[文書名] 第4回TICAD閣僚級フォローアップ会合第1セッション「横浜行動計画の進捗状況」玄葉外務大臣基調演説
議長ありがとうございます。
1、冒頭
このセッションでは、横浜行動計画の実施状況を確認するとともに、TICAD Vで扱うべきテーマにつき皆様から御意見を伺いたいと思います。
2、横浜行動計画の実施状況
まず、横浜行動計画に含まれる我が国のコミットメントの実施状況について説明します。我が国は、配布させて頂いた「年次進捗報告書2011年」にあるとおり、東日本大震災を乗り越え、TICADI Vで掲げた公約を着実に実施しています。
本年までに対アフリカODAを18億ドルに倍増するとの公約については、08年からの年間総額の平均は18億ドルを上回っています。また、我が国からの対アフリカ民間投資を34億ドルに倍増させるとの公約についても、2010年までの5か年の平均値は52億ドルとなり、目標を大幅に上回っています。その他のセクター別の公約も概ね順調に実施されています。
横浜行動計画には、共催者を含め開発パートナーの皆様の具体的な支援策も盛り込まれており、それらも着実に実施されているものと思います。
3、TICAD Vの主要課題
次に、TICAD Vの主要課題につき、我が国の考えを説明します。
TICAD IV以降も、アフリカ経済は、世界経済危機を乗り越え、強固な成長を継続し、今やアフリカは、援助の対象としてだけでなく、有望な投資先として変貌しつつあります。我が国は、ODAを通じた投資環境の整備によって、この変化を後押ししてきました。昨年のフォローアップ会合でも、TICADプロセスがより「成長の加速化」に焦点をあてるべき点が確認されています。TICAD Vでも「成長の加速化」を主要な課題とすべきであると考えます。
その一方で、アフリカは様々な課題に直面しています。干ばつや飢饉等の自然災害。開発の土台である平和と安定の達成。経済成長に必要なインフラ整備のための資金調達。依然多くの人が貧困にあえぎ、特に脆弱な人々の貧困脱却が困難な中での、MDGs達成への取組。成長の加速に伴う社会的・経済的格差の是正等々です。アフリカは、現在、自らの強靭性(resilience)の強化に迫られており、TICAD Vを見据え、我々が議論を深めるべき開発課題は数多く存在します。
特に、災害には、開発や成長を水泡に帰す破壊力があります。これを防ぐため、アフリカ各国が開発において防災を主流化し、アフリカを強靭な大陸にする必要があります。我が国は、東日本大震災の教訓を踏まえ、開発と国際協力における防災の主流化に向け、本年7月に「大規模自然災害に関するハイレベル国際会議」を開催します。防災はポストMDGsの重要な要素となるべきです。
我が国は、人間一人ひとりに着目した「人間の安全保障」の考えが、バランスの取れた包摂的な成長の実現や、アフリカでのMDGsの達成に向けた取組、強靱な社会づくりにおいて有効な概念であると考えています。また、ポストMDGsに向け、衡平性、持続可能性、相互扶助、雇用創出を伴う包摂的な(inclusive)成長等を重視し、TICADプロセスを通じた議論も踏まえ、国際的な議論を主導していく決意です。
TICAD Vは、過去20年のTICADプロセスの延長線上にあり、アフリカが直面する新たな課題に応えることで、さらなる発展を目指す必要があります。TICAD Vで取り上げるべき優先課題について、パネリストと議場の皆様から積極的な御意見を賜れれば幸いです。
4、TICAD Vの成果物
最後に、TICAD Vの成果物につき、我が国の考えを説明します。
TICADI Vでは、横浜宣言、横浜行動計画、TICADフォローアップメカニズムの3種類の文書に合意しました。これにより、TICADの成果は行動志向的となり、透明性と説明責任を持って実施されてきました。TICAD Vでも同様の枠組を基本的に維持することが適切ではないでしょうか。
その一方で、現在の枠組には改善の余地も存在します。開発効果を最大化するためには、ドナーによる取組と財源確保を含めたアフリカ自身の開発努力が相乗効果を生み出すことが重要です。その観点から、新たな行動計画には、ドナー側の取組に加え、アフリカ側の取組も明記すべきと考えます。これは、TICADプロセスの原則であるオーナーシップに基づく提案でもあります。
また、TICADプロセスの原則であるパートナーシップを、三角協力やG8・G20との連携を通じて、更に強化していきたいと考えます。
本日は、このTICAD Vの成果物についても、パネリスト及び参加者の御意見を伺えればと思います。
ありがとうございました。