[文書名] 女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム ハイレベル・ラウンドテーブルにおける岸田外務大臣スピーチ
本日は,世界各国そして日本各地からお集まりになったトップ・リーダーの皆様と御一緒することができて大変喜ばしいです。御出席いただいたすべての方に感謝申し上げます。
議論を始める前に,ある勇気ある日本の女性の話を紹介いたします。彼女は大庭真理絵さんといいます。彼女は,今コンゴ民主共和国で,PKO部隊の性的暴力問題ユニット長として活躍しています。彼女に与えられた任務は,同国全域で性暴力をなくすことです。その目標に向け,社会全体を関与させるため,彼女は,政府職員と連携し,市民組織のメンバーと協力し,宗教指導者と対話しています。
暴力が発生した現場を訪れるよう閣僚達を説得する一方で,現地の女性に無理矢理行動を起こさせたり,抗議を行わせるようなことはしません。その代わり,女性達が自ら声をあげた時には,その女性達を支え,共に性的暴力と戦うのです。
大庭さんの活動は,私たちに重要な教訓を伝えてくれています。私は,今日の議論を彼女の物語から始めることを提案いたします。
21世紀こそ女性に対する人権侵害のない世紀とするべきです。このような強い決意から,紛争下の性的暴力担当SRSG事務所との連携を強化してまいりました。ここにおられるバングーラ特別代表と共にこれらの課題に対して取り組んでいくとの決意を新たにしています。
平時からのものを含む女性の参画が紛争予防・平和構築のための基盤であることをここで再確認したいと思います。日本政府は,安保理決議第1325号に基づく日本の行動計画を,実効性のあるものを目指して,市民社会と協働して策定中であり,まもなく完成させます。
災害に強い社会づくりや災害からの復興過程にも女性が不可欠です。日本は,古来より無数の自然災害による被害に見舞われてきました。しかし,そのたびに悲劇から立ち上がってきました。最近も,私の出身である広島で大災害が発生しました。しかし,私は,女性によって力づけられたコミュニティが復興を実現すると信じています。
3月の「国連婦人の地位委員会」では,東日本大震災の教訓を踏まえ,「自然災害とジェンダー」決議を再提出しました。日本は,来年3月に仙台で第3回国連防災世界会議を開催し,女性の視点も含め我が国の経験を世界と共有したいと考えます。
人間の安全保障の理念は,日本の国際協力の柱です。人間一人ひとりに目を向けなければ,たとえ支援を行っても,女性を始めとした社会的に弱い立場に置かれやすい人々が取り残される恐れがあります。日本は,「誰ひとりとして取り残さない」との覚悟で,女性の能力向上や,権利保護・促進,ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの促進を通じた女性の医療アクセスの改善といった広範な支援を行ってきています。
人間の安全保障の理念が,世界中で主流化し,ポスト2015年開発アジェンダに反映されれば,支援が確実に女性に届くようになると私は確信しています。
国際社会との協力は不可欠です。日本は,ここにおられるクラーク総裁のUNDPを始めとする国際機関との連携を一層深めていくことを引き続きお約束します。
ここにおられるムランボ=ヌクカ事務局長のリーダーシップのもと,UNWomenの活動の幅はますます広がっていることはとても喜ばしいです。日本は,この一年で拠出金の5倍増を達成しました。有力貢献国を目指し,より多くのプロジェクトを支援していきます。すばらしいニュースがあります。UN Womenの東京事務所の開設です。ムランボ=ヌクカ事務局長とここにおられる成澤文京区長に敬意を表したいと思います。
女性をエンパワーすれば,子供が,男性が,そして地域がエンパワーされ,将来世代へのプラスの連鎖が起こる,私はそう確信しています。
これから,じっくりと時間をかけて議論を行っていただきますが,まさにその鎖の一部となるような提案を発信していただくことを期待しています。