データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 世界防災閣僚会議in東北 玄葉外務大臣による閉会式挨拶

[場所] 仙台国際センター
[年月日] 2012年7月4日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

御列席の皆様,

2日間にわたり,中身の濃い議論を行われた参加者の皆様に感謝いたします。また,会議の開催に向けて多大なる御協力を頂いた共催者, 関係機関,宮城県,岩手県,福島県,そして仙台市,石巻市,一関市,福島市の皆様に心から御礼を申し上げます。

この会議には,政府,国際機関,地方公共団体,民間企業,市民社会の代表が集いました。この充実した議論は,防災に対する高い関心と強い期待の表れと受け止めています。サイドイベントも大盛況だったと思います。昨日,今日とも私もお邪魔させていただきました。関係者の皆様に御礼申し上げます。

今回の会議,私自身も大変多くのことを学ばせていただきました。この会議の成果を,議長サマリーとしてお手元にお配りさせていただきました。議長の責任でまとめたものです。主要点のみ申し上げたいと思います。

(1)防災を主流化し,強靱な社会を構築すべきこと。

(2)人の尊厳を中心に据えるという人間の安全保障の重要性。子供,高齢者,障害者,女性等への配慮を大切にすること。

(3)インフラ・ICTを始めとするハード,教育をはじめとするソフトの,あらゆる手段を駆使し,防災力を最大化すべきこと。

(4)幅広い関係者が役割の垣根を越えて連携すべきこと。今日も「壁のない社会」との発言がありました。

(5)気候変動や都市化といった新しい課題にもしっかりと対処すべきこと。

(6)2015年以降を見据え,

「ポストMDGs」((注)国際社会の開発分野の羅針盤であるミレニアム開発目標の後継枠組み)に防災を位置づけ,また,

兵庫行動枠組((注)国際社会の防災分野での指針。2005年に神戸で採択。)をベースにしながら,東日本大震災でパラダイムシフトが起きているといった発言もありました。私がこれまで申し上げた主要なポイントを踏まえ,真に有効な「ポスト兵庫行動枠組」を策定していくべきこと。

これらを主要な要素として,我々は,「21世紀型の防災」をこの地からさせていただきます。

これらが国際社会の防災における重要な方向性として共有されたことは,大きな成果です。人々がしっかりとした目標とビジョンを共有するとき,力強いエネルギーが放たれます。強靱な社会の構築と防災の主流化が,国際社会の道しるべとなり,我々の努力と協力が大きなうねりとなって進展していくことを確信しています。

そのために日本は引き続き主導的役割を果たして参ります。開発と国際協力における防災の主流化を主導し,強靱な社会を構築するため,2013年からの3年間で30億ドルの支援を行うことをお約束します。2日間の議論を踏まえ,ハード面とソフト面の対策を効果的に組み合わせ,途上国の総合防災力を高める支援を行っていきます。たとえば,リスク評価をしっかりと踏まえた都市計画のマスタープラン作りから貢献します。先ほど早期警戒システムについてお話がありましたが,地デジ技術なども使って,貢献していきます。住民に実際に情報が伝わるような支援をしていきます。日本の優れた防災技術でお役に立ちたいと思います。

日本は,2015年に向けて,防災の主流化に向けた国際的な努力を主導してまいります。ポストMDGsに防災を位置づけることを含め,2015年以降の国際開発目標の策定に向けた議論に積極的に貢献してまいります。

先程,中川大臣からも表明したとおり,2015年の第3回国連防災世界会議のホストを表明いたしま。ISDR(国連国際防災戦略)のリーダーシップを支援しつつ,UNDPや世界銀行を始めとする,マンデートと資源を有する国際機関とも密接に連携しながら,真に実効的なポスト兵庫行動枠組が策定されるよう,最大限,取組を行ってまいります。

今,我々は,これからの枠組みについて,本格的な議論を開始いたしました。この国際社会の目標に向け,ここに集った皆様に,この2日間の会議の成果を最大限活用していただきたいと思います。御参集の皆様の協力に重ね重ね御礼を申し上げるとともに,ここに集った全員で力を合わせ,防災を主流化し,強靱な社会を築いていくために,全力を尽くしていきたいということを宣言いたしまして,会議を閉会いたします。ありがとうございました。