データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] シリア政治プロセス閣僚会合岸田大臣ステートメント

[場所] ニューヨーク
[年月日] 2014年9月24日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

皆様,

最初に,今回の会合開催にイニシアティブを発揮されたハモンド英外相を始めとする関係者の努力に敬意を表します。

本年1月のシリアに関する「ジュネーブ2」会議の結果,シリア危機発生以来初めて行われたシリア政府と反体制派の直接対話は,残念ながら中断し,一方で,シリア及びイラクにおいて過激派による紛争が激化する事態となりました。

ISIL(アイエスアイエル)(イラク・レバントのイスラム国)の存在は,国際秩序を揺るがしかねない深刻な脅威であり,日本は,国際社会のISIL(アイエスアイエル)に対する闘いを支持します。米国等によるシリア領域内の空爆については,これ以上の事態の深刻化を食い止めるために行われた措置であると理解します。ISIL(アイエスアイエル)の脅威に対抗するためには各国がそれぞれの強みを生かした取組を集結させることが不可欠です。日本は,イラク,シリア及び周辺国に対する人道支援に取り組む考えであり,新たに総額約2550万ドルの支援を決定しました。

同時に,シリア情勢の安定化には,2012年6月の「ジュネーブ・コミュニケ」を通じた政治的解決が基本であるとの日本の立場に変わりはありません。

皆様,

今,必要なことは,シリアの将来に責任を有する当事者間の対話が実現する環境を醸成することです。そのためには,「シリア国民連合」が再構築され,シリア国内に根を下ろすことが重要であると考えます。

本日ここに集まった我々は,このような「シリア国民連合」の取組をそれぞれが可能な形で支援していくことが重要です。日本も,シリア復興信託基金等において「シリア国民連合」と協力をしつつ,引き続き,「シリア国民連合」との対話を重ねながら,シリア国民が平和に普通の生活を営むことができるような「美しいシリアを取り戻す」ために取り組んでいきます。

皆様,

シリアの政治プロセスに進展が見られない中,我々は,引き続きシリア及び周辺国に対する人道支援を行っていく必要があります。

これまで日本は,シリア及び周辺国に対して,保健・衛生,食料といった短期的に支援が必要な分野だけではなく,女性・子ども,教育といった中長期的に支援が必要な分野も含め,総額約4億ドルの人道支援を実施してきました。

ISIL(アイエスアイエル)を始めとする過激主義が定着することを阻止し,地域の永続的な安定を確保するためには,シリアを含む域内各国が安定した経済・社会に下支えされた形でのガバナンスを効果的に行えるよう,力強く後押しすることが重要です。

総額約2550万ドルの新規支援の中には,最大のシリア難民受入れ国であるレバノンに流入したシリア難民等への支援,並びにシリアの中で国際社会の支援が届きにくい地域への支援としての総額約550万ドルが含まれます。

最後に,日本は,デ・ミストゥーラ国連事務総長特使を始めとする国際社会の皆様と協力し,引き続き,こうした人道支援と政治対話への貢献を,車の両輪として取り組んで行く考えです。