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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] シンポジウム「国連と日本のPKO20年-新たな課題への対応-」 玄葉外務大臣冒頭挨拶

[場所] 
[年月日] 2012年11月5日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 皆さん,こんにちは。

 ラドスース国連事務次長,

 パネリストの皆様,そして

 ご列席の皆様,

 本日のシンポジウム「国連と日本のPKO20年-新たな課題への対応」の開幕にあたり,一言ご挨拶を申し上げたいと思います。

 国連平和維持活動(PKO)は,国連が国際の平和と安全の維持のために行う活動の中で最も重要なものの1つでございます。本年は我が国が1992年に,国連カンボジア暫定機構(UNTAC)などへの参加によりPKOへの協力を開始してから20周年,そして国連におきましてもPKO局が設立をされてから20周年ということで,まさに節目の年でございます。20年前といえば,冷戦が終わって,国際の平和と安全の維持のための国連の活動が活発になった時期であります。それとともに,PKOの任務と役割も多様になって,国連が果たす役割が一層重要になりました。このような中,我が国も国連も時代の変化に対応するために体制を強化をしてきました。しかしながら,この20年の間,様々な国,地域で紛争は発生し続け,PKOが担う役割はむしろ拡大をし,その重要性も高まっているというのが現状であります。

 1996年だったと思いますけれども,私はパレスチナの選挙監視団に参加をしたことがございました。二人一組で,投票所を巡回をするのです。その時に,歩いて巡回するものですから,一般の市民の方々に直接触れあう機会がございました。あの時ほど,肌で,パレスチナの市民が日本に対して期待感を強く持っている,と感じたことはありませんでした。私はあれ以来,実感として,日本はこの国際社会の期待に懸命に応えなければならない,そして,国内で盛んに囁かれているところがあるのですけれども,内向き志向などと言われては絶対にいけないということで,去年の9月に私が外務大臣に就任をしてすぐ,当時の防衛大臣と相談をして,南スーダンに自衛隊の施設部隊を派遣しようではないかということを決定をしたということでございます。

 国連のPKOが,国家間の停戦監視に加えて紛争後の国づくり支援へと役割を拡大をしていく中で,皆さんご存知のように,我が国はこれまで合計13の国連PKOに7800人にのぼる自衛官,警察官,文民の選挙監視要員等を派遣をしてきたところです。本年9月の現在の派遣要員数では,G8諸国中でもイタリア,フランスに次いで第3位の規模でございます。質的にも,ゴラン高原での活動,ハイチでの復興・復旧支援や,南スーダンでの国づくりを支える我が国自衛隊部隊の活動は,プロフェッショナリズムに満ちて,礼儀正しくて,規律が高い,と,これは日本国政府として,また外務大臣として,一種の自負を持っているところでございます。また内閣府が実施をした「外交に関する世論調査」の最新の結果を見ましたけれども,8割以上の回答者が現状もしくはこれまで以上のPKOへの積極的な参加に賛同を示しています。日本国内におきましても,国連PKOへの我が国の協力に対する理解と支持は充分得られてきていると考えているところでございます。

 PKOの現場でのこうした貢献に加えて,我が国は,国連本部におけるPKOの政策議論にも積極的に貢献をしたいと考えています。国連総会の下にあるPKO特別委員会の副議長を務めて,国連PKOの在り方を巡る議論を積極的に主導をしています。2005年と06年,2009年と10年は,安保理のPKO作業部会の議長を務めたところでもございます。また財政面では,いわゆる国連の分担金の12.53%を負担をする言わば第2位の財政貢献国になっていることは皆さんご承知のとおりでございます。各PKOミッションの運用や在り方に大きな責任を持って,PKOの今後についての議論にもより一層貢献をしていきたいと考えております。

 一方,PKOの規模の拡大,任務の複雑化,活動の長期化は,国連にとっても,また国連加盟国にとっても,克服をすべき大きな課題になっていると思います。限られたリソースの中でいかに効率的,且つ効果的なPKOを行うかというのは,まさに様々な議論が必要だと思います。また,PKOを実施するのには,高い能力を持った優秀な要員が求められておりますので,日本としても,こういった分野で一層貢献をしなければならないと考えております。日本国憲法にあるとおり我が国が国際社会において名誉ある地位を占め,国際の平和と安定に貢献していく上で,我が国が有している技量・力量を,国連PKOへの積極的な参加のためにいかに活用するか,これは,PKO法改正も含めて,大いに検討していく必要があるという風に考えているところであります。

 本日のシンポジウムには,国連本部からPKO局長であるエルベ・ラドスース平和維持活動担当事務次長に参加をしていただいています。ラドスース事務次長は,アフリカや中東をはじめ世界各地で活動するPKOの責任者であり,PKOに関する国連加盟国間の議論に対して,実施の責任を担う事務局の視点を代表する立場にあると存じます。本日は,現在PKOが直面する課題を見つめ直して,PKOの将来と,我が国の貢献の在り方について,議論を深めていただきたいと思います。このことが,国連PKOの重要性に対する国連加盟国及び各国の国民の理解を深めて,国連の活動をより効果的にすることにつながると考えております。あらためまして今日のこの場が,有意義な議論の場となりますことを心からご期待を申し上げて,私の挨拶とさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。