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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] TICADⅤ閣僚級準備会合 全体会合3「アフリカにおける平和と安定」 岸田外務大臣ステートメント

[場所] 
[年月日] 2013年3月16日
[出典] 外務省
[備考] http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ticad/tc5/pdfs/20130327_08.pdf(2013年6月24日アクセス)
[全文]

 ありがとうございます。

 本日,皆様から,自信と希望に満ちた御発言をお聞きし,私は輝ける未来に向けたアフリカの力強い発展の可能性を実感しています。この明るい希望の光を,貧困削減やその他の開発課題の克服,そして確かな成長につなげるための大前提は,平和と安定です。

 アルジェリア人1名及び日本人10名を含む多くの犠牲者を出した先般のアルジェリアにおける人質事件は,アフリカと共に未来を築こうとしてきた日本国民,特にアフリカとの経済関係を深めてきた我が国経済界に大きな衝撃を与えました。我々は,この痛ましい事件により,紛争や不安定,テロや海賊等の問題が開発と成長を阻む大きな壁であることを改めて実感しました。これらの課題の解決が,貿易投資の促進,ひいてはアフリカの飛躍にとって不可欠です。

 私は事件を受け,外交政策三つの柱を発表し,国際社会と共にテロと断固として闘う姿勢を打ち出しました。即ち,(1)国際テロ対策の強化,(2)サヘル・北アフリカ・中東地域の安定化支援,(3)イスラム諸国・アラブ諸国との対話・交流の推進です。そして来るTICADⅤでも,国際社会がアフリカと共にテロと闘い,アフリカに安全な社会を確立する強い決意を示すべきだと考えています。

 まず何より必要なのは,アフリカ自身がテロと闘う力を手にすることであると確信します。即ち,アフリカ各国の治安維持能力,法制度整備を含めたガバナンス能力の向上,及び信頼される国家機関の形成が必要です。そしてこの安全な社会を構築するアフリカの努力を国際社会は一致して支援すべきです。

 次に,アフリカにテロを生まない土壌を作ることが根本的解決策として大切であることを訴えたいと思います。テロ対処行動はもちろん重要です。しかし,極度の貧困や若者の失業等が存在する限り,新たなテロリストが再び誕生するでしょう。我々は,全ての人が未来に希望を持って歩みを進められる社会を築くため,引き続き,社会経済開発を進めるべきです。これこそがTICADⅤの方向性に合致するのです。

議長,

 アフリカが平和と安定の大地となることは,アフリカと共に生きようとする我々全てにとっての心からの願いです。私は,平和構築・平和の定着を目指す,アフリカ連合(AU)を始めとするアフリカ自身の懸命な努力に敬意を表します。そして,このアフリカの力を信じ,後押しする国際社会のパートナーシップの重要性を改めて訴えたいと思います。

 そのための取り組みとして,日本は,今般,アフリカの平和と安定のための支援として,総額約5.5億ドルの支援を決定しました。この中には,マリ及び周辺国における難民等に対する人道支援及びガバナンス・治安部門能力強化のための約1.2億ドルの支援,南北スーダンにおける人道支援等のための約9100万ドルの支援,ソマリアにおける人道支援及び警察能力強化のための約5500万ドルの支援,等が含まれます。また,今般アフリカ自身の努力を支援するため,アフリカ主導国際マリ支援ミッション(AFISMA)基金に対し,600万ドルの拠出を行うことも決定しました。これらの支援が,アフリカの平和と安定のための取り組みを大きく前進させることを切に願っています。

 TICADが開始して以降,多くの地域で平和の定着が進み,アフリカの躍動の土台となってきました。しかし,サヘルからソマリアに至るサハラの帯や大湖地域を中心に,アフリカが今も平和と安定の問題に直面していることも事実です。

 平和で安定したアフリカを実現し,さらなる飛躍の土台を築くことは皆の願いです。アフリカと国際社会のリーダーが一堂に会すTICADⅤは,国際社会が英知を結集して取り組むべきこれら課題を議論する最高の機会であると確信します。

 ご静聴ありがとうございました。

(了)

{原文では、(1)マル1、(2)はマル2、(3)はマル3}