[文書名] 経団連・経済外交委員会における岸田外務大臣講演 「我が国の経済外交」
1.冒頭
(経団連・経済外交委員会の立ち上げに当たり)
ただいま御紹介にあずかりました外務大臣の岸田文雄でございます。本日は経済外交委員会の設立に際し,お招きをいただき,お話しする機会を頂いたことに,まず厚く御礼申し上げます。
この度,経団連において,政治・外交と経済が不可分となっているとの認識の下,経済問題はもとより国際情勢の幅広い文脈から我が国経済外交を論じようとする「経済外交委員会」を立ち上げていただきましたことは,大変に時宜を得たものであると存じます。また,外務大臣として心強く思っております。川村委員長や大林共同委員長を始めとする経団連の関係者の皆様の御努力に心から敬意を表します。
私は,国会議員になって本年で20年目を迎えますが,これまでの議員生活を通じて大事にしている考え方,姿勢のひとつがあります。それは,「現場主義」という考え方です。自ら足を運び,自らの目と耳で現場に触れて,多くの関係者と直接接した上で,自らの責務を果たしていくというものであり,こうした「現場主義」の考え方を大事にしてきました。かつて,沖縄担当大臣時代には,歴代大臣の中でもトップクラスの回数で沖縄を訪問し,沖縄県は本島のほか,50近くの有人島があると記憶しておりますが,南北大東島や波照間島など,あまり大臣が訪問していない離島を訪れ,「ゆんたく会議」という座談会を開催して色々な話を聞かせていただき,地元の方々の暮らしや考えを,実体験として身近に感じることを大切にしました。外務大臣就任以降も,「現場主義」を大切にしております。これまでの8か月の間に,国外はアジア,大洋州,北米,中南米,欧州,中東,アフリカへと,のべ20か国・地域を訪れ,また,様々な国際会議に参加させていただきました。これは移動距離で言えば,地球約5.6周分に相当します。また,国内についても様々な課題に応じて各地を訪れ,例えば福島第一原発を視察すべく福島県へ,原爆犠牲者の慰霊と平和祈念式典のために広島,長崎へ,「慰霊の日」等の機会に沖縄へと,様々な地域を訪れました。
本日,経済外交委員会にご参加の皆様は,まさに,我が国の経済活動の最前線,経済の「現場」で御活躍されておられる方々ばかりであると思います。この委員会の立ち上げが,経済の現場を熟知する経団連の皆様と外交の現場をあずかる我々が共に,日本経済の再生に向けて考え,そして共に行動する新たな端緒となるものと心から期待しています。私自身,今後とも経済界の皆様の声をしっかりと受けとめた経済外交を展開し,日本経済の再生を外交面から最大限後押ししてまいる決意です。
2.日本外交の三本柱と経済外交の重要性
私は,昨年12月の就任以来,これからの「日本外交の三本柱」ということで,「日米同盟の強化」,「近隣諸国との協力関係の重視」「日本経済の再生に資する経済外交の強化」を軸として外交を進めてきました。この三つの柱の一つに経済外交を入れさせていただいていることに,是非注目していただきたいと思います。安倍内閣は,昨年12月の発足以来,日本経済の再生を最重要の課題として取り組んでいます。外務省においても,まさにこの経済を重視し,日本外交の三本柱の一つとして,日本経済の再生に資する経済外交に積極的に取り組んでいます。ひとつ最近の例を申し上げれば,私はつい先日まで,ハンガリーとウクライナを訪問していました。私はこの訪問を,特に経済関係を強化する訪問にしたいとの思いがありました。その観点から,ハンガリーでは,日ハンガリー社会保障協定に署名するとともに,現地の日系企業の皆様からお話を伺い,また,現地のマジャール・スズキの工場を視察させていただきました。ウクライナにおいては,同国の大きな経済的潜在性を踏まえ,投資協定交渉の加速を含め,日本企業の投資環境の改善について協議してきたところです。また,ウクライナがセーフガード措置であるとして輸入自動車の関税を引き上げた措置がありますが,これはWTO整合性に強い疑義があることを先方に伝え,速やかに取りやめるよう求めるなど,先方にとっては耳が痛いと思われる話もしっかりと申し入れました。
こうした経済外交の取組を通じて強く感じたことは,諸外国の日本に対する期待が,昨今,非常に高まっているということです。多くの外務大臣や関係者を訪問した際に,また,お迎えした際に,日本が久々に元気になろうとしていることを歓迎している,頑張ってもらいたいとの声が多数聞こえております。先ほど述べたハンガリー訪問においても,オルバーン首相から,安倍政権の下で進められている日本経済の復活に着目をしている,日本経済の復活はハンガリー経済にとっても重要であり,これに期待しているとの発言がありました。世界経済が欧州経済の低迷や新興国経済の減速等,不安定要素を抱えている中にあって,デフレ不況からの反転の兆しを見せつつある日本に対して期待が寄せられており,これには非常に大きなものがあると実感しています。
そのような状況であるからこそ,日本経済の復活の兆しを着実な成長へとつなげなければならないと思っています。強い経済は我が国の国力の最大の源泉であり,日本企業の更なる世界での活躍へとつながると考えます。日本経済の再生は,国際社会における日本の発言力を取り戻し,良好な国際経済環境を実現し,世界経済の成長に貢献するものと考えており,このためにも経済外交をしっかりと進めていかねばならないと考えています。
3.我が国経済外交の三つの側面
本日は,経済外交の三つの側面についてお話ししたいと思います。第一に,日本企業の海外展開支援です。これは,日本から外に向かって出て行くのをいかに支援するかという視点です。第二に,資源等の安定確保と投資や人材の国内への呼び込みです。これは外から日本に向かって入ってくるのをいかに支援するかという視点です。そして第三に,国際的なルール作りへの参画についてです。経済外交を進めるに当たって,こうした三つの側面が重要であると考えます。
(1)経済外交第一の側面:日本企業の海外展開支援
まず,第一の側面は,日本企業の海外展開支援です。日本企業が積極的に海外展開し,成長著しい新興国を始めとする諸外国の成長を取り込むことこそ,日本経済再生の原動力となります。安倍政権の日本再興戦略においても,国際展開戦略を掲げ,世界の経済成長を取り込むことを目指しています。外務省としても,経済外交の主要な業務の一つとして,「国民に役立つ外交,国民のための外交」として,日本企業の海外展開を後押しするための体制を強化している状況にあります。
(インフラ海外展開,トップ・セールス)
その一つが,インフラの海外展開支援です。先進国・途上国を問わず,インフラへの需要が拡大している中,世界最先端の高い技術を有する日本企業にとってのチャンスが広がっています。具体的には,2020年に約30兆円のインフラ・システム受注という目標を掲げ,オールジャパンで国際展開を推進していきます。そのためにも,外交日程を最大限に活用し,トップ・セールスで日本のインフラ・システムを売り込んでいくこととしています。安倍総理はこれまで積極的に外国訪問をしておりますが,総理の外国訪問には多数の企業トップを含む経済ミッションが同行し,日本企業の海外展開を後押ししてきており,5月のトルコ訪問では総理自らのトップ・セールスを通じ,原発建設について日本の排他的交渉権を獲得するなど,着実に成果を上げています。地上デジタルテレビの日本方式の採用に向けては,先般の横浜におけるTICADVの際の二国間会談等をフルに活用し,安倍総理や,私を含む外務省一丸となり,南部アフリカ10か国に対して日本方式の採用に関する働きかけを行いました。また,フィリピンに対して,私が1月に訪問した際に,また,総理が7月に訪問した際に,日本方式の採用に対する期待を表明しました。5月の中南米訪問の際にしても,日本の外務大臣として初めてパナマを訪問し,私からマルティネリ大統領とヌニェス外務大臣に対して,首都圏都市交通整備への円借款の活用の検討や,パナマ運河の拡張に対する我が国産業界の関心を伝えました。また,パナマ,メキシコ,ペルーに対して,日本企業の進出増加を見据えてビジネス環境整備を一層進めてほしいと要請するなど,様々な働きかけをいたしました。先のハンガリー訪問においては,原子力を含めたエネルギー分野での日本の高い技術を活かした協力の可能性についても意見交換を行っています。また,明後日から私はブラジルを訪問いたしますが,大きな潜在力を有するブラジルのインフラ分野を含めビジネス環境の整備などについて,ブラジル外務大臣と意見交換を行う考えです。
(ODAの戦略的活用)
また,官民一体となった国際協力を推進し,ODAの一層の戦略的活用に取り組みます。この観点から,経団連からもODA政策に対する力強い御支援と貴重な御意見を頂いており,国際協力委員会の要望書を頂きました。特に,円安を踏まえたODA予算増額の必要性については,経団連国際協力委員長であられる矢野NEC会長御自身から,直接に私も叱咤激励を受けました。更に,官邸や財務省の要路にも働きかけをしていただいており,この場を借りて改めて感謝申し上げます。
経団連から御提案いただいた我が国の優れた技術の「国際標準化戦略の推進」や,JICAの技術協力を用いた途上国の人材育成支援等は,我が国経済外交においても極めて重要であると考えます。外務省は,中小企業支援や官民連携案件の推進等,ODAを活用した日本企業の海外展開支援にも引き続き力を入れていきます。このため,来年度外務省予算の概算要求として,昨年度予算より約500億円増額し,総額4706億円のODA予算を本日提出することとしております。これには,インフラ・システム輸出,国際標準の獲得,ビジネス法制度支援・人材育成支援等が含まれます。引き続き,予算獲得に向けて努力していく考えです。
(日本の多様な魅力を活用した日本企業支援)
また,日本の多様な魅力を活用した日本企業支援というものも今後考えていかねばならないと思っており,経済的利益と対日理解促進の相乗効果を更に引き出したいと考えています。一例をご紹介しますと,タンザニアにおいては,日本の青年海外協力隊員が「安全運転」をテーマにしたスワヒリ語の歌を作り,地元の有名な歌手の参加を得てプロモーション・ビデオを作り,これを現地警察が「安全週間」キャンペーンで用いる際に,現地進出日本企業と日本大使館が協力し,日本から専門家を派遣してイベントを開催するなどして,日本車の安全性への信頼を更に高めてビジネスに繋げようという試みが行われております。さらに,日本に対する関心を喚起するということのみならず,現地で活動する進出企業が日本語を解する優秀な労働力を確保する観点からも,海外において日本語を一層普及させること,日本語教育も重要と考えています。
(邦人・日本企業の安全確保)
改めて申し上げるまでもなく,日本企業の海外展開支援に当たっては,安全確保の面での政府による支援が不可欠です。返す返すも残念ですが,本年1月に発生したアルジェリアでのテロ事件では10名の方が犠牲となってしまいました。また,先月もケニアにおいて港湾開発に携わっておられた方が凶弾の犠牲となりました。ビジネスや開発分野の海外の現場で活躍する日本人がテロや犯罪の犠牲になるのは痛ましい限りです。こうした犠牲を無駄にせず,こうした悲劇を繰り返さぬためにも,国内における官民協力のためのセミナー,広報啓発活動を行うとともに,世界各地の在外公館において,様々な情報交換の場や様々なツールを使いながら,安全対策を含めた在留邦人・日本企業支援を強化していきます。日本企業の安全確保においては,官民双方向の堅固な協力が必要不可欠です。企業の皆様におかれましても,是非今後とも緊密な連携をお願いいたします。
(2)経済外交第二の側面:資源・エネルギーや投資・観光客等の日本への流入の確保
次に,経済外交の第二の側面は,資源やエネルギー,さらには投資や観光客などの外から日本への流れをいかに支援するかという話です。
(資源・エネルギーの安定的でより安価な供給の確保)
まず,多くの資源を海外に依存している我が国にとって,経済の存立の基盤として,資源の安定供給の確保が極めて重要となることは論を俟たないところです。新興国を中心としたエネルギーや鉱物資源の需要の急増と,それに伴う資源獲得競争の激化が起きており,資源国ではこれを囲み込もうとする「資源ナショナリズム」の動きが再び強まっています。加えて,最近のエジプトやシリアの動きなど中東情勢も流動化しています。また,エネルギー資源価格が全般的に高水準かつ不安定になっています。そうした中,日本国内では東日本大震災後,化石燃料への依存度が高まっている状況です。円安も進んでいることから,燃料調達を安定的なものにしつつ,コストの抑制をはかることが益々重要になっています。外務省としても,関係閣僚会合において策定された「燃料調達コスト引下げに向けた当面のアクションプラン」に則して,主要な資源供給国との関係強化と,供給源の多角化による交渉力強化に向け,体制を整え,「資源外交」を強化していきます。その一環として,首脳や閣僚等の要人往来を含む外交日程を戦略的に活用していくことが重要です。私は,1月にブルネイを訪問しましたが,その際には,同国からのLNGの安定供給について働きかけを行いました。また,総理や私から,米国産LNGの輸入について,オバマ大統領を始めとする要人に働きかけを行ってきています。さらに,本年2月に新たに設置した,「エネルギー・鉱物資源専門官制度」といった制度を効果的に活用し,各在外公館に専門家を配置し,エネルギー・鉱物資源の獲得及び安定供給確保に向けた外交的取組を強化していきます。
(投資・観光客の誘致)
また,対内直接投資を活性化するために,グローバル化を進め,海外の優れた人材や技術を日本に呼び込んでいくことが必要です。日本再興戦略において,今後政府が取り組んでいく施策として,「国家戦略特区」の創設,外国人でも安心して病院に通える環境,インターナショナルスクールの充実など,国際的なビジネス環境を整備するとの方針が示されたところであり,2020年における対内直接投資残高を35兆円へ倍増することを目指します。高度な技術や経営ノウハウを持つ高度外国人材の活用も推進していきます。こうした国内諸施策を諸外国に広報し,実際に対日直接投資の増加に結びつけるべく,在京各国大使館への説明や,在外公館を通じて外国企業向けに日本の投資優遇措置等を積極的に発信していきます。
日本の魅力の発信を通じた外国人旅行者の訪日促進や国際会議誘致への支援についても,経済波及効果の大きさやビジネス機会の創出効果等,幅広い経済的意義を有するものであり,積極的に取り組んでいきます。外務省は,観光立国推進にも貢献すべく,日本再興戦略に基づき,7月1日から,一部東南アジア諸国向けのビザ免除や緩和等の一連の措置を開始しました。7月の訪日外国人数は100万人を超え,ひと月の数としては過去最高となりました。是非ともこうした取組を続けていきたいと思います。また,2020年オリンピック・パラリンピックについては,東京招致をこれまで政府一体として全力で支援してきました。来週,ブエノスアイレスで開催されるIOC総会で,いよいよ開催地が決定されます。現地では安倍総理と共に私も参加して,東京の魅力,開催の意義等をギリギリまで訴える考えです。
(3)経済外交第三の側面:国際的なルール作りへの参画
経済外交の第三の側面は,国際的なルール作りへの参画です。日本は,ルールを「創る」国として,受け身であってはならず,積極的に取り組んでいかねばなりません。
(経済連携の推進)
まず,現在の喫緊かつ最大の課題は,「高いレベルの経済連携」を戦略的に推進していくことです。我が国として,アジア太平洋地域,東アジア地域,欧州や中南米等との間で,高いレベルの経済連携を戦略的に推進していくことが不可欠となっています。この観点から,TPPや東アジア地域包括的経済連携(RCEP(アールセップ)),日中韓FTA,日EU・EPA等の経済連携交渉をリードし,貿易のFTA比率を現在の19%から,2018年までに70%に高めることを目指しています。そしてこれを,日本企業にとっての利益に資する形で実現いたします。また,それぞれの経済連携が相互に刺激し合い,そして全体を盛り上げていく,これも重要な考えです。
皆様も特に御関心があると思われるTPPについて,本日,22日から開催されているTPPブルネイ会合が終了しました。22日,23日に開催された閣僚会合において,年内の交渉妥結に向けた交渉促進が確認され,交渉は正念場にあります。オールジャパンの最強の交渉チームで,国益の最大化を目指して引き続き全力で交渉に臨んでいきます。外務省としても,交渉そのものは勿論のこと,関係国要人との面会の機会等も活用しながら,引き続き持ち得る限りのリソースを投入していきたいと思います。米国とは,これまでにも緊密な意思疎通を図っており,累次の機会にTPPは経済面のみならず日米同盟強化や戦略的観点からも重要であることを確認しています。今月19日には,来日したフローマン通商代表との間で,年内の妥結を目指して交渉を成功裡に進めるために日米間で連携していくことを確認しました。
(G8・G20サミット)
次に,G8・G20サミットについて触れさせていただきます。国際的なルール作りにおいて,主要国の首脳による約束や合意を取り付けることは極めて重要です。その点でG8・G20サミットは最重要の枠組みの一つであると考えます。G20はそもそも金融危機に対処するためにスタートしましたが,最近はその役割が変化してきており,来週のロシア・サンクトペテルブルクにおけるG20では,世界経済・金融のみならず,貿易,開発等の幅広い議題について首脳間で議論が行われる予定です。安倍総理からは,特に我が国の経済再生や財政健全化に向けた取組を紹介する考えです。G20各国の経済団体の代表が集まるセッションには,経団連代表にも参加いただく予定であり,活発な議論が行われることを期待しています。また,G8も,先進国首脳の集まりとして引き続き大きな役割を果たしています。本年は6月に英国北アイルランドで行われ,世界経済や外交政策の他,主要な議題として,貿易,税,透明性の向上について首脳間で緊密かつ率直な議論が行われました。我が国は,2016年にG8サミットを主催することになります。是非2016年の日本G8サミットに当たっては,経団連の皆様,経済外交委員会の皆様からのご意見も伺えればと考えています。
(WTO)
WTOについては,現在のドーハ・ラウンド交渉が全体として膠着状態にありますが,WTOを中心とする多角的貿易体制は重要であり,しっかりと成果を上げていかねばならないと考えています。そして,WTOがルール面で依然として重要であり続ける最大の理由は,WTOには,交渉で作られたルールをしっかり遵守させるための紛争解決の制度が設けられているからです。この紛争解決の制度をしっかりと活用し,引き続きWTOにおけるルール作りにも積極的に取り組んでいきます。
(OECD)
また,OECDも「世界最大のシンクタンク」として大きな存在感を有しています。来年は,我が国がOECDに加盟して50年という節目の年にあたり,OECD閣僚理事会の議長国を務めます。この閣僚理事会では,リーマンショックや東日本大震災の経験を踏まえ,経済社会のレジリエンスについて議論し,日本経済の再生を国内外に力強く印象づける機会にしたいと考えています。また,欧州中心と見られがちなOECDと,成長センターとしてのアジアとの関係強化も推進していく考えです。今後,我が国の政策にとってOECDを更に活用する観点から,是非皆様からも御知恵を頂いて,しっかりと検討を進める考えです。
(APEC)
最後にAPECです。今や世界のGDPの56%を占めるアジア太平洋地域におけるルール作りは,世界全体のルールを形成していく上で極めて重要なものとなっています。アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP(エフタープ))の実現を目指し,貿易・投資の自由化と,そのためのルール作りを進め,域内の経済統合を推進するAPECの最大の特徴は,WTOのような条約上の義務ではなく,参加エコノミーの自主性が尊重されるところにあります。実際,APEC域内の首脳同士によるコミットメントとして,昨年の首脳会議の成果である54品目の環境物品の関税削減のように,APECは先進的な取組を示してきていると言えます。本年は10月に,APECの首脳会合がインドネシアのバリ島で開催されます。また,インドネシアは12月に同じバリ島でWTOの閣僚会議も開催しますので,本年は貿易自由化においてインドネシアが果たす役割が注目されるところです。
4.結語
今後,官民連携を更に推進し,経済外交を進めていく大切さを痛感しております。「外交の現場」と「経済の現場」のより一層の協力と,連携を進めるという観点から,経済外交委員会における今後の活発な議論を期待し,私の本日の講演の締めくくりとさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。