中国の反応も然り,他国の反応も然り,国内の反応も然りで,我々は,そういうものをこれからの政策,外交に生かしていくことが極めて大事なことではないかと思っております。言うまでもなく東シナ海においては領土問題は存在せず,尖閣諸島は日本固有の領土であり,今後も実効支配を続けていくことは当然であります。私がニューヨークでクリントン長官にお会いしたとき,今までは三段論法的な話でしたけれども,今回,「尖閣自体は日米安保条約第5条の適用範囲である」と言っていただき,我々は,極めてエンカレッジされた思いです。
これからも尖閣諸島の実効支配を続けていきますし,見えてきた様々な変化に対して分析をしっかり行う中で,中長期的な見通しも含めて,対中政策,対アジア政策,あるいは,それを踏まえて日米のさらなる協力の形を,お互いに相談をしながら,協力をしながら,築き上げていかなくてはいけないと思っております。
他方で,中国は,日本にとって,あるいは他の国々にとっても大事な国であることも事実であります。今や日本の輸出国の第1番目は中国,輸入国の第1番目も中国であり,中国にとっても輸入国の第1番目は日本,輸出国の第1番目はアメリカですけれども,第2番目は日本であり,そういう意味で,経済的な相互の関係は極めて強いものになっております。
したがって,日本の原則はしっかり保ちながら,いかに中国とのWin‐Winの関係をマネジメントしていけるかということが,日本の外交手腕が問われるひとつではないかと思っております。私のイメージは,元国務副長官のゼーリックさんが言われたように,中国に,「責任あるステークホルダー」として振る舞い,我々の価値観,世界的な規準に従ってもらう状況をつくっていくことです。それは決して封じ込めでもなく,排除でもなく,同盟国であるアメリカ,価値観を共有する国々と連携をしながら,そういう状況をつくっていく中で,中国との関係をうまく強めていくことを,しっかりやっていかなくてはいけないのではないかと思っております。
先般,ASEMで,立ち話なのか,ソファに座ったのかは別にして,菅総理と温家宝首相が話をされ,関係改善をしていこうということになり,今,外交ルートで話をしているところです。可能であれば,ハノイでのASEANの会合で,まずは日中の外相会談を行い,その場で日中の首脳会談ができれば,という思いで,今,作業を進めているところです。そういうことを積み重ねていきながら,しっかりと戦略的互恵関係の肉付けをしていかなければいけないのではないかと考えているところです。
(結語)
いずれにしても,その上で最も大事なことは,今日,申し上げた二つの点です。一つは,日本の経済を強くすることです。今のままでいけば,日本は衰退してしまいますので,日本の経済を再活性化するために様々な取り組みを行い,経済外交を行います。もう一つは,日本の安全のみならず,地域の安定の公共財である日米同盟関係の絆を,日米の信頼関係をさらに強めて,より具体的に強めていくことが,日本にとっても,この地域にとっても大変重要なことではないかと思っております。
皆さん方のアドバイスをいただきながら,その仕事を天命と受け止め,しっかりと頑張らせていただきたいと思います。今後もどうか皆さん方のご指導を賜りますようお願い申し上げまして,私の話を終わらせていただきます。ご清聴,ありがとうございました。