[文書名] パレスチナ支援調整委員会(AHLC)閣僚級会合における岸田外務大臣スピーチ
1.冒頭
まず,AHLC会合を主催するブレンデ・ノルウェー外相及び潘基文国連事務総長に敬意を表します。
2.ガザ情勢
【情勢の評価】
先般のイスラエル・パレスチナ武装勢力間の衝突に際し,多くの市民が犠牲となったことは極めて遺憾です。
また,悪化する周辺地域の情勢と呼応し,地域全体が一層不安定になる可能性もあり,国際社会は中東和平問題に一層真剣に取り組まねばな りません。
【日本の取組・立場】
我が国は,まず緊急のニーズへの対応として,国際機関や日本のNGO経由で食料,水,衛生分野で約780万ドルの支援を実施しました。
しかし,緊急支援だけでは足りません。復興という次のステージが重要です。
そのためにはパレスチナ自治政府によるガザ統治,国際社会の従来以上の幅広い協力が必要であり,和平交渉再開と中東全体の安定化に資するものであるべきです。
そして,復興に向け,切れ目ない支援の実現が必要であり,治安,人道支援,ガバナンスを柱とする支援メカニズムの構築が必要です。このために,日本は今後約2000万ドル規模の支援を行う意向です。
来月開催予定のガザ復興支援会合は,この観点から大切な機会であり, 日本はこれに参加し,積極的に貢献する考えです。
3.日本の対パレスチナ支援
【総論】
また,日本は,パレスチナの経済・社会の安定に向けた幅広い分野の支援に取り組んできております。
【CEAPAD】
本年3月,「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合(CEAPAD)」の第2回閣僚会合が開催され,私からは2億ドルの新規支援を発表し,既に7千万ドルが拠出済みです。
この会合で確認されたアジア各国間の協力による支援も着実に進展しています。本年5月には日本・タイによる観光分野の支援,また本日から,日本・マレーシアによるイスラム金融の人材育成支援が実施されます。
【「平和と繁栄の回廊」構想】
日本がイスラエル,パレスチナ,ヨルダンと取り組んでいる「平和と繁栄の回廊」構想のジェリコ農産加工団地については,入居企業5社の工場建設が進んでおります。
【信頼醸成】
また,長年,日本は官民でイスラエル・パレスチナ間の信頼醸成に取り組んでおります。
先月,ガザでの衝突の最中,日本の大学生が9名のイスラエルとパレスチナの大学生を私の地元である広島に招きました。彼らは「憎しみからは何も生まれない」と語る被爆者の言葉に耳を傾け,お互いの思いを率直にぶつけ合い,相互理解の大切さを学び,故郷へと帰って行きました。彼らが将来,地域の平和の実現のため中心的な役割を担うことを願 ってやみません。
【結語】
日本は,独自の強みを活かし,国際社会と協力しつつ,引き続きパレスチナ支援に取り組み,「二国家解決」の実現に積極的に貢献していき ます。ご清聴,ありがとうございました。
(了)