[文書名] 第19回 ソフィア・ルネッサンス連続講演会 玄葉外務大臣講演「これからの日本外交」
皆さん,こんにちは。今日,こうしてソフィアの学生の皆様,そしてOBの方々の前でお話をさせていただく機会をいただいて,大変光栄に存じます。
私,この場で話をさせていただくのは3回目なのです。1回目は,銅祝の代表で一言だけスピーチをしました。2回目は,先輩の話を聞くという講座があって話をしました。その先輩の講座というのは単位になるのです。ですからいっぱいだったのです。私はこの先輩の講座でいっぱいになるというのは,間違いなく単位になるからだろうと思いました。今日,外務省を出てくる直前に,どうも講堂でやるということがわかって,それはまずいのではないかと,がらがらではないかということを大変心配いたしましたけれども,今日こうして皆様方が天候不順だったにもかかわらずお運びをいただいて,本当に感激をしています。少しでも私の話が,OBの方々もたくさんいらっしゃいますけれども,特に学生の方々の糧になればいいなと思いながら,この時間を共に過ごしたいと思っています。
今,ご紹介をいただきましたけれども,昨年9月2日以来,外務大臣の立場で仕事をしているわけです。私は就任の会見のときに,結果重視で実のある外交をしようと言いました。そして,今日改めて上智に来て,これから叡智という言葉も使わせてもらおうかなと思っていまして,結果重視で叡智のある「実のある外交」というのを進めることができればいいなと思います。
外相の就任会見のときに孔子の言葉を言いました。御存じの方もいらっしゃるかもしれませんけれども,「政(まつりごと)を問う。子曰く,食を足らしめ,兵を足らしめ,民をして信をあらしめよ」。こういう言葉をどう思いますか。孔子は論語で,食と兵と信が政であるということを言っているのです。
先ほど私が申し上げた「実のある外交」をする目的というのは,まさに今申し上げた,私流に言えば兵というのは安全保障であり安定です。食というのは繁栄だと思います。信というのは,信ずるの信ですけれども,価値だと申し上げてもよいかもしれません。
そもそも私が政治家になったのは,またいつもどういう気持ちで政治家をしているかというのは,どうしたら日本の豊かさを成熟した豊かさにつくりかえながら,次の世代,そのまた次の世代に引き継ぐことができるかというのが,私が政治家になった言わば初心だし,今も常にそのことばかりと申し上げてもいいと思います。常にそのことだけ考えてやっています。
1億2,800万の人口の日本は2046年に1億人を切る。最近出生率が1.29から1.37に上がりまして,2048年に1億を切る。かつては2046年に1億人を切ると言いましたけれども,今は2048年に1億人を切る。どんどんパイが縮小する中で,どうやったら豊かさを次の世代に,そのまた次の世代に引き継ぐことができるのかというのが私たち現代の政治家の大命題なわけです。その一環として,外交というものがあるわけです。
その外交は,先ほど申し上げたように,安定と繁栄と価値の実現のためにあるのだと私は思いながら外交活動をしています。そして,これまたいつも念頭にあることがございます。皆さんは外務大臣室に来たことがない方がほとんどだと思います。私も国会議員は実はもう20年目にこれから入るのかな。でも,外務大臣になるまで外務大臣室に入ったことはなかったのです。大概はそうなのですけれども,外務大臣室に入ってちょっと驚いたのは,陸奥宗光さんの胸像があるのです。陸奥宗光さんは御存じの方もたくさんいらっしゃると思いますし,世界史を勉強している方はよく知っている方だと思います。どういう人かと言えば,『蹇蹇録』という本を書いて,一度皆さん読まれた方がいいと思いますけれども,日清戦争あるいはその後の三国干渉とかを乗り切っていく,まさに外務大臣なのですけれども,徹底した外交リアリズムの人です。それが『蹇蹇録』にはっきり出ています。それが1つです。リアリズム。
もう一つは,ニコルソンという方を知っている方はいますか。『外交』という名著を書かれた人なのですけれども,そのニコルソンという人は何と言っているかというと,駆け引きたくましい外交よりも,誠実で正直な外交の方が中長期的には信頼が得られて効果的である,こういうふうに言っているのです。一見,陸奥宗光さんの外交リアリズムとニコルソンの言う誠実さというのは矛盾するようですけれども,私はそのバランスというのが外交を行う上でも大変大事だと考えていますし,今日,改めて,上智に来て先ほど高祖(上智学院)理事長や滝澤(上智大学)学長と話をしていて思いましたけれども,まさに叡智というのは構想力のことでもあるなと思います。
ちなみに蛇足ですけれども,プーチン大統領が改めて就任して,野田首相が電話をかけたときの言葉に,実は叡智ある解決を北方領土問題は行おうではないかという,その叡智という言葉をあえて野田首相は使ったのだけれども,そういった叡智というのが外交では大事になるなと念頭に置きながら,いつも外交活動をしているということがあります。
若干講義めいたことを申し上げてもつまらないとは思いますけれども,先ほど「兵,食,信」,「安定:安全保障」と「食:繁栄」と,「信:価値」という話をしましたので,若干そのことに触れながら,少し包括的な話をしたいと思います。
御存じのように日本は国土面積は狭いと言われます。確かに38万km2ですから,世界で61番目です。ちなみに世界の国々は何か国あるか知っていますか。ぴったり言える人はいますか。私は学生時代知りませんでした。心配要りません。ちなみに滝澤先生に先ほど聞いたら,非常に優秀な成績でしたとおっしゃったので,Aでしたかと聞いたら,滝澤先生の授業はAとBでしたと。1つAがあってよかったなと思いましたけれども,プライバシーだからとおっしゃらなかったのだと思うのですけれども,国の数を学生時代は私は知りませんでした。勿論,国の数は私の学生時代から変わっています。国連加盟国で193カ国,日本が国家承認している国で194カ国あるわけですけれども,61番目の国土面積。でも,日本というのはやはり海洋国家なのです。排他的経済水域,EEZと呼びますけれども,これは447万km2ということで一気に世界の6番目の大きさになります。アジア太平洋全体の中で西の端,まさに海洋国家ということです。
そういう中で,御存じのようにお隣の北朝鮮が最近は1998年に始まって3年ごとにミサイル発射を行っていました。2012年,今年のミサイル発射は私がちょうどG8の外相会合の為ワシントンへ行って帰る機内で,機長経由で報告を聞きました。それは機長にお願いしていたのですけれども,私はロスに下りてロスで電話会談を行って,それで日本に戻りました。G8の外相会合などではロシアも含めて,北朝鮮がミサイルを発射した場合の声明の内容等,対応を大体予め議論していましたから,G8外相声明や国連安保理の議長声明を発表しまして,しかも強い内容,メッセージを出せたと思っています。これからさらなる北朝鮮への適格な対応をやらなければなりませんし,一方,もし北朝鮮が非核化などに向けて具体的な対応を取るということであれば,我々はそれに応える用意があるということで,日米韓,特に中露,更に特に言えば中国とよく連携をしなければいけないと思っています。
この10年で日本と北朝鮮の貿易がゼロになりました。制裁措置です。他方で,中国と北朝鮮の貿易は7倍になっています。そういう意味では,中国がどれだけ強く北朝鮮に対して働きかけるかというのが,この問題の1つのキーになるということになります。その中国は日本のこれまた隣国で,7〜8%の経済発展をしているわけです。中国の発展というのは日本にチャンスなのです。
中国との間では,「戦略的互恵関係」と言ってWin-Winの関係を築こうとしていますし,今年は国交正常化40周年です。ですから,さまざまな交流を深めたいと思っていますが,他方で21年連続2けた台の防衛費の伸びが日本と中国のもう一つの事実としてあって,残念なことに,その中身が十分わかりません。今,日本の防衛費の大体2倍ありますが,更にその2倍あるのではないかという試算もあるのが実態です。
ロシアは,特にプーチン大統領が就任しまして,私はあらゆる分野で協力関係を進めていこうと思っていますし,やはり日露関係はこれから非常に大切で,戦略環境がお互いに変わってきているものですから,あらゆるレベルでの対話も進めようと思っています。領土交渉も実質的な議論に入りたいと思っています。1月にラヴロフ外相が訪日をした際に4時間から4時間半,さまざまな意見交換を行いました。そのときに領土の問題についても,最大の懸案なので是非議論を再活性化しようではないかという話をいたしまして,ラヴロフ外相はプーチン大統領が誕生したらやろうという話だと。その後,某新聞社のインタビューに答えるなどして,プーチン大統領から意欲的な発言があったということです。
安保面では,これは安保交流をしっかりやろうと思っています。ロシアとは海洋に関する協議もやろうと思っていますので,あらゆる分野で協力を進めていきますが,やはり安全保障というのはどうしても隙を与えてはいけないというところがあります。ですから,ロシアも極東での軍事演習を活発化させたり,実は日本の自衛隊もスクランブル発進は対ロシアが一番多いというのも,これまたもう一つの実態なのです。
冒頭申し上げたように,安全保障や安定という意味では,やはり隙を与えないようにしていくというのは外交を担当する立場あるいは安全保障を担当する立場からすれば当然のことだと思っています。そのために大事なことは,皆さん習っているでしょう,バランスオブパワー,勢力均衡なのです。それに加えて,「ネットワーク外交」を進めようということで,この間,二国間,三国間あるいは多国間のさまざまな枠組みを活性化する試みというのが外務大臣になってから実はやっているということです。
日本の防衛というのは,一緒に考えていただきたいのですが,先ほど申し上げたように私はリアリズムというのは大事にしなければいけないという立場なので,まず日本自身が主体的に防衛力を整備していくという努力を絶ってはいけないと思います。
私自身はもっと防衛予算を増額してもいいと思います。特に南西方面への緊急展開モデルなどは,日本自身がより本格的に整備を行っていかなければならないと思っています。そのことをまず日本自身がきちっとした上で同盟というのがあるわけです。何だかんだ言って今世界で最もパワーを持っているのはやはりアメリカ。最強国との同盟というのは1つの黄金律なわけでありますけれども,私が外務大臣になってから,率直に申し上げて,一時的に揺らぎが出た日米同盟を強化するということを,ずっと意識してきました。
したがって,先般,野田・オバマビジョンというものが出ました。未来に向けた共通ビジョン,野田総理が訪米して出したのですけれども,オバマ大統領も率直に同盟を強化してくれてありがとうと記者会見で言っていました。
2プラス2の文書,2プラス2というのは外務大臣,防衛大臣,アメリカの国務長官,国防長官の文書なのですけれども,そこでも新しい概念を打ち出しまして,動的防衛協力という概念を打ち出しました。これはすなわち今大事なことは沖縄の関係と米軍による抑止力というものを両立させること。でも,沖縄の負担が軽減されて海兵隊がグアム島へ移転するということは,普通に考えればそれだけ抑止力が弱くなるということですが,そうならないようにするためにどうするかということで,動的防衛協力という概念を打ち出したのです。
何をするかと言えば,自衛隊と米軍で共同で警戒監視をしたり,あるいは共同訓練を行ったり,グアム付近のテニアン島などの基地を共同で使用する。そして合同で訓練する。これはほとんどのメディアがまだ書いていませんけれども,沖縄に残る海兵隊というのは1万人になって減る。嘉手納以南の土地の返還もこれまでよりも早まります。ですから両立になりますが,31MEU(第31海兵機動展開隊)という沖縄の米軍が沖縄に残ります。何かあったときには,その31MEUは当然米軍として最も動くわけです。その動く31MEUと日本の自衛隊はこれまであまり共同訓練したことがないのです。もしテニアンなどで共同訓練ができるようになると,それができるようになる。そういった面で穴を埋めて抑止力を維持できるかという合意を先般行ったということであります。
ですから,日米という同盟関係を強化して軸をきちっとさせるということがまず大事です。その上で,すべて日米で物事を行っているわけではありません。言うまでもなく日本独自の外交というのも幾つかございます。先ほど「ネットワーク外交」と言いました。それは確かに日米韓,日米豪。日米印,日中韓も大事にします。日米中の対話というのはないのです。三国間ではない。ですから,その三国間の対話を行おうということを,今,米国と中国に私の方から提案しています。何とか実現したいと思っているのですけれども,そうすれば何だかんだ言って世界でGDPが1位,2位,3位の国ですから,この日米中が戦略的な対話を行えるようになれば,戦略的安定というバランスといったものが特にアジア太平洋の中で築きやすくなる。誤解やミスカルキュレーションとか,そういったことでさまざまな問題が実は大きくなっていくというのは歴史が示すのでありますが,やはりそういう意思疎通をしっかり日米中でできるようにしたいと思っています。そして,やはり日本ならではのアジア的な価値観,日本の1つの特色,特徴は,西洋的な価値というのを上手に取り入れて,柔軟に受け入れて,そしてアレンジしてきたのが日本の歴史だと思います。
そういう意味では,日本ならではの貢献というのはあちこちで可能だと思っています。緒方貞子先生が上智大学でたくさん講義をされた。私も学生のころ講義を受けました。JICAの理事長をお勤めになられて,UNHCRのトップを務めた尊敬する方の一人でありますけれども,緒方先生等も深く関わっていますが,「人間の安全保障」という言葉があります。聞いたことがあると思います。あれは日本がつくった言葉ですからね。「人間の安全保障」,一人ひとりの尊厳を大切にする。一人ひとりの能力を最大限活用していく。能力を開花させる。この「人間の安全保障」,私は上智らしい,日本らしいと非常に思っていまして,2010年に国連総会の決議で採択されて,先月も国連の事務総長報告で「人間の安全保障」が出るまでになってきました。ありとあらゆるところで「人間の安全保障」という言葉が定着し始めたということは申し上げたいと思います。
ミャンマー,関心がおありかもしれませんけれども,ミャンマーも私は行きました。ミャンマーは,率直に言うと欧米が大きく距離を置きながらも,日本は言わば独自のスタンスで関わってきたところです。それが,今,開花しそうになっているわけです。先般もネーピードーに行ってテイン・セイン大統領にもお会いしました。アウン・サン・スー・チーさんにもお会いし,しっかりと話をしました。お父さんのアウン・サン将軍の絵の前で日本の外務大臣と写真を撮りたかったと言って,実は終わった後に写真を撮ったのですけれども,何を言いたいかといいますと,彼女は日本の政治家が来ると,必ず二言三言注文を付けてくる。かなり厳しく接していた。それはなぜかと言えば,政権側を応援しているからです。でも,この間,私が行ったときにはそういうことはありませんでした。ただ,法の支配ということ,あるいは少数民族,貧困ということを盛んに言いました。私が言ったのは,「人間の安全保障」とは御存じですか,ということから始め,先ほどの話をしました。日本が提唱して,日本が展開してきている概念ですよ,今,スー・チーさんが言われたことは,まさに日本自身が実践をしていることなのです,だから,そういった少数民族の和解あるいはこれから援助をしていくときに,いわゆる貧困層に対する支援というものを日本が忘れるはずはないということを言いました。
先般,日メコン首脳会議でテイン・セイン大統領を含む,タイ,ミャンマー,カンボジア,ラオス,そしてベトナムの首脳が4月に日本に来て,日本の総理大臣と日メコンの首脳会議を行いました。夕食会に総理と私が出ていましたので,テイン・セイン大統領の隣に私が座っていたので夕食の間ずっと話をしていました。そのときも私がテイン・セイン大統領に申し上げたのは,是非自分もこれだけのODAの援助の方針の見直しを行うわけだから,日本国民の皆さんに説明責任があるので,民主化,国民和解は絶対に後戻りさせないでほしい,それは約束してくれということを言いました。もう一つは,アウン・サン・スー・チーさんとの対話も上手にしてほしい,そのことも言いました。
テイン・セイン大統領は,自分と彼女とは信頼関係があるのだという話をしていました。ただ,今や欧米も制裁をステップ・バイ・ステップではありますけれども,解除し始めて,まさに日本がリードしてきた,主導してきたと申し上げても過言ではないと思います。
NATOの首脳会合にちょうど1週間前に行っていました。2015年以降のアフガニスタンの治安部隊,特にNATOの治安部隊が撤退以降どうするかという会議だったわけです。NATOの各国の首脳,皆さん出席されて,日本はNATOのメンバーではありませんけれども,7月8日にアフガニスタンの開発に関する東京会合を主催します。したがって,私が行って,その会合の趣旨を説明した。NATOの各首脳の皆さんは,3〜5分くらいの発言をするためにわざわざ参加するわけなのですけれども,お話を聞いていると,本当にアフガニスタンの状況は大変です。治安の状況もそれほど私は楽観視していません。開発は治安がある意味前提になります。ただ,東京会合への期待を国連事務総長も,またカルザイ大統領も話をしておられました。各国の首脳も東京会合への関心は非常に高いと思います。
それをどういうふうに我々が行うか。それはアフガニスタンがきちっとガバナンスを改善してもらう。この間,首脳会合でもそれぞれの首脳からどういう言葉が出てきたかというと,アフガニスタンは不正とか汚職とかいっぱいあるではないか。それが改善しなければだめだという話が各首脳から聞こえるのです。麻薬の問題とかいっぱいあるではないか。確かにあるのです。ですから,ガバナンスを改善してもらう,その約束をきちっとアフガニスタンにしていただく。一方で,どういう開発をアフガニスタンで行っていくかということについて,きちんと優先順位付けをして,その優先順位付けしたプログラム,プロジェクトに各国が基本的に支援を表明する,そういうやり方をとり,かつ2年ごとにフォローアップしようと考えています。どのぐらいガバナンスが改善したかをフォローアップする。これはとても日本的なのです。
私はカブールに行きましたけれども,カルザイ大統領は日本への信頼が非常に強いです。日本だから任せられると申し上げても言い過ぎではないと思います。先般のシカゴでの私のスピーチも,うなずきながら聞いていました。カブールに行ったときも,日本だから任せられるという言い方をしていました。
5月の連休にモロッコで行われたTICAD(閣僚級フォローアップ会合),正式にはTICAD Vというのが横浜で来年6月1日に行われる。大きな会合です。アフリカの首脳がたしか前回のTICAD IVのときには40名以上いました。首脳が集まるのは大変なこと。アフリカは何か国あると思いますか。54ヵ国です。AU(アフリカ連合)で54ヵ国,それ以外にAUに入っていない国が2ヵ国あります。そのうち40ヵ国以上の首脳が日本に来ました。恐らく来年も首脳がいらっしゃるのでしょう。
日本らしいと言ったのは,実はアフリカの開発というのは日本が最初に立ち上げたのです。1993年。アフリカの関心がどんどん低まっていくものだから,日本が最初に立ち上げて,ほかの国も後に立ち上げた。日本らしいのはフォローアップメカニズムをきちっとやっているということです。毎年毎年外相クラスがアフリカで集まって,だから今回私がモロッコに行ったのです。モロッコに行って,そして日本はやると言った支援をきちっとやっているかとか,あと日本らしいのは,相手の立場を尊重する。オーナーシップとパートナーシップを重視している。押しつけがましくしない。だから,アフリカは率直に言うとほかの国々と日本はそこが違うと言っています。だから信頼できる。
日本らしいのは,先ほど来から申し上げているように,1つは約束を守る国なのです。ニコルソンの誠実さではないけれども,誠実にそこはやる,言ったら本当に約束を守る。それと,先ほど申し上げたように相手の立場を尊重する,押しつけない,オーナーシップを大事にする,それをきちっと後押しする,そういうやり方を取るということ。
だから,アフガニスタンもそうです。アフガニスタンも自分たち主導で優先順位付けをする。どうやったら麻薬が撲滅できるか,どうやったら汚職を減らすことができて,どうやったら不正融資がなくなるのかということを自分たちでまず解決策を見つける。それに対してきちっと我々はパートナーとして手助けしよう。こういう日本らしいやり方というのを実はあちこちで日本というのは展開してきたし,それに対する一定の支持というものは私は得られているのではないかと思っています。
スリランカとかネパールの話もしたかったのですけれども,時間がありませんので,ちょっと端折りながら話をしようと思います。そういうことで,安定のためのバランスオブパワー,そして今申し上げた,一種の日本らしい価値のネットワークというのを独自の外交も含めてずっとやってきていて,これは外務大臣になっての実感ですけれども,就任前よりも日本というのはほかの国々から信頼というものが,少なくとも自分が想像していた以上にあるなと思っています。
ただ,兵,食,信の食にも関連しますけれども,心配しているのは,ODAがどんどん減ってきたのです。やはり日本にとっては極めて重要な外交ツールです。14年連続で減って,半減しています。勿論,円高ですから一定程度はやむを得ないのですけれども,私が外務大臣になってこのODAの減少傾向を少しでも反転できないかと野田総理に直談判いたしまして,外務省のODA予算はほんのちょっぴり増やすことができました。でも,これはどこでどうなるかわからないので,この反転状況を確固たるものにしたいなということを今強く思っているところです。
緒方貞子先生は日本だけが利益を得る「繁栄の孤島」という考え方は通用しないということを言っておられるわけです。ですから,我々は先ほど申し上げたように,「人間の安全保障」という概念を大切にしながら,他の国々の立場を尊重しながら援助をしていく。そして国際社会に対してしっかり貢献するという姿勢がまず第一です。
もう一つは,やはりどうしても国民の皆さんの理解を得るということがなければいけない。(資源は)効果的かつ戦略的に使わなければいけないということがありますから,今,国家資本主義などという議論がありますが,私はその定義はよくわかりませんが,パッケージ型インフラ展開という官民一体となってWin-Winの関係をつくるということで,実はそれぞれの国々,ODAを活用しながらインフラ展開するということも今行われています。
2015年に海外の市場というのは水が45.5兆円,電気自動車12.4兆円,再生可能エネルギー18兆円,スマートグリッドで23.5兆円ということで,実は50の重点国を外務省はつくっていまして,その在外公館にインフラプロジェクト専門官を指名して,そういったこともWin-Winの関係でなるように,今日はビジネスで商社などにも展開されている方々がいらっしゃるかもしれませんけれども,実はそういったこともし始めた。
先般インドとの間で,初の閣僚級の経済対話がありました。ちなみにインドは非常に重要な国なのですけれども,潜在力の蓋開けが要るのです。日中間の貿易の15〜16分の1です。中印間のまだ5分の1ぐらいです。これは間違いなく大変な潜在力があって,一気に花開くはずです。先ほどのアフリカなどはアジアに次ぐ成長センターになり得ますね。人口がたしか2.3%ぐらい伸びているようです。アフリカというのは10年平均で5.8%成長しています。10年ごとに3億人増える。今,10億人というところですから,アフリカだって「人間の安全保障」で対応していくわけですが,最終的にはWin-Winの関係を築けるのではないかと思っています。
ですから,そういったODAの展開,そしてやはり繁栄という意味でいくと,日本の場合は経済連携抜きには考えられないと思います。引き合いに出されるのがよく隣の韓国。FTA(を締結している国との貿易額)が,(貿易総額の)半分ということです。
先ほど申し上げましたけれども,1億2,800万人の人口が2048年に1億人を切るというときに,どうやって我々の豊かさを次の世代に引き継ぐかということを考えたときに,アジア太平洋,アジアだけで35億人,しかもアジアの35億人ですけれども,10年後10億人,中間層が増えると言われていますが,当然これはアジア太平洋の内需は日本の内需だと考えることが在るべき姿だと思っているのです。
経済だけではなくて外交安全保障の面でもTPPというのは大戦略であって,しっかりアジア太平洋のルール・メーキングというものを日米が中心になって行って,日中韓投資協定ができました。これは野田政権の1つの成果だと思っていますが,年内に日中間のFTA交渉ということで合意をしていますけれども,その日中韓の経済連携のレベルを上げるために,またアジア,インドも含めた経済連携のレベルを上げるためにも,やはりTPPと日中韓の経済連携というのを車の両輪で進めるということが大切なことだと思って,今,国民合意形成をしている。かつ,交渉再開に向けた協議を各国とやっているというのが現状だということであります。
若干だけ説明すると,日本のFTAは,実は率直に言うとレベルが低いのです。レベルが低いというのは,自由化度合いが低いのです。ということは,相手も低いということです。わかりやすい例を挙げると,日本とベトナムというのはFTAを結んでいるのですけれども,乗用車をベトナムに輸出するときになんと83%関税がかかるのです。これはFTAと言うのか。ですから,より高いレベルの経済連携をカバーして調整規定か何かを置いてレベルを上げていくということが,日本の豊かさを次の世代に引き継ぐためには必要だろうと思って行っているということです。
やはり外相として各国の外相と話をしていて思うのは,日本は世界に対してさまざまな意味でモデルを示さなければいけないなということです。3.11がありました。そのレジリアンスを各国外相は皆さん賞賛します。ただ,それで終わってはならないのであって,ピンチをチャンスに変える,逆転現象こそ私は戦略の本質であると思っていまして,こういった残念な機会になったわけですから,これを奇貨として,エネルギー政策も産業革命の分水嶺であるということで大きく転換すべきは転換するというふうに考えた方がいいと思います。
それを必ずしも原発をゼロにする,ゼロにしないという議論にかかわらず,日本は既にもう世界のエネルギー効率の平均の5倍ですから,それだけ日本の技術はすごいのです。省エネ技術,省資源技術。でも,それにとどまらずに,今日は企業の方々がいらっしゃっていますけれども,既存の技術の改良は企業の皆さんはもうかるからどんどんやるでしょう。それをどんどん我々は応援します。ただ,もうからない,目の前のことはやるけれども,中長期的なことというのはやはり企業はなかなかやれませんから,私の個人の考えですけれども,中長期的な革新的な技術に対するR&Dというのは5年,10年前倒しをして政府資金を投入するぐらいのことはあった方がいいというのが私の考えでありまして,ちょっと聞きなれないかもしれませんけれども,量子ドット型太陽電池という新型の太陽電池に全て置き換えると,たしか原発12基分になる。リチウムイオン電池は知っているでしょうけれども,リチウム空気電池というのが次の時代の技術になります。
ですから,既存技術の延長線上にない新技術は,日本では国家,政府が責任を持ってR&Dを起こしていくというのが政府の責任であり,戦略としてあるべきだと思っているのです。電池と発電効率と触媒,材料,これを制すればエネルギーを制すると言われています。電池というのは特に蓄電,エネルギーをためる技術です。よく今話題になっていますでしょう。ピークカットがどうだこうだとか話題になっていると思いますけれども,その「ためる技術」というのがすごく進むと,非常に消費者の皆さんに便利だしよいかと思いますけれども,この蓄電の技術をどういうふうに進めるかということで先ほどの太陽電池の話をしましたし,また送電ロスはどのくらいあるか知っていますか。送電ロスは原発6基分あるのです。これが例えば超電導になると,送電ロスは10分の1になります。材料のナノカーボンの触媒とか,そういった技術が進んでいると,これは世界が変わります。
ですから,そういったことを逆転現象だと,ピンチはチャンスだと思って私は今こそ日本は進めるべきだと思って,それが実はすなわち世界全体への,これからリオ+20(国連持続可能な開発会議),あるいはCOP18(第18回気候変動枠組条約締約国会議)も今度あります。あるいは最近日本は東アジア低炭素成長パートナーシップ,この間共同議長の1人を私がやりましたけれども,環境と経済成長をどう両立させて持続可能な成長にするかとやっていますけれども,それ自体がもうモデルになっています。今の税と社会保障の一体改革もそうですよ。皆さん反対の方も多いかもしれませんけれども,結局少子高齢化社会に日本が真っ先になった。中国はこれから間違いなく少子高齢化です。韓国だってもっとすごいスピードで少子高齢化になります。
ということは,日本が真っ先にそれを解決して見せれば,それ自体がアジアの国々,世界全体に対する大変な貢献なのです。ですから,そういう貢献ができれば日本の国際社会におけるプレゼンスというのは更に高まってくると私としては信じているところでございます。
イランの問題とかいろいろありますが,もう質問時間を入れて15分になりましたので,もうちょっとだけお話をしたいのですけれども,在京アラブ大使の方々と食事をしたときに面白い話を聞きました。『ハワーティル』という番組がある。それは隠し撮りの番組である。道端に財布をお金を入れて置くのだと。それぞれ国民がどう行動するか隠し撮りした。ある国の国民は,大概財布はそのまま自分のポケットに入れていった。ある国は大概お金だけ取って財布だけ置いていった。でも,日本の国民はみんな交番に届けた。本当にそうだったのかな。でも,そうですね,日本人の行動様式。とてもうれしかったし,実はその国からのビザの発給件数は3倍になりました。
自分の国の学校に行くと靴がばらばらで並べることができない。でも,日本の学校に行くとみんな靴はきちっとしています。蛇足ですけれども,私の父から受けた教育の1つは,履物をそろえなさい。余り多く私は教えてもらわなかった,がみがみ言われませんでしたけれども,靴をそろえなさい,履物をそろえなさい,トイレに入ったときにきちっと履物を次の人が入りやすいように出なさい。それだけは言われましたから,私も今娘が高校生なのですが,そのことばかり小さいころから言いましたけれども,特に小さなころは,教育は余りたくさんのことを言ってはいけないような気がするのです。非常に日本人の靴の並んでいる姿を見て感動したと。ですから,そういう日本的な価値というものにも,もっと私たちは自信を持っていいなというふうに思って,そういうこともあって,実は今年8月に外務省の機構改革というのをやります。外務報道官組織と広報文化交流部というのがあるのですけれども,それを一緒にしてしまって,もっと戦略的に日本的な価値というものを世界に対して発信できるようになる,そういう機構改革をやる。報道官の下,1人の司令官あるいは司令塔の下にそういった外交をやる。いわゆる広報の外交戦略というものを一元化しようと実は思っておりまして,広報文化外交戦略課というのを新設しようと今思っているということであります。
イギリスのBBC調査はご覧になりましたか。新聞でちょっと出たのですけれども,これもうれしかったのですが,世界に対して最もよい影響を与える国はどこかと22か国を調査しました。そうしたら,なんと1位は日本なのです。その後,ドイツ,カナダ,イギリス,余り差はなかったのですけれども,何でだろうと私が見たときに,やはり日本の製品,技術,今申し上げたような文化,歴史なのです。率直に言うと中国,韓国の方は日本に対して評価は高くないです。ただ,世界全体でとったときに1位なのです。非常にうれしいことで,そういった文化というものを持って広められるようにしたいと思っています。
最後です。長くなりまして1時間以上話をしてしまって申し訳ありませんが,是非今日いらっしゃる学生の皆さん,たくさん国際機関に入ってほしいと私から声をかけたいと思います。ちなみに外務省の職員数を調べたら,上智大学出身者は160名ということでありますけれども,実は国際機関に拠出している日本の負担額というのは,例えば国連は12.53%,世界で2位,これは有名ですね。しかし,国連でどのくらいの人が日本人で働いているかというと2.0%,9位です。あるいは先ほど申し上げたUNHCRなどは,拠出率は10.61%,2位なのですけれども,邦人職員の割合は3.5%。だから,大体平均すると日本では国際機関に1割くらい拠出していて,日本人の職員というのは大体2〜3%。今日もWFP(国連食糧計画)の事務局長さんが来たのです。いろんな話をして,最後に私から是非日本の邦人職員を増やしてほしい。そうしたらば,できるだけそうすると話していました。私は実は各国際機関の長にそういうお願いをしています。
でも,1つだけ言えることは,必ずしも日本人の応募者が多くない。まず応募しなければ。どんどん受けてもらって,私は上智が言わば国際機関に輩出する人材という意味では中核的な学校だというふうに,既にそうなっていると思いますけれども,外務省もいいのですが,そういった国際機関での日本人の活躍,そしてどんどん幹部になって国際機関のトップになってほしい。
そのことを最後に申し上げたいし,実はJPOという制度があるのです。紹介したいと思いますけれども,国際機関に勤務を希望する若手邦人を外務省の経費負担で原則2年間国際機関に派遣する,そういうシステムが実はあります。勤務経験を積んで正規職員への道を開く。だから,必ずしもそのまま正規職員にはなるとは限らないのですけれども,そういうJPO制度というのもあって,最近では毎年30名くらいを派遣しているということで,UNHCRとかユニセフとかUNDP,国連開発計画の方ですけれども,JPO出身の邦人職員の割合が多いということで,こういう制度も場合によっては活用してもらいながら,是非叡智という言葉を私も今日改めてお願いしたいと思いますけれども,「他者とともに,他者のために」という建学の精神のある上智大学で学んだ,あるいは学んでいる皆様でありますので,そういう志を少しでも持っている方がいらっしゃれば,また今日の私の話を聞いて,少しでもそういう気持ちになった人が多くなったらいいなと思いながらお話をさせていただきました。
1時間10分も話をしてしまったので長かったかもしれませんけれども,御清聴いただきまして,誠にありがとうございました。(拍手)
質疑応答(参加者からの質問)
(質問者1) お話,ありがとうございます。岡部ゼミからやってまいりましたAと申します。よろしくお願いいたします。学生なので,かわいらしい学生の質問を。質問は2つございまして,1つ目は,私は体育会バスケットボール部に所属しながら就職活動も行っているのですけれども,玄葉さんはなぜ一般企業などから政治家,国会議員の道を志すのではなく松下政経塾に入ったのかということと,もう一つの質問は,私,平成元年生まれで最後のゆとり世代なのですけれども,今の大学生に限らず若者に対してどのような印象を持っているのか是非お聞かせいただければうれしいです。お願いいたします。
(玄葉外務大臣) ありがとうございます。是非大会で頑張って,これから就職活動をするわけですね。
(質問者1) これからではなくて就職活動中です。
(玄葉外務大臣) 私は実は体育会のアメフト部だったのですが,ちょっと事情があって途中でやめざるを得なくなったのですけれども,私も体育会でした。大学の途中から政治経済に興味を持つようになって,一般企業にするか松下政経塾にするか。私の実家はささやかに日本酒をつくっているのです。長男坊なものですから,そのことも頭に全くなかったわけではありません。そういう中で実は幾つか一般企業からも内定はいただきました。ただ,最後に松下政経塾に受験というか試験をやって,そちらから合格通知をいただいて,自分としては,自分の可能性をもう少し,別にモラトリアムということではなかったのですけれども,見つけることができるのではないかという思いもあり,松下政経塾を選んだということです。
入った時点で絶対政治家になるなどという強い覚悟があったわけではありません。ただ,最終的に御紹介ありましたように2年くらい県議会議員をやりました。その後,衆議院選挙。最期に,死ぬときに自分なりに成し遂げることを成し遂げてありがとうと言って死にたいなと思って,自分としては政治家の道に行くべきなのではないかと自分なりに思って政治家を志した。
それと若い人たちをどう見ているか。若い人たちとなかなか接触する機会が最近少なくて,場合によってはこういう機会をつくってもらえるとありがたいのですけれども,十二分に理解をできているわけではありませんけれども,私は,巷間言われているほど若い人たちが内向き志向ではないと思います。ただ,データとしてはやや内向き志向ですね。だから,私は先ほど申し上げたように,もっと世界に出ていくようにという話をしたわけですけれども,パピルスにも「最近の若い者は」と書いてあったと思います。「最近の若い者は」と言い始めたら大体年を取ったと思いますので,古今東西,「最近の若い者は」と言います。私はすごく多様な人たちが育ってきたと期待を強く持っています。
(質問者2) 外国語学部英語学科卒業でございます。本日は大変貴重なスピーチをいただきましてありがとうございます。
ソフィア100周年で日本経済がこうして半世紀,かと思ったら去年は先生の地元は大きな被災をされまして,これからもう一回半世紀にチャレンジしていこうかという思いなのですが,ところが,世界経済もこの地球自体も環境面も外交面も経済面も急ピッチで突っ走っているような状況,隣国との外交もお忙しくされている最中だと思いますが,スピード感のある国のリーダーシップ,その点についてビジョンを聞かせていただいて,今日,講演会なので,我が学園のこれから日本を支える若い人たち,学生の皆さんにメッセージがございましたら,一言お願いします。
(玄葉外務大臣) ありがとうございます。
スピード感のある政策をというのは全くそのとおりでございまして,私が今,大事だなと思っているのは,一つは脱ポピュリズム。御機嫌取りを余りしない政治家が一つ。それともう一つは,やはりダーウィンの進化論ではありませんが,これはカトリックの考え方とちょっとどうかということもあるかもしれません。どういう種が強い人か。強い種が強い人ではない。どういう種か。時代に適応して変わり続ける種だ。だから,やや改革志向というのが強いのかなと。そして,やはり安定した政権でないと私はいけないと思います。今,求められているのはそういう政権であって,野田政権をそのようにしたいと思っていますし,一般論で言っても,そういった政権というものを今後日本が持ち続けるということは非常に大切。そうすればスピード感のある政策というのはできると思うのです。首相の首をとる不毛というのを私は感じています。1年ごとに首相が替わり,外相が替わり,本当にそれで強い交渉ができるのかどうなのかということをやはり多くの政治家,国民の皆さんも含めて考えないとだめだと私自身は思います。
ただ,私が長くやりたいという気持ちはないです。誤解しないでください。一般論としてそういう政権をつくって,一般論として首相は一定の期間やる,そして外相も一定の期間やる,そういうふうに日本の政治を変えていかないといけないというのが私の考えです。
あとソフィアンには先ほど申し上げたように,どうぞ高い志を持って世界に雄飛してほしいというのもございます。同時に,だからといって世界に行かないからといって志が低いのか,そうではないと思います。やはり禅の言葉で言えば,「一隅を照らす」。私はNGOなどで活躍するのも1つの方向だと思います。ちなみにNGOは私は政調会長のときに1つの改革をしまして,寄附税制の大改革をやりました。3,000円の寄附を100人集めればもう寄附税制の対象になる。しかも所得控除だけではなくて税額控除も対象になる。これは大改革です。恐らくはNGOは大きく変わると思います。「一隅を照らす」,そういう少しでも人の役に立とうということを実践してほしい。それは大きいか小さいかとかということではなくて,たまたまそのフィールドが大きいか小さいか。深みはある意味必要かもしれません。ですから,そういう社会人になっていただくとうれしいなと思います。