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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] NATO首脳会合に際して開催された「アフガニスタンに関する会合」における玄葉外務大臣のスピーチ

[場所] シカゴ
[年月日] 2012年5月21日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

(ラスムセンNATO事務総長,オバマ大統領,御列席の皆様,)

 はじめに,アフガニスタンの治安の確保と安定に向け,NATO・ISAF参加諸国が,これまで多大な犠牲を払いながら行ってきた貢献に敬意を表します。

 私たちが今直面している最大の課題は,国際治安部隊撤収後の2015年以降もアフガニスタンが持続的に安定し発展可能であることを国際社会に示していくことです。このためには,治安と開発に総合的に取り組まなければなりません。

 まず第一に重要なのは治安の確保です。このためには,アフガニスタン自身の治安能力の向上が不可欠です。我が国は,これまでアフガン治安部隊の能力向上のため,警察官の給与支援や識字教育により警察の「質」と「量」の向上を支援してきました。我が国としては,2015年以降もアフガニスタン治安部隊に対し適切な支援を継続していく考えであることをここに表明します。

 また,今般,米・アフガニスタン戦略パートナーシップ協定が締結され,治安分野での2015年以降の具体的道筋が示されたことを我が国として歓迎します。さらに,2015年以降もNATOがアフガニスタンで訓練等のミッションを継続することを支持します。

 しかし,治安能力だけでアフガニスタンに平和と安定をもたらすことはできません。我が国としては,アフガニスタン主導の和解の取組を後押しするとともに,再統合の努力をアフガニスタンと協力して主導していく考えです。

 第二に,治安と並んでアフガニスタンの安定と発展を支えるのは開発です。

 私は,本年7月8日,アフガニスタンの閣僚とともに,世界から約70の国及び国際機関を招き,アフガニスタンに関する東京会合を開催します。東京会合では,2015年以降もアフガニスタンが持続的に発展する為の道筋をつけることを目指します。

 東京会合に向け,アフガニスタン政府は,現在,長期的開発戦略及びそれに基づく順序付けされた開発プログラムと,ガバナンスの改善についての具体的な方策を準備しています。東京会合では,アフガニスタン側にはこれらの確実な実施につき,しっかりした約束をして頂く一方で,国際社会はアフガニスタン政府の開発戦略に対する具体的な資金支援を表明するという形で相互にコミットメントを行う考えです。

 この相互コミットメントを双方の「口約束」としてしまわないことが重要です。このため,フォローアップ・メカニズムを創設し,2年毎の閣僚会合で相互の取組をレビューし,その結果を踏まえ次のコミットメントに結びつけていく考えです。東京会合において参加各国が,治安権限移譲後の「変革の10年」をも見据え,アフガニスタン側の努力を十分に受け止めて,力強い支援の意思を表明されることを強く期待して私の発言といたします。

 ありがとうございました。