データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 玄葉外務大臣と語る「これからの日本外交」

[場所] 名古屋市中小企業振興会館
[年月日] 2012年3月17日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

1 はじめに

 皆さん,こんにちは。足場の悪い中,この場にお出でいただいた皆様に心から感謝申し上げたいと思います。楽しみに参りました。なかなか外務大臣というのは気が休まらないですね,当たり前ですが。昨日も七時半過ぎくらいまで閣議がございまして,朝から晩まで沖縄北方特別委員会,参議院の予算委員会であるとか,衆議院の安全保障委員会であるとかずっと答弁が入っておりました。最初は午前中に中国の国家海洋局の海監という船が,沖縄の尖閣諸島の接続水域を走っているという一報が入るわけですね。すぐに外交ルートを通じて申し入れするように指示しました。にもかかわらず,今度は25分間だけですね,領海内に入ったと報告を受け,外務次官に駐日中国大使を呼んで抗議をするようにと,委員会で質問を受けて答弁している最中なんですけれども,指示しました。

 昼には,北朝鮮が人工衛星を打ち上げるという発表をしたわけであります。当然,これは普通に考えれば,いわゆる弾道ミサイル技術を使った打ち上げでありますから,これは国連安保理決議違反なんですね。12時05分にはもう情報収集と分析を行うよう指示したと記憶しています。米は夜中だったと思いますが,米韓とよく連絡をとって,また,六者協議というものがありますから,中国を含めたパートナーとよく連携をとるように,緊迫感をもって,だけども冷静に対応するよう指示しました。

 また,委員会で答弁をずっとして,夕方,委員会が終わり,次官を始め関係者を集めて今後の対処方針を決め,WTO事務局長が来日していたので,今後の貿易体制のあり方等について,2時間くらい同事務局長と夕食を交えながら懇談しました。(外務大臣とは)危機管理というものも併せて担当しているわけでありまして,緊張感をもって臨まなくてはいけない仕事だと,当たり前の話ではありますけれども,昨日そういうことがありましたので,改めて冒頭に申し上げます。

 今日は皆様と一緒に,日本外交,あるいは日本のありようについて共に考えることができればと思っています。

 (私の外務大臣の)就任会見が9月2日にありましたが,あのときに孔子の言葉を引いたんです。どういう言葉かと言いますと,手元に持ってきたんですけど,「政を問う。子曰く,食を足らしめ,兵を足らしめ,民をして信あらしめよ」。論語の言葉であります。つまり,国益,あるいは政とは結局は何だと聞いたら,孔子は兵と食と信だと言ったんですね。兵とは兵隊さんの兵,食は食べる食,信は信ずるの信です。私の言葉であえて言い換えれば,兵とは安全保障,食とは繁栄,信とは価値ということではないか。この安全保障,繁栄と価値について今日は一緒に考えていただければありがたいなと。

2 日本の地政学的位置:海洋国家としての日本

 日本は狭い国土と言われますけど,38万㎞2。日本がどのくらい島をもっているかご存じですか。6,800以上の島々があるんですよ,日本には。いわゆる領海だけではなくて,EEZという排他的経済水域も含めると,447万㎞2になって,国の大きさで見ると世界では61番目なんですけど,海,EEZ,つまり排他的経済水域を入れれば,確か世界で6番目くらいの大きさなんです,日本という国は。

 (日本は)どこにありますか。まさに,このアジア太平洋のちょうど西端のところにあるのが日本,アジアの東端と言ってもいいかもしれません。ですから,まず我が国のことを考えるには,動かすことの出来ない日本の地政学的位置を直視する必要があると思います。アジア太平洋地域に民主主義的な価値に支えられた,豊かで安定した秩序を作り上げようと就任会見の時から一貫して言っているわけです。アジア太平洋地域の成長の機会をとにかく最大化して,一方,リスクは最小化する,これが外交の仕事なんだろうと思います。

3 安全保障

(北朝鮮)

 今の安全保障環境は残念ながら厳しさを増していると言わざるを得ないのではないかというのが私の認識です。例えば,昨日,北朝鮮は人工衛星を発射という発表がありましたけれども,北朝鮮は2006年と2009年に核実験実施を発表,1998年,06年,09年にミサイルの発射をしています。ご記憶だと思います。今回の事案については改めて自制を求めなければなりませんし,先般,米朝合意があったわけでありますけれども,ああいった合意,約束にも相容れないことであると米国だって認識をしている。改めて,米韓始め中露と連携して自制を求めていかなければならないと思っています。安保理決議が二つあって弾道ミサイル技術を用いた発射を禁じています。明らかに今回は人工衛星と言っても弾道ミサイル技術を使う打ち上げになりますから,安保理決議違反になります。

(中国)

 中国の発展は日本にとっても実はチャンスです。戦略的互恵の関係を,ウインウインの関係を作ろうと我々は努力します。今年,実は国交正常化40周年でありますから,さまざま人的交流,文化的交流を行いたい。中国と日本は経済のパートナーです。GDPでは2位と3位の国ですからね。(中国の)一人あたりのGNPは日本の10分の1ですが,GDP全体で見れば日本を抜きました。お互いに良い関係を築いて行かなければなりませんが,一方で,先般も発表になりましたが,国防費が常に二桁台で伸びているんですね,もちろん経済成長もあるんですよ,7〜8パーセント台の経済成長していますけれども,国防費の伸びが著しい,しかも内訳がわからないというのが多くの人達を不安にさせるところなんです。いわゆる不透明だと。アメリカの国防総省は,中国の国防費について実態は発表の倍あるだろうと言っています。それが,いわば我々の周辺諸国にある。

(ロシア)

 ロシアもあとで申し上げるつもりですが,日露は今や信頼関係が出来てきましたから,領土問題を含めて意欲的に日露関係を深化させ,領土問題の解決に向けて交渉していきたいと思っていますが,しかし,極東での軍事演習というのはとても活発化しているんですね。それが実態です。まず安全保障の問題を考える時には,当然,日本の国民の安全を確保するというのは政治の第一の役割でありますから,隙を与えないということが大事だと思います。

(日米同盟)

 今日は,国際政治を学んでいる方々などもいらっしゃると聞いていますけれども,古い用語ではけっしてないだろうけれども,バランス・オブ・パワー,力の空白を生じさせない,主権国家間の力のバランスをとっていくと言う観点で,私たちの国はまず自分自身で,我が国自身で防衛力の整備をしっかり行っていくという努力を更にしていかなければいけないと思いますね。特に南西方面に対する緊急展開能力はより必要であると強く感じている一人であります。あんまり言うと防衛大臣の話になってしまいますけれども。その上で,我々は日米同盟という同盟国を持っている訳です。本日いらっしゃる方々の関心事項を今日新幹線の中で見てきました。普天間の問題,グアムへの海兵隊移転とかどうなっているんだという質問がいくつかございました。私はですね,やはり日米同盟を進化させなくてはいけないと常々思っています。しかし,残念ながらですね,どうしても日米の問題というと,普天間の問題,しかも,その普天間の問題は何だか膠着状況になってると常に見られがちであったと思います。今回,クリントン国務長官との間で,それぞれの事情がある,日本は対沖縄の関係で,なかなか沖縄の皆様に普天間の辺野古移設について十分なご理解をいただけない,アメリカはアメリカで対議会の関係で困難が生じている,だったら,お互いの困難を乗り越える知恵を出そうではないかということで,昨年12月下旬だったと思いますけれども,日米外相会談で話をいたしまして,今までは沖縄の海兵隊をグアムへ移転することと,それに伴って,その結果生じる嘉手納以南の土地の返還というのがあるんですが,これが沖縄の負担軽減,沖縄の振興にこれからつながっていくんですけれども,これらの問題と普天間辺野古の移設は全部パッケージだったんですね。普天間の辺野古移設が出来なければ,沖縄の負担軽減は絶対ダメだ,こういうやり方だったわけでありますけれども,これではね,いつまでも膠着状態だということで切り離すことにいたしました。沖縄の負担軽減について先行させると,そして先程申し上げたように,安全保障環境は刻々と変わっているわけです。かつて2006年に作成したロードマップといういわゆる在日米軍の再編,さきほど申し上げたようなパッケージの考え方が決まった時と,また安全保障環境は変わってきているんですね。そういったものにきちっと対応できるようにしていかなければいけない,さらには日米同盟を真に21世紀型の同盟に進化させていく,ちょっと専門的ですけれども,例えばミサイル防衛,拡大抑止,宇宙,サイバーであるとか,何かあったときの自衛隊と米軍の役割分担であるとか,RMCとかいろいろありますが,そういった本来,もっともっと進化をさせておかなければならなかった分野にエネルギーを集中できるようにしようということになったんです。いずれ,総理訪米はまだいつになるかわかりませんけれども,21世紀型の包括的な日米同盟,それは,安全保障だけではなくて経済も,文化も人的交流も含めた日米同盟の姿を示せるようにしたいなと思っています。

(ネットワーク外交)

 それに加えてネットワ-ク外交ということを言っています。バランス・オブ・パワーということだけで,これからの時代の外交をやっていけるのかと言うと,やっていけないと思います。ネットワークを張り巡らそうと日本は最近言っています。それは,つまり,このアジア太平洋の中で,特に様々なルールというものを作っていくにあたって日本が主導しようと,そういう気持ちなんです。実は,このアジア太平洋の中には,さまざまな枠組みがあります。EASという東アジア首脳会議,ASEAN,ASEAN+3,ASEAN+6,APEC,いろいろな枠組みがありますけれども,そういったものを活用しながら,日本が提案して,例えば海洋ルールだったら,こういう国際法を守るような,そういうアジア太平洋地域にしよう,新しいルールをきちっと民主主義的な価値に基づいて作っていこうと今精力的にやっています。このネットワークには,さっき申し上げた中国の参加が絶対不可欠ですね。やっぱりね,なんだかんだ言って,日本は大国です。その日本,そして米国,中国,この三者の戦略的なバランスというか,戦略的な安定というか,そういったものが私は必要だと思っています。実は日米韓とか日米豪とか日米印とか,いろんな3者の,3つの国々の対話の枠組みはあるんですけど,日米中ってないんですね。ですから,なんとか日米中の対話をやりたいと私の方で提案しています。

(ミャンマー)

 日米同盟,日米同盟と言ったもんですから,何でも日本はアメリカと一緒にやるのかと印象をもたれるかもしれませんけど,日本は日本で独自の色を出した外交も展開をしています。昨年12月にミャンマーに行ったんです。若干メディアにのりましたので,ご覧になった方々もいらっしゃったかもしれません。ミャンマーについて欧米の国々は軍事政権の時は一切見向きもしなかったんですね。でも,日本は実は常に,細々とですけれども,あえて意識をしてコンタクトをとっていたんですね。日本はアジアの国ですから,欧米ではありません。しかもアジアの中で西欧的な価値を柔軟に受け入れて,ある意味主座を保ちながら自分のものにしてきた国じゃないですか。日本ならではの貢献,働きかけが常にあっていいと私は思っています。出来ればクリントンさんが行く前にミャンマーに行きたかったのですが,先を越されました。ミャンマーの民主化,国民和解の後押しをするということで援助方針の見直しも指示したんです。アウン・サン・スー・チーさんにも会いました。テインセイン大統領にも「アウン・サン・スー・チーさんの政治的な自由を絶対に保証しなければだめだ」と私は直接言いました。アウン・サン・スー・チーさんは私に「日本の援助はありがたい。ありがたいけど,本当に困っている人達あるいは少数民族へ裨益するような援助をして欲しい」と言うんですね。

(人間の安全保障)

 私言ったのは,ちょうどその場に齋木さん(副報道官)もいましたが,日本には人間の安全保障という概念があるんだと。ちょっと聞いたことあると思うんです,人間の安全保障。日本国政府が生み出した概念なんですよ。日本国政府と言ったら語弊があるかもしれません。日本国民,日本が生みだした概念です。それはどういう概念かというと,人間一人ひとりの尊厳を大切にする,一人ひとりの能力を最大限発揮させる社会にする。それが私たちの援助の根本方針の一つなんだと話をしたらおそらくアウン・サン・スー・チーさんは,すとんと落ちたんだと思います。心の中でですね。是非日本に,ということをですね,とおっしゃっていました。こういうことを言うといかがかとは思いますけども,これまではですね,日本人が行くとですね,どうしても軍事政権に対してコンタクトをずっと持っていたものですから常に何か日本人には,政治家含めてですよ,二,三批判めいたことを,アウン・サン・スー・チーさんはおっしゃったそうですね。だけど全然ありませんでした。とってもよい会談ができたと思っています。ですからミャンマーなどにもですね,私は日本ならではの貢献というものをやっていかなくてはならないと思います。

(スリランカ)

 スリランカってご存じですか。インドの近くにスリランカという国がありますけれども,これもですね,私は日本ならではのアプローチをしていったらいいと思っているんです。必ずしも欧米と同じじゃなくてもいいというふうに思っています。明石さん,国連の事務次長でしたでしょうか,活躍されてましたね。明石さんを政府代表にしているんです。先日も私会いましてね。21回行ってもらっているんです,スリランカに。それでやっぱり明石さん,つまり,日本国政府からの言葉だと(スリランカは)聞く耳,持つんです。今までのそれは蓄積でもあります。だから私は,必ずしも欧米と同じようなアプローチをとる必要はないと思うと,明石さんに任せるから,今までのやり方でやってほしいと言う話をこの間も明石さんにしました。

(アフガニスタン)

 アフガニスタンという国があります。アフガニスタン,先日行きました。行ったら防弾チョッキを着せられましてね。私は防弾チョッキを着けているんですけれど,日本のJICAの人たち,大したもんですね。NGOの人たちも。山岳地帯で統治が大変なところですよ,治安が。私に防弾チョッキ着けさせるんだけど,私は脱がなきゃいけないと思いましたよ。つまりJICAの人たちは這いつくばって,必死にアフガニスタンの貧困層のお手伝いしているわけですよ。日本人ですよ。感激しましたね,私は。でもそのアフガニスタン,カルザイさんという大統領でありますけれまども{前3文字ママ},日本なら信頼できるというわけです。日本なら。なぜだと思いますか。日本はギラギラしていない,野心がよい意味でないと。私は外交という問題を考えるときに,あるいは常に外務大臣として活動するときに,二つのことを念頭に置いているんです。外務大臣室には,私も外務大臣になって初めて知ったのですが,陸奥宗光の胸像があるんですね。陸奥宗光。「蹇蹇録」という本を書いたんですけども,陸奥宗光さんという人は日清戦争とか三国干渉を乗り切った,一言で言えばリアリズムの人ですよ。外交リアリズムがむき出しに出ているのがあの「蹇蹇録」という本ですよ。私は外交を展開する上でリアリズムというのは極めて重要だというふうに思っています。もう一つ大事だと思うのはですね,ニコルソンという人がですね,「外交」という名著がありますけれど,こういう言葉を言っているんですね。「駆け引きたくましい外交より,正直そして誠実な外交の方が,長期的にもっとも信頼性が高くて効果的だ」と,こういう言葉を「外交」という名著の中で述べています。先ほど申し上げた,例えば,カルザイ大統領の日本への信頼は,先ほど申し上げた後者の方,つまりニコルソンの誠実さとか正直さ,それを日本に見てることなんだと思います。

4 繁栄に向けた取組

(アフリカ外交)

 アフリカの国々もそうですね。TICADというのをアフリカの援助のために日本はやっています。来年横浜でやるんです。今年モロッコで開催されるTICAD IV第四回閣僚級フォローアップ会合に,私,連休に行ってこようと思っているんですけども,議長役にですね。アフリカの国々の外相も私に会うと同じようなことを言います。つまりは,リアリズムは大事なんだけど,日本の後者の部分,日本のこれまでの誠実で正直な外交に光明を見いだしているんですね。それを実感として感じます。そういう日本外交の良さというものはそれはそれで生かしていかなくてはいけないと感じます。

(ODA)

 それを考えるとですね,ODAというのがあるんですね。今日いらっしゃる皆様は,おそらく比較的理解をしてくださる方が多いのではないかと思いますけど。どうしても経済が厳しくなりますとね,私,福島県の出身で,福島県の選挙区,あるいは今,被災地です,何で福島県民困っている時に,日本国民が困っているときに,そんなに援助をあげなくちゃいけないのか,他の国に,と言われます。しかし,日本の外交の最重要なツールですね,ODAというのは。この14年間でODA予算を半分にしちゃったんです。半分ですよ半分。半分になると,さすがに先ほど申し上げたような,アフガンに対してどうする,アフリカ諸国,AU,アフリカには54カ国ありますけれど,どうする,という時にですね,使えるツールがなくなっちゃうんですね。もちろんODAだけでないんですけど,様々な知恵とか技術とか構想力とかを我々は提案することができますけど,やはり現実的に考えればODAというのは非常に効果的です。私外務大臣になって,なんとかこれを反転させられないかと,野田総理に3回くらい掛け合いましたかね。普通に行けばんどん減らされますから。だから財務大臣にも掛け合って,すこしだけ,(ここにおいでの)谷岡さんも応援してくれましたが,少しだけですけど増やしました。こういう流れが少しずつでもよいから出てくるとね,やはり日本は改めて世界の中でプレゼンス,先ほど申し上げたような様々な蓄積をさらに活用できるのではないかと思います。

(フルキャスト・ディプロマシー)

 ちなみにですが,最近私は「フルキャスト・ディプロマシー」と言ってまして,今日いらっしゃるような外交に関心のあるみなさんと一緒に外交をやらなくてはいけない,というふうに思っています。先ほどバランス・オブ・パワーだ,主権国家だ,力だ,みたいな話ばかりしましたけれども,そうは言っても昔と違うのは,世界中でみんな携帯電話を個人で使っているんですね。みんなインターネットを使っているんです。だからかつてとは世界の国際政治のアクターというのがものすごく多様化しているわけです。そうすると日本国民の中でも外交に関心のある人,大企業,中小企業,NGO,NPO,そういった方々と一緒になって外交をする,そういう時代になってきたと思います。それでフルキャストと言っているのですけれど,いわばオールキャスト,フルキャスト・ディプロマシーというのです。外務大臣になる前,国家戦略担当大臣で政調会長を兼ねていましたが,その時にいわゆるNPOで大改革をやりました。ご存知ですか。NGOとかNPOの関係者もいらっしゃるかと思いますが,意外と知られていない。NGOとかNPOを作ったときに寄付金募りますね。寄付金募って,所得控除とか税額控除を受けられる団体は今まで,全国で100団体ぐらいしかなかった。120ぐらいだったかな。そこで私が大改革しました。どういう改革かと言いますと,3000円の寄付を100人集めたら,そのNGOがですよ,皆さんがNGO,NPOを作ったときに,3000円の寄付を100人集めたら,そのNGOは寄付税制を受けられる。所得控除だけではなくて,税額控除も受けられる,寄付した人は。すごくお金を集めやすくなったと思います。一気に寄付文化が変わると思います。そういう大改革しましたので,NGOなど名古屋,愛知県は意識高い方々が多いと思いますので,どんどんそういったものを作って外交に参画をしてもらいたいと思っています。

(TPP)

 それとさっき兵,食,信と言いましたから,安全保障の話を基本的にいたしましたが,食,繁栄の話で一つだけおそらく皆さんが感心のあるのではないかと思われるのは,TPPですかね。いったいどうなっているんだと。経済連携はどこまでやるのかということではないかと思います。国会議員も様々です,これは。韓国も米国と韓国のFTA,やるといって発効しましたけれども大変な騒ぎになっています。それぞれメリット,デメリットあるでしょう。私も福島県で農村地域の出身ですよ。選挙区もそうですよ。私は結論だけ言えば,TPPは大戦略だと思いますね。お隣の韓国と比べたときに,FTAのカバー率,日本は半分です。日本もシンガポールを皮切りに,実はFTAを13かな,結んできたのですけど,非常に質が低いというと言い過ぎですけど,レベルが低いのです。日本とベトナムはFTAを結びました。例えば,ベトナムに愛知からバイクを輸出する,乗用車を輸出すると,関税ゼロかと思う。だって二国間のFTAを結んだのだから,普通はそう思いますよね。そうじゃないのです。80%も関税かかっているのです。それが今の日本のFTAの現状なのです。つまり質が低いのです。だからもう一回この問題をある意味,真っさらになって考えなくてはいけないところがあるわけです。日本の総人口はどのくらいですか。1億2800万人。2048年には1億人を切ると言われています。経済成長って何で決まりますか。経済成長というのは,いわゆる一人あたりの生産性と労働力人口で決まるわけです。労働力人口どんどん減っていくのですよ。現実は,女性の方々とか高齢者の方々に,もっと働いていただくような,働きやすいシステムを作っていきますけれども,普通に単純に考えれば人口がどんどん減る。普通考えたらどんどん縮小していくわけです,日本は。現にこの20年間,韓国は確か平均7パーセントの経済成長していたと思いますよ。英米で4パーセントですよ。日本はどのくらいかご存じですか。この20年間平均の成長率,マイナス0.5パーセントです。だとするとやっぱり伸びる地域の活力を取り入れないといけない。アジアには35億人,アジア太平洋地域では40億人いる。10年後に10億人購買力のある中間層が増えるのです。この人たちの活力を使わない手はない,と私は思っています。どんどん海外で儲けて,輸出で儲けて,問題はその儲かったお金を,今まだ日本の足らざるところなのですが,そのまま儲かって海外においておくのではなくて,日本国に還元する,還元しやすい仕組みを作らなくてはだめです。日本国に還元して日本の雇用とか次の設備投資とか新しい技術開発とかそういったところにどんどんお金が回っていくというシステムを作りあげることが,私は日本の今後の成功パターンの一つだと思っています。ですから(世界の人口が)70億人いる中で40億人いるアジア太平洋。重ねて申し上げますけれど,10億人の中間層がさらに10年後に増える。日本の個人消費の4.5倍ある。

(パッケージ型インフラ展開)

 パッケージ型インフラ展開といって,今までは単に橋を輸出するとか道路を輸出するとかという話だったが,いまは,パッケージ型,つまり人とかノウハウも一緒に行ってもらって,マニュアルを含めて輸出するということで,今,官民挙げてやっています。そこでODAも上手に活用しようということでやっています。手元に,例えばこういう数字があります。2015年の市場規模で上下水道だけで45.5兆円,電気自動車12.4兆円,再生可能エネルギー18兆円,スマートグリッドは23.5兆円。こういうマーケットは大いに活用して,日本国内に還元する。こういう仕組みを作り上げていきたい。

(中小企業支援)

 だから日本の外務省も50ヶ国の重点国に124人のインフラ担当の外交官を置いています。ビジネス展開しやすいように。もっと言えば名古屋,愛知は中小企業が多いでしょう。中小企業も海外展開してその儲けたお金で自分の町工場の雇用守りたい,そう思っていらっしゃると思いますが,残念ながら(海外へ打って出る)ノウハウがなかったり,ちょっと英語が話せないなど,いろいろどうしてもありますよね,零細企業とか中小企業だと。そこを外務省は全面的にバックアップできないかと思っているのです。マッチングさせよう。今まで大企業が勝手に行くのを,ある意味でトップセールスで応援していたところがあるんですけど,マッチングさせられないかと担当局に言っています。一生懸命やると言っています。日本の技術すごいですから。なんだかんだ言って世界で1番,2番ですから,今でも。しかも中小企業,地場の企業の技術もまたすごいですね。例えば,川の泥水を中小企業,零細企業の技術で,水を飲めるようにする。そういう水質浄化剤を持っていたりする。それだったら外務省は思い切ってODA活用しながら,その中小企業とタイアップして海外にそれを売ろうかと。今までは大企業しか見ていなかったけど,今は中小企業を見てしっかりマッチングさせて,応援していこうと思っています。

 いただいている時間は50分で,本当はあと30〜40分話したいと思っているのですが,あと5分しかないので,端折って話しますが,最後に信という,価値の問題について触れたいと思います。

5 クールジャパンを超えて,「日本的な価値」をいかした外交の推進

(日本的な価値をいかした外交の推進)

 イランの問題や,日ロの問題にもし関心がおありだったら,ぜひご質問していただければと思います。

 信の話,価値の話を最後に一言申し上げたいと思います。

在京アラブ大使の方々と食事をしていたら,ある大使がこう言ったんです,「私の国のテレビ番組,ハワーティルという番組があるんです。」どういう番組かといいますと,隠し撮りをする,人間の振る舞いを隠し撮りする番組だと。日本とある国で同じことをして,隠し撮りをした。どういうことをやったか。それは財布を道端に置いた。アラブのその国は,あえて国の名前は言いませんが,その国では財布を見て,みんな通る人は財布を拾って,お金だけとって,財布をそのまま道に置いて通り過ぎる。日本はみんなその財布を交番に届けた。そういう放送が流れた。

 もうひとつ,その国はモスクや学校で,子供の靴,乱れたままになっている映像が流れた。でも,日本の子供たちは,最近はそうでもないのかもしれませんが,きちっと靴を並べる。プライベートな話,蛇足で申し訳ありませんが,私には娘一人おりまして,私は娘にひとつのことしか教えていません,子供の頃から。それは「靴を並べなさい」。トイレから出たときも,玄関でも,「靴を並べなさい」。私は私の父から,ずっとそういう教育を受けましたので,娘にはあまり多くのことを言わずに,ひとつのことだけをずっと言い続ける。だから癖になって並べるようになりました。靴を並べる日本人の子供たちの映像が流れた。(彼らは)感激している。そしてこの国からの日本へのビザ発給件数は3倍になりました。つまり,何を言いたいか。名古屋は何かコスプレが有名なんですね。コスプレ,これはこれでいいと思います。私はあまり興味はありませんが。あるいは現代アートとかもいいと思います。アニメ,漫画もいいと思います。アニメ,漫画はすごいんです。100万人近くの方々が日本のアニメ,漫画(のイベント)を見に来るのです,世界各地で。でもそれは入り口ですね。それが入り口になってですね,日本語を学んでもらいたいと思うのです,世界の方々に。だって,世界中で,中国は孔子学院を世界各地で作って中国語を結構学んでいる人は多いのですよ。日本は戦略的にそれをやれてません。だから私は,さっき申し上げたようにコスプレだろうが漫画,アニメ,よくクールジャパンといってやっているわけですが,それはあくまで入り口だ,クールジャパンは,私から言わせれば。入り口,否定しません。大事なことです。ただそこから日本語を学んでもらう。そしてその次に先ほど申し上げたように,中小企業とか,地場の企業などの根底に流れる日本人の真面目さ,礼儀正しさ,これは私は日本的価値だと思います。今回,3.11の東日本の大震災の際の東北の人たちの我慢強さ,忍耐強さ,これレジリアンスという言葉を他の国の外相がいつも言いますが,すごいって。これは日本的価値です。こういう技術の根底に流れる日本的な価値というものを,我々は世界に発信したいと思っています。一昨日も中南米大使が帰国して大使会議で訓辞したのですが,そういうところまで,単にクールジャパンにとどまらない,クールジャパン超えをやろう,クールジャパン超えをやってまさに日本人に流れる価値観というものを世界に広めようじゃないか,という話をしたということであります。3.11で 日本はピンチになりました。あらためて私は地元の福島県の人たちに言っているのは創エネ,省エネ,あるいは蓄エネ,むしろ,福島県は脱原発宣言しましたから,最先端の再生可能エネルギーのモデルを作って世界に発信しよう。

 戦略の本質というのは逆転現象なんですね。戦略の本質というのは国家戦略担当大臣をしていたから言うのではありませんが,逆転現象の時に顕在化する。だから,むしろ逆手にとって最先端モデルを発信する。今の少子高齢化だって同じでしょう。世界にさきがけてやってきているんです,日本は,実は。だから,みんな苦しんでいるでしょう。社会保障と税の一体改革,政治改革,行革,一緒にやろうと苦しんでいますけど,ただこれはやり遂げることができたら,これだけで世界のモデル。なぜか。中国だって間違いなく少子高齢化ですよ,これから。お隣の韓国は日本より速いスピードで少子高齢化社会になっているのです。中国は一人っ子政策だったでしょう。ということは真っ先に我々がそれを解決して見せて,逆転現象ですね,これも。それを示すことが世界に対する大変な貢献。それもある意味日本的な価値ですね。そういう価値を世界に広めたいという思いを持ちながら外交,外務大臣として職責を果たすべく全力を挙げているということでございます。

(在外公館)

 最後,世界には,だいたい何カ国あるかご存じですか。例えば,国連加盟国はどのくらいかご存じですか。予想できますか。100,150,300,意外とわからないですよね。国連加盟国は193カ国。日本が国家承認している国は194です。そのうち日本の大使館があるのは,どのくらいだと思いますか。全部の国にあるのか。実は全部の国にはないのです。いくらぐらいだと思いますか。実は私も最初知りませんでした。トルコの外相とは話をしていて,日本はどのくらい大使館を持っているか聞かれて,大体このくらいだろうと,まったく外れてはいませんでしたが。皆さんが思っているより少ない。134なんです。トルコで123,4と言っていました。134なんです。194カ国のうち134なんです。私,これは少ないと思いますね。今日調べてきたらですね,アフリカは54カ国あるのですが,大使館は32カ国しかない。(残りは)みんな兼轄。大使が一人でいくつも,5,6カ国ももっているのです。でも,国連総会ではみんな同じ1票ですよ。中国はアフリカ54カ国の中で49の大使館を持っているのです。だから,日本の外交力を強化するためには,一方,日本には総領事館もいろいろあるので,大使館と総領事館のバランスを考えながら,在外公館の数,大使館の数を増していきたいと思います。せめて150くらいないとだめですね。なんだかんだといって日本は大国ですから。日本は主要国ですから,その外交力を強化するために,そういった指示も実は今しているということです。中国と比べると30少ないので,そういったことを考えながら,私,実のある外交と言っていて,あまり大言壮語は柄でないのでいたしませんが,着実に実がある,着実に成果が上がる,結果重視の外交をひとつひとつ,積み重ねていこうと,そしてみなさんの期待に答えていこうと考えています。どうぞ,これからの質疑応答を楽しみにしたいと思います。時間をオーバーしました。申し訳ありませんでした。どうもありがとうございました。

6 質疑応答

(参加者からの質問)

(質問1)東京都から参りましたAと申します。本当はTPPのことについて聞きたかったんですけれども,多分皆さんが聞かれると思うので別のことをお聞きしたいんですけれども,今日配付された資料で,外務省の職員の4分の1が女性だと書いてあったので,他の省庁より多いのかなと思ってびっくりしたんですけれども,先日,新聞に,各省庁の課長級以上の5%でしたか増やすという話,外務省はそのさきがけ的な存在になるのかと期待しております。玄葉外務大臣は国家戦略担当大臣の時から,女性の潜在力というのがものすごく大事だと言うことでおっしゃっていたかと思うんですけれども,外国と比較して日本の女性は就業率が低いということもあるのかと思うんですけれども,どういうところが,今後日本の女性が活躍していくために必要かどうかということを外交的な視点から教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

(質問2)岐阜県羽島市のBです。東日本大地震から1年になり,福島県から人々が多く避難しています。かわいそうですね,1万人。約2万人かな,亡くなったのもね。東日本大地震のご冥福お祈りいたします。

(質問3)お話ありがとうございました。東京都から参りましたCと申します。これから先の国際政治上,多極化か,中国が覇権を握っていくのか,多極化か一極化かどちらの方向に向かうのかというのを,玄葉大臣の意見を伺いたいと思います。もし多極化の方向に向かうとお考えであるのならば,この後,最も日本が外交上重要視していく地域や国はどこなのか,その理由をお聞かせ願いたいと思います。あともう一つありまして,誠実さが日本の外交の特徴だと,売っていくべきところだとおっしゃったと思うんですけれど,誠実さ,誠実な外交とはどういうものか詳しくお聞かせ願いたいと思います。

(質問4)Dと申します。先程の女性の話なんですけれども,今,外交官を目指して6月の試験を目指して勉強しているんですけれども,今,政策で国家公務員が減らされるというあれが出ていて,正直,女性の採用枠がものすごく減ってしまうのではないかと個人的に心配しているのですが,その辺詳しく聞かせていただけたらと思います。

(玄葉外務大臣)

 ご質問ありがとうございます。女性の方から二人(質問を)いただきましたけれども,一番最後の採用の話でありますけれども,これは今,岡田副総理とですね,最終的に折衝しようという風に思っています。本当に少なくなったら申し訳ないと思いますが,消費税,社会保障,行革,政治改革,全て一体でやるということの時期,タイミング,だったものですから,今回は何らかの形で減らすということになるかと思います。ただですね,外務省の中も,昔で言う,I種とか,専門職とか,II種とか,III種とかありますでしょ。採用枠減らすときはね,実は中途から入る人が結構いらっしゃるんです。採用枠減らすときはおそらく中途の方を減らすことになるのではないか。やっぱり新しく,あの今お話いただいたDさんのような新しくね,外交官試験受けるぞ,がんばるぞという方は,そんなに割をくわないような中身にしようと,私自身はそう考えていますので,がんばってください。

 Aさんがですね,おっしゃるように,私はもう,日本を救えるのは女性だと思ってます。ちょっと今,手元に資料がありませんが,やはり先進主要国の中ではですね,日本の女性っていうのは,働きたいけど働けない,いや,働きたくなければそれは仕方ない,別に主婦で自分はいいんだという方はそれはもういいと思うんですけれど,働きたいけど働けない,この割合が(日本は)一番多い,日本ですね。働きたいけど働けない,もったいないでしょう,どう考えても。これから労働力人口はどんどん減少するんですよ。だったら,この女性の能力をどうやって活用するか。あと大体60歳とか65歳でやめてですね,みんなピンピンでしょ,元気でしょうがないでしょ。率直に言って疲れたという方は仕方ないけど,大体皆元気です。今日いらっしゃる方で,中には60歳を超えたという方もいらっしゃりそうだなとお見受けしますけど,大体元気ですよ。知的関心も含めてですね,強いと。こういった方々が例えば働きたいといった場合に働けるようにする。これはさっき申し上げたように1億2800万(人)が2046年に。実は今出生率が1.29から1.37まで上がったんですよね。子ども手当の影響か何か分かりませんけれども,上がったんです。いずれ1.80くらいまでがんばって上げなくてはいけない。上げなくてはいけないんだけれど,2046年に一億人を切ると言われていたものが実は2048年に伸びました。どんどん今後も伸ばさなくてはいけないんですけど,大事なことは,経済成長のためにも,また,その女性のためにも,働きたいんだったら働けるという環境を作ってあげるということがすごく大事なことなので,こういうことを公の場で言っていいのか分かりませんけれども,私は,外務省も,次官に私が外相になったばっかりの時にすぐそれを言いました。女性を大事にするようにという言い方したか,つまりは,同じ能力ならもう女性を上げるというぐらいにしないと,ハンディあったりしますからね,ですからそういう風にしたり,子供産んだ,あるいは結婚した時に,働けるという体制をつくってあげる,働きながら,外交官やりながらね,子供を産めるという体制を作ってあげるということに更に留意するように,これを何回か指示しましたね。そういう風に,それぞれの省がなっていかないとダメだと,私は大げさではなく,女性が日本を救うんじゃないかという風に思っています。

 Bさん,岐阜からいらっしゃって,福島のことを激励してくださって,ありがとうございます。私も第一原発から40キロのところに実家がありまして,弟夫妻,甥っ子3人,両親,おります。偶然線量は低いんですけれども,3.11の時はですね,福島県民の命は自分が救えないんだったら誰が救うんだくらいの思いで,率直に言うと,対応していましたけれど,今,皆,一言でがんばろう,がんばれって,なかなか言いにくいんです。つまり,被災の状況が多様なんですね。それと一年経つとね,本当に本当に疲れ切った人達が多いんです。そうすると,そういう人達にね,がんばろうと言ったってね,なかなかがんばりきれない。だから私は,少しずつでもいいから,少しずつでもいいから,前へ進もうって言っているんです。そのときにね,おっしゃったとおり,福島県から離れた人達もいます,だから,どこにいたって,ぶれない北極星のようなね,軸というものをそれぞれが持って,自分の中にね,軸というものを持って,少しずつでもいいから前に進もうって言っています。私は,福島県に帰ると,そういう激励をしつつ,併せて先程申し上げたように,思い切って,今までよりいい地域を作ろう,そのためには,さっき申し上げたような最先端モデル作っちゃおう,そういう気持ちでいるということでございます。

 Cさん,多極化するんではないかという話でありますが,基本的にはそういうことだろうという風に思います。その時に,どういう国が大事になるんだということでありますけれども,もちろんそれぞれの国が大事なんですが,やはり戦略的にどこが大事だということは,常々私も考えています。ただ,あまりそれをですね,私の立場でですね,思ったように表明をしたときに,そうではない国々からすれば,一体何なんだと,こういうこともあるものですから,あまりですね,こういう場でですね,どの国が一番大事なんていうことは,なかなか,言いにくいと。ただ,いわゆるアメリカとか中国とかを除くと,豪州,オーストラリアとか,インドとかという国は大事な国々になっていくと思いますね。率直に言ってですね,今やっぱり,かつてと違うのは,エマージングカントリーって言う,いわゆる新興国の力,存在感っていうのが非常に強くなって来ているんですね。そういった新興国と国際場裡,特に国連なんかで,協力をする,パートナーになっていくのはとても大事なことだと,これから。私が学生の頃なんていうのは,正直そういう発想はなかったんですよ。学生の時とか,20代の時とか。しかし,今はもう本当に新興国の時代。ブラジルだとかそういう国々もそうですね。そういった国々を,だんだん中国もそうなんですけど,責任あるパートナー,もっと言うと中国は責任ある大国になっていくように,日本がどういう風に,それに対して,うながしていくか。これはとても大事な仕事だと思います。今回レアアースのね,日本とアメリカと欧州でWTOに訴えた訳ですね,WTOは国際ルールでしょ,あえて政治問題化せずに,国際ルールで客観的に対応する,そのことによって中国もまさに,国際ルールできちっと対応する,責任ある大国に促していく,そういう発想でやっていかないと,いけないのではないかという風に思っています。ありがとうございます。

 誠実とは何かという話でありますけれども,先程,アフガニスタン,アフリカ,二つの例をあげました。Cさんのその問に対して,問というか冒頭の講演の中で,アフリカの国々もそうだし,アフガニスタンもそうなんですけれど,彼らはある国々から援助の手を差し伸べられたときに,利権のにおいを感じるのです。日本から援助の手を差し伸べられたとき,利権のにおいを感じない,簡単に言えば。現実はうまくビジネスに結びつけていったり,そこはするんですけれども,やっぱり,そこはこれまでの日本人の,私は先輩方の蓄積だという風に思います。そういった蓄積は私は大事にした方がいいと思います。

(参加者からの質問)

(質問5)私,Eと申します。今日あま市から来ました。あま市は名古屋から西へ10キロくらいのところで,英会話塾の校長と,以前製薬会社の研究所におりましたので,健康で長生きするには,見栄えは10歳以上若くと言う活動をボランティアでやっております。今日は拉致ですね,早期改善をしていただきたいと思いまして,北朝鮮のですね,今までの経過を見ますと,なかなか進展せず難しい状況にあるのは分かっているんですけど,周りの人といろいろと,この問題について,JICAとも,特にJICA中部の方へは月に4〜5回行って,この問題については,この1年で4〜5回くらいしか行っていませんけど,できれば,アメリカ,日本,韓国で連携して,早期解決をよろしくお願いしたいと思います。

(質問6)大臣に対して,極めて現実的なことを聞いて恐縮なんですけど,今,名古屋ではですね,南京問題,あの河村市長問題が出ていますけど,先般国会ではね,野田総理大臣は,「ああ,それは名古屋のことで適当にやっとけ」と,こういうような答弁で,玄葉外務大臣は何も答弁がなかったんですけども,しかし,尖閣列島とかね,いろんな問題がだんだん起きてきて,こんなもの適当に片付けておけではちょっとどうかなと。私は河村さんは別に支援している訳ではないんですけど,あの人はあの人で信念があるから,とても悪かったとして謝るようなことはないと思うんですけど,そうした問題が非常に失礼ですけど,中国は外交のレベルは低いと思うんです,あの国は。だからそういうことについて,玄葉外務大臣はどういう見解かお聞かせ願えればと思います。

(質問7)愛知県小牧市のFと申します。大学生です。先程,大臣は日本的価値を活かしてというふうにおっしゃっていたんですが,これからグローバル化してくと思うし,外国の方といろいろ話す機会も以前に比べて増えてくると思うので,一人ひとり個人が日本的な価値を活かした接し方をしていく必要があると思うんですけど,特に今後日本を担っていく若い私たちの世代が日本的な価値を活かしていくっていうことを考えていくためには,どういったことしていったらよいかということを是非伺いたいです。

(質問8)西府市のGと申します。私,うなぎを養殖しております。うなぎの稚魚は天然資源に頼っているものですから,先程海洋国日本の代表と致しまして,玄葉外務大臣に,中国とか韓国とかの国境問題とか,領土問題とか,どれぐらい認識されているのか,よろしくお願いいたします。

(質問9)今日は貴重なお話ありがとうございました。大学生のHと申します。先程の話と関連するんですけれども,排他的経済水域が広いということで,日本の海洋資源というものに興味があるんですが,中国の国交正常化に関する問題と併用してご感想をお聞かせいただけたらいいと思います。本日はありがとうございました。

(玄葉外務大臣)

 それぞれ,激励やら,ご質問ありがとうございました。

 まず,Eさん。拉致の問題ですけれども,これは日本の主権に関わる極めて重大な問題でありますから,一刻も早く,一日も早く,全ての拉致被害者の帰国を果たしていかなくてはいけないのですが,我々は拉致の問題を考えるときに,小泉さんの時の日朝平壌宣言,基本的にあれは生きています。日朝平壌宣言に基づいて物事を進める。対話しないのか,こういう話もあります。最終的に対話が必要です。ただ,その対話が適切な時期に,適切な方法で,なされないといけないということだと思っています。北朝鮮と向き合うときに,リスクと機会があると思うんです。リスクはまさに先程申し上げたような,ミサイルだ,あるいはさまざまな不測の事態。機会,これはやっぱり私たちは自ら機会を作り出す努力をしていかなくてはなりません。ただ,今,日朝で,話し合っていることはございません。先程申し上げたように,機会の窓は開いてる。対話の窓は開いている。その中で,思慮深く,適切な時期,適切な方法というものを考えていくという風に理解をしていただければと思います。これに対しては拉致担当大臣もまさにこの問題だけでいる訳で,国家公安委員長も兼ねていますけれども,私自身も,ご家族含めて,そのお立場になれば,国家主権の問題であると同時に,そのお立場に立った時に,なんとしても解決しなくてはいけないというふうに思っています。ただ,本当に時期とか,タイミング,やり方を間違えてはいけないと思います。

 河村発言。私も当選同期でありますので,知らない仲ではありません。地方自治体の長のコメントである,それに対して政府としてコメントする立場にないというのが野田総理の発言であり,政府の公式なコメントでございます。さはさりながらというのがいまのご質問だと思いますので,非公式にですね,外交ルート通じて,日中互いに冷静に対応しようじゃないかと,そしてこれ以上,波及をさせないようにお互いに努力しようじゃないかということをやっていると。南京事件に対する政府立場はご案内のとおりということでございます。

 Fさん,大学生ということでありますけれども,ぜひ,普遍的な価値と同時に日本的な価値,日本的な価値にも普遍的な価値がいっぱいある訳ですけれども,やっぱり,これから世界の国々に出ていく,あるいは,多くの友人を持つ,あるいはビジネスを展開する,いわゆる,何と言うのか,他の国々の人々と接する機会が増えれば増えるほど,是非,日本という国,あるいは日本の歴史も含めて,私は文化も含めてですね,学んでほしいと思います。そんな偉そうなことを,私自身もどこまで学んだんだと言われるかもしれませんけれども。私は今でもですね,休み時間とか,ちょっとした時間ができると,歴史の本を読むようにしています。特に私,外交とかって,歴史が相談相手になるなというふうに思っています。実は外交だけでないと思うのですが,日本の歴史を,今の場合,日本外交史などがそうだと思いますが,是非,日本の歴史をたくさん学んで頂ければ,深く学んで頂ければという風に思います。

 それと,Gさん,Hさん。これは領土の問題とか,EEZの問題とかでございましたけれども,中韓ということですが,尖閣は言うまでもなく我が国固有の領土であります,これは竹島も同じであります。尖閣は現に有効に支配をし,歴史的にも国際法上も我が国の領土であることは疑いはない。そもそも,尖閣には領土問題そのものは存在しない,こういう立場なんです。そもそも存在しないと。外交的な問題はあるけれども,領土問題は存在しないというのが我が国の立場でありますから,当然この立場は確保されなくてはいけないから,昨日のようなことに対して,緊張感をもって対応することになるんです。

 韓国は,竹島の問題がありまして,これは,これも我が国固有の領土なんですが,法的根拠なく占拠されているんですね。これまた,尖閣と違う訳です,同じ固有の領土でも。それに対して,韓国の閣僚が訪問したりですね,構築物ができたりということがあったものですから,私は49年ぶりらしいですけれども,大平外相以来らしいですが,外交演説でこの竹島の問題に触れました。領土の問題は領土の問題として,きちっと我が国の立場を確保していくということは大事です。これはEEZも同じです。ただ,冷静に,大局的に,そういった目も常に失わず,二国間関係に決定的な悪影響にならないようなそういう態度も併せて持ちながらですね,こういった問題に向き合っていくということではないかと思っています。特に中国の東シナ海の問題などはですね,国際約束の締結交渉をやろうとこういう風に働きかけをしています。平和,友好,協力の海にしようということで,確か,08年に北部の共同開発,白樺に日本の法人が参加するということで合意をしていますので,その国際約束締結交渉をやろうではないかという働きかけをしている。その働きかけを強めたいと思いますし,併せていえば,日中の外相会談,あるいは首脳会談でも話し合われましたけれども,海洋機関間同士の信頼醸成のためのメカニズムをつくろうと,特に,日中の高級の事務レベルでの協議機関を今つくろうということでおります。不測の事態って,やはりあり得るんですね。海洋機関っていっぱいあります。実はすごくあるんですよ。日本の省庁だけでも6〜7つ,中国も6〜7つ,あるんです。ですから意外とですね,相互の連絡ができない,そういう状況になっているんですね。それではいけないので,日常的にお互いに信頼醸成できるような,そういう意思疎通ができるようなメカニズムを日中間でつくろうじゃないかということで提案をしまして,それは中国側がそれはその通りですねということで立ち上げる段階,もうすぐ立ち上がると,こんな感じであります。

(司会)

 時間になりましたので,最後に大臣から一言お願いします。

(玄葉外務大臣)

 はい。一時間半もですね,固い外交の話におつきあいいただいて,本当にありがたいと思っています。ぜひ日本の外交を応援をしていただきたいという風に思います。フルキャスト・ディプロマシーなんで,皆で外交を行っていく,というところがございます。あわせてですね,日本の政治,もっと合意形成できる政治じゃないとダメですね。決められる政治にならないとだめだと思います。野田さんと谷垣さん,会ってないと言うんだから会っていないと思います。私ね,第1党の党首と第2党の党首,会ったっていいと思いますよ。表だろうが裏だろうが,会って胸襟開いて,この国の将来のために話し合う,合意形成すると。現代の政治家の役割というのは豊かさを引き継ぐということだと思います。次の世代に,またその次の世代に。わたしはそのことだけ考えて,国家戦略担当大臣のときもそう,外務大臣の時もそうですけれども,そのことだけ考えて,仕事しています。とにかく豊かさを引き継ぐためには今非常に厳しい環境なわけですから,やっぱり,必要なことは,合意形成して,そして,リーダーはですね,やっぱり人気がでることばっかりやっていてはダメですね。私はそう思いますよ。人気のでることを決めるんだったらリーダーいりませんね,誰だってできますね。私は人が嫌がる,これはちょっと皆嫌がるだろうな,世論調査したら皆反対だろうなっていうようなことだけど,子供達に豊かさを引き継ぐためには絶対に必要だ,こういうことを決断できる実行できる,それが私は真のリーダーであり,真の政治家という風に思ってますので,あんまりポピュリズムに流されずに,嫌なことでもですね,決めていく,お互いに腹を割って話して,胸襟開いて合意形成するそういう政治に,私もあんまり外務大臣が政局に口を出してもいけませんけれども,がんばっていきたいと思いますので,どうぞ皆様,これからもよろしくお願い申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。