[文書名] アフガニスタンに関する東京会合 玄葉外務大臣スピーチ
カルザイ大統領
潘基文国連事務総長
同僚の皆様
今回の東京会合は,昨年のボンに始まる一連の国際会議の最後を飾り,本年のアフガニスタンに関する国際的な議論を締めくくるものです。NATOシカゴサミット,ドゥシャンベ及びカブールでの治安や地域協力の議論を踏まえ,ここ東京では,2015年以降のアフガニスタンの持続的な成長の道筋を具体的に示し,アフガニスタンが2015年以降も安定し,発展し続けられるということを示さなければなりません。
このために,1月の私自身のカブール訪問以来,アフガニスタンと国際社会は綿密に議論を積み重ねてきました。今次会合では,アフガニスタンと国際社会の「変革の10年」に亘る長期的パートナーシップを相互のコミットメントという形で具体化する,「東京フレームワーク」(Tokyo Mutual Accountability Framework)を設立したいと考えます。
ご列席の皆様,
アフガニスタン政府が,先ず自らの成長戦略を着実に実施するとともに,ガバナンスの改善を具体的に進めることを約束します。そしてこれに応えて,国際社会が2015年以降を見据え,アフガニスタンの成長戦略に対して具体的な支援のコミットメントを行います。これが「東京フレームワーク」です。また,この相互コミットメントが着実に実現されるよう,閣僚レベル,事務レベルでしっかりとフォローアップするメカニズムを創設します。我が国としては,引き続き,この東京プロセスに積極的に関与していく考えです。
今,アフガニスタン政府は,カルザイ大統領のイニシアティブの下,選挙改革や腐敗対策及び中央・地方政府の行政能力の向上などを含めたガバナンスの改善に向けた重要な改革に着手しており,我が国はこうした努力を高く評価します。アフガニスタン政府が東京プロセスの下,引き続き,女性の権利を含む人権状況の向上やガバナンス改善等で具体的成果を上げることを強く期待します。
ご列席の皆様,
我が国は,2002年1月の東京会合以来,アフガニスタン開発支援で,米国に次ぐ第二のドナー国として主導的役割を果たしてきました。2011年末までの間に,政治プロセス,インフラ整備,基礎生活分野,農業・農村開発及び文化等の各分野で総額約33億ドルに及ぶ支援を実施したことが,これを物語っています。
これまでの我が国の経験を踏まえ,私は,ここに我が国としてアフガニスタンに対し,2012年より概ね5年間で開発分野及び治安維持能力の向上に対し,最大約30億ドル規模の支援を行うことを表明いたします。具体的には,アフガニスタンの開発戦略を踏まえ,3つの柱を重視して経済社会開発分野の支援を行う考えです。第一にアフガニスタンの人口の約8割が従事する農業をしっかりと支援していきます。第二に地域協力という観点からも重要なインフラ整備に力を傾注します。第三に国造りの原点である人づくりを重視します。この観点から,ガバナンスの改善にも資するべく,5年で500人のアフガニスタン人行政官の研修などを実施していく考えです。また,教育は,アフガニスタンの人々が自らの文化を尊重し,一体感を高めながら国造りを進める上で重要であり,引き続き支援していきます。こうした分野への支援を通じ,我が国は2017年以降も引き続きアフガニスタン主導の国造りに相応の貢献を行っていきます。
アフガニスタンの中長期的安定のためには,アフガニスタンと周辺諸国との地域協力を更に強固なものとすることが不可欠です。アフガニスタンが中央ユーラシアの陸橋としての地政学的特性を活かし,民間投資をも呼び込んで持続的発展を遂げるために重要な地域協力を進めることが重要です。この地域協力の観点から,パキスタンや中央アジア諸国といったアフガニスタンの周辺諸国に対し,総額約10億ドル規模の事業を行うことをここに併せ表明します。これら事業を通じて,中央アジアからパキスタンのカラチまで至る,アフガニスタンを縦断する回廊の整備を支援します。
ご列席の皆様,
アフガニスタンの復興開発には,同国の市民社会の果たす役割は重要です。本日の会合にも,こうした現場の声を適切に取り入れるべく,アフガニスタン市民社会代表が参加されています。我が国としては,真にアフガニスタン国民に届く支援を行う観点からも,引き続き,市民社会と密接に連携していく考えです。
ご列席の皆様,
本日,アフガニスタンと国際社会は,新たなフレームワークの下,資金的裏付けに支えられた具体的なパートナーシップ関係に入ります。ここ東京において形作られるアフガニスタンと国際社会の新たなパートナーシップがアフガニスタンの変革と持続的発展に繋がることを強く期待して私の発言といたします。
ありがとうございました。