データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第4回TICAD閣僚級フォローアップ会合第4セッション<国内及び国境を超える課題への対応:気候変動部分>玄葉外務大臣基調演説

[場所] モロッコ マラケシュ
[年月日] 2012年5月6日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 議長ありがとうございます。

 1、冒頭

 このセッションでは、気候変動問題について、我が国の考えを述べるとともに、皆様から御意見を伺いたいと思います。

 2、アフリカ開発と気候変動問題

 気候変動問題は、自然災害を増幅させるとも言われ、脆弱国で深刻な被害をもたらしています。特に、アフリカでは、気候変動がもたらす干ばつや洪水が頻発しており、持続的な開発と人間の安全保障の実現にとって脅威となっています。

 今後、アフリカは、気候変動での脆弱性を克服し、「気候変動に強靭な(climate resilient)」経済成長を目指すと同時に、再生可能エネルギーを含む「グリーン成長」により、成長を加速することが重要です。アフリカには再生可能エネルギー等、グリーン成長分野に大きな潜在力があり、同分野での投資も増えています。

 例えば、地熱開発はアフリカにおける安定的かつ再生可能な電力源として挙げられます。我が国は2010年にケニアのオルカリア地区における地熱発電所の整備を支援するために円借款を供与しました。この発電タービン部分には日本企業が有する高い技術力が活用されています。今後も我が国の技術を活用して、グリーン成長分野に取り組んでいきます。

 3、気候変動交渉と我が国の支援

 気候変動問題については、国際的な議論が着実に進展してきました。COP17では、将来枠組みの構築に向けた前進を得るなど大きな成果が得られました。我が国は、本会合で得られた成果を踏まえ、アフリカ諸国とも引き続き緊密に協力しつつ、将来の枠組みに向けた国際的議論に積極的に貢献していきます。

 また、COP17では、アフリカ等の脆弱国に国際社会が着実に支援を行うとの政治的意志が示されました。我が国は、2012年までの短期資金(Fast Start Finance)として、アフリカ諸国に13億ドル以上の支援を実施しており、2013年以降も切れ目なく支援を継続していきます。

 4、「アフリカ・グリーン成長戦略」(中間報告)

 アフリカにおける持続可能な低炭素成長を促進するための中長期的な共通ビジョンを構築するために、昨年5月のTICAD閣僚級フォローアップ会合にて「アフリカ・グリーン成長戦略」の策定に合意しました。

 我が国は、昨年、COP17の際に表明した「世界低炭素成長ビジョン」における途上国支援の一環として、アフリカやパートナー達と共に本戦略の策定に取り組んできました。COP17の時点で、本戦略に盛り込むべき要素案を公表いたしましたが、今般、アフリカ諸国やTICAD共催者等との協議を経て一部改めたものを中間報告として皆様と共有させて頂きます。

 本戦略は、アフリカ諸国、国際機関、民間企業が気候変動分野への支援・投資を行う上での指針として活用されることを目指しており、その特長として、アフリカにおいて経済成長と環境を両立させる「グリーン成長」を実現するため、エネルギー、森林、農業、水、防災及び運輸の6セクターにおいて、緩和と適応のバランスのとれた開発の方向性を提言していきたいと思います。戦略の検討に当たっては、各国の開発ニーズの違いに十分留意します。

 今後、本年10月の世銀・IMF総会(東京)に先立ち作業を加速します。その策定にあたっては、我が国が重視するアフリカ諸国のオーナーシップに基づき、国際機関や民間部門との連携の下、引き続き緊密にアフリカと協議しつつ作業を進めたいと考えます。

 最終報告は、本日の議論を踏まえ、関係者とのさらなる議論を行うとともに、各国・機関の戦略や、過去のプロジェクトからの教訓を積極的に取り入れたいと考えており、引き続きご協力のほど宜しくお願いします。

 来たるTICAD Vを、アフリカの「グリーン成長」の実現に向けた戦略を具体化する契機とし、開発パートナーがこれを支援していくことが重要と考えます。我が国としても、本戦略に基づく具体的な施策を推進していく考えです。

 ありがとうございました。