データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「核兵器の完全廃絶のための国際の日」に関する国連総会非公式閣僚級会合における岸田外務大臣演説

[場所] ニューヨーク
[年月日] 2014年9月26日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

議長,御列席の皆様,

はじめに,「核兵器の全面的廃絶に向けた国際の日」に,演説できることを光栄に思います。私は,被爆地広島出身の外務大臣として「核兵器のない世界」の実現に向けて積極的に取り組んでいます。クテサ国連総会議長を始め,本件会合の開催にあたり尽力された関係者の皆様に感謝の意を表します。

議長,

現在,世界には,依然として16,000発以上の核兵器が存在し,また,北朝鮮やイラン等に関する核不拡散の懸念が続き,そして,テロリスト集団等による違法な拡散活動の懸念も高まっています。

その対処のために,私は,2つの認識を基礎に置くべきであると考えます。

1つは,核軍縮の取組として核兵器が使用された際の非人道性についての正確な認識です。「核兵器の非人道性」の議論は,国際社会を「結束させる」触媒であり,この認識を世代と国境を越えて「広げる」とともに,科学的側面についての知見を「深めていく」ことが重要です。本年12月にウイーンで開催される「核兵器の人道的影響に関する国際会議」が核保有国を含む幅広い参加を得ることを期待しています。

もう1つは,多様化する核リスクに直面していることへの冷静な認識です。我々は,核軍縮の取組を進めるため,これらのリスクに有効に対処でき,また十分に実践的な対応を取っていくべきと考えます。

こうした認識の上に,世界が核兵器の数,核兵器が果たす役割及び核兵器を保有する動機の低減という3つの低減とともに,新たな核兵器国出現,核兵器に寄与しうる物資・技術の拡散,核テロという3つの阻止に向けて取り組むことが必要です。

議長

日本は,2010年に豪州と共に立ち上げた軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)を通じて,NPT体制を強化すべく,積極的に取り組んできました。本年4月には被爆地広島でNPDI外相会合を主催し,参加国の代表に被爆の実相に触れていただくとともに,現実的かつ実践的な取組を含む「広島宣言」を発出しています。この宣言の中で言及しているとおり,私は,改めて,世界の政治指導者たちにも広島・長崎の訪問を呼びかけたいと思います。

我が国は,こうした実績の上に立ち,核軍縮を着実に進展させるべく,ブロックを着実に積み上げる努力を重ねてまいりたいと考えています。

議長

来年は,広島・長崎への原爆投下から70年の節目の年です。また,この重要な年にNPT運用検討会議が開催されます。NPDIとして,同会議で成果をあげられるよう,積極的な貢献を行う所存です。

最後に,日本は,唯一の戦争被爆国として,広島と長崎の惨禍を世代と国境を越えて継承し,「核兵器のない世界」の実現に向けて,取り組むことを誓い私の挨拶とします。

御静聴ありがとうございました