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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] IMF/世銀年次総会プログラム・オブ・セミナーズ「アフリカのエネルギーに関する課題:アフリカにおけるエネルギー・インフラ開発-2013年第5回アフリカ開発会議(TICAD V)に向けて」玄葉外務大臣挨拶

[場所] 東京
[年月日] 2012年10月12日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

マクタール・ディオップ世界銀行アフリカ担当副総裁,

 御列席の皆様,

 ただいま御紹介をいただきました外務大臣の玄葉光一郎です。本セミナーを共催している外務省を代表して,皆様の御参加を歓迎し,開会の挨拶を申し上げます。まずは,本セミナーのモデレーター,パネリスト,共催機関関係者の皆様の御協力に感謝を申し上げます。

 近年,アフリカは,豊富な天然資源や人口増加を背景に,平均で6%近い成長を遂げ,アジアに次ぐ経済フロンティアとして世界から注目を集めています。

 来年6月の第5回アフリカ開発会議(TICAD V)では,現下のアフリカの成長の質を向上させることを目指し,国際社会とアフリカがとるべき具体的行動を議論します。

 TICAD Vを通じて取り組むべき課題は多岐にわたりますが,成長の基盤となるインフラ開発は特に重要です。その中でも,とりわけ,産業の発展に必要な電力を供給し,人々の生活水準の向上につながるエネルギー・インフラ開発は,緊喫の課題と言えるでしょう。

 アフリカ連合は,「アフリカ・インフラ開発プログラム」において,エネルギーを優先分野と位置づけ,アフリカ自身のオーナーシップの下でインフラ開発を進めていますが,低い電力へのアクセス率,資金不足といった課題に直面しています。

 本日のセミナーでは,TICAD Vに向けて,これらの課題に対していかなる行動をもって取り組むべきかという観点から,議論が深められることを期待します。私からは,アフリカにおけるエネルギー・インフラ整備に関し,特に重要な論点を2つ提示いたします。

 1つ目は,官民連携の推進です。エネルギー・インフラ整備のためには,ODAを始めとする公的資金,とりわけ,円借款のような,譲許性の高い資金が重要な役割を果たします。我が国は,2008年のTICAD IVで採択された横浜行動計画に基づき,円借款等を通じて約3200億円のアフリカのインフラ開発を支援してまいりました。

 他方,アフリカにおける膨大な資金需要を満たすには,民間資金の積極的な動員が不可欠です。そのためには,公的資金が民間資金の触媒としての機能を果たすとともに,商業的に成立するインフラ案件の形成を一層推進する必要があります。アフリカ自身も,官民間での適切なリスク分担等,民間資金の動員を促進するための取組が進められることを期待します。

 2つ目は,持続可能なエネルギー・インフラの整備です。アフリカは,天然ガスや良質な資源を豊富に産出している上に,地熱を始めとする再生可能エネルギーの高い潜在性を有しており,適切にその利用,開発を推進することで,持続可能な経済成長を実現することが可能と考えます。

 我が国としては,明年のTICAD Vを契機として,再生可能エネルギーの整備や高効率な発電システム整備を含め,低炭素成長,そして気候変動に対して強靱な開発を,アフリカにおいて促進する戦略を推進してまいります。その際,我が国の有する高い技術が大きく貢献できると考えています。

本日のセミナーにおいて,有益かつ建設的な議論が展開されることを期待します。セミナーの御成功を心より祈念申し上げ,私の開会の挨拶といたします。

 御静聴ありがとうございました。