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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 世界防災閣僚会議in東北 玄葉大臣による主催者開会式挨拶

[場所] 仙台国際センター
[年月日] 2012年7月3日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

各国政府,国際機関代表の皆様,

御列席の皆様,

東北の皆様,

外務大臣の玄葉光一郎でございます。

本日は,「世界防災閣僚会議in東北」に世界各国からお集まりいただきまして,心から御礼を申し上げたいと思います。この東北の地は私の故郷でもございまして,こうして各国から皆様をお迎えする,そういう意味では,喜びもひとしおです。誠にありがとうございます。

冒頭,この地を昨年3月に襲った東日本大震災に思いを馳せたいと思います。東日本大震災では,15,866名がお亡くなりになり,2,946名が未だに行方不明となっています。その中には,多くの外国の方々も含まれています。改めて,犠牲者の皆様に心からの哀悼の意を申し述べたいと思います。

この自然災害は,地球上どこでも起こり得ます。世界では,毎年2億人もの方々が被災にあっているという数字がございます。自然災害による経済的損失は,年間平均1000億ドルを超えます。しかも,その犠牲者の方々のうち,死亡者の9割は途上国の市民です。2010年のハイチ地震を覚えていると思いますが,この地震では,ハイチのGDPの1.2倍の経済的損失がありました。

自然災害は全く他人事ではありません。東日本大震災もタイの洪水も,世界全体のサプライチェーンの分断などに見られるように,深刻な影響を及ぼしたのです。もう一つ興味深い数字があります。防災への1ドルの投資により防げる被害は,7ドルに及びます。防災は,そういう意味で,7倍の利益を生む効果的な投資なのです。

長年の開発努力,あるいはまちづくり,村づくりへの努力を一瞬で水泡に帰してしまう大きな災害,この災害の力,これは,持続可能な開発に対する脅威でもあります。私は,先般,リオ+20に出席し,各国に,防災は「喫緊の課題である」と各国に呼びかけました。この流れを,本日と明日,御出席頂きました皆様と更に深めたいと思います。この会議の「世界の英知を被災地に,被災地の教訓を世界に」のスローガンの下に,開発と国際協力において防災をありとあらゆるものに組み込んでいく,防災の主流化を図り,強靱な社会を世界で築いていく。そのために何が必要か,この東北の地で皆様と共に考えていきたいと思います。

この会議では,災害前,災害後の観点から防災の主流化に向けた取組を,検討したいと思います。そして,産業高度化,都市化,気候変動といった新たな災害リスクへの対応について議論します。これは複合災害も含みます。福島では原発事故もありました。原子力安全については本年12月にここ福島県においてIAEAと共に「原子力安全に関する国際会議」を開催します。今回の会議は自然災害ということで直接原子力災害を取り上げるわけではありませんが,複合災害という意味では,原発事故も含め御議論いただきたいと思います。本日の全体会合に加え,明日の3つの分科会を通じ,防災に関する課題を総合的に検討し,掘り下げた議論ができたら,と思います。

先ほど総理からもお話がありましたが,私は,強靱な社会の実現のための基盤には人間の安全保障といった理念があることを強調したいと思います。一人ひとりの尊厳を大切にし,弱い人々,脆弱な人々を保護する。そういった理念が基盤にあるということにも思いを巡らせたいと思います。

防災の総合力を高めるためには,フルキャストだと思います。東日本大震災では,例えば,自治体の公的機能が損なわれたケースも多々ありました。それを,民間企業が公的機能を,もちろん一時的ではありますが補完しました。あるいはNGOやボランティアの力にも大変大きなものがありました。もちろん,総理からの話にもあったとおり,世界の国,国だけではありません,機関,人々が日本に温かい支援の手を差し伸べてくれました。そういう意味では,まさにフルキャストの支援でした。

この会議では,多くのサイドイベントも開催されます。是非,皆さんに参加していただきたいと思います。まさにフルキャストの力を感じていただきたいと思います。

さらに,この会議の集大成として,我々が考える防災分野で国際社会が目指すべき方向性を出していけたらというふうに思います。防災分野の国際指針である兵庫行動枠組と,開発分野の国際指針であるミレニアム開発目標(MDGs)の双方がともに,2015年に期限を迎えます。ということは,国際社会が,兵庫行動枠組,MDGsの後の開発目標,あるいは開発と国際協力のあり方の中に,防災をしっかりと組み込んでいく大きなチャンス・契機であり,この会議の一つの目標であると考えています。

東日本大震災の被害は筆舌に尽くしがたいものでした。しかし,あわせて国際社会との「絆」を再確認する機会ともなりました。日本は必ずや復興します。災害というピンチをチャンスに変える「逆転現象」の発想を目指し,必ず成し遂げます。

日本が持つ知見や技術を最大限に活用し,強靱な社会の構築に向けたこの国際社会の努力を主導する決意があることをこの場をお借りして表明し,主催者を代表した挨拶とさせていただきます。

ありがとうございました。